聖夜の贈り物2(あいりすミスティリア)

ページ名:聖夜の贈り物2(あいりすミスティリア)

 

【サンタスライム(ボス)】

スラっ!!                                  

  金属すら容易く溶かすスライムの触手が、アシュリーをかすめる。
つっ・・・・・・このままではジリ貧です
  アシュリー、衣装の声に耳を澄ますんだ!

衣装の声・・・・・・

はっ! 聞こえました!

クルチャ、最終奥義ですっ!                        

はいいーーーーーーっっっ!!?
  クルチャの襟首をむんずと掴み、アシュリーが高々と跳躍した。

  冥界の空に、キラリと二人が光る。

聖獣の双角よ、我が怒りを力となし不浄の者を撃滅せよ!

聖夜の贈り物ーーーーっっ!!!(ホーリー・ナイト・スマーッシュ)      

どわああああぁぁぁああぁぁあーーーーっっ!!!!!!

  アシュリーがぶん投げたクルチャが、一筋の光芒となる。

【サンタスライム(ボス)】

ス、ス、スラーーーーーっっ!!!!!

  土煙が風に流されていく。

  スライムがいた地面には、槍のように気をつけをしたクルチャが頭から突き刺さっている。
あ、あのー、いい絵、撮れましたか?
 

地面の中から声がする。

全冥界が泣いた!

ぶはっ・・・・・・ありがとうございます!

アシュリーちゃん、ナイススロー(親指立てて)

クルチャこそ、素晴らしい突撃でした。

ここまで上手く合体技が決まるとは、やはり私たちは相性がいいのかもしれませんね。

合体技っていうか、クルちゃん投げられただけなんだけど・・・・・・

まいっか。 美味しいところもらったし。

今回はアイドル的に大勝利ですわ!

  すがすがしい笑顔で、クルチャは顔についた土を手の甲で払った。
というわけで、MVPはシュリーさんに決定です。
すみません、最後だけ目立ってしまって。

MVPの賞品は、今まさに着ているサンタ衣装です!

そのままお持ち帰りください!

誰ですか? そこらで売ってるサンタコスじゃん、とか思った方は?

違います! 断じて違いますよ!

この衣装は、世界樹の力を借りて作られたれっきとした聖装。

ぜひ実戦で使ってくださいね

はい、大切にします

なお、究極合体奥義でスライムを倒したクルチャさんには、次点として

トナカイ衣装を差し上げます。

ありがとうございます。 これからはバラエティーにも進出しろっていうエールですよね!

うおーー! やる気出てきましたよー!

10秒しか喋れなくても、しっかり爪痕残しちゃいますから!

  トナカイの蹄で、果たして爪痕が残せるのだろうか。
それではみなさん、引き続きパーティーを楽しみましょう!
主・・・・・・少々お時間をよろしいでしょうか。
 

みんなの輪から離れた食堂の隅で、アシュリーが俺を呼んだ。

 

いつものアシュリーとは違う―――たとえるなら鎧を脱ぎ払ったような、

柔らかな空気を纏っている。

ええと・・・・・・こほん

きょ、今日はクリスマスですね

  お、おう

よろしければ、こちらを受け取っていただけないでしょうか?

日頃、お世話になっている感謝の気持ち・・・・・・です。

 

感謝の気持ちなら、そこまで赤くなる必要もないだろう。

などという無粋な感想は置いておき、プレゼントをありがたく受け取る。

紙袋に入っていたのは、毛糸で編まれた温かそうなニット帽。

いや、穴が開いているし、これは―――

欲しかったんだ、目出し帽!

あの、私はニット帽を編んだつもりだったのですが・・・・・・
 

・・・・・・

・・・・・・・・・

くっ!! さっきのスライムのせいで穴がっ!?

すみません、このプレゼントはやっぱりなしということで

 

ちょうど銀行を襲おうと思っててさ

すっぽりと目出し帽をかぶる。

サイズはぴったりだ。

すみません、お気を遣わせてしまい。

でも、主のお優しいところが、私は・・・・・・

見てください! 雪です! 雪が降ってきました!
  窓際にわらわらと《アイリス》が集まる。
ひゃー、綺麗! クルちゃん寒いの苦手だけど、やっぱクリスマスはこうでなくっちゃ。
リリィあとで雪だるま作る!
よーし、みんなででっかいの作っちゃおう

不思議です、冥界には天候の変化がないはずなのに。

・・・・・・もしや主の力で雪を?

  アシュリーへのお返しだよ(キラーン)

クリスマスでご気分が優れないのに、申し訳ございません。

いえ・・・・・・謝ってはいけませんね。

ありがとうございます、主。 

素晴らしいプレゼントに心より感謝いたします。

 

アシュリーの顔が喜びにほころぶ。

その笑顔は、聖夜の雪よりも眩しく輝いている。

戦場に咲く《アイリス》も、武器を置けば年頃の女の子たちだ。

短い春を戦場だけで終わらせてほしくない。

学院の長として、こういう表情をもっともっと引き出せるようにしていこう―――

決意を胸に、俺はアシュリーの手をとって皆の輪に戻った。

 

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。

コメント

返信元返信をやめる

※ 悪質なユーザーの書き込みは制限します。

最新を表示する

NG表示方式

NGID一覧