その夜、アシュリーは瞼の重さに抗いながら編み物に取り組んでいた。 棒針の動きは洞窟を手探りで進むように頼りないが、編み目の一つひとつに真摯な想いが 込められている。 |
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・・・・・・ん、 よし、 完成。 あとは主にお渡しするだけです。 | |
できあがったものを胸に抱き、少女は冥王の笑顔を夢想した。 アシュリーの傍らには、もう一つ小さな紙包みが置かれている。
メッセージカードには『リリィへ』の文字。 |
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少しでもクリスマスを楽しんでくれると嬉しいですね。 | |
あの子は私に似ているから―― アシュリーは、胸の中でそう呟いた。 |
クリスマスのこの日―― 教室にはベアの指示で《アイリス》全員が集められていた。 |
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くりすわす? | |
く り す ま す 今日は原初の神が世界樹を作られた日だと言われています。 つまり世界樹の誕生日ですね。 クリスマスには、1日だけ世界樹の力が強くなります。 そのおかげで、人間界では荒れ地が花畑になったり魚がわんさと獲れたり 思いがけない幸運が訪れるんですよ。 |
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すごい! くいすわす、 うれしい日! | |
でも、去年のクリスマスは、ぐにゃぐにゃの虹が出たり、たくさんの流れ星が 見えたりしてどこか変でした。 おそらく、世界樹が燃えたせいだと思うんですけど・・・・・・ 冥王さま、 今年のクリスマスは何が起こるんでしょう? |
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気がついたらみんなが水着になってたり? | |
いやいや、 それはさすがに って、 ベアトリーチェさん、 いそいそと水着の準備をしないでください |
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ご主人様の抑えきれない欲望を受け止めるのも、召使いの務めでございます。 | |
どういう召使いですか こほん・・・・・・それはともかく、今日は《アイリス》の皆さんに大事なお話が あるんですよね、ベアトリーチェさん? |
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ええ、 もちろん忘れておりません | |
ベアトリーチェが教壇に立つ。 《アイリス》の皆さんには、これから人間界へ行ってもらいます。 |
種子の反応が見つかったのですか? | |
ベアトリーチェが首を振る。 | |
言うまでもなく、今日は聖なるクリスマスです。 本来ならば、世間様とは関係なく鍛錬に励んでもらうつもりでしたが、・・・・・・ ご主人様のお慈悲により、クリスマスパーティーを開催することになりました。 |
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ああ、さすがは冥王様です。 わたくしの心を捧げましたこと、 間違いではありません でした。 |
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濡らしなさい。 大いに濡らしなさい堕神官。 | |
というわけで、 皆さんには人間界でパーティー用のアイテム――つまり、食材や 飾り付けの素材を集めてほしいんです。 |
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めーおーの力があれば、パーティーの準備なんて ちょちょいのちょいでしょ? なんでまたわざわざ人間界をかけずり回って材料を集めるの? |
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実は、冥王さまは朝からご気分が優れないようでして。 パーティーの準備ができないわけではないのですが、無理はしたくないと仰っているんです |
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激しく頷いてみせる。 クリスマスにテンションが下がるのは昔からのことだ。 理由は話して聞かせるようなものではないが、若き日の過ちとでも言えばいいか。 |
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でしたら、 お休みになった方が良いのではありませんか? | |
そうそう。 年末年始は忙しいから、 風邪引いたら大変ですよ? | |
ありがとう。 無理はしないようにするよ。 気遣ってくれて素直に嬉しいと思う。 |
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ご主人様は日々強大なお力で、冥界や《アイリス》を支えてくださっています。 そのご恩をお返しする絶好のチャンスと考えなさい。 |
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お任せください。 全力で素材を集めてまいります。 | |
ではでは、 早速人間界に向かいましょう。 集める素材は現地でご説明します。 豪華なパーティーになるよう、 皆さん張り切って収集してくださいね。 |
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《アイリス》の皆さん、 魂を賭けて手ぶらで帰ってくることのないように。 | |
転移の門をくぐって人間界にやってきた。 | |
わあ、 おひさま、 おひさま♪ | |
えへへ、 眩しいねぇ ・・・・・・って、なんでリリィがいるんですか!? |
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気がついたら身体にぶら下がっていた。 | |
相変わらずリリィには弱いんですから。 | |
今回は種子の回収が目的ではありませんし、 リリィがいても問題ないでしょう。 | |
やったーーっ! 冥王さま、 ぎゅーーっ |
ちょーっ!? 冥王さまの脚に抱きつくなんて!? では、わたしは腕に抱きつかせていただきますね♪ |
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ユーとリリィにしがみつかれる羽目になった。 | |
つる植物・・・・・・枯らしてあげましょうか | |
ベアトリーチェが静かに刀を抜く。 | |
べ、 ベアトリーチェさん、 完全に表情が消えてます しかも、 他の皆さんまで武器を抜いて・・・・・・あわわわわわわ・・・・・・ |
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寝ぼけているなら顔を洗ってきなさい。 ご主人様に夢中で、あなたの足下のスライムが目に入りませんか? |
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は、 はへ? | |
ユーが下を見る。 | |
【スライム】 スラ♪ |
きゃーーーっ! さっそくのご登場ーーーーっ! |
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先生方、お願いします |
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