『人魚姫事変』は第二級相当の夢現災害である「███ダム決壊事故」の奇書院に於ける俗称です。 当事故においては、特例操作による緊急放水を行ったにも関わらず決壊を避けることはできず、 その結果避難が遅れた住民56人が犠牲になりました。この収束にあたってダイバーの投入が検討されましたが、 洪水と言う災害の性質上、ダイバーを陸路で輸送はできず。この対処は困難を極めるものとなりました。 |
堰は切られ湛えられていた水は濁流へと姿を変え、亀裂が入った先から溢れていっては家屋ごと人々を飲み干していく。
原因が何かはわかってる、わかりきっている。雨もなく自然に水嵩が増えるわけがないのだから、この現実は「自然でないこと」そのものを表していた。そして、その「自然でないもの」を知っている。
だからこそ崩壊していくダムに自ら歩を進める。立ち向かう力どころか、潜る素質さえ手元には残されていないけれど、それでもまだせめて一矢報えないかという意思だけは残っていたからだ。
歩く、歩く、歩く。少し離れた先に、何かが倒れているのを見つける。小さいし、少なくとも人ではないだろう。
随分寄って漸く転がっているそれが何かを理解する。どうやら、僕みたいな考えをする輩は一人だけでなかったらしい。
蝙蝠を起こしてやって何度かはたく。まだ息はあったようで、そいつはゆっくりと口を開いた。「手を、貸して」
「いいよ。今回限りは依頼料まけといてあげよう。」とおどけてみたら、次があればいいけどね、とそいつは毒づいた。
次に気が付けば身体は水の中で揺蕩っていて、それは間違いなくもう夢の中だった。
水中でも息ができていることだとか一見するだけで色々材料はあるけれど、何より一番の決め手は自分の四肢が少女みたいに細く小さくなってたことだ。
「お前TS萌え派かあ……」
思わず呟いたらケツを思いっきり噛まれて異議と不服の意を示された。痛い。
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