鬼になった理由
ページ名:鬼になった理由
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- 【作品名】鬼になった理由
【元スレ名】ここだけ世界の境界線
【注意事項】現在の境界線の設定と異なる部分があると思います。
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歳桃園太郎ーー彼が生まれた世界は、妖怪が世を乱し、人々がそれと戦いを繰り広げている世界だった。彼の両親は、この世界ではなかなかの実力を持った妖怪退治屋で、式神を扱う能力が高く評価されていた。だが、この妖怪退治が忙しいらしく、園太郎の面倒は式神達に任せる事が多かった。そのため、園太郎と両親はあまり仲がよくなかった。
やがて、園太郎の妹雛子が誕生する。だからといって、妖怪退治を疎かにする訳にはいかず、雛子の面倒もやはり式神任せが多かった。
数年たってもそれは変わらないが
雛子「お父さんもお母さんも、私達より妖怪退治の方が大切なのかな……」
園太郎「きっとそうだよ。だけど、僕は違う。僕も父さんから、式神の使い方は習っているし、いずれ妖怪退治をすることになるだろうけど……僕は絶対に雛子の事を式神に任せっきりにしたりしないよ。ずっと雛子の側にいるから。」
雛子「ありがとう、お兄ちゃん。」
そのぶん雛子と園太郎の仲は良かった。
雛子が11歳になる頃。雛子の身体に変化が起こる。
雛子「う……ああ……」
まるで鬼の腕のような形へと変化した雛子の右腕。それはなんの前触れもなく起こったのだ。直ぐ様医者を呼ぶ両親。
医者「鬼化症候群ですな……」
【鬼化症候群】とは、身体の一部が鬼の様な化け物のものに変化してしまう病で、変化した部分は暴走を始める。そして、徐々に身体を蝕んでいき、やがて人では無くなってしまうという不治の病だ。原因は不明だが、医者は退治した妖怪の呪いの可能性が高いと言う。
父「つまり、雛子はもう助からないと……」
医者「残念ですが……」
園太郎「嘘だ……嘘だ……雛子が助からないなんて……人ではなくなるなんて……」
それは、雛子と仲がよかった園太郎にとっては、受け入れ難い事実であった。
父「……園太郎、残念だが雛子はもう」
園太郎「そんな筈は無い!」
母「仕方の無いことなのよ……」
園太郎「どうして……どうしてそんな事言えるんだ!!」
そんな園太郎に対する両親の対応は、あまりに冷たいものだった。雛子を入院させたその後も、見舞いなど殆ど行かずに以前と変わらない仕事優先の生活を続けるほどだ。
園太郎「僕は諦めない……ずっと雛子の側にいるって誓ったんだ……」
だが、園太郎だけは違った。
園太郎「何かあるはずだ……不治の病と言っても、治す方法が見つかっていないだけなんだ……」
雛子を助ける方法を探し、園太郎は歩き出す。
- 園太郎は、雛子を助ける方法を探し、様々な医者や学者を訪ね、様々な文献を漁った。だが、当然不治の病の治療方法など見つかる筈がなかった。
そんな時ーー奇妙な服装の男が園太郎の前に現れる。その腕には見たこともないエンブレムのついた腕章。それはまるで、別の世界からやって来たようで……
奇妙な男「やあやあ、お困りのようだね。君の噂は聞いているよ。たった一人の妹を助ける為に、西へ東へ奔走しているらしいじゃないか。いやぁ、健気だねぇ。泣かせるねぇ。でも、それじゃあ駄目だ。雛子ちゃんは助けられないよ。」
園太郎「なんだお前は!?何故僕の事を……それに雛子を助けられないだと!?」
奇妙な男「おおっと、怒らないでくれよ。“その方法では”助けられないって事だよ。」
園太郎「まさか……助ける方法があるのか!?」
藁にも縋る思いだった園太郎は、この怪しげな男の話に耳を傾けてしまう。
園太郎「つまり……雛子を助けたければ、そのカノッサ機関という組織に協力しろってことか?」
男の正体は、カノッサ機関員。本当に違う世界からやって来たのだ。彼曰く、鬼化症候群は能力の一種だと言う。そして、カノッサ機関は能力を消し去る研究をしているとも言った。この研究が進めば、雛子の鬼化症候群も消すことが出来るらしい。
到底信じ難い話であったが、彼が見せたこの世界に存在しない魔法のような能力や、同じくこの世界に存在しない精密機械の数々を見てしまっては、信じざるを得なかった。
機関員「ああ、そうさ。残念ながら、今の機関では鬼化症候群を抑える薬を作るので精一杯だ。だが、様々な世界の能力者のデータやサンプルを手に入れ、それを解析すれば能力を消し去る方法が見つかる筈さ。」
園太郎「その能力者調査や能力者狩りを僕にやれと……?」
能力者狩り、機関の別の部所では能力者を殺すことを指す場合もあるが、彼が所属する研究所では能力者の捕獲の事だ。
それは、生死を問わず、生きたまま捕獲された能力者も酷い実験の末、死んでしまうことも多いという、機関の残酷な面が見える仕事で、園太郎は直ぐに引き受けると返事をすることが出来なかった。
園太郎「でも……僕はそんなこと……」
機関員「そうかぁ、残念だなぁ……まぁ、君がそう言うならしょうがないねぇ。あーあ、可哀想な雛子ちゃん。ご両親だけじゃなく、お兄ちゃんにも見捨てられちゃうなんてねぇ。」
そう言って、立ち去ろうとする機関員。だが、その言葉を聞き、園太郎はすぐに機関員の肩を掴み引き止める。
園太郎「待って!僕は……僕はカノッサ機関に入る!」
園太郎(どうせ……どうせ世の中は父さんや母さんのように、冷たい奴等ばかりだ……どうなっても別に……それに……それに僕は雛子を絶対に助けるんだ……)
機関員「……うん、やっぱり君は優しいお兄ちゃんだ。」
こうして、歳桃兄妹は故郷の世界から姿を消した……
カノッサ機関新世界支部第三研究所。それが、この機関員が所属する研究所であった。
機関員「君は機関員にしては優しすぎる。だからほら、これを被りなよ。」
その機関の研究所にて、鬼を模した仮面を手渡される。
機関員「これを被ればあら不思議!君は優しいお兄ちゃんから、恐ろしーい鬼になれる!」
園太郎「鬼に……」
機関員「それから、能力を消し去る研究が成功するまでは雛子ちゃんに能力抑制薬を投与することになる。だけど、薬もタダじゃあない。だから、君がキチンと能力者の調査や狩りをしてくれないと渡すことが出来ないんだ。
要するに、ノルマを達成しろってね。まぁ、ノルマと言ってもそんな難しいモノじゃない。君が鬼になれば、楽にこなせるだろう。」
園太郎「……ああ、分かったよ。」
園太郎(そうだ……僕は鬼だ……鬼になるんだ……)
その日から、カノッサ機関に鬼仮面と呼ばれる人物が新たに加わった。
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