ネガティブな魔法使い(FLOWER KNIGHT GIRL)

ページ名:12

ネガティブな魔法使い

 

昼下がり――ブロッサムヒルの街を一人歩いていると、突如として雨が降ってきた。

両手で書類を抱えていたこともあり、近くにあった雑貨店で雨宿りをすることにした。

 

なかなか止みそうにない。

今日の夕方から明日にかけて雨と聞いていたが、まさかこんなに早く降り始めるとは思っていなかった。

 

・・・・・・一体どうしたものか。

執務室に戻ってこの仕事を終わらせてしまいたいのだが・・・・・・。

明日の朝までに書類が完成していないとマズいのだ。

 

と、外をぼんやり眺めていると、ホウキに乗った女の子が空から現れ、店の前に降り立った。

エニシダだった。

エニシダは扉を開け、店の中に入ってくる。

ひらひらと、小さな蝶々が彼女の後に続いた。

 

「あ、団長さん。何をしているんですか?」

 

エニシダは店の扉を閉め、乗っていたホウキを入口近くのところに立てる。

雨宿りだと小声で答えた。

あまり大きな声で言うと店側に悪い気がしたからだ。

 

「私もなんですよぉ・・・・・・急な雨でしたもんね!」

 

エニシダはこちらの思惑を無視し、割と大きめの声を発する。

頭上を旋回していた蝶々が、エニシダの肩に落ち着いた。

 

「なぜか、この店で雨宿りしたいっていう気持ちが強くて・・・・・・、それでここに来たんですよね。

そうしたら何と、団長さんがいました!

魔女の勘みたいなものなのかもしれません・・・・・・。

団長さん、一緒に雨宿りしましょう!」

 

エニシダの雨宿り発言は、きっと店中に聞こえていることだろう。

 

それにしても、ホウキで空を飛べるなんて、すごいことだ。

誰にでもできることじゃない。

 

「そうですか?別に飛べること自体は、そこまですごいことではないと思いますけど・・・・・・

でも、飛んでいる私を見て、『魔法だ!』って喜んでくれる子どもたちを見ていると、

私まで嬉しくなってしまいます!

 

私の魔法が、人の役に立つとか、人を笑顔にした時、魔法の修行をしていて良かったなって思いますね!

その意味では、魔法はすごいものだなって思いますね!」

 

エニシダは、厳しい魔法の修行を積んできたのだろう。

彼女はきっと、空を飛ぶだけでなく魔法で何でもできてしまうに違いない。

 

「な、何でもですか・・・・・・?

 

何ですか・・・・・・?

そ、その、団長さんの期待に満ちた眼差しは・・・・・・?

 

・・・・・・で、できますよ、何でも・・・・・・

・・・・・・多分・・・・・・」

 

ということで、「魔法でこの雨を止ませてほしい」

と、エニシダに注文してみる。

 

「この雨ですか・・・・・・?

雨・・・・・・そ、そうですね、ちょっとやってみます」

 

そう言うとエニシダは店の窓を開け、空に両手をかざし、何かごにょごにょと呟いた。

 

数分ほどそれは続いた。

・・・・・・しかし、空には何も変化が見えなかった。

エニシダは、そのかざしていた両手をゆっくりと下げる。

 

・・・・・・いくら魔法使いでも、

この街の天気を変えるというのは難しいか・・・・・・。

エニシダは窓を閉め、がっくりと、うなだれた。

 

「私なんかの魔法では・・・・・・、雨、止まなかったですね・・・・・・。

私なんて、どうせただのゴミ虫なんですよ。

天気一つ変えることもできない。

 

魔女失格と言わざるを得ないでしょう。

生まれ変わったら訓練場にある的になって、花騎士の皆さんの攻撃を毎日受け続け、

彼女たちを陰ながら支える存在になりたいです・・・・・・」

 

流石にちょっとへこみすぎだろう。

心なしか、お供の蝶々までへこんでいるように見えた。

 

「訓練場の的なら、どれだけへこんでも大丈夫ですね・・・・・・。

やっぱり生まれ変わるしかないですよ・・・・・・」

 

エニシダは、急にネガティヴになりすぎだ。

さっきまでの元気はどこへ・・・・・・。

 

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