僕がこの洞窟に生まれた落ちたとき、誰も祝福の声をあげる者はなく、ただ水の滴る音だけが僕には与えられた。
「ああ、だろうな。そうだろう」そのとき、不思議で不気味な納得を覚えたのは今でも覚えている。
僕は落胆を噛み締めながら、ずいぶん、ずいぶんと長い時間そこに佇んだ。本当に長いことそうし過ぎた。じわじわと蝕む苦痛の正体が飢えだと理解する頃には、僕は十分以上に衰弱していて、自由に動くことさえままならなくなっていた。
ほうほうの体で脱出し、鬱蒼とした植物の隙間を彷徨う。洞窟の中がそうであったように、外もまた暗闇が全てを支配している。それは恐怖そのものだった。一刻も早く開けたところに出たい、何かで腹を満たしたい、明るいところに……。
一つ目と三つ目の願いはそれなりに早く叶えられた。棘だらけの狭間を抜けるとそこには湖が広がり、月明りがその水面を照らしている。血も滲みじくじくと痛む足が少しでも和らぐようにと、その中にゆっくりと足を浸して濯ぐ。
そのとき僕は初めて、水に映る自分の姿を目にした。
目は真正面に二つあり耳は真横についている。口は大きく裂けていないし、鼻も湿っていない。そんなのが自分だとはにわかには信じがたく、それはむしろ……。
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