関東地震

ページ名:関東地震
震源の位置図

関東地震(かんとうじしん)とは、相模トラフを震源とするプレート境界型地震である。

200年以上の周期で繰り返し発生していると考えられている。明確に記録に残っているのは1703年の元禄関東地震と1923年の大正関東地震の2例[1]のみである。

概要[]

関東では相模湾(相模トラフ)プレート境界を震源とする巨大地震が繰り返し生じていると考えられており、1703年にマグニチュード8.2の元禄関東地震(元禄大地震)が、220年後の1923年に大正関東地震が記録されている。1923年の地震を単に関東地震と呼ぶ場合があり、その被害を関東大震災と呼ぶ。その間に発生した1855年の安政の大地震は震源断層が特定されておらず[2]、通常安政江戸地震と呼び関東地震には含めない(詳細は後述)。

『類聚国史』に記された818年(弘仁9年)7月の地震を含める場合もある[3][4]が、相模・武蔵・下総・常陸・上野・下野等国とされ上総と安房が記されていないこと、津波の被害の記述がないことなどの理由で萩原尊禮などはこの地震を内陸地震としている[5]

関東地震の発生間隔は200年~400年以上で、1703年と1923年の関東地震はほぼ最短の間隔で発生したと考えられている[6]。大正型関東地震の震源域の南端は神奈川県西部から野島崎付近までである。一方、元禄型関東地震は震源域には房総半島南方沖も含まれ、このような地震は約2000年周期で発生すると推定されている。なお、1855年の安政の大地震は震源域が関東地震より北側で、1894年の明治東京地震と同様のタイプと考えられている(南関東直下地震)。

大正関東地震[]

1923年(大正12年)9月1日11時58分32秒、神奈川県西部を震源として発生した(古い文献では、北緯35.1度、東経139.5度の海上を震源としているものもある)。M7.9。

前震[]

  • 8年前
    • 1915年(大正4年)11月、東京で有感地震が過去最多の18回
    • その後地震は沈静化。
    • 大森房吉・今村明恒両博士の関東大地震論争。
  • 2-3ヶ月前
    • 1923年(大正12年)5月-6月、茨城県東方で200-300回の群発地震(有感地震は水戸73回、銚子64回、東京17回)[7]

本震[]

大正の関東地震(とそれに連続して発生した余震)は、5分間に起きた3つの地震(本震と余震2回)で構成され、計5分以上の揺れを引き起こした。

  • 1)1923年(大正12年)9月1日11:58、M7.9、関東大震災・本震(関東地震)。
    • 震源の小田原直下から岩盤の破壊が始まり、北米プレートとフィリピン海プレートがずれ始めた。破壊は40~50秒かけて放射状に広がり、北は現在の川崎市の地下35km、南は現在の館山市の地下5km、東は房総半島端にまで広がり、全体で長さ130km、幅70kmの岩盤(断層)が、平均で2.1mずれた。特に強い揺れを生んだのは、最初に始まった小田原-秦野の直下での岩盤破壊(第1イベント)と、その約10-15秒後に始まった三浦半島の直下の破壊(第2イベント)である[8]。この2つの領域はアスペリティと呼ばれる部分で、プレート同士が特に大きくずれ、ずれ幅は5mを超えた。
    • この地震は2つのイベントが組み合わさっていることから、「双子の地震」や「2つの地震の組み合わせ」などと呼ばれることもある。
    • この地震の原因は、フィリピン海プレートの沈み込みによって生じた、プレート境界での北米プレートの跳ね返りとされる。フィリピン海プレートと北米プレートが、主に2つのアスペリティで強く引っかかっていたが、まず震源となった小田原直下のアスペリティで岩盤が沈み込みで加わる力(応力)に耐えられず破壊され始め、ずれが三浦半島直下に達すると2つ目のアスペリティも連鎖的に破壊されたと考えられる。
    • 東京など離れた地域ではこの2つのイベントの違いを区別できず、連続した強い揺れとして捉えられた。震源に近い地域でははっきりした揺れの変化が捉えられている[8]
  • 2)同日12:01、M7.3の余震。
  • 3)同日12:03、M7.2の余震。

津波[]

関東地震の原因とされるフィリピン海プレートの沈み込みによって生じたプレート境界の跳ね返りによって、津波が発生した。

  • 地震の数分後、太平洋沿岸地域-伊豆諸島にかけて津波が襲った。
    • 熱海で高さ12mの津波を記録。
    • 房総半島で高さ9mの津波を記録。

土石流[]

地盤の沈降が発生、これらにより土石流が起きた。

  • 丹沢山地を中心に地盤の沈降と土石流

地盤の隆起・沈降[]

地盤の隆起が確認された地域。

  • 房総半島のうち震源に近い南部地域。九重村 1.81m、北条町 1.57mなど。
  • 相模湾に接する三浦半島全域
  • 相模湾北岸(現在の江ノ島がその例である)。大磯 1.81m、茅ヶ崎 1.4mなど。

地盤の沈降が確認された地域。

  • 東京府南葛飾郡地域。旧平井村 0.38m、砂町 0.27m、亀戸 0.24mなど。

余震[]

  • 9月1日
    • 12:17 M6.4/相模湾付近
    • 12:23 M6.6/神奈川県中部
    • 12:39 M6.6/三浦半島沿岸
    • 12:48 M7.0/東京湾
    • 13:30 M6.3/神奈川県西部
    • 14:23 M6.7/神奈川県西部
    • 15:19 M6.5/千葉県東岸
    • 16:38 M6.8/山梨県東部
  • 9月2日
    • 11:46 M7.3/千葉県勝浦沖
    • 18:27 M7.1/房総半島沖
    • 22:09 M6.5/神奈川県西部
  • 1924年1月15日05:50 M7.3/神奈川県西部(丹沢地震) - 死者19名、負傷者638名

関連項目[]

脚注[]

  1. 福和伸夫. “繰り返しやってくる巨大地震” (HTML). 2008年8月1日閲覧。
  2. 遠田晋次・中村亮一・宍倉正展ほか. “関東のプレート構造と安政江戸地震の震源 (PDF)”. 2008年8月1日閲覧。
  3. 『地学事典』「関東大地震」(地学団体研究会編、1996年平凡社発行、ISBN 4-582-11506-3)
  4. 山口勝. “『なゐふるNo.57』 (PDF)”. 「関東地震と諸磯の隆起海岸」 6ページ. 日本地震学会. 2008年10月29日閲覧。
  5. 早川由紀夫ほか. “『類聚国史』に書かれた818年の地震被害と赤城山の南斜面に残る9世紀の地変跡 (PDF)” 1ページ. 2008年10月29日閲覧。
  6. 瀬野徹三. “関東地震の再来周期” (HTML). 2008年8月1日閲覧。
  7. 日本の群発地震 1923年群発地震研究会
  8. 8.08.1『なゐふる第3号』p.4「関東大地震(大正12年9月1日)」日本地震学会

外部リンク[]

  • 中央防災会議・災害教訓の継承に関する専門調査会報告書平成18年7月1923 関東大震災
  • KAJIMAダイジェスト・ 特集:関東大震災を知る

テンプレート:日本近代地震



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