ヴァロケリム語

ヴァロケリム語（Varokeřim）は、サルナ・アフィータと初期ウォトゥーリアによって造られた言語。狭義でのヴァロケリム語は、ヴァロケリム語の歴史において、鉄世から花世の中頃までの形を指す。複雑な古ヴァロケリム語に比べ、文法は単純であるが、使用するものの中に邪な感情があると使用することはできない。

音素・音韻[]

母音[]

ヴァロケリム語の母音は /a/ /e/ /i/ /o/ /u/ の5つである。ただし、h に後続する場合や、ヴァリアントの発音においては、長母音や二重母音になることもある（後述）。

子音[]

ヴァロケリム語の子音は有声性において対立し、唇音、硬口蓋音、軟口蓋音、声門音がある。音素としての子音は以下の通りである。

• 破裂音：p, t, k, b, d, g
• 摩擦音：f, v, s, z, j [ʒ], h
• 鼻音：m, n

発音規則[]

ヴァロケリム語は古ヴァロケリム語ほどに発音が重視されず、地方によって多数のヴァリアントが発生していたとみられているが、ウォトゥーリア界術師によって制定され、統制された「正統発音」は存在する。以下、特に但し書きのないかぎり、水世末期の正統発音について記述する。

/h/ についての規則[]

/h/ が母音の前にあるとき、/h/ は発音されず、母音は長母音になる。

thasak /taː.sak/jiveterzanhe /ʒi.ve.ter.za.neː/

/h/ が語頭にあるときは、上記の規則は適用されない。

he /he/

なお、一部の語においては母音連続を避けるために /h/ がさかんに挿入された時期がある。その後、そのような場合の /h/ は発音されなくなり、/h/ の両側の母音は二重母音として発音されるようになった。

eha /eha/ > /ea/lohe /lohe/ > /loe/その他各ヴァリアントにおける派生的な規則[]

南方ヴァロケリム語では、/h/ の発音規則の適用の結果長母音となった母音が、音割れを起こして二重母音となったり、さらに最初の母音が渡り音化することがある。

vhetum OP /veː.tum/ > SP /vie.tum, vjeː.tum/

書記体系[]

メイン記事：ヴァロケリム文字

ヴァロケリム語は、古ヴァロケリム語と同じくヴァロケリム文字で表記される。ヴァロケリム文字は音素と文字が一対一対応したアルファベットであり、習得は比較的容易である。

文法[]

名詞[]

名詞には、-e格（主格）-jy格（対格）-ert格（与格）-ter格（奪格）-a格（属格）の5つの格がある。ただし、属格形は形容詞と同じように使われる。

iseram(e)「希望が」iseramjy「希望を」iseramert「希望から」iseramter「希望へ」iserama「希望の」

-a格を形成する際に、語末の子音が重複される場合があり、当初はそれについて特別な表記はされなかったが、水世末期以降にその語末の子音を最初から重ねて書く方法が一般化した。

azoen, azoenna > azoenn, azoenna

代名詞[]

人称代名詞[]

ヴァロケリム語には、1〜3の人称と、単数と複数の区別がある。

1人称		2人称		3人称
単数	複数	単数	複数	単数	複数
dum	da	arde	arda	vo（人）/ bar（物）	vadum（人）/ bara（物）

形容詞・副詞[]

形容詞の語尾は一貫して-a、副詞は-aranである。

enda「大きな」endaran「大きく」gra「1」graran「ただ〜だけ」

名詞を-a格にすれば形容詞形として使うことができる。

terzanaken「言語」→ terzanakena 「言語の」torvarge「異世界」→ torvarga「異世界の」

もともと-aで終わる名詞の場合は、さらにaを一つ足す。

echna「雷」 → echnaa「雷の」

形容詞も副詞も修飾する単語の直後に置かれる。

動詞[]

古来ヴァロケリム語には、その祖先である古ヴァロケリム語を踏襲して現在、未来、過去の3時制だけが存在した。現在形の語尾は -ak、未来形は -lan、過去形は -en で不変であった。

Dum markak.「私は書く」Dum markaklan.「私は書くだろう」Dum marken.「私は書いた」

水世中期になると、ヴァロケリム語がウォトゥーリア術師同士の会話に使用されるようになり、身近な出来事を表現するためにより多くの時制が必要になった。この結果、分詞形を用いた未完了時制・完了時制が登場し、受動態も出現した。

Dum markak.「私は書く」Dum markaka. 「私は書いている」Dum markena dak. 「私は（すでに）書いた」Vosum marken. 「それは書かれた」Vosum markena. 「それは書かれている」Vosum markakena dak. 「それはすでに書かれている」

上記の例から分かるのは、本来過去を表す形態素であった -en が、 -ak と対になって使用されるようになり、受動の形態素に変質したこと、その結果完了形において混乱が起こり、 -ena dak が能動完了を表すものとなったために受動完了を -akena dak として表すことになり、最終的に -ak と -en の意味のねじれが発生することとなったということである。

この混乱について、水世末期の水界第7位杖術師メアカキのイェメクが改革を唱え、以下のような修正案を提示した。

Dum markak.「私は書く」Dum markaka. 「私は書いている」Dum markivaka dak. 「私は（すでに）書いた」Vosum marken. 「それは書かれた」Vosum markena. 「それは書かれている」Vosum markivena dak. 「それはすでに書かれている」

しかし、このときにはすでに上記の用法が定着してしまっていたため、イェメクの改革案は普及しなかった。

関連項目[]

• ウォトゥーリア
• ウォトゥーリア・エノマ

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