ご主人様、無事に種子を回収しました。 | |
これで一件落着ですね | |
モンスターが倒されたのを見て、村人が集まって来た。 | |
【村長】 急にモンスターが増えたのは、こやつのせいだったのですか |
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よその森から子分を連れてきてたみたいですね。 これでもう安心して森に入れますよ |
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【村長】 ありがとうございます、みなさん 食料を分けていただいたばかりか、モンスターまで倒していただいて、なんとお礼を言ったらよいか |
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礼はいりません。わたくしたちは目的を果たしただけですから。 | |
いつも通り、飾り気のない動きでベアが刀を鞘に収める。 | |
さてみなさん、これからいよいよ、新しいレストランのぐらんどおーぷんです。 とかいのレストランにまけないように、いっしょうけんめい準備しましたから、ぜひ楽しんでいってください。 |
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【村の女の子】 わああっ! やったーっ!! |
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慌てなくても大丈夫ですよ、お料理はたくさんありますから | |
ファム、ちょっと | |
?? なんでしょう? | |
お店を始める前に、あなたにこれをプレゼント | |
・・・・・・これは、もしかして、コックさんのいしょうですか? | |
都会のレストランでは、料理人も衣装を着るでしょう? | |
こんなにりっぱなものを作っていただけるなんて・・・・・・ファム、うれしいです | |
ベア先生が徹夜で縫ってくれたの | |
先生、ありがとうございます! さっそく着てきますね! | |
ふふふ、喜んでくれて良かったです! | |
笑っていないで、あなたも着替えてきなさい | |
ベアが持っていたものをエルミナに突き出す。 | |
これは? | |
都会のレストランでは、従業員も衣装を着るでしょう? 全員分は無理でしたが、あなたの分だけは間に合いました。 |
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・・・・・・ベア先生・・・・・・ でも、どうして私のために? |
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胸です | |
はい? | |
胸が大きい女のほうが似合う衣装なのです。 不服ですか? | |
(どう見ても照れ隠しですよね、ひそひそ) | |
殺しますよ、つる植物 さあ、急いで着替えを。 嫌なら他の者に渡します。 |
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ふふふ、喜んでいただきます。 ありがとうございます、ベア先生。 |
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ベア、間に合わせてくれてありがとう | |
エルミナのデザイン画あってのことです。 あの女のデザインを見ていると、絶対に完成させなくてはという気持ちにさせられます。 |
性癖はともかく、やはり才能は本物ですね。 | |
ベアトリーチェが珍しく表情を緩めた | |
みなさん、おいしい森のレストラン『アイリス』へようこそ |
きょうは、こころゆくまでお料理をおたのしみください | |
はーい、お待たせしました | |
エルミナを先頭に、《アイリス》たちが料理を運んでくる。 | |
【村の男の子】 わあ! こんなきれいな料理初めてだ |
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【村の女の子】 見て! こっちのお料理はウサギの形になってる! |
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前菜は森の野草のサラダと、キジ肉のゼリー寄せ。 メインは、イノシシシチュー・カルダモ風味です。 デザートは、カルダモを効かせたスパイシーなアイスですよ。 |
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【村の男の子】 それって、こーす料理ってやつだよね |
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【村の女の子】 すごい、本当にれすとらんみたい! |
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さあ、 めしあがってください | |
ファムの声を合図に、大人も子供も料理に夢中になる。 | |
【村長】 こんな田舎では、村から一歩も出ることなく一生を終える者も少なくありません。 都会のれすとらんに行ける者など、10年に1人いるかどうかです。 子供たちにとっては、一生忘れられない思い出になるでしょう。 村を代表して、みなさんには御礼を申し上げます。 |
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子供だけじゃなく、村長さんも楽しんで。 | |
【村長】 はい、ありがとうございます。 |
最後のお客が満足げな表情で店を出て行った。 | |
ふう、ようやく一息ですね。 | |
みなさん、おつかれさまでした! これは、ファムから皆さんへのかんしゃのきもちです。 |
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・・・・・・クッキーですか? わあ! ひとつひとつにお砂糖でメッセージが書いてあります! |
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きのうの夜、つくってみました。 ええと・・・・・・これはアシュリーさんのぶん。 これはクリスさん、こっちはソフィさん・・・・・・ |
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ファムが《アイリス》たちに、一枚ずつ配っていく。 | |
『いつも元気をわけてくれてありがとうございます!』って書いてあります。 | |
『たのもしくせなかをみています。 こんど、けんじゅつをおしえてください』ですか。 ふふふ、こうして形にされると嬉しいものですね。 |
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思わぬプレゼントをもらい、皆が微笑む。 | |
これはエルミナさんのぶんです。 | |
ありがとう、ファム。 でも、こんなにたくさん作っていたら、昨日は寝る時間がなかったんじゃありませんか? |
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ばっちりてつやです。 でも、どうしてもかんしゃのきもちをつたえたくて。 | |
もう、無理しなくていいのに・・・・・・ | |
エルミナがクッキーに書かれた文字に目を走らせる。 | |
『レストランをきれいにかざってくださってありがとうございました』 『エルミナさんとすごしたじか・・・・・・』 あら? メッセージが切れています。 |
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すみません、クッキーがちいさくて書ききれませんでした。 いまここでおつたえしていいですか? |
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ええ、もちろん | |
それでは、とファムが息を吸って姿勢を正す。 | |
・・・・・・エルミナさんとすごしたじかんは、とってもとってもたのしくて、ファムは毎日しあわせでした。 としがはなれているので、こんなふうに言ったらおこられるかもしれませんが・・・・・・ これからもずっと、ファムとおともだちでいてください! |
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ファム・・・・・・ | |
エルミナの目がわずかに潤んだ。 | |
もちろん! | |
わわわっ!? | |
ファムの小さな身体をエルミナが抱きしめた。 | |
ぎゅー、ファム、折れてしまいます。 | |
もー、ファム、大好きですっ! | |
ファムもですっ、いっぱいいっぱいだいすきです! | |
そう言って、ファムもまたエルミナを力一杯抱きしめた。 少しして、俺にもファムお手製のクッキーが手渡された。
が、そこには何も書かれていない。 |
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すみません・・・・・・もじでかこうとおもったのですが、むねがいっぱいになってしまって。 めーおーさま、こんかいは、おみせをひらかせてくれて、本当にありがとうございました。 みんなといろんなじゅんびをして、すっごく楽しかったです。 ファム、ずっとバブーしかおともだちがいなかったから |
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【バブー】 ばぶ・・・・・・ |
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でも、めいかいに来て、いーっぱいお友達ができて、みんなやさしくて、毎日がたのしいです。 これも、めーおーさまがファムを必要としてくれたからです。 だからだから、めーおーさまのためにできること、なんでもしたいんですっ |
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これだけ長い言葉、とてもクッキー1枚には書ききれない。 ファムの気持ちがあふれ出ているような気がして嬉しくなった。 |
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ファム、これからもよろしく | |
はいっ! ファム、がんばりますっ! それではめーおーさま、ファムはお片付けをしますね これからもよろしくおねがいします! |
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元気よく頭を下げ、ファムが厨房に戻る。 | |
あの子、私のことを友達だって言ってくれました。 歳が離れているから、友達になるのは難しいかもって思ってましたけど ・・・・・・取り越し苦労だったみたいです。 私が思っていたより、ファムは何倍も強い子でした。 |
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今回はエルミナも頑張ったね | |
ファムの笑顔のためなら、多少の無理はしますよ。 ほら、私、さんざんロリコンロリコン言われている女ですから、ふふふ。 それに、あの子と私は少し似ているように思うんです。 ずっと一人で生きてきて・・・・・・ 冥王さまに出会って、《アイリス》の一員になって、救われたところが。 ですから、私も冥王さまのためにできることは、なんでもしたいって思ってますよ? |
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《アイリス》として頑張ってくれるだけで十分。 | |
もー、今ならなんでも言うことを聞きましたのに。 でも、ちょっとつれないところも大好きですよ、冥王さま。 |
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エルミナさーん、すこしだけお手伝いよろしいですかー? | |
あら、小さなお友達が呼んでます。 それでは冥王さま、私はこれで。 |
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軽やかな笑顔を残し、エルミナはファムの待つ厨房に向かった。 | |
ファムもエルミナさんも、今の環境を喜んでくれてるみたいで良かったです。 嫌々だったら申し訳ないですもんね・・・・・・勧誘した身として。 |
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種子を身に宿したことが、幸を呼ぶのか不幸を呼ぶのかは分からない。 だからこそ、《アイリス》が今を楽しんでいる姿は俺への救いでもある。 本来の目的から多少逸れるとしても、《アイリス》の望みは可能なかぎり叶えていこう。 笑顔で働く《アイリス》を見ながら、そんな思いを新たにした。 |
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