甘酒（キュイディメ）

 

日本の伝統的な甘味飲料である甘酒には、大別して二つの製法がある。水と米に米麹を加え、発酵させたものを飲むタイプと、湯に酒粕を溶いたものへ砂糖を加えたタイプのものである。このうち、前者の原型は千年以上前の古墳時代にまで遡り、一夜酒と呼ばれて古くから親しまれていた。今でこそ甘酒は正月に飲むのが一般的だが、江戸時代などにおける甘酒は夏の風物詩であり、甘酒を表す一夜酒という言葉は夏の俳句の季語にもなているほどである。現代でも甘酒は飲む点滴と称されるほどに栄養満点であるため、特に現代よりも栄養状態が優れない昔、身体が疲れやすい夏に飲むのはとても理にかなった飲み方だったのである。 　酒という言葉が入ってはいるが、甘酒のアルコール分は基本的にわずかで、子供が飲んでもほぼ問題ない飲み物になっている。正月ならずとも、栄養の補給も兼ねて、古来より受け継がれてきた上品な甘みを味わってみるのも良いだろう。

 

イラスト：ＸＣ様　　　ボイス：未実装