哲学史略伝

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このページでは古代ギリシャから現代思想までの哲学の歴史的推移を記載する。

最初の哲学者タレス[]

現在古代ギリシャの哲学者として名前の残っている最古の人物はタレスである。タレスはギリシャの七賢人の一人として伝えられている。現在の哲学分野に彼を当てはめるとするならば、自然哲学者が最もふさわしいだろう。

彼は哲学の始祖とされるソクラテスより前世代の哲学者である。その時代には哲学という概念が存在していたかは疑問ではあるものの、彼の功績は哲学者というにふさわしいものであるといえる。

タレスは紀元前625年頃に誕生したとされている。フェニキア人の名門、テリダイ一族の家系であった。彼は万物の根源は水にあると主張した。

「最初の哲学者たちの大部分は、物質の本性に属する原理が全ての事物の原理(起源)であると考えた。全ての物がそれから成っており、それから由来し、最終的にそれに帰ってゆくものが、全てのものの要素であり原理(起源)であると、彼等は考えた。

タレスは、こうした哲学の道を開いた人だが、「それは水だ」と言っている。それゆえに、大地は水の上にあると彼は唱えた。彼がこう考えたのは、全ての生き物の養分が湿ったものであり、温かいものは湿ったものから発生しそれによって生きている、ということを見たからだろう。[1]

当時、世界は神話的解釈によって考えられていた。彼の思想はこうである。世界に存在する総てのものは自ら生み出され、水へと帰す。タレスが数学者ではなく、哲学者として名を残すこととなったのは、万物の根源が「ひとつ」であるという考えに至った点にあるといえる。以降の哲学者たちが求めた「真理」はまごうことなく「ひとつ」である。タレスが哲学の求めるべき、思考すべきものを決定したともいえる。

タレスの影響により、ギリシャ哲学は「万物の根源」の追求に目標を向けた。彼より少し生まれの遅い、同じくギリシャ七賢人とされるアナクシマンドロス(紀元前610年頃)も万物の根源について言及している。彼曰く、「万物の根源はアペイロンである」。アペイロンとはギリシャ語で「終わりのないもの」を表す。哲学的に表現するなら「無限」である。このアペイロンであれば、タレスの「万物の根源は水」という思想で説明できなかった事物も説明できる。水とは全く無縁である「火」も水から生じたのであろうか。彼によれば、「火」も「水」もアペイロンから生じている。そもそも宇宙がアペイロンの種から生じ、冷えた部分が地球となり、熱い部分が空となったという。アナクシマンドロスは地球は円柱形か円形であると考えていたとされる。

タレスに続いてアナクシマンドロスが評価されているのは、存在する事物すべての根源を探るために、「無限」という概念を生み出したことであろう。ギリシャ七賢人はほかにもいるが、好例として相反した思想の二人を紹介した。

ソフィストの時代[]

世界史に初めて民主制が登場した紀元前594年。現代の日本と同様に、選挙によって国民の支持を得た人物が国を治めた。これによりほとんどの国民が政治への参加権を持っていた。

しかし、政務審査会は冷静な政治判断機能を失い、雄弁に市民を扇動する者たちが横行した。政界における成功を願うものには、事故の主張を人民に確実に伝えるための弁論術が必要不可欠となった。そして野心にかられたものたちは、大金を出してその能力を手に入れようとした。そんな彼らから大金を受け取って、弁論術を教えていたのがソフィストである。

ソフィストたちは大衆を納得させるための「話術」として相対主義を生み出した。相対主義は隣国に攻め入るべきだとするライバルがいれば「彼らの命を何だと思っている!」と反論し、戦争をすべきではないというライバルがいれば「彼らは貧しい。私たちが統治することでより豊かになるだろう」と反論する。詭弁の力で相手を打ち負かそうとするソフィストたちが大衆から反感を買ったのは言うまでもない。

しかし、ソフィストたちは本当に金を目的として活動していたのであろうか。プラトンの著作『ゴルギアス』には修辞学者ゴルギアスの弁論術が立身栄達のための詭弁のように書かれている。しかし、彼の逆説的思考法は一定の評価を持ってみるべきだとする意見もある。

とはいえ、思想という観点において当時のギリシャがある種の停滞期に入っていたのは間違いのないことである。ソフィストたちは相対主義の名のもとに「知らぬものは知らぬ」という陥穽に陥ってしまった。

フィロソフィアの確立[]

  1. アリストテレス 『形而上学』 第一巻第三章


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