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どきどきどきどきどきどき そわそわそわそわそわそわ ・・・・・・ちらちらちら |
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・・・・・・チッ |
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ふんっ |
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はうっ!? |
セシルの首根っこを掴むベア。 そのまま部屋の外に放りだした。 |
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ふう。これで落ち着きますね、ご主人様。 |
ばーん! と執務室の扉が再び開く。 | |
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あーん! ひどいですベア先生! 目の前でそわそわしてる学生を放りだすなんて! 旦那さまも『何か悩みがあるのかい、セシル・・・・・・好きだよ』と 声をかけてくださってもよいではありませんか! |
セシル、好きだよ | |
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ひゃうっ!? も、もう。そこだけ抜粋しないでください。 顔が火照って燃えてしまいそうです。ですが・・・・・・も、もちろん わたしも、旦那さまをお慕いしておりますよ・・・・・・ きゃーっ! わたしったら、旦那さまへの愛が溢れて止まりませんっ! えへ、えへへ |
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死になさい |
ごすん! | |
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あいたっ!? ベア先生・・・・・・そんなに厚い本で頭を叩かないでください |
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あなたは一体何をしに来たのですか どうせ、頼みごとでもあるのでしょう?面倒なので早く言いなさい |
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は、はいっ! |
びしっと姿勢を正すセシル。 そして、真摯な目で見つめてきた。 |
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わたしに、『王』が背負うものの重さを教えてほしいのです |
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ほう・・・・・・ |
セシルの纏う空気が重厚なものに変わった。 目の前に立っているのは、恋する女学生ではなく・・・・・・ エルフィンを統べる女王の娘だ |
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いずれわたしは、エルフィンの女王となる身。 数百年は先の話でしょうが・・・・・・今から学んでおきたいのです。 『王』が背負うべき責務と、それを果たすための覚悟の重さを! 冥界の王である旦那さまであれば、きっと教えてくださると思い・・・・・・ ぜひ、お聞かせください。旦那さまは、王としてどれほどの重責を背負っているのかを。 |
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話を聞くより、体験したほうが早いのでは? |
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へ? |
ベアの言葉に頷く。 じゃあ、セシルを1日冥王に任命 |
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・・・・・・・・・・・・・・? ・・・・・・ほえええええええっ!? |
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こちらが来年度のカリキュラムの詳細でございます。 それと、冥界の住人からの要望をまとめておきました。 |
セシルの目の前に、紙の山がどんと積まれる | |
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あう、あうあうあう で、では・・・・・・全体的にアレをアレして、いい感じにお願いします |
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なるほど、意味不明でございます |
あたふたと目を回しているセシル。 肩には『1日冥王』というタスキが掛けられている。 |
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はあ。 王の責務とやらを、実際に体験していただこうと思ったのですが・・・・・・ やはり、あなたには荷が重すぎましたか? |
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だ、 旦那さま~・・・・・・ |
助けてほしそうに見つめてくる。 だが、ここで俺が手を差し伸べては意味がない。 血涙を流しながらセシルの視線に耐えた。 |
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うう、そうですよね。 自分の力で頑張らなくては、なんの学びにもなりません。 王の責務・・・・・・見事、果たしてみせましょう! |
気合を入れたセシルが資料に目を通しはじめる。 ベアは俺と目が合うと、静かに首を振った。 きっと、俺と同じことを考えているのだろう。 仕事を上手くこなしたところで、今のセシルでは――王になれない。 |
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うう。まさか、事務仕事だけであんなに大変だなんて。 ですが、気を取り直して次は視察です! 人々の暮らしを把握するのも王の責務! |
寮の談話室にはギゼリックの姿がある。 俺はセシルの肩を叩いて、『ギゼリックにも話を聞くといい』と助言した。 |
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確かに。 ギゼリックさまはファウスタを繁栄させたお方・・・・・・ 学ぶべきことがあるに違いありません。 |
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よーし、とりあえず酒だ酒! ごくごくごく・・・・・・ ぷっはー! 盛り上がってきた! いっちょ歌うとするか・・・・・・ うっさうっさぴょーんってね! ・・・・・・あ。 やっぱ戦いたくなってきた。 おらおらー! どっかに強い子はいねーがー! あっはっはっはっはー! |
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えー・・・・・・ ああっ、いけません。『ただの海賊やないかーい』というツッコミが頭の中に・・・・・・ 無礼です、無礼です! わたしの頭から消えなさい! |
自分の杖でぺしぺしと頭を叩いている。 | |
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お、 冥王にセシルじゃないか。 何やってんだい? 飲む? 飲んじゃう? |
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やはり、直接聞くことにしましょう。 あの、ギゼリックさま。女王だったころのお話を伺ってもよろしいでしょうか。 『王』が背負うべき責務と、それを果たす覚悟の重さ・・・・・・ それを知りたいのです。 |
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ああん? なんだい急に。 責務に覚悟ねぇ。 そんなもん、あんま気にしたことないよ。 |
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ええっ。 お、王様なのにですか? |
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望んで女王になったわけじゃないからね、アタシ。 でも、だんだん国が自分好みになってきて・・・・・・それから、 王をやるのがわりと楽しくなった。 いや、 どっちかっていうと、嬉しくなった、かねえ? |
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嬉しく? |
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ああ。 王ってのはさ、自分の国を・・・・・・大切な人や場所を、 自分の手腕で守ることができるんだ。 世の中には、なーんも抵抗できずに、大切なもんを奪われる人もいるのにさ。 大切なもんを全部まとめて守れるってのは、王だけに許された特権だ。 そんな権利を持ってんだから、嬉しいに決まってる。 だから王ってのは、責務だのなんだの言う前に、まず嬉しさが―― って、なに語らせてんだい! 恥ずかしいねえ、このー! |
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わわわっ、頭をわしゃわしゃしないでくださーい! |
高らかに笑うギゼリックが、豪快にセシルの頭を撫でた。 | |
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ギゼリックさまのお話、とてもためになりました。 もしや、旦那さまも・・・・・・ギゼリックさまと同じ思いなのですか? |
頷く。 冥界や冥界に住んでいる人々を、俺は大切に思っている。 冥王である俺は、それらを守らなければならない・・・・・・いや、 守ることができるのだ。 ギゼリックの言っていた通り、とても嬉しいことに感じる。 |
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いつか女王になったとき、わたしは自分の故郷を・・・・・・ 美しい森や人々を、自分の手で守ることができる。 確かに、それはとっても誇らしく・・・・・・嬉しいことですね。 |
セシルは胸の前で両手を合わせ、にっこりと笑った。 | |
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王という地位には、重責ばかりがあるのだと思っていました。 ですが・・・・・・ふふっ、こういった考え方もあるのですね。 旦那さま。大事なことを教えてくださり、ありがとうございます。 この喜びに気付けないままだったら、わたしは責務や覚悟ばかりを気にして・・・・・・ 女王という地位に、押しつぶされていたと思います。 |
教えたのはギゼリックだ、と謙遜する。 | |
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ギゼリックさまなら、ああ言ってくださると見越していたのでしょう? わたしは旦那さまのお嫁さんなのですから、それくらい分かります。 ・・・・・・うふふ |
歩み寄ってきたセシルが、俺の胸に両手を添えた。 セシルの手のひらから伝わる温もりが、胸の奥にある熱を昂らせる。 |
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わたし・・・・・・今日一日で、旦那さまを敬愛する気持ちが強くなりました。 そして、このような方と・・・・・・永遠に添い遂げたいという気持ちもまた、 より一層・・・・・・ |
俺を見上げるセシルの頬が、ほんのりと染まっていく。 | |
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まだまだ未熟なわたしですが、これからもずっと・・・・・・お嫁さんとして、 お傍にいることを許していただけますか? |
答える代わりに、俺はセシルの頬を優しく撫でた。 | |
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ありがとうございます。旦那さまに愛してもらえて・・・・・・わたし、幸せです。 はあ・・・・・・とっても幸せな時間。きっと、一生忘れることはありません。 旦那さま、幸せな思い出をたくさん作っていきましょうね。 わたし、ずっと、ずう~っと、いつまでもお傍にいますから。 だって、お嫁さんですもんね・・・・・・えへへ |
セシルが小さくはにかんで、幸せそうに目を細める。 | |
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旦那さま・・・・・・わたしの名前、ちゃんと覚えておられますか? |
セシル・ライカ・エンゲル・ベルグルンド | |
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そうです。セシル・ライカ・エンゲル・ベルグルンド・・・・・・ 婚約者にだけ伝える、わたしの真名。 ああ、いけません。どれだけ我慢しても頬が緩んでしまいます。 旦那さまに、やさしく真名を呼んでいただける。 これ以上の幸せが、どこにあるでしょう? 今はこれだけで十分です・・・・・・ ・・・・・・と、以前までのわたしなら満足していたでしょうね! |
いきなり強気な顔になるセシル。 かと思えば、切なげに目を閉じた。 |
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ああっ・・・・・・イフリータの炎よりも燃えあがる、旦那さまへの愛情。 もはや、簡単には収まりません。 旦那さま。『いつかきっと』ではなく『今この瞬間』・・・・・・ わたしを本当のお嫁さんにしてくださいませんか 誓いの、口づけを・・・・・・ |
セシルが顎を上げたまま目を閉じる。 もはや、ごまかしは利かないだろう。 俺はセシルの髪を撫でながら心を決めた。 |
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【イフリータ】 ・・・・・・ |
・・・・・・。 なぜか召喚されているイフリータと目が合った。 |
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・・・・・・旦那さま? どうされたのですか? わたしはもう、ずっと前から心を決めていますよ? はっ! もしや『焦らし』というものですか! もう、旦那さまったらっ。 ですが、そういうお茶目な部分も大好きでございます。 きゃっ♪ ――って、イフリータ!? なんで出てきてるんですか!? |
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【イフリータ】 ・・・・・・、・・・・・・!? |
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さっきのは呼んだわけじゃなくて! 迸る旦那さまへのラブをイフリータの炎に例えたんです! |
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【イフリータ】 ・・・・・・!! |
1人と1体が揉めはじめた。 セシルを本当のお嫁さんにするのは、まだ先になりそうだ。 |
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