UVB-76

ページ名:UVB-76

UVB-76(ロシア語: УВБ-76)とは、周波数4625kHzまたは6998kHzで、ロシア連邦(開始当時はソビエト連邦)内の送信所から送信されている短波放送の名称である。その放送内容より、短波受信家などからは「ザ・ブザー(英語: The Buzzer)」という愛称が付けられている。


目次

概要[編集]

UVB-76の送信所と思われる施設の空撮写真。この送信所は、ほぼ1日中、1分間に約21回から34回のペースで、短い単調なブザー音を繰り返し流し続けている。

電波型式はSSBである。また、ブザー音の合間にロシア語による音声メッセージが放送されることがある。

この放送の目的は公には明らかにされておらず、様々な見解が唱えられている。

名称[編集]

時折聞こえる音声(後述)冒頭の呼び出しから「UVB-76」の名で呼ばれているが、これが正式なコールサインかどうかは不明である。2010年9月の音声が放送されて以降は「MDZhB(ロシア語: МДЖБ)」、2015年12月の以降は「ZhUOS(ロシア語: ЖУОЗ)が用いられている。いずれもロシア語の人名を用いた、頭文字のフォネティックコードであると思われる。

通常の放送内容[編集]

ブザー音は遅くとも1990年から放送されている。1982年の確認では2秒おきに短い電子音を繰り返し放送しており、1990年初頭ごろにブザー音へと切り替わった。2003年1月16日から音程が高く[要出典]、0.08秒長いブザー音に変更されていた時期があったが、2010年11月に元に戻されている。また、2010年6月までは、正時1分前になると、ブザー音が途切れのない連続音に切り替えられており、この連続音は、ブザー音が再開されるまでの1分間続けられていた。しかし、それ以降は途切れのない連続音は放送されなくなり、一定の周期(2秒おき)に変更されている。

2010年6月5日、切れ目なく放送を続けていたブザー音が突如停止したが、翌日には放送が再開された。同年8月中旬ころから放送は断続的に停止されるようになり、8月25日には誰かが放送ブース内にいるかのような足音や物音、ガイガーカウンターのような音が聞こえるようになった。9月第一週には音楽が流れてブザー音の放送が中断されるようになり、9月7日には新しいコールサインが放送された。

ときおり、かすかな雑音や会話音がブザー音の背後に聞こえることがある(後述)。これは録音放送や再生装置による自動送信によって放送されているのではなく、ブザーを発生させている装置からマイクで音を拾う形で生放送されているためであると考えられている。

主な音声メッセージ[編集]

時々ブザー音が中断され、ロシア語による音声メッセージが放送されることがある。放送が始まって間もない1970年代から確認はされていたものの極めて稀で、2000年代に入っても数える程であった。ところが2010年代に入ると急増し、ほぼ毎月のように放送されるようになり、一日のうちに複数の音声メッセージが発せられる事もある。特に2016年10月17日には、およそ24時間の間に少なくとも18回もの異なる音声メッセージが放送された。

1997年の音声メッセージ1997年12月24日21時58分(日本時間12月25日6時58分)に放送された。ブザー音が突然停止し、短い信号音が流れた後、男性の声がロシア語で次のように述べた。≪Ya - UVB-76. 18008. BROMAL: Boris, Roman, Olga, Mikhail, Anna, Larisa. 742, 799, 14.≫上のメッセージが逐語的に数回繰り返された後、信号音が繰り返され、ブザー音が再開された。2010年の音声メッセージ2010年8月23日13時35分(日本時間8月23日22時35分)に放送された。この音声は前述の放送中断後に発せられた最初のメッセージである。≪UVB-76, UVB-76. 93 882 NAIMINA 74 14 35 74. 9 3 8 8 2 Nikolai, Anna, Ivan, Mikhail, Ivan, Nikolai, Anna. 7 4 1 4 3 5 7 4≫2014年の音声メッセージ2014年3月18日17時00分(日本時間3月18日22時00分)に放送された。≪T-E-R-R-A-K-O-T-A. Mikhail, Dmitri, Zhenya, Boris. Mikhail, Dmitri, Zhenya, Boris. 81 26 T-E-R-R-A-K-O-T-A.≫その他の音声稀に音声メッセージの他、ブザー音の背後に係員と思われる人の話し声や、電話もしくは無線によるやり取りが聴こえることがある。2001年11月3日には下記のような会話が聴取された。≪Я – 143. Не получаю генератор... ...идёт такая работа от аппаратной.≫≪訳:私は143。発電機(発振器)を受け取ってないわ。(中断)あれはハードウェア室から来たものよ。≫


送信所の所在地[編集]

送信所は、2010年6月5日まではロシア連邦のゼレノグラードとソーネチノゴルスクの中間、モスクワの北西40kmに位置するポヴァロヴォ近郊、ヴォイェニ・ゴロドックに所在していた。この位置とコールサインは、1997年の最初の音声放送まで明らかになっていなかった。送信にはMolniya-2M (PKM-15)、Molniya-3(PKM-20)送信機と、Viaz-M2バックアップ用送信機を使用しており、アンテナにはソ連製水平ダイポールアンテナ「VGDSh」(高さ約20m)が使われていた。

放送が中断した後の2010年9月に送信所が移転し、現在はモスクワ州ナロ=フォミンスクに所在する第69通信基地から送信されている。従来のモスクワ軍管区に加えて西部軍管区がカバー範囲となったため、移転以降はより頻繁にメッセージが送られるようになったのではないかと推測されている。

目的をめぐる議論[編集]

UVB-76の放送の目的については諸説ある。

乱数放送説送信所の位置がロシア連邦軍参謀本部の通信拠点であると噂されていることと、多くの音声メッセージにフォネティックコードと数字の組み合わせが聴き取れることから、UVB-76は短波に存在する多くの乱数放送と同様に、世界各国のスパイに対して、暗号化されたメッセージを送信する役割を担っていると広く信じられている。こうした乱数放送のための通信設備は、軍や諜報機関によって利用されていると考えられているが、その性質上目的や存在について公表は出来ないため、ロシア政府(もしくはロシア連邦軍)もUVB-76について一切言及していないというもの。乱数放送の分析を行う団体「エニグマ2000」のドイツ支部長は「内容はイレギュラーではあるが、UVB-76も乱数放送の一種である」と推測している。国内の軍隊への通信説UVB-76の(ナロ=フォミンスクへの送信局移転前の)送信用設備スペックが簡易軍事用のものであるとみられることなどを理由として、放送は国外のスパイ等に対するものではなく、モスクワ軍管区の部隊と新兵募集センターに命令を送信するためのものだとする説がある。特に、2014年3月18日の音声メッセージは、クリミア併合の直後に発せられたことから、この説との関連が推測されている。また、音声メッセージは各地の受信局のオペレーターが正しく警戒任務にあたっているかどうかを確認するために発しているという推測がある。機器の保守点検説機器が正常に稼働し続けている証明としてブザー音を発している、一種のデッドマン装置という説。核戦略の一部説上記の説の拡張として、ブザー音が途切れて一定時間経過した場合、他国からの核攻撃がなされ、放送が不可能になるほどのダメージがモスクワにまで及んだと見なし、軍の判断で核による報復攻撃を行える、という冷戦時に用いられた核戦略(通称「デッド・ハンド(英語版)」)の一部であるという説。非常時用の周波数説上記と近似する理由として、戦争状態を含めた非常時の臨時放送に使用するための周波数であり、平時は他の目的に使われないようブザー音を流し続けて保持されているという説。データ送信用説アナログモデムとしてデータ送信のために使用されており、元から聴取を目的とした放送ではないという説。電離層の観測説電離層の観測に関して報告している文献中で、この電波を指している記述が発見されている。「Borok Geophysical Observatory」において行われている観測に用いられている電波として、搬送波の周波数として4.625MHz(4625kHz)という、UVB-76のそれに一致する値が示されている。この電波を、太陽活動の変化などが電離層に反映することを観測するため、電波が電離層に反射される様子の変化を比較するために用いたものである。

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