[桑の葉が枯れ落ちるとき]
[元13席のサー・モルベリーの失踪と推定1級夢現災害の悪夢による領域の観測。この二つの事件に関連性を見出したドレアム騎士団と特心対は合同でダイバーを募った。]
[あなたたちはその招集されたダイバーの一人である。]
[トレンチにて]
鬼月朔乃「いやー、会議室に貸してくれるって太っ腹ね!理子ちゃん!」
笛出 「いいのいいの!どうせ今の時間は暇だから!」
鬼月「ほんとありがとね!めぐちゃ……サー・グリフィスはもう来てる?」
[カランカランと鈴の音を立ててめぐりが入店する]
めぐり「やぁ、お邪魔するよ。会議の場所はここでー…あぁ、あってたみたいだね。こんにちは、鬼月。」
[鬼月たちを見つけて駆け寄ってくる]
笛出 「こんにちは!サー・グリフィス。相変わらず健康そうでなにより!」
めぐり「やぁ、理子!久しぶりだね!君も元気そうで良かったよ」
笛出 「元気元気!今回も頼りにしてるからね!」
鬼月「やーやーやー!それじゃ早速始めていこっか!!」
ざっくり概要を話すと今回は人探し!元13席のサー・モルベリーおじさんが行方不明になっちゃったから見つけてきてほしいんだよね。
本当は騎士で固めていきたい、というか、騎士も駆り出されてるんだけど……。ほら、クーデターで失脚した深層級、ってそれだけでもう厄ネタじゃんね?
サー・ダンデライオンは監視の騎士付きで自由に行動できないし、あたしはオペレーター以上の関与に制限が出てる。だから、比較的騎士団に縛られないサー・グリフィスと、理子ちゃんに白羽の矢が立った、ってわけ。
笛出
な~るほど、ね。騎士って大変だねえ。
[話しながら軽食を並べる]
エ
ほんとにね~~~。
これがドレアム騎士団としての依頼。あるいは、あたし一個人としての願い。おじさんには昔お世話になったから、仮に謀殺されてたとしてもせめてお墓に骨は埋めてあげたいの。
笛出
亡くなってたとしても故郷に帰してあげないとだよね。
めぐり
了解したよ。必ずやり遂げて見せるさ。
エ
うん……うん……。
[ちょっと感傷的な様子で]
で、もう一つこれは特心対から。未観測だった夢現領域が判明したの。で、そこにのこのこ入ってった収穫者4名は、領域が消失するとクオリアになってそのへんに転がってた。
元々そいつらは討伐予定だったし、それ自体はいいのだけれど、問題は相当強力な悪夢、ってこと。再出現した領域を鎮圧、それが敵わなければ情報を持ち帰ってきてほしい、だってさ。
それさえできればそれなりに大規模な班を編成できるはずだから、無理はしない範囲で、あたしとしては居て欲しいと思ってる。
笛出
まあ~ねえ~。
安全確保要員と単独狙撃手の二名じゃやれることは限られてくるよねー。
[めぐりを見る]
めぐり
そうだね。
でも期待されている以上、私たちができることをしよう。
[笛出に微笑み返す]
エ
うん、あたしに許されてる権限の最善がこれだったんだ。
……とはいえ、不明の敵にキナ臭い背景。降りるには十分すぎる理由だと思う。2人は、それでもこの依頼受けてくれる?
笛出
私はもちろん受けるよお。
[手をひらひらと振る]
めぐり
私もさ。
人助けに断る理由なんてないからね。
[ニッと笑みを浮かべる]
エ
あ~~~り~~~が~~~と~~~!!
ほんと好き、大好き!
この借りはいつか絶対返すからね!で、とりあえず概要は話したけど、もう少し掘り下げて確認しておきたところとかある?
笛出
地形図とかも揃ってるし……、気象予報もあるから、とりあえずは大丈夫かな?
直接援護できる場所があれば私は大丈夫だよ。
エ
了解!あたし、狙撃はまだまだ青二才だから、何が必要かとかわからないところもあるし、何かあったすぐ言ってね!絶対用意するから!
笛出
ありがとう!
めぐり
私も大丈夫。いつでも出発できるよ。
エ
[特総医]
[鬼月を通したアポで受付からスムーズに担当医のもとまで案内された。]
担当医「えェ……こんにちは。サー・グリフィスさん、でしたか。」
担当医「簡単には伺っておりますが、本日はどのようなご用件で?」
めぐり
こんにちは。忙しいところすまない。
彼…サー・モルベリーがここに通っていたと聞いてね。何か彼について知っていることがないか聞きに来たんだ。
[あと気軽にめぐりでいいよ、と言いながらにこやかに聞く]
エ
特総医「ふむ……そうですか。」
担当医「ええ、彼は確かにここへ定期的に通院していました。ええ、ええ。2週間ほど前までは、ですがね。」
担当医「ですが、それを折りにぱったりと。彼ももう50も目前で、ダイバー能力による治癒にも劣化が見え始める頃合です。最低限、帰還後のメディカルチェックは必要だというのにですよ」
担当医「私は何度も彼にここを訪れるように連絡させました。が、次のダイブへの準備を理由に一つとして頷かず、ついには電話にも出なくなったのですよ。」
[まがりなりにも上に立つものとして、立派な姿勢をみせてほしいところなんですがね、と不機嫌そうだ]
めぐり
そうだったんだね…。
彼の代わりに謝るよ。申し訳ない。
エ
……まあ私のこれも部下さんに当ってるだけですわな。こちらこそ大人気なくて、申し訳ない。
それで、彼の近況は話しましたが、それで十分ですかね。
めぐり
あぁ、話してくれてありがとう。助かったよ。
エ
さようですか。それでは、お気をつけて。
エ
[サー・モルベリー邸宅]
[玄関のチャイムを鳴らすと、眉間をぴくぴくさせた執事らしき男が君達を出迎える。]
執事「お待ちしておりました。既に、サー・グラジオラスから捜索の旨はお伺いしております。さあ、こちらへ。」
[気が付くと理子のラインに一件未読の通知がある]
[『レスバは先に終わらせといた。』]
笛出
[『ありがと(*'З`)チュ』光の速度で返信するとスマホをポケットにしまう]
失礼しました。ありがとうございます。
エ
[執事に案内されて屋敷の中へ足を踏み込む。]
[捜索の最中にあっても、執事は激烈な圧でこちらを凝視してくる。気が休まらないぴり付いた雰囲気のまま、1時間、2時間……と続いていく]
[そうしていくつかの部屋を終えて、君達は書斎へと移った。]
笛出
[わざとらしく話を終わらせて目ぼしい物を探し続ける]
んー?
[棚に蝋で封をされた封筒を発見する]
未開封……。すみませーん!
[挙手して執事を呼び出す]
エ
なんでしょうか?
……ふむ……封筒ですか……。
以前にはなかったものですが、これは一体。
お預かりしましょうか。
笛出
以前に無かったとかわかるんだ。すごい。
っと、そうですね。
[指に力を込めたまま封筒を差し出す]
エ
では、これを支部へ……。
握る力強くありませんか?離してください。
笛出
いや。ちょっと、なんていうか。嫌です。
じゃなくて、私たちも中身を確認する責任的なものがあると思うんです。
ほら、このままだとハウスクリーニングに来たみたいになっちゃいますし?
それに、今の支部に渡したらー
エ
今嫌って……。
笛出
ご主人の立場的に握りつぶされるんじゃないかな。って?
エ
……。
[奥歯が軋む音がする]
それも一理ありますね。(ミシッ)わかりました。(メリメリ)ここで開封してしまいましょう。
ただ、このことは一切の他言無用で。
それでよろしいでしょうか?
笛出
もちろんですわ。傭兵は口の堅さで商売してるので。
エ
(どうだか。)
ええ、あなたさまを信用することに致します。
それでは、中を開けてください。
笛出
承知致しましたわ。
[指を当ててびりびりと開封する]
エ
あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!
[後ろで道具を用意しようとしていた執事が取り落とす]
……。
いや、もういいか。
はい、続けましょう。中身を読んで下さい。
笛出
はいはい。どれどれ……。
「あなたがこれを読んでいるとき、どのような状況にあるのかはわからない。が、私が恐らくあなたやその同僚達に大変な迷惑を掛けているだろうなとは予想している。本当にすまない。それを想定してなお対策しようとしないのは、一重に、身勝手な自殺願望から来るものだ。」
「そしてその理由というのまた単純で、自業自得なものに過ぎない。私はダイブを続け過ぎた。深海魚が陸に揚げられるとその水圧差で死ぬように、長年の間夢界の環境に慣れ親しみ、緩やかに変化していった私は現実へ適合しなくなっていた。」
「呼吸をしなければならないということが、こんなにも息苦しく感じる日がやってくるなど夢にも思わなかった。ここ数週間は何かと理由を付けて特総医にメディカルチェックから逃げ回っている。もしも、この病が彼らに知れ渡ってしまえば、彼らは私をこの溺れるような現実へと拘束するに違いないから。」
「遺産はこの後始末を任せてしまったあなたたちと、公共へと宛ててほしい」
エ
……。
笛出
わーお。遺書だコレ。
エ
[めまいを起こす]
モブ使用人「ああ!血圧がついに限界を超えてしまった!!」
モブ使用人B「誰か今すぐ配置薬を取ってこい!」
[周囲がてんやわんやの大混乱を起こしている]
[混乱のさなかに高級な椅子を移動させ座り込む]
朔乃ちゃん悲しむなあ。
エ
[とんとん、と誰かに肩を叩かれる]
笛出
あい?
[叩かれた方を見る]
エ
[この場に居るのには絶妙に違和感がある、黒髪に時代錯誤のレトロチックな黒セーラーの女性があなたの後ろに立っていた。]
[なんか、よくわからないけど抱えている段ボール箱から大量のオルゴールを覗かせながら。]
見ない顔だ。誰だ?
笛出
あ、お邪魔してます。
仕事で来てる傭兵です。
[定型文を叩き込んだあとにオルゴールを一瞥する]
あなたは……ここにお勤めの方?
いや、娘さんかな?
エ
うーん……なんと言ったらいいのだろうな……。てぐすさんはてぐすさんだ。
しかし、傭兵か。それは……
それは……大変だったな。ここの執事は頑固陰湿時代錯誤の陰険片眼鏡だ。
さぞかしここに入るのも苦労しただろう。
なんか嫌なことされてないか?てぐすさんは力になるぞ?
笛出
ありがとう、てぐすさんちゃん。めちゃクソにdisるじゃん。
でも私は友達の騎士が頑張ってくれたおかげでフリーパスだったよ。
さっきまで睨まれてたけど、なんか血圧上がっちゃったみたいで。
エ
てぐすさんにはわかる。あいつの人間性はとうの昔に根腐れしてる。
……なるほど、それであの騒ぎということか。ありがとう。
正直てぐすさんは困っていた。何があったのかよくわからなかったから。
だけどよかった、ついにあいつにお迎えがきたのだな。
[嬉しそうに若干3センチくらい宙に浮いてる]
笛出
あはは……、あんま仲良くないんだね……。
(見たところ生ける夢だけど、素性がわからないな)
[視線を再びオルゴールと段ボールに向け、それについて言及する]
すごい数のオルゴールだね!全部てぐすさんちゃんのコレクションなの?
エ
ちがう。全部ついさっき買って来たものだ。
すごい数だろう。北海道まで飛んで、帰って来たからてぐすさんはとっても疲れた。
これはなんで買って来たと思う?って尋ねてくれるか?
違う。
なんで買って来たの?って尋ねてくれ。
笛出
[子供然とした様子に表情が綻ぶ]
なんで買ってきたの?
エ
よく聞いてくれた。傭兵はいい傭兵だ。執事とは違う。
ならば答えよう。これは、モルに聞かせてやるためのものだ。
あいつは最近疲れてる。だから、てぐすさんはがんばっていっぱい買って来たのだ。ほら、いっぱいに。
[段ボール箱を揺らす。ぼとぼとと何個か落ちてしまった]
アア
オチタ!
笛出
[両手と鳩胸で合計四つキャッチする]
よっ、ほっ!
エ
おお!すごいぞ傭兵!!
ありがとう、ありがとう。
……そういえば傭兵は仕事と言ったな。何しにここにきた?
執事をついに討伐することになったのか?
笛出
うーん、捜し物?
エ
探し物か!いいぞ、今のお礼にてぐすさんが手伝おう。
何を探している?
笛出
わあ、ありがとう!先にオルゴールとって!
エ
おっと、そうだな。
[手を引く動作をすると、宙に引き上げられるようにオルゴールが浮き、段ボールへと着地する]
笛出
おお、フォースの導きのあらんことを……。
そうだ。てぐすさんちゃんはサー・モルベリーって知っとる?
あ、いや。"モル"か。
エ
もちろんだ。モルはてぐすさんの相棒なのだから。
笛出
(サー・モルベリーの使い魔?供給はどうしてるんだろ)
うんうん、じゃあさ。最近モルさんと会ったのっていつかな?
エ
い……
[視線を逸らす]
いっかげつ……まえ……。
笛出
オルゴールに誓って?(?)
[首を傾げて斜め下から覗き込む]
エ
誓えない……。
わかった。てぐすさんも本当のことを言おう。3日前に一度会った。
だけど「どこかに行っててほしい」と追い払われてしまった。
てぐすさん、そんなこと言われたの初めてだ。……悲しすぎて3日寝込んで今帰って来た。
これがオルゴールに誓ったてぐすさん真実だ。
笛出
それは辛かったねぇ……。本当のことを教えてくれてありがとう。
実を言うと、私はちょっと様子がおかしいモルさんを捜すために雇われたの。
あなたは……てぐすさんは、彼と契約して……ていうのはそのー。
なんて言えばいいのかな。想像力も分けてもらってるの?
エ
そうだ。今もそれは続いている。
だからてぐすさんはモルのお願いは断れない。どこかに行くしかなかった。
原因もわかっている。
たぶんオルゴールが足らなかった。
だからこれからてぐすさんはあとでオルゴールを買いにいく。
笛出
ん、オルゴールが足らない?
[大量のオルゴールを示す]
こんだけあっても?
エ
そうだ。
だっててぐすさんを追い払ったんだぞ。モルが。
あのモルが……。
[やさぐれて床を指でいじくる]
そうだとしか考えられない……。
笛出
きっとちょっと機嫌が悪かったんだよ。
モルさんはオルゴールが好きなの?
エ
そ、そうか?(ソワソワ)そうだよな!傭兵はいいこと言う。
てぐすさんはオルゴールもらったら嬉しいぞ?
モルはそうじゃないのか?
笛出
あぁ……、そういう。
いや、オルゴールを貰ったらうれしいと思うよ。
むしろてぐすさんちゃんがオルゴールが好きなんだね。
エ
そうだ!モルが初めてプレゼントしてくれたものだ。
だからとても大好きになった。
……ええっと、モルを探してるんだったな。
エ
わかった。参考にする。
[てぐすさん?はそういうとふわあと開けた窓から外へ飛び去った。]
[真下にぼとりとまたなんかのオルゴールを落としながら。]
笛出
[古めかしいオルゴールを拾う]
一番年季が入ってるの落としてったけど……。
[執事に棄てられないようにと一旦回収する]
めぐり
[トレンチ]
やぁ、理子。そっちはどうだった?
[先に調査を終えためぐりが店内で待っていた]
エ
おーおっかえり~!
どうなったどうなった~?
笛出
ただいまー!
すごい……仕事熱心な執事がいたよ。
[二人をみた後に鬼月を一瞥する]
エ
でっしょ~。早く高血圧でくたばればいいのにね、あいつ。
嫌味のお手本みたいなお便りばっか送ってくんの。
めぐちゃん理子ちゃんにあんなの相手させたくないから、がんばったよ。
笛出
ありがと。助かったよ。ずっと睨まれてたけど。
収穫はいくつかあって
[遺書の写真を見せる]
まず、これ。
エ
………そっかぁ……。
めぐり
これは…
[遺書の内容を見て眉をひそませる]
ここ最近、彼は特総医の検診にも顔を出していなかったと聞いたけど
これが原因だろうね…
エ
そういうことなら、ぜんぶ辻褄が合うもんね。
確信とまでは言えないけど、筆跡もたぶん、おじさんので間違いないよ。
ほら、殺が旧字。
エ
……サー・ダンデライオンに連絡してくる。
笛出
いや、遺書は見つけたけどまだ生きてはいるらしいんだ。
彼の……使い魔にそう聞いた。
エ
てぐすちゃん?
てぐすちゃん生きてるの!?
笛出
そうそう!
ん?生きてるのとは。
エ
いや、だって主人が死んだら生ける夢は消えちゃうでしょ?
少しの間は、まあ持つかもしれないけれどさ……。
笛出
無事だし、見た感じは想像力に困ってる感じじゃなかったよ。
それに……、
うんー
……居場所も知ってるんだって。
エ
手足は?
意識もちゃんとあったんだね?
えっていうか場所知ってるの!!?行こうよ今すぐ!!
笛出
あるある全然ある!
でも教えられないんだって。
相棒との約束だからって。
そう言われたら、どうしようもないでしょ。
エ
……まあ、そうだね。これを通そうとしたらあたしたちの単なる我儘だし。
でもよかった。ちゃんとてぐすちゃんは復元できたんだね。
笛出
復元??
エ
ええっと………ええっとぉ……。そのね……いや、いいか、言っちゃおう。
モルベリーおじさんはね、血統派の騎士だったの。
彼が13席から転落したのは、自由派との闘争に負けたから。
そのとき、モルベリーおじさんは色んなものを失った。名誉とか……地位とか……それと、てぐすちゃんのクオリアの半分。
クオリア自体はもうどこにもない。戒めとして、砕かれちゃったから。
だからモルベリーおじさんはリングホルダーに頼んで、もう一度生ける夢として蘇生できるように走り回った。
継ぎ接ぎにできるクオリアを、悪夢から回収するために。
……まあ、悲しかったけど、あたしはもうなかば無理だって諦めてたから、今そうなってるとは夢にも思ってなかった。
[矢継ぎ早に話すと、一息つく]
笛出
[頬杖をついて黙って話を聞いていた]
……複雑なんね。
そっか、そっかあ。
めぐり
…悲しい事件だったね。
笛出
戦争だから仕方がないとはいえね。
でもその話で言うとてぐすさんちゃんは復活したということは
もう目的は達成してるか、もう佳境ってことなのかな。
めぐり
そうだね。
彼の居場所を知っているということは彼も彼女に会っているだろうし、復元したことは知ってそうだ。
エ
たぶんね。
想像してたよりは状況はずっといい。
まだ、希望を捨てないでいられる。
めぐり
あぁ、まだ間に合う。
どうにか彼を見つけ出して思い止まらせなきゃいけないね。
エ
[夢現領域]
[無数の鎧が散乱し、その一つ一つには突き立てられた矢や刃など、痛々しいまでの損傷がみられる。]
[それらに足を取られないように君達が進むと、少し先で剣と剣を打ち合わせるような、擦れた衝突音が聞こえてくる。]
[遠目からみて、サー・ダンデライオンとサー・モルベリーその人の姿のようにみえる]
めぐり
[剣を交わり合わせる二人に驚きつつ、足早に駆け寄る]
サー・ダンデライオン!それにサー・モルベリー!
何をやってるんだい!?
エ
ダンデライオン「サー・グリフィス!大体見てわからないか!!?」
ダンデライオン「私にも事情はわかりかねるが、どうやら彼は乱心したらしい。監s……護衛騎士を襲撃したゆえ、やむを得ず防衛している」
[防戦しながらもやや南方のほうを指し示す。そこには3名の騎士が倒れ、地面に伏している様子がみえる]
めぐり
[倒れ伏した騎士たちを見たあと、モルベリーの方を見る]
サー・モルベリー!私だ、グリフィスだ!
私たちは君に害をなしに来たわけでも、強引に連れ戻しに来たわけでもない!
落ち着いて、剣を収めてくれ!
エ
[一瞬モルベリーが攻撃の手を止め、めぐりの方を見る]
モルベリー「ああ……?おお、今日は殊更に悪夢が勢力を増す日らしい。」
モルベリー「テグス、もう少しだけ私の帰りを待っていておくれ。また新しい継ぎ接ぎを君に贈る。」
[ダンデライオンが首を横に振る]
ダンデライオン「会話では無理だ。力ずくで抑えつけるしかない……だが倒れている彼らを庇いながらでは限界がある」
ダンデライオン「恥を忍んで君に頼みたいことがある!私が彼らとともに後退する間の時間を稼いでくれないか」
めぐり
…そう、みたいだね。わかったよ。
脱出したらまた後で合流しよう。
[モルベリーを警戒しつつ、無線で笛出に話しかける]
理子、状況は把握しているかい。
笛出
<ばっちり。見えてるよ>
めぐり
良かった。彼らが領域を脱するまでの間、支援を頼んだよ。
エ
ダンデライオン「……恩に着る!」
[後退し騎士一人一人を肩に抱えると、ダンデライオンは領域外へ向かわんとめぐりに背を向ける]
モルベリー「獲物を取り逃すわけにはいかないな」
めぐり
[ダンデライオンとモルベリーの間に割って入り、大盾を顕現させて拳で打ち鳴らす]
彼らの元には行かせないよ!君の相手は私だ!
エ
モルベリー「……ほう?気概は認めよう。同属意識を持つ個体と戦うというのも随分久しいものだ」
[戦闘開始]
-3
-2
-1モルベリー
0ダンデライオン(騎士三人セット)
+1めぐり
+2
+3笛出
めぐり
ハァッ!
[地面を蹴ってモルベリーに肉薄し、不可視の斬撃を放つ]
エ
[払いを差し込んで剣撃を牽制する]
筋は……悪くない。
エ
だが……それだけでは届かない。
[中断させた攻撃に追撃を叩き込む]
うぐぁ!
[大盾で防ごうとするも、勢いを殺せず後方に吹き飛ばされる]
くっ…流石だね。
でも、まだまだッ!!
[吹き飛ばされた勢いをそのまま返すかのように体を捻り、渾身の斬撃を叩き込む]
エ
[弾き、インパクトの衝撃を殺そうとするが想定外の膂力に押され、やむをえずはるか後方まで跳躍する]
たった一度剣を交えただけで実力を推し量るのは早計だったか。
[再度構え直す頃にはダンデライオンは無事領域外へと脱出した]
笛出
<タシギからめぐりちゃんへ。サー・ダンデライオンは領域離脱を確認。離脱を確認。どうぞ>
めぐり
了解したよ。私たちも離脱しよう。
[手早く通信を終えると大盾を収納し、翼を広げて後方に大きく跳躍する]
エ
[弩を生成し構えるが、既にその矢が届く距離でないことを悟ると、モルベリーはまるで機械のように停止してしまった]
めぐり
サー・モルベリー!
今だけは少し耐えてくれ!次に会う時こそ必ず君を助けると約束するよ!
[停止したモルベリーに声を掛けつつ領域外へと脱出する]
エ
[トレンチ]
[めぐり達が向かうと、既にグラジオラスとダンデライオンが店の前で待機していた]
ダンデライオン「……無事か!」
めぐり
あぁ、お待たせしたね。君も無事で良かったよ。
エ
ダンデライオン「少なくとも三人の命は君のおかげで繋がれた。礼を言わせてくれ。」
[ダンデライオンは深々とめぐりに頭を下げる]
てる「あ、理子さん!通しておくように言ってた人ってこの人たちであってますか?」
笛出
合ってる合ってる。ありがとね、てるちゃん。
領域では殆ど手助けできなかったな……。ごめん。
めぐり
謝ることなんてないさ。
君が見守ってくれたおかげで彼らも私も安全に後退することができたんだからね。
[ニッコリと笑みを浮かべる]
笛出
うん、ありがとう。眩しくて目が潰れそうだよ……。
[目を細める]
悔しいな。次は役目を果たさないと。
[独り言を呟いて反省する]
エ
「その点で言うのなら私はあろうことか助けを呼ぶ始末だった。」
「自衛ができている、その一点だけで君は優れたダイバーだと私もサー・グリフィスに賛同するよ。……まあ、それはさておきとして」
[溜息を吐きながらゆっくりと席へつく]
「……これからの……話だな……」
鬼月「そうね。もう夢現領域には侵入したんでしょ、どんな悪夢が居たの?」
めぐり
…領域内にはサー・モルベリーがいたよ。
エ
鬼月「は?」
[ダンデライオンの方へ振り替える。ダンデライオンは目を逸らし、ただただ沈黙している]
鬼月「えっと……それは捕虜にされてたってこと?」
めぐり
いや、捕まってたわけじゃない。健康そのものだったよ。
ただ…
[少し口に手を当てて考えている]
…ただ、何故か私たちに矛を向けて来た。
まるで何かに憑りつかれているように、ね。
エ
ダンデライオン「包み隠さず言えば、収穫者のように彼そのものと悪夢が既に同化していた。ホルダー体はまだ構築されていないが、その分精神汚染が酷い。」
ダンデライオン「もう既に彼の人格というか、魂そのものが一つの悪夢に変化してしまったと表現するべきだろうな」
[鬼月は絶句し、しばしの間押し黙る]
[ダンデライオンは困り果てた様子で理子に助けを求める視線を飛ばす]
笛出
想定していたよりも事態は重い。騎士にとってはなおの事だと思う。
……気の利いた言葉は思いつかないけど、それでも今はどうするかを考えないと。
てぐすさんちゃんのこともあるし……。
エ
ダンデライオン(すまない……助かった……)
めぐり
そうだね。今は彼を救い出す方法を探そう。
まだ手段は残されているはずさ。
笛出
[口を手で片手で覆って考え込む]
エ
鬼月「……そだね、あたしは考えたりする以上、手出しできるわけじゃないんだし。」
鬼月「和。あんたはもう手立ては考えてるの?」
ダンデライオン「そうだな……まずは条件を絞ろう。この件は既に監視騎士が証人になってしまった以上、時間が経てば支部から直属の討伐隊が向かうことは避けられないと思う」
ダンデライオン「よってまず大前提として、短期決戦。」
ダンデライオン「そして夢現領域で彼を討伐すべきではないと思う。単純に彼の力量の問題もあるが、よしんば勝ったとしても、肉体は悪夢の外殻同様に破壊されてしまうだろう。」
ダンデライオン「夢現領域の彼を抑え込みつつ、強制ダイブで夢界に侵入して直接鎮圧する他ない……んじゃないかな。」
[途切れ途切れに絞り出すように案を提示する]
笛出
私も同じ意見。思ってたことはだいたい旦那さんが言ってくれたけど……。
第一の問題はどうやってもう一度出会うか。さっき言ってたみたいにモタモタしてたらこっちが時間切れだし。
エ
ダンデライオン「ああ。……不知火のログ探知を借りられれば話は早いが、我々の中で事を終わらせるには彼らが直接対象ログを得てしまうのはまずい。」
ダンデライオン「よって、探知能力を持つ一個人の協力を仰ぐ必要がある……が、そんな心当たりは……」
めぐり
…いや、一人いるかもしれない。
笛出
いや、いるけどさあ……。
エ
ダンデライオン「私には明かせない人物か?」
ダンデライオン「鬼月」
鬼月「……うっ……えと……」
笛出
うーん……。いや、ここで黙ってても仕方ないか。
[鬼月とめぐりを一瞥する]
エ
[曖昧に頷くことしかできない。私にはその責任をしょえないと]
めぐり
[こくりと頷く]
彼の使い魔である彼女…てぐすなら彼の居場所が分かるかもしれない。
エ
[少しだけ目が見開いたようにみえるが、努めて冷静に話を続ける]
ダンデライオン「テグス。ああ、なるほど」
ダンデライオン「彼女が存命なら、邸宅の使用人からおおよその居場所は掴めるだろう。では、彼女に彼の座標を特定してもらう、ということで構わないか?」
笛出
うん、あんまり気乗りはしないけどねー……。
ダンデライオン「よし、方針は決まった。ならば始めよう」
ダンデライオン「私はインビジブル・ウォールの伝手に当たるから車を出す。君達も邸宅までは乗せていくよ」
[ダンデライオンが席から立ち上がり、ポケットから鍵を取り出す]
鬼月「お願い、信じてるよ」
[鬼月に見送られ、トレンチを後にした一行は車へと乗り込む]
[車内で遺書の話もダンデライオンに伝えられる]
エ
ダンデライオン「そうか、なるほどな……」
ダンデライオン「鬼月には触れられなかった話と、私の中の仮説がある。今ここで話しておいてもよいだろうか?」
[ハンドルを握りながら苦々しい声色でめぐりと笛出に問いかける]
笛出
選択肢が増えるならなんでも聞きたい。
めぐり
あぁ、話してくれると助かるよ。
エ
ダンデライオン「わかった。なら、今ここで言ってしまおう」
ダンデライオン「まず一つ。今の作戦が首尾よく行ったとしてもサー・モルベリーは助からない。」
ダンデライオン「夢界で撃破した場合も、やはり同様にクオリアになることは避けられないからだ。恐らくこれ自体はどうやっても避けることはできない。」
ダンデライオン「だが、肉体を残すことができれば年月を経て想像力による復元を待つことができる。私としては、ここを目標としたい。合意してもらえるだろうか?」
笛出
肉体を残すってどうやるの?抜け殻だけ現実に残しとくってことでしょ。
エ
ダンデライオン「そうなる。……正直考えたくはないが、無理くりこちらで保護するしかない」
ダンデライオン「完全なクオリア化を待てばその必要性はなくなるかもしれないが、テグスはリソースの供給を失うし、それが討伐隊より先に間に合うかも微妙だ」
笛出
ふむ、なるほど……。
エ
ダンデライオン「次に仮説の方の話をする。」
ダンデライオン「現状の彼の目的は自身のクオリアを生成することにある可能性だ」
ダンデライオン「彼女を完全に復元する素体を探すのなら、一番有力な素材と言えば、彼女を生み出した土壌自身を使えばいい。……というのは少々無理筋だろうか?」
笛出
そんな無茶苦茶な……と言いたいところだけど。ありえなくはない。
正気じゃないけど。
エ
ダンデライオン「私としては、自殺志願者がああも人に斬りかかったのもにわかには信じがたいからな。」
ダンデライオン「テグスは有力な交渉材料になるかもしれない。できれば、友好的な関係を維持してくれると助かる。」
笛出
うん。テグスちゃんは友達だから……、できれば傷付いてほしくない。
でも私は傭兵だから。必要なことはやるよ。
エ
ダンデライオン「君の理性を私は何より信頼している。任せるよ、タシギ」
ダンデライオン「……着いたな、車を停める。」
笛出
じゃ、行ってくるよ。
めぐりちゃん行こう。
めぐり
あぁ、行こうか。
エ
[邸宅]
[例の執事の姿はなく、代理が君達を迎える]
執事代行「サー・グリフィス、タシギ。ようこそおいでくださいました。さあ、どうぞこちらへ。」
笛出
お邪魔してすみません。ありがとうございます。
エ
執事代行「いえ。偶然ではありますが、ちょうどこちらもあなた方をお招きしたい理由があったのです。」
執事代行「もしよろしければ、そちらの用件のほうもご案内してよろしいでしょうか?」
[彼の誘導に従うがままに進めば例の書斎へとたどり着くだろう]
笛出
それで我々にどのような?
エ
執事代行「メグス様がお探しになられていました。どうやら尋ねたいことがあるご様子で。」
執事代行「とはいえ、サー・モルベリーの捜索に協力されているあなた方はご多忙中と存じますから、そのようなお願いはできない、とどうにか納得するよう説いていた真っ最中だったのです」
笛出
尋ね……あー、なるほど。
[バッグ内に大事にしまわれた古びたオルゴールを思い出す]
多分心当たりあります。私も消化したいと思ってたので、丁度よかったです。
エ
執事代行「本当ですか?ああ、それはとても助かります……。」
[代行が扉を開く。段ボールの上にうずくまるめぐすの姿が真っ先に視界に飛び込んでくる]
笛出
てぐすちゃーん!昨日ぶり!
[よっす。と手を振り上げて歩み寄る]
エ
……傭兵!傭兵じゃないか!!
ひさしぶりだな~!
いや?そうでもないのか?どうだったろう。
てぐすさんには今の時間があまりにも長く感じられてしまう。
めぐり
君がてぐすだね。理子から話は聞いているよ。
始めまして、私はめぐり。理子の友達さ。
[にこやかに話しかける]
エ
……なんかおまえぶきみだ……。
いや、でも傭兵の知り合いか。なら、多分、悪いやつじゃあないんだろう。
よろしくなめぐり
笛出
ところで私たちに尋ねたいことって?
……当ててあげようか?
[悪戯に微笑む]
エ
そうだ、それでずっとてぐすさんは待ってたんだった。
やってみろ。てぐすさんの心はそう簡単にはよめない。
笛出
探し物をしている?
エ
どうだろう。ヒントはなしだ。
[と言いつつあきらかにそわついている]
笛出
それは音が鳴る?
エ
うぐっ……だから言ったろう。ヒントはあげない。
笛出
てぐすにゃんが探してるのは…
[古びたオルゴールを取り出す]
エ
!!!!
な、なぜわかった。
傭兵は超能力者も兼業してたのか?
笛出
まーね。こないだテグスちゃんから直接ドロップしたからわかっちゃったワケ。
エ
……だ、だが、それでは半分当たりで半分外れだ。
つまりてぐすさん50傭兵50。この勝負は引き分けだ。
笛出
もしかしてモルさんも探してる?
エ
負けた……!
そうだ。モルになにかあったらしいんだ。
「縛り」が無くなってしまった。傭兵はモルを探していたから、何か事情を知らないかと思っていた。
笛出
それは
[何か言おうとしてとどまり、一度落ち着いて深呼吸する]
[めぐりに目配せする"いい?"と]
めぐり
[こくりと頷く]
笛出
落ち着いて聞いてね。
昨日私たちモルさんに会ったの。
エ
わかった。(スウウウウウハアアアアアアア)
笛出
率直に言うとモルさんの具合はもっと悪そうだった。
なんていうかー、そのー。
もう周りがよくわかんない感じ。
エ
うん……うん……?
そうか。やっぱり病院に行かせるべきだったか。
笛出
でもね、テグスちゃんのことはわかってた。
私たちのことは敵に見えたみたい。
それで戦いになったの。
エ
傭兵、戦ったのか、モルと。
……よく生きてたな……やっぱりやるやつだ、傭兵。
あとでモルは叱っておく。ほんとうにすまなかった。
笛出
いや、めぐりちゃんが護ってくれたから私も、私の友達も生きて帰れた。
モルさんは今、それくらい危険なの。
だから━━
エ
だから?
笛出
━━モルさんを怖がる奴らが潰しに来る前に、私たちがモルさんを助ける。
誰かにやられる前にボコボコにする。
エ
……。
言ってることが……よくわからない……。
えと……その、それでモルは助かるのか?
笛出
……少なくとも他所に任せるよりは。
モルさんは強いんだよね?
すごくつよい。
てぐすさんが足を引っ張らなければ、あんなやつらになんか絶対負けなかった!
[何かを思い出してはぎしりするように答える]
笛出
じゃあ強いモルさんが、手当たり次第に暴れ回ったら?
みんな怖いよね。怖いから全力で潰しにかかると思うんだ。
でもそれじゃモルさんは助からない。
それを私たちはどうにかしたいと思ってる。
エ
傭兵。
[古びたオルゴールを目の前に差し出して言う]
それ、オルゴールに誓えるか?
笛出
誓える。
結果は誰にもわからない。
でも最善を尽くすつもり。
エ
えらいぞ、傭兵。
わかった。それならてぐすさんも一緒にモルを止める。
てぐすさん、傭兵が来た理由わかるぞ。当ててみせようか?
笛出
わたしの心はそう簡単に読めない。
エ
いいや、わかるぞ。
モルの場所が知りたいんだな。止めるために。
笛出
うん。
エ
縛りは破られた。てぐすさんはモルのためなら、オルゴールに誓えなくてももういい。
てぐすさんは場所を教える。傭兵はてぐすさんがモルを止められるようにする。それで、オルゴールに誓う。
いいか?
笛出
[力強く頷き、めぐりを見る]
めぐり
あぁ、私もそのオルゴールに誓うよ。
エ
[ごそごそと懐から螺子を取り出す]
[数回転ほど捻り、手を離すとオルゴールが優しい音色で賛美歌を奏でる]
このオルゴールだけはモルのセンスなんだ。誓うのにはもってこいの、いい音だろう?
モルもきっとこれを聞いたら何が敵でそうじゃないか、思い出す。多分。
めぐり
…優しい音色だね。
これならきっと彼も思い出してくれるさ。
[しばらく聞き入った後にこやかに答える]
エ
ふ、めぐり、おまえはなかなかいい感性をしてる。
褒めてやる。よしよし。
めぐり
ふふ、ありがとう。
笛出
良い音色。
[スッと頭を出す]
エ
欲しがりさんだな傭兵は。よしよし。
[書斎の扉がノックされる]
執事代行「開いてもよろしいですか?」
用件はおわった。開けていい。
代行「では失礼します」
[扉の向こうからはサー・ダンデライオン。……と、その他数人子どもらしき姿が見える]
市「……お?相守さんじゃん、おひさです」
忍「あ、市くん知ってる人なの?」
市「任務でちょっとね。」
めぐり
市じゃないか!久しぶりだね。
エ
市「お元気そうでなによりで。」
市「サーから大体話は聞かされてますよ。最終的な役割決定するらしいんで、さくっと車に乗り込んじゃいましょう」
忍(とりあえず市くんとダンデライオンさんに任せておこう)
ダンデライオン「……まあ、協働依頼の件のことだ。そちらはどうだろうか、話はついたか?」
笛出
うん。首尾よくいった。
エ
てぐす「てぐすさんはおまえたちに協力する。よかったな、ウルトララッキーだぞ」
[笛出とめぐりを一瞥してからにっかりと笑う]
笛出
[笑い返す]
百人力だ。
エ
ダンデライオン「ふふっ、最高の仕事をされたな。」
[車内でチームの振り分けがなされた]
[ダンデ・インビジ合同チームは夢現領域防衛へ]
[てぐす・依頼チームは夢界制圧へ]
[てぐすのナビゲートに従い、一行は夢現領域へと置き換えられた郊外へと向かう]
モルベリー「ほぉう……?これまた更に数だけは揃えたものだ。感心するよ」
市「強制ダイブを開くのは5秒間です。いつでも突入できるよう、準備を。」
めぐり
あぁ、いつでも行けるよ。
エ
ぬえ「俺さまはまだ心の準備できてないんだぞ!?」
市「お前には聞いてない。」
笛出
準備万端!
エ
てぐす「うむ。」
[モルベリーが急速に距離を詰めてくる]
忍「開きます!3・2……」
ぬえ「話を聞け!!」
ダンデライオン「突入!」
[モルベリーが抜いた剣が届くコンマ数秒前にドレアム境界面が開かれる。3人は吸い込まれるようにして夢界へ突入する。]
[ドップラー効果でだんだん音が高くなっていく鵺の悲鳴がかすかに耳に残る]
[夢界は静寂に包まれていた。開けた草原に、ぽつりと並べられた墓石たち。その傍らに、座り込むようにしてサー・モルベリーは佇んでいる]
モルベリー「そうか。てぐす、お前もそちら側に立ったか。」
てぐす「モル。今お前は気が動転してるだけだ。いま叩いてなおしてやる。ブラウン管テレビもそれで直ったからな。」
モルベリー「……んふっ、はは、ははは。そうか、ああ、そうするといい。」
モルベリー「おまえたち。斬り捨てる前に名前くらいは聞いておこう。」
[心底愉快そうに笑ったあと、2人を睨む]
笛出
タシギ。
めぐり
私はグリフィス。君と同じ騎士の一人さ。
エ
モルベリー「タシギ、グリフィス。悪くない名だ、お前たちからクオリアをはぎ取ったら、墓碑にはそう刻んでおく。」
モルベリー「構えろ」
笛出
[背を向けて全力で距離を離し狙撃に都合の良い地点へ向かう]
エ
……締まらんなァ。それが正しいのだろうが。
めぐり
[大盾を顕現させ、撤退戦の時のように拳で打ち付けて響かせる]
"君"は覚えてないかもしれないけど約束だからね。
…助けに来たよ、今度こそ。
エ
……?おまえ、頭でもおかしいのか?
かわいそうに。そういうものだよな、おまえたちも、私も。
[戦闘開始]
-3
-2
-1 モルベリー
0
+1 めぐり
+2 てぐす
+3 笛出
めぐり
早速行かせてもらうよ!はあッ!!
[力強く一歩を踏み出すと同時に斬撃をモルベリーに叩き込む]
エ
[咄嗟に剣身を最大限利用して攻撃を受け止める]
[それは何か、死を予感させるものが自らに迫っていることを悟り、いや、悟らされたがゆえに。本能から来るものだ。]
笛出
[笛出が死角となる位置から墓石に跳弾させる。角度を変えられた弾丸は甲冑を穿った]
エ
[音を置き去りにしたその凶弾は彼の意識の完全に外から彼の脇腹を抉る。]
[滴る流血を抑えながらモルベリーが吼える]
はは……はははっ!!今のはなんだ!?全く見えなかった、全く聞こえなかったぞ。
昂ぶりを抑えられんよ、今日は実によい宴になりそうだ
[てぐすがふわふわと佇むと、鱗粉が宙を舞い光を乱反射していく]
[煌きは徐々に収束されていく]
笛出
[めぐりとモルベリーの斬撃の応酬を見極める。そして二人が離れた一瞬を突いてモルベリーの肩を狙撃する]
ダンデライオン「ふふっ、最高の仕事をされたな。」
[車内でチームの振り分けがなされた]
[ダンデ・インビジ合同チームは夢現領域防衛へ]
[てぐす・依頼チームは夢界制圧へ]
[てぐすのナビゲートに従い、一行は夢現領域へと置き換えられた郊外へと向かう]
モルベリー「ほぉう……?これまた更に数だけは揃えたものだ。感心するよ」
市「強制ダイブを開くのは5秒間です。いつでも突入できるよう、準備を。」
めぐり
あぁ、いつでも行けるよ。
エ
ぬえ「俺さまはまだ心の準備できてないんだぞ!?」
市「お前には聞いてない。」
笛出
準備万端!
エ
てぐす「うむ。」
[モルベリーが急速に距離を詰めてくる]
忍「開きます!3・2……」
ぬえ「話を聞け!!」
ダンデライオン「突入!」
[モルベリーが抜いた剣が届くコンマ数秒前にドレアム境界面が開かれる。3人は吸い込まれるようにして夢界へ突入する。]
[ドップラー効果でだんだん音が高くなっていく鵺の悲鳴がかすかに耳に残る]
[夢界は静寂に包まれていた。開けた草原に、ぽつりと並べられた墓石たち。その傍らに、座り込むようにしてサー・モルベリーは佇んでいる]
モルベリー「そうか。てぐす、お前もそちら側に立ったか。」
てぐす「モル。今お前は気が動転してるだけだ。いま叩いてなおしてやる。ブラウン管テレビもそれで直ったからな。」
モルベリー「……んふっ、はは、ははは。そうか、ああ、そうするといい。」
モルベリー「おまえたち。斬り捨てる前に名前くらいは聞いておこう。」
[心底愉快そうに笑ったあと、2人を睨む]
笛出
タシギ。
めぐり
私はグリフィス。君と同じ騎士の一人さ。
エ
モルベリー「タシギ、グリフィス。悪くない名だ、お前たちからクオリアをはぎ取ったら、墓碑にはそう刻んでおく。」
モルベリー「構えろ」
笛出
[背を向けて全力で距離を離し狙撃に都合の良い地点へ向かう]
エ
……締まらんなァ。それが正しいのだろうが。
めぐり
[大盾を顕現させ、撤退戦の時のように拳で打ち付けて響かせる]
"君"は覚えてないかもしれないけど約束だからね。
…助けに来たよ、今度こそ。
エ
……?おまえ、頭でもおかしいのか?
かわいそうに。そういうものだよな、おまえたちも、私も。
[戦闘開始]
-3
-2
-1 モルベリー
0
+1 めぐり
+2 てぐす
+3 笛出
めぐり
早速行かせてもらうよ!はあッ!!
[力強く一歩を踏み出すと同時に斬撃をモルベリーに叩き込む]
エ
[咄嗟に剣身を最大限利用して攻撃を受け止める]
[それは何か、死を予感させるものが自らに迫っていることを悟り、いや、悟らされたがゆえに。本能から来るものだ。]
笛出
[笛出が死角となる位置から墓石に跳弾させる。角度を変えられた弾丸は甲冑を穿った]
エ
[音を置き去りにしたその凶弾は彼の意識の完全に外から彼の脇腹を抉る。]
[滴る流血を抑えながらモルベリーが吼える]
はは……はははっ!!今のはなんだ!?全く見えなかった、全く聞こえなかったぞ。
昂ぶりを抑えられんよ、今日は実によい宴になりそうだ
[てぐすがふわふわと佇むと、鱗粉が宙を舞い光を乱反射していく]
[煌きは徐々に収束されていく]
笛出
[めぐりとモルベリーの斬撃の応酬を見極める。そして二人が離れた一瞬を突いてモルベリーの肩を狙撃する]
ぬっ……ぐぅうっ!
[めぐりから距離を取り、周囲を見渡す]
[弾丸の飛ぶ方へ眼を向けるが、そこに笛出の姿は、ない。]
てぐすさん「傭兵、めぐり。聞こえてたらでいいんだがな。」
てぐすさん「てぐすさんの姿、てぐすさん的には気に入ってるんだが、あとはどうやらモルを除くとそうじゃないらしい。だから、目を瞑ってたほうがいいかもしれないぞ。」
[閃光と共に女性型は消え、2mほどの全長はある巨大な天蚕蛾がそこには居た。レンズを通すように光の筋がモルベリーを通ると、白煙の中でもうその姿は見えなくなっていた]
エ
[白煙から姿を現したモルベリーの刃がめぐりの肩口を裂く]
めぐり
ぐ…ッ!
[凶刃が肩を抉るも歯を食いしばり押し止まる]
笛出
[モルベリーの残身による一瞬の硬直の隙を突き、肩口から心臓や肝臓を貫通するコースの銃弾が装甲を貫通する]
エ
[穿かれた孔から鮮血が吹き出し、どさりと地面に倒れ込む]
[空間そのものがどくり、どくりと脈動するように風景が置換される。いまや空の青は赤黒さに染め上げられている。]
[彼の甲冑は内側から湧き出すモノに耐え切れず決壊し砕け散り、ごわごわとした、獣のように醜い体毛に覆われた巨大な怪物へと姿を変える]
[モルベリーは称賛を送っている様子だが、今の君達にはもうただの獣の咆哮だとしか聞き取ることができないだろう。]
[彼の握る剣が月明りのように、昏く輝く。それをその巨躯から来る膂力の全霊を以てめぐりに叩きつけた。]
めぐり
マズい…ッ!!
[すかさず両手で構えた大盾に大剣が衝突し、轟音と砂埃を巻き上げる]
[激しい火花と閃光が発せられた後、盾を傾けて衝撃を横に逃がして事なきを得た]
めぐり
危なかったね…
皆!ここが正念場だよ!
[発破を掛けつつ、渾身の力で獣の体を斬りつける]
笛出
[獣の胴を銃弾が抉る]
エ
[てぐすの眼から放たれた光が獣の背を焼く]
[それら猛攻を受けてもなお、獣はいまだ悠然にそこで立ちはだかる。]
[致死的な強打を、容赦なくめぐりへと浴びせかける]
[月光剣の一撃後、間隙を突くように三つの斬撃を加える]
めぐり
うああぁッ!!
[再び盾で受けようとするが強靭な力に押し切られ、無防備になった胴体に斬撃が突き刺さる]
…ぅ…まだ、まだ…ッ!
まだ諦めるわけにはいけないんだ!!
[大きく吹き飛ばされ倒れ伏していたが、再び立ち上がり鋭い眼光で獣を見つめ返す]
エ
[獣は唸り声を上げる。それはどこか、戦いがまだ終わらないことを歓んでいるようでもあった]
笛出
[スコープ越しにめぐりの無事を確認し、安堵の溜め息を漏らす]
[そして再び息を止め狙撃体勢に移る]
エ
[猛攻はいまだ止まらない。]
[全力の振りがまずめぐりの胴を抉りつけると、そのまま止めを刺さんと心の臓へと刃を突き立てる]
[……が。そこで獣の手は止まった。しばしの静寂と沈黙の中で、邸宅で聞いた、あの賛美歌の音色が流れる]
てぐす「モル!絶対にその一線だけは越えちゃだめだ!!」
[時間にしてほんの数秒だが、めぐりにとっては十分すぎる時間が生まれた。]
めぐり
[隙ができた獣の身体を斬りつけ、獣と間合を取る]
…ありがとう、てぐす。
おかげで助かったよ。
エ
いや、てぐすさんはまだ助けてない。
[てぐすがふよふよと飛行しめぐりを抱擁する。背からは本来の姿の蛾の翅が現れ、鱗粉は傷を癒す光を放つ。]
めぐり、これでまだ戦えるな?
あともうちょっと。あともうちょっとだ。
めぐり
[手を閉じたり開いたりして体の調子を確かめる]
…あぁ、一緒に彼を助けよう!
笛出
[三つ数えて息を吸い、息を止める。普段は周囲を警戒して開いておく左目を閉じる。行動パターンから次の位置を予測し、トリガーを軽く絞る。滑るように発射された夢界製の.338ラプア・マグナム弾は音速で飛来し、素早く動き回る獣モルベリーの膝の関節を打ち砕いた]
エ
[片膝をつき、重心を大きく崩す]
[剣を地面に突き立て辛うじて姿勢を維持しようとするが、この瞬間こそ、何よりも無防備な時間だった]
めぐり
[片膝をついた獣の前に躍り出て、矛を大きく振りかぶる]
…待たせてしまったね。今が約束を果たす時さ。
[そう呟いた後、獣の巨体に深々と矛を突き刺した]
エ
[獣は鳴き声一つあげることなく、めぐりをじっと見据える。]
[そして急速に肉体が灰へと崩壊を始めていく。獣は辛うじて一歩一歩後退していく]
[今更逃げることを選んだのだろうか?それとも、灰まみれは勝者の装いとして相応しくないと考えたのだろうか?それはもう誰にもわからない。]
[血も、肉も、皮も。みんな灰になった頃、世界に亀裂が入り始めた。夢界の崩壊だ。]
[戦闘終了]
[てぐすがモルベリーのクオリアを拾い上げる]
てぐす「聞こえてないかもしれないが、すごかったな傭兵、めぐり。正直ちょっと勝てないかもしれない、とてぐすさんは思っていた。」
めぐり
確かに危ない場面もあったね。でも君と理子、三人が協力しあったからこそ勝てたんだ。
君たちには感謝しかないよ。
[いつもの笑みを浮かべる]
笛出
<周囲に敵性体なし。二人ともお疲れ様!>
めぐり
[無線をスピーカーモードにしててぐすにも聞こえるようにする]
あぁ、お疲れ様。良い狙撃だったね。
君のおかげで助かったよ。
笛出
<めぐりちゃんとてぐすちゃんが前線で引き付けてくれてたからだよ!感謝ァ>
<それはそうと、夢界が崩れそうだよ!>
エ
てぐす「ああ、そうだそうだ。おうちに帰るまでが夢界遠征だぞめぐり。早くダイブアウトしろ。」
めぐり
あぁ、そうだね。
外の皆にも早く知らせてあげよう。
エ
[ダイブアウトを起動する。光の奔流に飲み込まれ、2人は現実へと流されていく]
[君達の視界が再び晴れると、そこには満身創痍のサー・ダンデライオンと色んなところがちりちりに焦げている鵺、そして鎖と霊を使役するインビジブル組の姿があった]
ダンデライオン「お疲れ様。サー・モルベリーの動きが止まったときに、君達が勝利したのだなとようやく理解したよ」
ぬえ「あと1分遅かったらぬえ様の命はなかったぞ」
笛出
みんなお疲れ様!ぬえ様もお疲れ様!ウシュシュシュシュシュシュ
[鵺に肉薄してほっぺたをわしゃわしゃする]
エ
ぬえ「わはははははは!ちょっ、やめろ!くすぐったいんだぞ!!!!」
忍「ん?いやでも、ちょっと待って。」
市「もう一人突入してただろう。てぐすさんだったか?」
ダンデライオン「確かにそうだ、彼女に何かあったのか?」
笛出
あ?あれ……
めぐり
私たちと一緒にダイブアウトしたはず…
エ
[倒れ伏していたモルベリーが突然むくりと起き上がる]
モルベリー「死んだ。ああ、そうだ。あいつは私を唆し、このような災害を引き起こしたがために君達に討伐されたのだ。特心対にもそう報告しろ。」
笛出
[即座に狙撃銃を生成し、片膝をついて簡易的な狙撃体勢をとる]
うおっ……!って、なに?
めぐり
[モルベリーの前に陣取り、やや警戒しながら口を開く]
…てぐすが死んだ?
サー・モルベリー、どういうことか説明してくれるかい?
エ
モルベリー「傭兵、身分を弁えろ。武器を解け。」
モルベリー「サー・グリフィス。君ほどの聡明さなら理解できないわけではあるまい?それが最も都合が合うのだよ。」
[一呼吸置いてゆっくりと言葉を続ける]
モルベリー「モルが帰って来た時、あいつの居場所を残しておくのにな。」
モル(てぐす)「どうだ?今のは結構真に迫ってたろう、ダンデライオン。」
笛出
[武器を放ると、銃身は地面に到達する前に霧散する]
てぐすちゃ……。でも、それじゃあ……。
エ
てぐす「傭兵には本当にごめん。てぐすさん、嘘はつかなかったけど……隠し事はしてしまった。」
笛出
隠し事なんていい。
それよりもそんな大事なことを決めるのに、なんでみんなに相談してくれなかったのさ。
エ
てぐす「だって、そしたら傭兵は絶対に止めただろう。」
笛出
今からでも止めるから。
エ
てぐす「やめてくれ、傭兵。」
てぐす「傭兵に止められたらきっとてぐすさんは、揺らいでしまう」
めぐり
…私も理子と同じ意見だよ。
君が迷っているのなら私たちも一緒に悩もう。
それが仲間…いや、友達というものだからね。
エ
てぐす「もう答えは出したんだ、めぐり。てぐすさんはモルに騎士であってほしい。そのモルが一番大好きで、モルも、きっと望んでる」
てぐす「モルがてぐすさんを墓から掘り起こすとき、色々なものを失った。それに比べればほんの些細な対価だ。」
めぐり
本当にそうかい?
彼が君に望んでいたことはもっと別にあるんじゃないかな。
彼が本当に望んでいること、それは騎士の立場でも自らの命でもない。
…君に幸せに生きてほしい、それが彼の本当の願いだと私は思うよ。
エ
てぐす「……うっ……」
[ダンデライオンが口を開く]
ダンデライオン「そもそもの話だ。君にサー・モルベリーをできるとは私には思えないな。」
ダンデライオン「君では私すら倒せるようには到底見えないし、そしてそのようなふざけた欺瞞を通すつもりも毛頭ない。」
[まったく馬鹿馬鹿しい話だ。とダンデライオンは唾を吐き捨てるように言った。]
てぐす「……否定はできない、けど……。」
笛出
[先に聞いてはいたものの、口を一文字に結び目を真ん丸に開いてダンデライオンを見る]
エ
[脂汗をだらりとかいたダンデライオンが目を逸らす]
めぐり
サー・ダンデライオン、流石にそれは言い過ぎだよ。
[演技と知らないため嗜める]
…でも彼の言う通りだよ。いつまでも隠し通せる保証もないからね。
それにサー・モルベリーは君にそういう生き方は望んでいないと思うよ。
だって自分の身を挺してまで君を助けようとしていたんだから。
彼にとって最高の相棒である大切な君を、ね。
エ
ダンデライオン(俺もそう思う)
てぐす「だとして、なら、てぐすさんはどうすればいい?」
てぐす「てぐすさんにはこのやり方がきっと一番幸せだし、そうでなければ、何が幸せなのか、てぐすさんにはわからない……。」
笛出
てぐすちゃんはウチで働け!
[腰に手を当てて論争に躍り出る]
……働いて稼いで、真っ当なお金でモルベリーが起きるまで面倒見てあげればいいよ。
めぐり
それに彼が起きるまで私たちも手を貸すよ。
彼も大事な仲間だからね。
エ
[てぐすはしばらくの間苦悶するが、そのうちにゆっくりと首を縦に振る]
てぐす「……そう、だな。きっと、モルは嘘つきのてぐすさんはきっと嫌がる」
エ
[ふっ、とモルベリーの身体がゆっくりと力を失って倒れる。ダンデライオンはそれをすかさず掴み支える]
[淡く輝く粒子が寄り集まって、てぐすが元の姿を取り戻した。]
てぐす「傭兵、めぐり。お願いする。いつか必ず、返せるようにするから。」
[深ーく頭を下げて、手を差し出した]
笛出
[食い気味に手を取る]
契約成立!
めぐり
[しっかりと手を握り、笑みを浮かべる]
あぁ、任されたよ。
エ
てぐす「……ありがとう。」
[ここに、一連の騒動は決着を見た。]
[ありのままの事実がのちほど特心対や騎士団には伝えられる。幸いなことに、血統派はどれだけの問題があろうとも、元13席であったという事実だけで求心力を持つ彼を切り捨てることはできず]
[また、自由派は鬼月を通して彼を救済したのだと喧伝し、融和路線をとる方向へと舵を切った。要するところにはまあ、なんだかんだ丸く収まったのだ。]
[後日、トレンチにて。]
[包帯まみれのダンデライオンと目にクマをしっかりと拵えた鬼月が来店してくる]
鬼月「おい~~~す……おひさ………」
ダンデライオン「すまない。もっと早く報告に来るはずだったのが、随分と手間取ってしまった。」
笛出
いらっしゃい!待ってたよー!
[いつもの祝勝会のように大量の料理がテーブルに並んでいる]
エ
てぐす「てぐすさんも作るのを手伝ったぞ。てぐすさん、腕が6本までは増やせるから色んなことができる。」
[割烹着にプラスチックの子供包丁を3本構えたてぐすも台所からこっちへと顔を向ける]
笛出
てぐすちゃんってば凄い働き者なの!
めぐり
彼女が頑張ってくれるおかげでもう準備が終わりそうだよ。
[配膳を手伝いながら鬼月たちに笑みを浮かべる]
エ
鬼月「い”や”~ほんと2人ともずっと言いたかったんだ、ありがとうって」
鬼月「2人が止めてくれたからなーんとか収拾が付けられた。」
[鬼月は礼を済ませると、てぐすの方へとふらふら近寄って「がんばってるんだって~えらいじゃ~~~ん」だのなんだかんだダル絡みしつつモフっている]
笛出
旦那さんも頑張ったんだよ~?ねー?
[目を細める]
名演だった。
エ
ダンデライオン「結局良心に勝てず白状したとも……。」
鬼月「まあ……この人が口下手なのは今に始まったことじゃないけど、本当にねえ。」
笛出
そもそもの話だ。君にサー・モルベリーをできるとは私には思えないな(だみ声)。
エ
ダンデライオン「やめてくれ……。」
[頭を抱える]
鬼月「いじめてもいいけど泣いちゃわないくらいにしといてあげてね~。」
笛出
ごめんて!栄養とって元気出して!
[二人の席に食器を並べる]
エ
ダンデライオン「いや……いいんだ……これも全て私の力不足から来るものだし……」
鬼月「あーメンヘラ期入っちゃった。まあそのうち戻るからほっておいて。ああ、それと。」
[騎士が一名店内に入ってくる。それなりに大きな荷物を持って。]
鬼月「これ、あたしたちとモルベリー家からの気持ち。どうか受け取ってほしいな、って。」
[袋の中身はハイブランドの食器と調理器具たちだ]
笛出 「うわあ!すげえ!高っけぇー良いやつじゃんコレ!もらっていいのん?」
[右腕を押さえる]
エ
鬼月「モチのロン。これからのますますのご発展のほどをお祈りしております~~ってね。」
鬼月「なんかたかそーな石渡そうとしてたらしいんだけど、ありがたみならこっちかなって。」
笛出
ありがとう~!大事に使うよぉ!
[二人の手を取る]
めぐり
ふふ、良かったね理子。
[喜ぶ笛出を見て笑う]
エ
鬼月「てぐすちゃん、触るときは気をつけるんだよ~~?」
てぐす「ふっ、てぐすさんにまかせておけ」
[巡り合わせとは常々複雑怪奇にして予見できないものである。]
[笛出が見た『一週目』とは似ても似つかぬほど結果は変わったのだ。よい方向に。]
[ところで余談ではあるが、サー・モルベリーの行動には終始不可解さが残る。結局あれはどうしてだったのだろう?]
[一つの説をここに残そう。彼女が予知夢を見たように、彼にも同じくその余地がある。もし仮にそうだとすれば、それは如何様な内容だったのだろう。]
[彼が目を覚ましたときに尋ねてみるといいかもしれない。たっぷりこってりと絞った上で。]
[それまでは、今は、ひとまずこの束の間の平穏を楽しんで……]
[桑の葉が枯れ落ちる日][完]
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