ニート

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この項目では、無業者について説明しています。その他の「ニート」と呼称するものについては「ニート (曖昧さ回避)」をご覧ください。

ニート(イギリス英語: Not in Education, Employment or Training, NEET)とは、就学・就労していない、また職業訓練も受けていないことを意味する用語である。日本では、15〜34歳までの非労働力人口のうち通学・家事を行っていない者を指しており、「若年無業者」と呼称している。

元々はイギリスの労働政策において出てきた用語で、1999年に同国の政府機関・社会的排除ユニット(Social Exclusion Unit)が作成した調査報告書『Bridging the Gap』の中にある一文「Bridging the Gap: New Opportunities for 16-18 years olds not in education, employment or training」(日本語訳「ギャップを埋める:教育、雇用、職業訓練に参加していない 16〜18歳の若者に対する新しい機会」)の「not in education, employment or training」という部分の頭文字を取り、『NEET』と略したものが始まりである。

目次

日本での歴史[編集]

日本でニートをはじめて紹介したのは社会科学リサーチャーのウィッタカー(沖田)敏恵だといわれている。 2003年に厚生労働省所管の特殊法人である日本労働研究機構(略称:JIL、現在の労働政策研究・研修機構)が若者就業支援政策の国際比較研究の中で「ニート」という用語を用いて、イギリスにおける若者支援政策を紹介している。翌2004年、そのJIL研究員で東京大学社会科学研究所(社研)助教授(いずれも当時の肩書)の玄田有史が、ジャーナリスト・曲沼美恵との共著で『ニート―フリーターでもなく失業者でもなく』を上梓すると瞬く間に話題となり、マスメディアで「ニート」という言葉が多用されるに至った。

一方、東京大学大学院教育学研究科教授で、著書『「ニート」って言うな!』を上梓した本田由紀は、「ニート」という言葉そのものが不適切であり、用語を広めた玄田有史及び玄田の書籍などを厳しく批判している。なお、本田はJILや社研で玄田と同僚であった。本田によると、産経新聞が2004年5月17日付の記事で「働かない若者『ニート』10年で1・6倍 就業意欲なく親に”寄生“」と題してこの書籍を取り上げたことや、テレビ番組に「ニート」として取材を受けた男性が「働いたら負けかなと思っている」などと嘯いていたことが、インターネット上を中心に話題となり、これ以後、日本における「ニート」の概念やイメージが『働く気のない怠け者』『無気力』『心を病んでいる』『親に寄生して生活している』(パラサイトシングル)などといったネガティブなものに色濃く定まってしまい、現在では「ニート」という用語が罵倒語、もしくはそれに準ずる形で用いられているとしている。このことで問題の本質が覆い隠されてしまい、経済や社会の構造的な要因が大きいにも関わらず、「若者の側に問題がある」かのように語られるという問題が起きていると述べており、また、「若者の内面に問題があるから矯正しなければならない」といった政策のミスリードを懸念している。

しかしながら本田の思いとは裏腹に、今日において「ニート」は各方面で批判や差別の対象となっている(#ニートに関する発言・見解)。ただ、テレビ視聴者の一部からは、そうした批判に対して懐疑的な見方もなされており、放送倫理・番組向上機構(BPO)などには“ニートバッシング”を批判する意見も寄せられている。また、「ニート」と称してテレビ出演している者については「やらせ」も疑われている。

その後玄田は、『ふだんずっと一人でいるか、家族としか一緒にいることのない』という生活を送る20〜59歳の未婚無業者(通学中を除く)を「スネップ」(SNEP、孤立無業者)と定義し、その実態把握と対策の必要性を2012年頃から主張し始めたが、この用語についても新たな偏見や差別を招くとして、批判が起きている(スネップ#用語に対する批判参照)。

呼称変更の取り組み[編集]

大阪府では複数のNPO法人が中心となり、働く意思を持っていて就職活動に至っていないニートの若者を「レイブル」(レイトブルーマーの略で遅咲き、大器晩成の意)と言い換える取り組みが2011年に開始したが、Yahoo!ニュースが「この呼称変更策は効果があると思うか?」という意識調査を実施したところ、「効果はある」「ある程度の効果はある」との回答が6%に止まり、「まったく効果はない」だけでも72.7%、「あまり効果はない」も18.2%に上った。「効果はない」と回答した者からは、「名前を変える以外にやることがあると思う」「働く意思のある奴はどんな呼称だろうと動く」「むしろ、もっと恥ずかしいネーミングが良い」「呼び方を変えるだけで効果が上がるなら、こんな簡単な話はない」などの冷ややかなコメントが寄せられた。

日本における定義[編集]

日本における若年無業者(ニート)の算出方法は、厚生労働省『特定調査票集計』の中の「詳細集計」(総務省の労働力調査)に基づいており、そのうち、15〜34歳の非労働力人口の中から、専業主婦(主夫)を除き、求職活動に至っていない者と定義している。いわゆる「家事手伝い」については、現在の厚労省の定義ではニートに含めていない(下記)。

フリーターや失業者との区別厚労省の定義では、失業者は労働力人口の「失業者数」に分類されており、そのうち正社員及び派遣社員での就労を希望する者であれば、たとえ具体的な求職活動に至っていない無業者であっても「ニート」には分類しないこととしている。その一方で、アルバイト及びパートタイマーなど一部非正規雇用での就労希望者の場合には扱いが少々異なる。これらの雇用形態で就労を希望する無業者のうち、求職活動に至っていない者であれば「ニート」、具体的な求職活動に至っている者であれば「フリーター」に分類している。この差異の理由については明らかではない。引きこもりとの重複2010年に厚労省が別途に実施した調査では、いわゆる「引きこもり」の状態にある者(20〜49歳)が全国でおよそ32万世帯いると推定されており、同省ではこれらの者たちをニートの「就業希望を有しない者」に含めている。つまり、引きこもりを「ニート」として扱っているわけである。しかしながら、内閣府が2010年に実施した15歳〜39歳までの若年層を対象に調査した初の引きこもり全国実態調査では、引きこもりに該当する者は69.6万人おり、さらに「予備軍」がおよそ155万人いると推計された。これは前述の厚労省統計によるの「ニート」に含まれている引きこもりの数を大きく上回っているものだが、厚労省研究班班長として引きこもり新ガイドラインを作成した齊藤万比古は、この数値に異論を唱えている。

厚労省と内閣府による二重基準問題[編集]

かつて採用されていた内閣府による定義では、1956年から総務省(1956年当時は自治庁)がほぼ3年毎、1982年以降は5年毎に実施している『就業構造基本調査』を根拠にしており、2005年に内閣府が実施した『青少年の就労に関する研究調査』においては、独身であり、普段収入になる仕事をしていない、15歳以上35歳未満の個人」と定義していた。この点は前述した厚労省のそれと差異は無いが、決定的に違うのは“家事手伝いの女性”を含めていた点である。これは、同研究調査の企画分析委員長だった前述の玄田有史が定義したもので、その理由として「女性の若年無業者が家庭外での社会参加活動をしていない場合、自らの現状を表す言葉に窮し、『家の手伝いをしている』と回答する者が多く見受けられたため」だとしている。同年の内閣府による調査では、家事手伝いや病気・ケガで療養中の者などを含めて、ニートの数はおよそ80万人と推計していた。

フリーターについても、厚労省と内閣府が二重に統計していたが、2006年3月22日の参議院経済産業委員会において、民主党の山根隆治参議院議員(当時)から、「ニートとフリーターの数について、政府で統一をして頂きたい」との要望がなされ、当時の同省・職業安定局次長が答弁で「この政策(ニート及びフリーターの支援等)に私どもが責任を持っており、政府全体の基本的見解としては、私ども厚生労働省の試算値を政府内で取っているというふうに理解をし、そのように取り扱っている」と回答した。これを受けて、内閣府によるフリーター及びニートの推計調査は、2005年に行った『若年無業者に関する調査』を最後に実施されなくなったのだが、前述のように、内閣府は現在も引きこもりに関する全国実態調査などを別個に実施している。

実態に関する調査[編集]

推移[編集]

厚生労働省の定義による若年無業者(ニート)の総数(単位:万人)
15~19歳20~24歳25~29歳30~34歳35~39歳15~34歳計15~39歳計
1993813109-40-
19959131211104555
1996912109104050
19979121110104252
19989131311104656
19999151311104858
20009121310104454
20018131513114960
200212171817156479
200311161818156378
200410181918176582
20059162019176481
200610171818186381
20079161818196180
20089161819206282
200910161818216283
20109151717215879
20119151818206080
20129171818216283
20139151718205979
20148141618205676
20158141717195675
20169141618205777
20177141517185371
20187141517185371
20199151418185674
厚生労働省の定義による若年無業者(ニート)の性別と年齢別の総数(単位:万人)
15~19歳20~24歳25~29歳30~34歳35~39歳15~34歳計15~39歳計
男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性男性女性
2000538485737328153518
2001539496948332174020
20027511612711610541245129
20037410612612610641225128
20046411713612611642235329
20056310613713611642225328
20066410612612612640225228
20075410612711712738245031
20086410612612713740235330
20096410612712614740235430
20106410611711613838235131
20115410511711713737235030
20126310712712614740235430
20135310511612613738205127
2014538610612612735214728
2015539511611613636204926
2016538510513613736194926
2017439510612612635204726
2018539510611612635204726
201963969511611635204626
15~39歳人口に占める若年無業者の割合
男女計男性女性
20001.31.60.9
20011.41.81.0
20021.92.41.4
20031.82.41.4
20042.02.51.4
20052.02.51.4
20062.02.51.4
20072.02.41.6
20082.12.61.5
20092.12.71.6
20102.12.61.7
20112.22.71.7
20122.32.91.7
20132.22.81.5
20142.22.61.6
20152.22.81.5
20162.32.81.6
20172.12.71.6
20182.12.81.6
20192.32.71.6
独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査による15~49歳人口に占める非求職無業者の人数と割合
非求職無業者数(千人)非求職無業者の人口比(%)
15-34歳計15-19歳20-24歳25-29歳30-34歳35-39歳40-44歳45-49歳15-34歳計15-19歳20-24歳25-29歳30-34歳35-39歳40-44歳45-49歳
男女計1992年47915915499681.99.52.11.20.9
1997年525133172138832.010.92.41.51.0
2002年6471001901931642.610.53.42.11.7
2007年577731601711731611382.610.93.42.31.91.71.7
2012年564681431911611942073.011.73.72.82.12.12.2
2017年535691411641611742152173.113.03.72.72.32.22.32.3
1992年3121219752422.512.72.81.31.1
1997年3269210477542.513.03.11.61.3
2002年397601161171043.211.44.42.52.2
2007年36348100105111101933.313.04.42.82.42.12.3
2012年34843871171021251303.612.94.63.42.62.62.7
2017年33345851021011161431473.814.14.63.32.82.93.03.1
1992年167385647251.35.31.41.20.7
1997年199416862291.58.01.81.30.7
2002年250397476602.09.22.61.71.3
2007年2132560666260451.98.42.41.81.41.31.1
2012年2162657755968782.310.12.82.21.51.51.7
2017年202245662615872692.311.32.92.11.71.51.61.5

注:「非求職無業者」は、無業者のうち求職活動をしていない者で、学校を卒業しているが通学しておらず、配偶者なしで家事をおこなっていない者。人口比は、在学中の者を除く同年齢階層の者に対しての割合。

  • 資料出所
総務省統計局「労働力調査(基本集計)」厚生労働省「平成30年版厚生労働白書」(2019年7月)内閣府「令和2年版子供・若者白書」(2020年7月)内閣府「令和元年版子供・若者白書」(2019年6月)内閣府「平成25年版子供・若者白書」(2015年6月)独立行政法人労働政策研究・研修機構「資料シリーズ No.217 若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状③ ―平成29年版「就業構造基本調査」より―」(2019年6月)

15~39歳の若年無業者(厚労省定義)の推移:若年無業者人口は1995年から2004年にかけて、後述する定義の変更もあるが、約55万人から約82万人(男性:約53万人 女性:約29万人)へと急増している。そして、2013年まで80万人前後を推移し、その年以降減少した。2019年は前年より増加し、約74万人(男性:約46万人 女性:約26万人)であった。また、同年齢層に占める割合は2002年以降、2%前後で推移している。更に、2005年以降の労働経済白書でニートの定義に「家事を行わない既婚者」やいわゆる不登校の状態にある学生を新たに加え、過去の数値についても訂正した。従って、2002年以前の数値にはこれらの者が含まれていない。

15~49歳の非求職無業者の推移:独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によれば、15-34歳の非求職無業者は1992年から2002年にかけて増加し、2002年は約64.7万人(男性:39.7万人、女性:25.0万人)であったが、その年以降減少し、2017年は約53.5万人(男性:約33.3万人、女性:約20.2万人)であった。また49歳までの年齢層を含めた場合、2017年は約114.1万人(男性:約73.9万人、女性:40.1万人)であり、15-34歳の非求職無業者数の約2.1倍となる。更に割合の場合は、15-34歳の年齢層(在学中の者除く)では、1992年の約1.9%(男性:約2.5%、女性:約1.3%)から2017年の約3.1%(男性:約3.8%、女性:約2.3%)へと増加している。そして年齢層では、どの年も在学中の者を除いたことにより、15-19歳の年齢層が非求職無業者の割合が高く、約1割いる。

最終学歴[編集]

非求職無業者(15~34 歳)の学歴構成(%)
中学高校短大・専門大学・大学院
1992年28.858.46.95.8
1997年25.256.19.69.0
2002年28.151.29.511.2
2007年23.850.012.713.1
2012年21.352.311.314.6
2017年18.157.210.913.2
男性18.857.97.814.7
女性17.056.015.810.8

注:専門学校については、修業年限「1年以上2年未満」「2年以上4年未満」「4年以上」の3つにカテゴリーに分けて調査されたが、集計に当たっては、「4年以上」は「大卒・大学院卒」に、「1年以上2年未満」「2年以上4年未満」は「短大・専門」に統合して集計している。

  • 資料出所:2019年6月独立行政法人 労働政策研究・研修機構「資料シリーズ No.217若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状③―平成29年版「就業構造基本調査」より―」

人数では、最終学歴は高校卒(高卒)が最も多い。また同年齢人口全体では、中卒が約5%、高卒が約30%(いずれも在学中を除く)であることを踏まえれば、高卒・中卒が非求職無業者になる確率が高く、特に中卒が高いことは明らかである。更に学歴が中卒の場合、職業の選択肢が狭まるだけでなく、専門学校や教習所・職業訓練施設などへの入学も制限されることと、普通自動車免許などを除き中卒でも取得可能な免許・資格が制限されるため、無業者に陥る割合が高くなる。

求職活動をしない(できない)理由[編集]

理由別(年齢別)(%)
15~19歳20~24歳25~29歳30~34歳35~39歳15~39歳合計
探したが見つからなかった3.25.35.47.77.36.3
希望する仕事がありそうにない7.88.7443.14.9
知識・能力に自信がない5.913.512.713.99.411.8
出産・育児のため1.81.72.22.832.4
介護・看護のため--0.91.40.50.30.7
病気・けがのため9.119.634.637.145.333.5
通学のため0.90.90.20.10.10.4
学校以外で進学や資格取得などの勉強をしている26.99.45.42.72.96.3
急いで仕事につく必要がない8.797.85.76.67.3
その他35.630.92524.821.825.9
  • 資料出所:総務省統計局「就業構造基本調査(基本集計)」
  • 資料出所:2019年6月・内閣府「令和元年版子供・若者白書」

10代後半は学校以外で進学や資格取得などの勉強がその他を除き最も多くを占め、それ以外の年齢層は、病気や怪我など健康上の理由や回答する者がその他を除いて最も多く占めている。

生活状況[編集]

2007年に厚生労働省委託により実施された調査『ニートの状態にある若年者の実態及び支援策に関する調査研究』 によると、出身家庭の経済状況について、3.3%が「余裕がある」、10.8%が「やや余裕がある」、47.1%が「ふつう」、28%が「やや苦しい」、8.9%が「非常に苦しい」と回答。就業経験については、過去に連続1か月以上就労した経験がある者は79%で、就労回数は平均2.6回となっている。就職活動については、75.8%がハローワークに通ったことがあり、68.2%が面接を受けるため企業に問い合わせた経験がある他、64.8%が実際に面接を受けている。メンタル面では、49.5%が現時点で引きこもりで、49.5%が精神科または心療内科を受診した経験があるという。

日本と諸外国の状況[編集]

OECDの統計によると日本を含めた各国の状況は以下の表となっている。

日本は、2014年の値であるが、ニート比率がOECD諸国の平均値より低く、諸外国と比較して比較的低い国となっている。

OECDデータによるニート比率(2018年)
国名総計男性女性
15~19歳20~24歳15~29歳15~19歳20~24歳15~29歳15~19歳20~24歳15~29歳
オーストラリア5.311.910.86.810.19.13.813.712.6
オーストリア5.312.511.15.613.710.64.911.211.6
ベルギー3.914.612.83.816.712.24.012.413.3
カナダ5.913.411.97.114.412.24.712.411.7
チリ11.721.818.49.917.213.913.626.422.9
チェコ2.48.810.02.35.74.22.512.116.0
デンマーク3.511.910.83.711.510.93.312.310.7
フィンランド4.614.211.94.914.810.94.313.613.0
フランス6.820.316.17.821.015.35.819.616.9
ドイツ3.410.49.23.19.47.23.711.411.3
ギリシャ8.122.921.57.522.918.58.722.824.4
ハンガリー6.815.413.55.39.17.78.322.119.7
アイスランド3.96.56.14.84.95.42.98.36.8
アイルランド6.013.611.76.412.410.45.614.713.1
イタリア11.028.423.911.227.521.610.829.326.3
日本3.710.19.83.98.77.33.511.512.5
ルクセンブルク1.510.18.43.18.86.41.411.410.4
メキシコ13.723.220.97.69.28.220.036.633.2
オランダ3.37.77.03.67.26.22.98.17.7
ニュージーランド5.112.410.26.010.68.14.114.412.4
ノルウェー2.510.38.72.711.58.62.48.98.7
ポーランド3.514.512.73.311.88.43.617.317.2
ポルトガル4.016.811.64.118.612.43.914.910.8
スロバキア6.714.715.17.311.410.66.018.119.9
スペイン8.722.019.19.523.318.77.920.719.4
スウェーデン6.810.08.96.89.88.56.810.29.2
スイス4.110.08.14.112.28.24.17.67.9
トルコ15.331.226.510.217.713.820.944.839.8
イギリス8.914.212.69.613.110.78.315.414.6
アメリカ合衆国7.114.812.77.214.010.87.015.614.6
アルゼンチン14.125.020.412.817.814.115.531.826.6
ブラジル18.729.824.915.922.919.021.636.730.9
コロンビア19.426.322.714.014.613.025.137.332.5
エストニア9.012.212.710.612.79.87.311.715.9
イスラエル8.917.013.39.515.411.78.218.715.0
ラトビア2.914.011.23.413.29.62.314.912.9
リトアニア2.614.610.52.914.410.02.214.711.0
ロシア4.914.712.25.112.38.74.717.215.7
スロベニア1.912.09.71.910.48.32.013.911.2
南アフリカ共和国13.548.637.711.844.934.215.252.341.2
コスタリカ18.624.923.118.415.716.118.936.531.0
OECD平均6.315.113.06.213.410.56.516.815.6

注:チリとルクセンブルク(15~19歳男性)は2017年のデータである。また、日本は2014年のデータである。

また、別にILOの統計データによれば、15~24歳層のニート比率は、日本(総合:2.9% 男性:2.2% 女性:3.5% [2018年])において、世界全体や高所得全体におけるニート比率より低く、データの有る世界148カ国の中で、総合・女性で3番目に、男性は2番目に低い国である。そして、世界のニート比率は2019年で約22.2%(男性:13.9% 女性:31.1%)であり、人口で約2億6700万人もおり、約3分の2を女性が占めていた。ILOは、ニートが発生する理由を世界経済の減速や学歴に合った仕事が不足していることなどを挙げ、「あまりにも多くの若者が教育や労働市場から離れており、自国の経済発展を損なう可能性がある」と警鐘を鳴らした。ILOデータによる15~24歳層のニート比率(2002年以降最新年度)。ニート率の高さは、赤>黄>緑ILOデータによる15~24歳層の男性ニート比率(2002年以降最新年度)。ニート率の高さは、赤>黄>緑ILOデータによる15~24歳層の女性ニート比率(2002年以降最新年度)。ニート率の高さは、赤>黄>緑

ILOデータによる15~24歳層のニート比率(最新年度)
[隠す]国・地域総合男性女性統計年
世界22.213.931.12019
低所得国19.513.126.02019
低中所得国26.714.639.82019
高中所得国20.514.427.02019
高所得国11.610.113.12019
アフリカ20.715.725.72019
アメリカ大陸19.114.024.32019
アラブ諸国34.017.751.82019
アジア及び太平洋諸国24.213.236.32019
ヨーロッパ及び中央アジア14.512.516.72019
アフガニスタン42.018.365.92017
アルバニア31.029.832.02013
アルジェリア21.010.931.72017
アンゴラ10.07.612.22011
アルゼンチン19.015.522.52018
アルメニア36.635.737.52017
オーストラリア8.98.99.02017
オーストリア6.86.67.12018
バングラデシュ27.49.844.62017
ベルギー9.29.48.92018
ベリーズ27.314.939.42017
ベナン17.210.923.22011
ボリビア11.65.018.22017
ボスニア・ヘルツェゴビナ21.220.821.72019
ボツワナ35.528.542.12009
ブラジル23.518.828.42019
ブルネイ20.718.623.32018
ブルガリア28.327.529.12003
ブルガリア15.013.416.82018
ブルンジ6.26.46.02017
カンボジア0.1-0.12014
カメルーン17.010.523.12014
カナダ12.413.011.72019
カーボベルデ30.327.732.82018
チリ15.913.318.92018
コロンビア22.614.131.12018
コモロ27.621.433.12014
コンゴ共和国26.523.729.12005
コンゴ民主共和国21.416.425.82012
コスタリカ17.914.721.62019
クロアチア13.613.214.02018
キュラソー島5.14.55.62018
キプロス13.214.811.72018
チェコ5.63.67.82018
コートジボワール34.825.444.22017
デンマーク6.86.96.72018
ドミニカ共和国24.518.131.02018
エクアドル17.510.025.82019
エジプト26.919.635.02017
エルサルバドル27.214.539.12018
エストニア9.910.88.92018
エスワティニ35.529.941.22016
エチオピア10.55.715.12013
フィジー20.110.829.62016
フィンランド8.58.78.42018
フランス11.111.710.42018
ジョージア26.923.231.02018
ドイツ5.95.46.52018
ガーナ30.527.733.32017
ギリシャ14.114.214.02018
グアテマラ27.37.146.72017
ギニア6.26.65.92002
ガイアナ35.824.846.92018
ハイチ18.212.723.72012
ホンジュラス26.711.642.22018
ハンガリー10.77.614.02018
アイスランド4.94.55.32018
インド30.414.348.32018
インドネシア21.715.827.92018
イラン34.422.047.62010
イラク40.616.965.52012
アイルランド10.110.29.92018
イスラエル14.714.415.02018
イタリア19.219.019.42018
日本2.92.23.52018
カザフスタン9.5--2016
ケニア13.79.218.22016
キリバス46.946.247.62015
コソボ30.130.230.02018
キルギス20.512.029.42018
ラオス42.139.144.92017
ラトビア7.88.17.62018
レバノン21.316.027.32007
リベリア13.28.916.72016
リトアニア8.08.57.62018
ルクセンブルク5.34.66.02018
マダガスカル6.84.19.32015
マラウイ32.923.641.42017
マレーシア12.59.116.12018
モルディブ23.521.525.32016
マリ26.715.036.92018
マルタ7.36.97.82018
モーリタニア35.522.745.22017
モーリシャス20.517.123.92018
メキシコ18.38.927.72019
ミクロネシア連邦23.718.329.12014
モルドバ27.830.724.82015
モンゴル18.916.321.52018
モンテネグロ16.218.613.62018
ミャンマー13.68.218.62018
ナミビア31.829.334.22018
ナウル36.422.151.32013
ネパール35.421.546.62017
オランダ4.24.24.22018
ニュージーランド11.911.312.62018
ニカラグア1.41.21.72014
ニジェール68.656.977.12017
ナイジェリア21.418.324.52016
北マケドニア共和国24.123.325.12018
ノルウェー4.95.14.62018
パレスチナ33.426.740.42019
パキスタン31.07.654.92018
パラオ12.911.114.42014
パナマ16.49.923.12018
パプアニューギニア27.726.429.02010
パラグアイ18.19.627.32017
ペルー17.714.720.82017
フィリピン19.914.425.72018
ポーランド8.77.310.12018
ロシア12.410.314.62016
ルワンダ30.624.636.22018
サモア37.934.641.52017
サウジアラビア16.16.625.92015
セネガル36.228.742.82015
セルビア17.016.517.52018
シエラレオネ10.19.510.72014
シンガポール4.13.15.32018
スロバキア10.28.412.12018
スロベニア6.66.17.22018
ソロモン諸島7.05.18.92013
南アフリカ32.530.734.32019
スペイン12.413.011.92018
スリランカ24.716.832.22017
スーダン32.820.046.42011
スウェーデン6.16.26.12018
スイス6.07.34.82018
タジキスタン42.230.452.42009
タンザニア14.910.619.02014
タイ14.810.718.92018
東ティモール21.016.225.72016
トーゴ25.118.331.52017
トンガ30.329.031.52018
トリニダード・トバゴ52.145.958.62013
トルコ24.415.633.52018
ツバル29.021.737.42016
ウガンダ29.821.437.62017
ウクライナ18.315.421.32016
ウクライナ16.513.519.72017
アラブ首長国連邦11.36.120.92017
イギリス10.59.711.22018
アメリカ13.112.613.62019
ウルグアイ18.015.420.82018
バヌアツ31.026.435.32010
ベネズエラ19.612.527.02012
ベトナム14.612.017.42019
イエメン44.822.169.72014
ザンビア43.137.348.22018
ジンバブエ16.611.221.82014

その他[編集]

  • 2006年に読売新聞社が行ったインターネットモニター調査によると、学校時代、部活動やサークル活動などの課外活動をしたかどうかの質問で、消極的なほど、その後の就労経験が乏しいという傾向が見られた。具体的には、課外活動を「特にしていなかった」とした割合は、1度も働いたことがない未就労者が61.2%で最も高く、以下、就職経験のある無業者(46.5%)、長期アルバイト(33.6%)と、就労経験が豊富なほど消極派の割合は減った。

ニートに対するイメージ[編集]

就労意欲[編集]

2008年4月に横浜市の「こども青少年局」が市内在住のニートや引きこもり状態にある15〜34歳までの若年無業者およそ750人を対象に実態調査したところ、8割を超す者が就労を希望すると回答した。内訳は、「正社員の就労を希望」との回答が46.6%、「パート・アルバイト・派遣社員などの就労を希望」が1.7%、「就労希望だが不安が残る」が34.5%で、合計すると8割を超えた。一方、「就労希望だが今は休みたい」が1.7%、「就労を希望していない」も1.7%で、現状で就労意欲の無いのはごく僅かであることが分かった。一方、同市が市内の企業(約1,000社中、316社が回答)に対して実施したアンケートによると、雇用する意向のある企業は14.2%に止まった一方、83.3%の企業が「就労困難な若年無業者を雇用する意向はない」と回答しており、ニートの社会参加が厳しいことがわかった。

『ネット右翼』との関連性[編集]

インターネット上で保守・右翼的な主張をする「ネット右翼」について一部では、ニートや引きこもりなどの無業者や低所得層といった「負け組」ではないか、との主張がなされている。しかし、「ネット右翼の代表」を自称する政治活動家の瀬戸弘幸は、ネット右翼をニートや引きこもりと関連付ける言説は左翼の決め付けであり、彼ら(ネット右翼)は全く普通の会社員や学生であると反論している。また、ジャーナリストの安田浩一は、「攻撃的引きこもりと揶揄されることもある」と主張しつつも、自著『ネットと愛国』在特会の「闇」を追いかけて 』の中で、保守系市民団体の在日特権を許さない市民の会を追跡したところ、デモ運動などの参加者には会社員や学生も多いことを記している。

評論家の古谷経衡も自ら調査し、ネット右翼の中心層が年齢は平均38.15歳。学歴に関しては63.3%が「四大卒(中退含む)」以上で同年代(2010年国勢調査における35〜39歳の「四大卒以上」は23.14%)と比べても3倍近く差があり、年収も大体平均400万円台後半、恋愛経験も自己申告だがほぼ一般的なレベル。住んでいる場所は4割が首都圏で、「大都市に住むミドルクラス」というのが、ネット右翼と呼ばれる層の実相であるなど、これまで語られたネット右翼のイメージが事実と大いに異なることを明らかにした。

対策・支援[編集]

詳細はリンク先を参照。

厚生労働省
  • 地域若者サポートステーション
  • 若者自立塾(委託、2010年3月31日に事業終了)
  • 私のしごと館(雇用・能力開発機構が設置運営、後に委託、2010年3月31日に事業終了)
  • ヤングジョブスポット(雇用・能力開発機構が設置運営、2008年3月31日までに事業終了)
  • 鳥居徹也(2005・06年度厚生労働省委託事業「フリーター・ニートになる前に受けたい授業」講師)
経済産業省
  • ジョブカフェ(所管)
文部科学省・民間(企業・NPO法人など)
  • キャリア教育
内閣官房
  • 再チャレンジ(再チャレンジ担当室・内閣府特命担当大臣)

課題・問題点[編集]

「ニート利権」問題[編集]

著書『「ニート」って言うな!』を上梓した本田由紀は、ニートの支援に関連する諸々の対策が利権の温床となっており、上に挙げたような、各省庁や地方公共団体、支援に携わる特定非営利活動法人等の民間団体や企業までもが「ニートの自立支援」を名目とした予算の争奪戦を繰り広げている現状があると指摘している。本田は、「これまで引きこもりへの支援を細々と行っていたような団体が、ニートへの支援を謳い始めた途端にお金が降りて来るというような現象が起きている」と指摘、これらの者が従来行っていた“引きこもり対策”を“ニート対策”にシフトさせて利権を拡大させたと分析している。実際に、経済産業省所管の就業支援事業『ジョブカフェ』において、同省からの孫請けで事業を行っていた、リクルート、東京リーガルマインド、日本マンパワーの民間企業3社が、スタッフ1日当たりの人件費として、プロジェクトマネジャーが120,000円、コーディネーターが90,000円、キャリアカウンセラーが75,000円、事務スタッフが50,000円という極めて高額な賃金を計上していることが、2007年に発覚している。この問題は、社民党の福島瑞穂参議院議員が参議院厚生労働委員会において、厳しく追及した 。

この他にも、若年無業者の相談窓口の1つである『地域若者サポートステーション』の運営・指導・研修などを委託されている公益財団法人・日本生産性本部は、民主党政権時代の事業仕分けにおいて、厚生労働省からの天下りが27人いると指摘されている。若者サポートステーション事業の予算は、2014年1月の安倍政権の事業仕分けにおいて、厚労省の若者支援事業に「わかものハローワーク」や「ジョブカフェ」などの類似した事業が多いことを理由に一旦はゼロになったが、同省が補正予算で「若者育成支援事業」と名称を変えて35億円の予算を復活させていたことが判明した。

高額な料金負担[編集]

2009年度まで実施されていた厚労省委託の自立支援事業『若者自立塾』では、常に利用者数が募集枠を大幅に下回り、その後の利用実績も伸びなかったが、その大きな要因として「利用料金の高さ」が挙げられていた。団体によって異なっていたが、補助金から支給される運営費は要支援者1人につきおよそ300,000円(3か月分)で、これとは別に施設側が提示した「食費」や「宿泊費」の費用160,000〜300,000円(3か月分)を入所者側が負担しなければならなかった。高額な料金負担を問題視した同省は、2008年5月以降に生活保護受給世帯の若者が入塾する際、費用の大半を負担する制度を導入したが、一方で“生活保護を受けていない低所得世帯”の若者はこの恩恵に与れなかった。なお、若者自立塾を取材し調査を行った人物は、「このような施設に通うことが出来る人は比較的問題が少なく、経済的に恵まれている家庭の人であると思う」との見解を示している。

現在厚労省委託により実施されている地域若者サポートステーションでも、やはり高額な料金負担が問題視されている。サポートステーションでは社会復帰に向けて「職場体験」や「就労訓練」などが行われているが、原則として賃金は得られない。そればかりか、逆に料金の負担(出典元のケースでは50〜60万円)を求められる。ある支援団体のケースでは、利用者が給与の支払いを求めると、「働かせて頂いてるんだから、(賃金を)受け取ろうとするほうが間違っている」「仕事がしたいんなら、どうぞハローワークへ行って、勝手に仕事探してください」などと切り捨てられ、賃金の支払いには応じてくれなかったという。サポートステーションでの無償就労について労働基準監督署は、「時間拘束や指揮命令などの労働者性があれば、一般的には労働と考えられる」と指摘し、労働基準法違反に当たる可能性も示唆しているが、現在までに行政処分を受けた支援団体はない。

強引なアプローチ・実力行使[編集]

若年無業者(引きこもり・ニート)を立ち直らせる方法を巡っては、「家から叩き出せばよい」などと実力行使を主張する者が少なからず存在し、賛否両論がある。支援団体の中にも、若年無業者宅へ出向いて自立訓練などへの参加を促す「アウトリーチ」(訪問)を行っている団体が多く存在しており、NPO法人『ニュースタート事務局』が実施する「レンタルお姉さん」は、マスコミでも度々取り上げられ、地域若者サポートステーションのモデル事業にも組み込まれた。しかし、こうした手法については、若年無業者の自宅に押しかけて本人の同意も得ずに強引に連れ出し、寮に入所させて集団生活を強いる団体が訴訟を起こされたり、同じく強制的に寮に入所させられた引きこもり状態の青年が、スタッフやその意を受けた他の若年無業者らに身体拘束されたり、暴行を受けるなどして死に至った事件、精神的に不安定だった引きこもりの入所者が自殺に至ったトラブルなども多く発生している。

ニートに関する発言・見解[編集]

批判[編集]

  • 衆議院議員の小沢一郎は、「本人たちは『誰の迷惑にもなっていない』と言うかもしれないが、親の稼ぎで食わせて貰って、公的なサービスも享受している。病気でもないのに他人に寄生して生きているなど、とんでもない話だ」と不快感を示し、続けて「彼ら自身も問題だが、何よりも厳しくせずにただ甘やかしている親たちが問題だ。親鳥はヒナが大きくなるまでは一生懸命に世話をするが、一定の時期が来ると冷たく突き放して巣立ちさせる。それが出来ないニートの親は動物にも劣るといっても過言ではない」などの持論を展開した。また、当時政府与党が準備していた対策などについても、「政府は今後ニートの就職支援に本腰を入れるそうだが、僕に言わせれば対策は簡単だ。一定の猶予を与えて、親が子供を家から追い出せばいい。追い詰められれば、彼らも必死に考えて行動するはずだ。それでも働きたくないというなら、親には一切頼らず、他人に迷惑もかけず、公的なサービスも受けないことだ。無人島で生活すればいい」などと切り捨てた。
  • 国会議員や東京都知事を歴任した作家の石原慎太郎は、「ニートの問題というのは、国家の緊張感の問題に関係があると思う。例えば、韓国には徴兵制度がある。途上国には貧困や食糧の問題がある。そうした色々な問題が緊張感を生んでいる」という持論を述べた。続けて、「結局、これは私たち大人の責任で、社会全体が子供たちを甘やかしすぎた。(動物行動学者の)コンラッド・ローレンツは、子供の時に(虐待ではない)肉体的な苦痛を味わわなかった子供は、大人になって非常に不幸な人間になると言っている。我慢するといった作業の中でこらえ性が身に付くのだ。日本の子供はこらえ性がないから結局ニートになってしまう。」などと批判した。
  • 登山家の野口健は、「僕が登山のために訪れたチベットには貧しい人が沢山いる。仕事をしなければ食べていけない。僕の仲間が『(チベットの)彼らには“ニート”という発想が無いだろう』と言っていたが、その通りだと思う。日本は親がニートにご飯を食べさせているから、そういう意味ではもっと厳しくていい」などと批判した。
  • 写真家・ジャーナリストの宮嶋茂樹は、「税金も払わない上に、三十路になっても親がせっせと部屋に“エサ”を運び続け、パソコンに向かってしか他人と会話できん奴をニートと呼ぶそうだが、そんな穀潰しが何十万も生きているのは世界広しと言えども日本だけである」となどと批判し、続けて「お隣の半島南半分ではサッカー選手から、大統領まで男は全員2年以上の徴兵される。日本でも8ヶ月ぐらいでいい。ニートに対して規律、勇気、自己犠牲、国防意識という美徳を自衛隊で徹底的に教育し直すべきである」と述べ、ニート対策として徴兵制度の導入を唱えている。
  • 精神科医の香山リカは、自身の連載コラムの中で、脱(反)原発運動にのめり込んでいる者の多くが「引きこもり」や「ニート」であるとし、「(反原発派は)病名をつけなければならないとしたら適応障害」「ファンタジーへの逃避で平穏を保ってきた彼らがいま原発問題にこころの平穏を見出している」などと主張した。その後強い批判を受け、誤解を与えたとして謝罪した。
  • 元衆議院議員で現在はタレントの杉村太蔵は、女性セブン誌上の人生相談において、無職の息子を持つ主婦の相談に「ぐうたらに生きているのなら甘やかしてはいけません。兵糧攻めするぐらいの勢いで、まず食事は作らないこと。さらに厳しく“働かないなら家を出て行ってくれ”ということ。それぐらいしないと気づかないこともありますよ。」などと回答した。また、著書『バカでも資産1億円 「儲け」をつかむ技術』に関する取材の中でも、ニートの中でも単なる怠け者に該当する部類の当事者について「いちばん悪いのは彼らの親です。食べるもの、寝る場所があれば、働かなくても済んでしまうわけです。これは家庭で取り組むべき問題です。親は一切の援助をやめて、子供を社会に放り出すべきです」と述べた。
  • タレントのクリス松村は、2014年5月に発生したAKB48握手会傷害事件の犯人が無職(引きこもりあるいはニート)と報じられたことを受け、ブログで「働くことは国民の義務のはず」「大体、人を傷つけられるということは健康なわけですから、無職ということ自体おかしい」「こうした事件を起こすほぼ100%が無職です」などと厳しく非難した。また、「政府は、これから“無職者を無くそう!”というキャンペーンでも打ち出して、実行するべき時です。2020年の東京オリンピックに向けて、急務な課題だと思われます。“美しい国、日本”として」などの持論を展開し、賛否両論を招いた。その後、「決して無職の方を非難したわけではございません。やむなく現在は無職という方々も多くいらっしゃることは存じておりますが、働かないことで心が病んでしまってはいけない…という内容の文面でした」などと内容の一部について釈明した。

以上のように、「親離れ・子離れができないのは生物学的にも問題である」といった、他の生物種における"自分の子をある一定の時期になると突き放して完全に自立・独立させる行為"を例に挙げ、ニートや引きこもりの問題が論ぜられることは多々ある。ただしこの例を人間社会に当てはめるのは、あまり適当ではない。世襲制や村社会における、子供が身体的・精神的に成熟した後も親からの教育や支援を享受し家族単位での行動を通例とする文化は、皇室や王室、貴族、武士や商人、職人、農民などのかつてのあらゆる階級において、あるいはエマニュエル・トッドの示した家族型からも解釈できるように、人間社会において世界各国で古来から現在まで一貫して見られているため、親離れ・子離れという生物多様性における一習性を社会問題に投影するのは安直な思考として理解される。

擁護[編集]

  • 経済学者の田中秀臣は「日本では、ニートはその原因を本人のやる気のなさに求める風潮にあるが、本質は不況による失業問題なのである」「ニートが急速に増えたという1997年以降は、ちょうど不況が深刻化した時期である。つまり、ニートの増加は景気に大きく左右されていると考えられる」と指摘している。田中は「日本の若者は駄目になったのではまったくなく、そう見えるのは逆に責任をとらない既得権益を丸出しの大人達がいるからである」と指摘している。また田中は「内閣府の『若年無業者に関する調査』中間報告のニート数約80万人は『数字操作』であり、この拡張版『ニート』は求職意欲喪失者といわれる層を大きく含んで定義している」と指摘している。
  • 経済学者の大竹文雄は「日本のバブル崩壊以降の長期不況によって、若年層の就職が困難な時期が続いた。この経済環境が、若年層を中心に勤勉に対する価値観を崩壊させた可能性がある」と指摘している。
  • 経済学者の原田泰は、若年失業者の増加は経済情勢を反映したものであり、若者の性格・教育システムが変わったせいではないとしている。原田は「現在ニートとなっている若者の中には経済情勢が良ければ、就職し、仕事から自身を見つけ、社会適応力を身につけることができた若者も多いはずである。何もかも構造のせいにするのは、社会問題の解決を妨げる」と指摘している。
  • 経済学者の飯田泰之は、高齢者がニートやフリーターら定職に就いていない若者を非難する際、「自分の若い頃は戦争でこんなに大変だった」などといった自己正当化の言葉をぶつけてくるため、反論の余地がなく議論にならないと指摘している。

提言[編集]

  • 元衆議院議員の武部勤は、フリーターやニートの状態に置かれている若者に対して、「1度自衛隊にでも入って(イラクの)サマワみたいなところに行って、緊張感を持って活動してみるといい。そうすれば、3か月ぐらいで瞬く間に変わるのではないかと思う」となどと語った。
  • 衆議院議員の稲田朋美は、「ニート問題を解決するためには“徴農制度”を実施すべき。若者に農業に就かせる徴農を実施すれば、ニート問題は解決する」などと持論を述べた。
  • 田中秀臣は「ニート対策に効果があるのは、教育・雇用のミスマッチ解消ではなく、景気対策である」と指摘している。田中は「ニート対策として公営・民間の就職相談所の活用、ニート層への課税によって労働・教育を受けるインセンティブを促すといった政策が提唱されているが、求職意欲喪失者への対策は景気対策が必要なのであり、税金を課したり、公営の説教を垂れることでは解決しない。このような政策はいたずらに社会的なコストを増やしかねない」と指摘している。田中は「構造改革主義者は、ニートが働かないという経済的な非効率性のみに注目している。ニートについて、ミクロ(個人)の問題を効率性一辺倒で捉えるのではなく、マクロの視点に立って社会全体への関心として解消をはかるべきである」と指摘している。

揶揄[編集]

  • アイドルグループ・NMB48の山本彩は2011年9月放送の日本テレビの番組『なにわなでしこ』内でのモノボケ(物を使ってボケて笑いを取る)企画で、ドッグフードを手に取り「ニートの主食」というボケをした。インターネット上を中心に批判の声が上がったが、これを擁護する意見や、「どこが問題なのか?」「バカにされたくなければ働けばいい」などとニートを更に非難する声も多かった。なお、当該シーンは日テレで放送されたが、遅れネットの読売テレビではカットされている。




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