退屈な数学の授業中。ふと、気を紛らわせようと外に目を遣ると、少女と目が合った。窓ガラス越しに。それはあまりにも一瞬で声だって聞こえないから、確信は持てないけれど、私に向かって何か叫んでいたんだと思う。そして、それから起こることが恐ろしくて、私は自分の目と耳を塞いだ。けれど、バキバキと枝が圧し折れる音とゴシャリという生々しい音は、そんなことでは誤魔化しようもなかった。
今日はそこで目が覚めた。この夢を見るのは何年振りだろうか?とっくの昔に立ち直ってたつもりだったけど、案外そうではなかったのかも。と、そこで時計を仰ぎ見る。最低限の化粧だのなんだので支度するにはギリギリの時間だ、ぼーっとしている暇はない。この頭に掛かった薄い靄を払おうと、洗面所へと歩みを進める。
「おはようございます、先生」
「おはよう朝似我君。浮かない顔だねぇ、どうかしたのかい?」
「体調が悪いとかそういうわけではないんです、お気になさらず」
「ふむ。じゃ、今日は顔合わせの方早速していこうか」
「君には言うまでもないことだろうが……黒曜石の観察官とは、その業務に多大な危険が伴う」
「意思疎通ができるだけの猛獣を手懐けるようなものだと、そう考えておくれ」
「……そうですね、研修でもそれは何度も強調されていました」
絶句した。そしてそれは彼女も同じようだった。
「さて、紹介しよう。彼女の名前はヨミ、ダイバーネームはリッパ―と言う。」
「そしてヨミ、彼女の名前が朝似我時葉、今日から君を担当する観察官だ。ほら、お互い挨拶。」
「彼女の性質は簡潔に言うなら殺人衝動だ。朝似我くん、ゆえに、暴走しないよう君のマーキング能力に期待して……」
「ハッハッハッ!2人ともぽかーんとしちゃって。サプライズは大成功だね!」
「先生、この担当はあなたが決めたんですか?……何のために?」
「あくまで推薦しただけどね。目的は……そうだねぇ」
「藍司さん話なっがいデス、殺し愛の続きを……」
「ほら、君だけは刺されないだろう?」
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