エルミナの思い1(あいりすミスティリア)

ページ名:エルミナの思い1(あいりすミスティリア)

 

  種子を宿したモンスターを見つけられないまま、滞在3日目の夕方となった。

はあ、今日も空振りでしたね。

あのモンスター、一体どこに行ってしまったんでしょう

明日は見つかりますって。挫けず頑張りましょう!

ね、ファムちゃん!

 

・・・・・・って、あれ? ファムちゃんが消えた・・・・・・?

村に着くなり子供たちと遊んでいます。 元気なことですね。
  ベアトリーチェが村の広場に目をやる。
さあみんな、かくれているバブーをみつけるんですよー

【村の女の子】

先に見つけたら、お菓子もらえるんだね!

【村の男の子】

よーし! ぜったい見つけるぞっ!                    

ファムも負けませんからねーーっ!
  面倒を見ているのではなく、完全に一緒になって盛り上がっている。
ああ、なんて素晴らしい笑顔でしょう

一点の曇りもない純粋無垢な笑顔・・・・・・私の絵筆などでは絶対に描けません。

私はいま、芸術的な意味で猛烈に感動しております。芸術的な意味で。

 

念押ししてくるのが怪しい。

ファムのあんな笑顔は初めて見た。

はい、私もです。

《アイリス》の中には、ファムと同じ年頃の子がいません。

もしかしたら、一緒に遊べる友達がいなくて、

寂しい思いをしていたのかもしれませんね。

・・・・・・若返ることはできませんけど、何か力になれればいいのですが。

【村の女の子】

ねえねえ、ファムちゃん。 今日もごはん作ってくれるの?

はい。 そろそろ準備しないとです。

【村の女の子】

うれしい! 『れすとらん』っていうのも、こういう場所なの?

え? レストラン?

【村の男の子】

うん、お父さんから聞いたんだ。

都会には『れすとらん』っていう場所があるんだって。

【村の女の子】

お城みたいに綺麗なお部屋で、おいしいご飯が食べられるみたいなの。

ファムちゃんは行ったことある?

はい。 めいかいで何度か。

【村の女の子】

いいなー、すごいなー。

連れていってってお父さんに頼んだんだけど、お金ないからダメって言われちゃった。

【村の男の子】

一生に一度くらいは行ってみたいよなー

わ、 わかりました!
  ファムがどーんと仁王立ちになる。

 

ファムがこの村にレストランをつくってあげます! まっていてください!

【村の女の子】

本当!? ファムちゃんありがとうっ!

【村の男の子】

やったー! れっすとらん! れっすとらん!

(はっ!? ど、どうしましょう、いきおいでやくそくしてしまいました・・・・・・)
  子供たちと別れたファムが、腕組みをして唸っている。

レストランかあ。 ねえ、バブー、どうしたらみんな満足してくれるでしょう?

うまくいかなかったら、みんなをしつぼうさせてしまいます。

【バブー】

ば、ばぶー・・・・・・

ふふふ、 大変なことになってしまいましたね。
あ、もしかして見ていたんですか

ええ、 子供たちとあんまり楽しそうにしてるから目が離せ・・・・・・

気になっちゃって。

  ぽろぽろ漏れてしまう人だ。
どうやったら、あの家をレストランにできるかしら?

いろいろ足りないものがあると思うんです。

お部屋をきれいにかざらないといけませんし、かんばんメニューを作ったり、

もりつけをきれいにしたり

でも、お料理を作るだけでもたいへんなのに、そんなにたくさんのことは・・・・・・

《アイリス》はファム一人じゃないでしょう?

みんなで協力して素敵なレストランを作りましょう

ふぇ!? ごきょうりょくいただけるんですか?
こう見えて、困っている児は放っておけないたちなの。
エルミナさん・・・・・・ありがとうございます!

お店の装飾や盛り付けは私がやりましょう。

お料理は、ファムやソフィに任せるのが一番でしょうね。

ソフィさんに手伝っていただけたら、ひゃくにんりきです。

ファムたちドワリンは、スパイスを使った料理が得意ですけど

エルフィンのみなさんはダシをじょうずに使われるんです。

りょうほうのわざが合わされば、きっとおいしいお料理ができるはずです。

きちんとしたレストランを目指すのなら、お給仕する人も作らないといけませんね。

作法はベア先生がお詳しいでしょうから、ぜひご指導いただきましょう。

はい! ファム、なんだかできる気がしてきました。

りっぱなレストランにして、村の子に喜んでもらいたいです!

・・・・・・でも、エルミナさんは、どうしてファムを応援してくれるのですか?

子供たちの笑顔を守るために戦うのが、私のポリシーですから。

 

 

冥王さま、冥王さま。 これからお時間よろしいですか?

お店の壁に絵を描きたいのですが、画材が不足していまして。

絵の具の原料になる石を、村の外まで取りに行きたいのです。            

  荷物持ちなら任せて。

ありがとうございます。 よろしくお願いしますね。

確か、この辺りにいい石があったと思うんですけれど・・・・・・

  歩きながら、エルミナは絵の具の原料になる石を探している。

戦うときに使わない絵の具は、冥界に置いてきちゃったんですよね。

私も修業時代は、高価な絵の具が買えなくて自分で調合してみたりもしたんです。

色を作るのって結構楽しいんですよ。

少女たちの透き通るような肌も、細い髪も、淡い唇も、宝石のような瞳も・・・・・・

使う色によって、まったく別物になったりしますから。

 

あっ、ありました。 あの石、綺麗な黄色が出るんです。

 

エルミナが、たたたっと走っていく。

と同時に、闇の中で何かがうごめいた。

きゃーっ! モンスターっ!

もうっ、せっかく冥王さまと二人きりだったのに

 

 

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