真実のたからもの1(あいりすミスティリア)

ページ名:真実のたからもの1(あいりすミスティリア)

 

  画家が守っていた扉にシャロンが手をかける。
よいな? 行くぞ。
  がらんとした、巨大な空間に出た。

 

上方は吹き抜けになっており、遥か高みに小さく青空が見える。

火口か鍾乳洞か地の割れ目か、とにかく長い縦穴の底なのだろう。

み、皆さん、めちゃくちゃ大きな竜が寝てます。
・・・・・・父様
  シャロンの声が届いたのか、竜が閉じていた目を開く。

【ガルガンチュア】

・・・・・・ようこそ、命短き者たちよ

そして・・・・・・シャロン

我が力を証明するため、ここに来た。

・・・・・・後は言わずともわかるな

【ガルガンチュア】

無論・・・・・・そのために貴様を呼んだのだ。

 

竜が億劫そうに首をもたげた。

見ればウロコは光沢を失い、皮膚も乾燥した果実のようになっている。

もしかして、ご病気なのですか?

【ガルガンチュア】

歳、よな・・・・・・我ももう長くはあるまい。

まさか・・・・・・父様は古竜の中の古竜・・・・・・

【ガルガンチュア】

なればこそ、最も死に近いということだ。

いかなる者も死の運命よりは逃れられない。そこにいる神に近き者でもなければな。

 

1000年ぶり?

竜が深々と頭を下げる。

【ガルガンチュア】

もはや、かつてのように力を振るうこともできぬ。

欲に駆られた冒険者共に、ここを荒らされる日も遠くないだろう。

遺跡は冒険者を呼び寄せる餌。 彼らに倒されるのも避け得ぬ運命であろう。

【ガルガンチュア】

ふふふ、貴様の目には遺跡に映るか。

 

竜が立ち上がる。

すると、巨体で石碑を覆い隠していたことがわかった。

【ガルガンチュア】

ここは我が妻、シャルロッテの墓。

彼女の亡骸を我が愛したこの地に埋めたのだ。

母様の・・・・・・?

そうじゃ、思い出したぞ。 遺跡の鍵は母様の髪飾りと同じデザインじゃった。

【ガルガンチュア】

そう、 我が妻に贈ったものだ。

では、仕掛けられた罠は、墓荒らしを防ぐものだったのですね。

【ガルガンチュア】

その通り。 智慧あるものよ。

そなたがいたおかげで、多くの罠が役目を果たせず終わってしまった。

  竜が喉の奥で笑う。

【ガルガンチュア】

さて、シャロン。 我が意識の欠片により、お前を呼んだのは他でもない。

貴様がシャルロッテの墓を託すに足る力を持っているか、見極めるためだ。

  シャロンがしっかりとした視線で竜を睨む。

【ガルガンチュア】

ドラゴニアに言葉はいるまい。

無論じゃ。

この身を流れるドラゴニアの血にかけ、父様を倒す。

いいんですか、お父様弱ってるのに

【ガルガンチュア】

構うな・・・・・・

老いたとて、簡単に負けるほど衰えてはおらんぞ

  竜が空に向かって大きく吼える。

    瞬間、時を巻き戻したかのように、鱗が、肌が、金色の光沢を帯びる。

【ガルガンチュア】

命短き者たちよ、 その力を示すがよい                   

 

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