序
あっさりしたものだと鬼助は思った。
出島から南京船に乗り込んでまだ三日しか経っていないというのに、もう着いてしまった。嵐の一つでもあると思ったが、海路は静かなもので、正直なところ拍子抜けだった。まさかこうも簡単に清の土を踏むことができるとは。もっとも、二日目には代わり映えのない海原の景色にうんざりしていたため、到着が早いのは歓迎すべきことではあるのだが。
「世話んなったな」
ここまで運んでくれた水夫たちに礼を告げる。
「貰うもん貰ったから、そりゃあいいけどよ……あんちゃん、ほんとにそんな格好で行く気か? 荷物だって大して持ってねえじゃねえか」
この三日の間に何かと鬼助を気にかけてくれた水夫が、心配そうに鬼助を見やる。
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