エニシダの魔法(FLOWER KNIGHT GIRL)

ページ名:エニシダの魔法(FLOWER KNIGHT GIRL)

 

傘を一本買い、エニシダと店を出た。

使い魔であろう彼女の蝶々も後に続く。

 

「これって、あの、傘が一本じゃないですか。

それを私が差すということは、その・・・・・・」

 

そう言いながら、エニシダが傘を差す。

雨は相変わらず強く降っていた。

 

「これは、相合傘というものになるのでしょうか?

て、照れますね・・・・・・。

もしかして団長さん、ドキドキする魔法、私にかけました?

いや、ほんとにその・・・・・・ふふっ・・・・・・」

 

それなりに風もあるこの雨の中で、エニシダは、彼女自身が濡れるのには構わず、

こっちが濡れないようにすることを最優先に、一生懸命になってくれていた。

 

そうして無事にブロッサムヒルの城に到着。

執務室へと向かった。

 

エニシダのおかげで、両手に抱えた書類が濡れずに済んだ。

ただ、感謝である。

 

「私も、団長さんの力になれて良かったです。

魔法に限らず、人の役に立てるのは嬉しいですから!」

 

と言い終わるや否や、エニシダの顔色が変わった。

 

「あ、ホウキをあそこに忘れてきてしまいました!

ど、どうしよう・・・・・・あれ、大事なものなんです!

団長さん、ちょっと、急いで取ってきます!

傘、借ります!」

 

エニシダはドタバタと執務室を出ていった。

彼女がドアをしっかりと閉めていったために、お供の蝶々が部屋に取り残されていた。

 

今度はこの蝶々を忘れていくとは・・・・・・。

またここに戻ってくるだろうからいいか。

 

・・・・・・そうだ。仕事を進めなければ。

かなりの量がある上に、期限は明日の朝なのだ。

早速机に向かうが、あまりにも多い書類を目の前にして、

何から手をつけていいか分からない。

 

雨の音を聞きながら、

ぼんやりと執務室内を飛び回る蝶々を眺めていた。

この蝶々もきっと魔法の蝶々なんだろう。

 

・・・・・・何だか、妙に眠くなってきた。

いや、ここで眠ったらダメだ。せっかく雨の中を帰ってきたんだし、

仕事をしなくては・・・・・・。

 

・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・

・・・・・・ ・・・・・・

・・・・・・

 

何だか妙に仕事がはかどる・・・・・・。

信じられないくらい、どんどん片付いていく。

まるで夢みたいだ。よし、これで最後。

やった。終わりだ・・・・・・。

 

・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・

・・・・・・ ・・・・・・

・・・・・・

 

「・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・さん!

・・・・・・ ・・・・・・ちょうさん!

・・・・・・団長さん!

 

朝ですよ・・・・・・!」

 

・・・・・・朝・・・・・・?朝!?

 

驚いて飛び起きる。

執務室には朝の光が差し込んでいた。

机で熟睡してしまっていたようだ。

 

机で寝たにしては、やけに気持ちの良い目覚め。

久しぶりにこんなに寝た。

だいぶ気分が良い。

 

そうだ、仕事は・・・・・・?

朝までにやらなければいけなかったのだが・・・・・・。

机の上に綺麗にまとめられたその書類の山を

恐る恐る見てみると、それらは全て・・・・・・終わっていた。

 

あれは夢ではなかったのか。

いや、夢だったのか・・・・・・?

分からない。まるで魔法にでもかけられたようだ。

・・・・・・しかし、この甘い香りは何だろう。

 

香りの発生源を探して部屋を見渡すと、

立てかけてあるエニシダのホウキが目に入ってくる。

良かった。無事に持って帰ってこられたのだ。

 

「団長さん、朝ごはんできましたよ!」

 

肩に蝶々を乗せたエニシダが、

こちらにパフェを持ってくる。

朝ごはん・・・・・・?パフェ・・・・・・?

 

「何か、団長さんとパフェを食べたい、

という気持ちが抑えきれなくなってしまって・・・・・・。

それで、朝ごはんとしてパフェを作りました!

 

・・・・・・ですので、一緒に食べませんか?

私、パフェ大好きなんですよね!」

 

そう言うと、エニシダは向かいに椅子を持ってきて座った。

 

「いただきますぅ!」

 

エニシダはとても楽しそうにパフェを食べ始める。

 

「団長さんも、食べてください!」

 

思わずエニシダに見惚れてしまっていた。食べよう。

・・・・・・とても美味しい。朝からでも全然いける。

 

「今日は良い天気ですね!

昨日、あんなに雨が降っていたのに・・・・・・」

 

そう言われて、窓の外を見る。

本当だ。雨上がりなこともあってか、とても晴れやかな景色だ。

エニシダと、しばらく外の景色を眺めていた。

 

「団長さん、今日はお出かけ日和ですね。

どこか行きませんか?」

 

書類仕事も終わったし、

これを提出して、どこか行こう、と答えた。

 

「嬉しいです!」

 

そう言い、エニシダがそっと手を握ってくる。

しかし、彼女はすぐその手を離した。

 

何だろうと思っていると、

エニシダが、机越しではなく、

わざわざこちらのほうまで回ってきて、

しっかりと抱きしめてくる。

 

「団長さん・・・・・・

こんなダメダメの魔法使いですけど・・・・・・、

私のこと、す、好きになってくれますか・・・・・・?」

 

エニシダはダメダメの魔法使いではない。

彼女自身は気づいてないかもしれないが、

彼女の魔力は相当なものだと思う。

 

そんなエニシダのことをぎゅっと抱きしめた。

 

「団長さん・・・・・・。団長さ・・・・・・ん・・・・・・」

 

「んんっ・・・・・・」

 

エニシダの唇は、ほんのりパフェの味がした。

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