クレリカ

ページ名:クレリカ
クレリカ
qreriqa
[k˨.ˈɺ͍e˧.ɺ͍i˧.ˈkɜ˥]
分類
Se分類芸術言語
モユネ分類ART/EXP/PHI/IMG/CDE/GEN/SON/LIT/SER/TOL
CLAコードqrehr
制作者デネブさん

クレリカ(昏: qreriqa)とは、デネブさん氏によって制作されている、言語をはじめとする一連の慣習の名である。文化風土や学問も含んでいるが、ここではその言語について記述する。特に言語のことを指して昏語(くれご)と呼ぶこともある。

特徴

一般的な言語と比較して、以下のような特徴がある。

  • 品詞には思形詞と感性詞の二つのみがある。
  • 定まった語順がない。韻律や強調など、修辞法を目安に話者が自由に並べることができる。
  • 、時制、態、法など、およそ自然言語に一般的に見られる文法範疇をもたない。

一般に動詞や名詞と呼ばれるであろう意味の単語も、すべて思形詞に分類される。クレリカにおいて、それらの単語の扱われ方にはなんら統語論上・形態論上の差異がないからである。

感性詞とは、話者の現在の感情や、法性(モダリティ)、あるいは言述対象に移入した感情などを表現する語である。例えば、(一般的に)好意を表現する感性詞 -ea を以下のように使うことができる。

teneqea ―― あなたが好き

有り体に言えば、クレリカの発話は、思形詞に感性詞を後置したものを並べているだけである。この単純な形式のため、再帰などを駆使した複雑な叙述には向かない。そのかわり、身ぶりや文脈を含めた会話に重点を置いており、クレリカの民の心の機微を揺らすことに長けている。

唯一、文法的な機能らしい機能と呼べるものは、同調である。

同調

同調とは、ある談話のなかで、それぞれの思形詞に接置する感性詞が一致することである。感覚的に、同調した思形詞同士は「繋がって」おり、同調の切れた思形詞同士は「離れて」いるということを示す。これを概念メタファーとして駆使しながら、適切な感性詞を使い分けることで、様々な意図を表現することができる。例えば、二つのものの所有や部分の関係を表現したいときには、以下のように同調させる。

teneqea qohrea ―― あなたの声が好き

見てわかるように、どちらがどちらを所有するのかは形式からは明らかでない。クレリカでは関係性の方向はほとんど意識されないために、それを標示する形式を持たない。発話にのぼるすべての句は、それらが意味するものが関与原理によって既に何らかの形で事態に関与することを示している。文脈の上では、それらの関係性の方向といったものは既に自明であることが多く、ことさら際立てられることはない。

クレリカには単語としての繋辞(コピュラ)はなく、同調がその機能を果たす。すなわち上記の例は「あなたが声である(ことが嬉しい)」「声があなたである(ことが嬉しい)」などを同時に含意する。また、否定を表現したいときは、普通は同調を切ることで表現するが、 en 否定 の思形詞を使うことで同調を切らないこともできる。

hermina haprina qapratri ―― 大切に扱わないと壊れてしまうhermini haprini qapratri eni ―― 大切に扱わないと壊れてしまう

会話になると、同調の効果がより見えてくる。

ui pinstrui xertrui heritui myhrui ―― ねえ、ガラスの破片投げて遊ばない?eryui cyqui eprui ―― 駄目だよ。死人が出るよ

このように、前の人の使った感性詞 -ui(勧誘などの意)に同調させることで、「(勧誘)/ガラス/破片/投げる/遊ぶ (すなわち) だめ/死/人」というふうに全体として一つの状況を表現していることになる。

思形詞

ものの名前、動作、状態など、対象化されたあらゆる概念を表現する単語はすべて思形詞と呼ばれる。他の多くの言語であれば動詞や名詞、形容詞などとして表現されるすべての意味の単語は、クレリカではひと括りにされてしまう。かつては形容詞と呼ばれていたが、実態を考えると適切ではないと判断され、思形詞と呼ばれるようになった。

語末が必ず子音であるという原則がある。外来語を導入する場合、思形詞として導入する。その際、末尾が子音になるまで末尾の母音を取り除くか、または任意の子音を末尾に追加する。

感性詞

感性詞とは、自分のそのときの感情や態度を表現しているマーカーである。言語学の一般概念では法や法性に近いものだが、感性詞は品詞のひとつとして分類されている。多くの言語でいうところの感動詞のようでもある。かつては感情標識と呼ばれていたが、形容詞が思形詞に名称変更されるのに伴い感性詞と呼ばれるようになった。思形と感性という概念ペアはヌーソロジーからの援用である。

語頭が必ず母音であるという原則があり、思形詞の末尾の子音に連結して発音される。

ヒュムノス語を知っていれば、感性詞とは想音のようなものと言えばわかりやすいかもしれない。感性詞の感覚を理解するうえで、ヒュムノス語はとても近いものを持っている。Wikipediaにある解説には、「例えば(レーヴァテイルに)『「嬉しい」ってヒュムノス語でなんて言うの?』などと質問しても、答えられない。レーヴァテイルにとってヒュムノス語は感情そのものを表したり感じ取るものであり、それは知識ではなく、口を開くと自然に出てくるものとなっている」とある(レーヴァテイルとは、端的に言えばヒュムノス語の母語話者たちのこと。太字は引用者による)。クレリカの民がこのような質問に答えられないわけではないが、そのとき返ってくるのは「嬉しい」を意味する思形詞(たとえば mahr など)であって、感性詞が返ってくることはまずない。

辞書においては、例えば -ea という感性詞の意味としては「嬉しい」「好意」などと説明することしかできないが、それは「嬉しい」という意味の述語なのではなく、自分が嬉しがっていることを示す感嘆符のようなもの、言い換えれば、声の弾みや顔の紅潮とまったく同等のものなのである。この点において、思形詞の意味と感性詞の意味との間には絶対的な差異がある。実のところ感性詞とは、あくまでその場限りのものであり、辞書に記されているものは学習者への目安にすぎない。その話者が何を感じているのかは、その場に居合わせる者でなければ、本当に掴むことはできないのである。

統語範疇

クレリカは文や節という単位を持たず、したがってピリオドのような約物も使われない。辞書の見出し語にされる単語と、実際の談話に現れる形式である句とがある。句は基本的に思形詞+感性詞という形式をとるが、まれに片方のみが現れることもある。また、感性詞が同調する一連の句は、すべて併せて一つの同調句と呼ばれる。

文法-句法-パラメータシステムでは、クレリカの統語範疇の関係を以下のように記述できる。

  • [思形詞:既存の意味フレーム]
  • [感性詞:感情,法性,既存の意味フレーム同士の接続性]

すなわち、思形詞はその指示対象や、それによって想起される意味フレームを際立たせる。感性詞は、話者や指示対象の感情、法性とあわせて、接置した思形詞の際立たせている意味フレーム同士の接続性を際立たせる。いくつかの句の同調または非同調によって、それら既存の意味フレーム同士に新たな接続性がもたらされ、その文脈における新たな意味フレームが形成されることとなる。

また、クレリカには文はないので文法-句法-パラメータシステムによる文法の記述はできない。発話という言い方は、一見すると自然言語の文概念に近いものだが、クレリカにおける発話概念は統語論的・語用論的にまったく無意味である。というのは、発話の区切れを示すマーカーがそもそもないし、前項で例示したように、前の人の発話した句と同調させることで、それらが同調句という一つの統語範疇を形成することさえあるからである。

文字

ラテン文字転写を使う。使用する文字は a c e h i m n o p q r s t u v w x y の18個が基本となる。さらに、喘音とよばれる息漏れ声や帯気音、有声音などを表す文字として、それぞれの大文字が使われる。

ほとんどの記述において、それぞれの句はスペースで句切られる。意味よりもたんに音声を重視する記述では、スペースで句切られなかったり単語の形態が崩れたりすることがある。

音韻

音素の少ない言語の例に漏れず、クレリカも自由異音の幅がとても広くて書ききれないため、主要な異音のみを記述する。裸の文字はラテン文字転写で、//は音素および標準音、[]は異音を表す。v には弁別性がないため音素はない。

音声一覧

クレリカの18音素。ダッシュ(――)の後は音韻規則記述言語による条件異音の記述。Cは子音、Vは母音。

母音 (6)
  • a /ɐ/ [ɜ] ―― iɺ͍/ɐ/ +/ɐ/ > [ɜ]
  • o /ə̠/
  • u /ɘ/ [ʊ̈] ―― +/ɘ/ > [ʊ̈]
  • e /ë/ [e] ―― ɺ͍/ë\ɺ͍ +/ë/ > [e]
  • i /i/
  • y /ɨ/ [ʲʊ̈] ―― pʰ/ɨ/ ɺ͍/ɨ/ > [ʲʊ]
子音 (12)
  • p /pʰ/ [p] ―― /pʰ/C /pʰ/˘ > [p]
  • m /m/
  • w /β̞/
  • x /t͡s/
  • t /t/ [c͡ɬ] ―― V/t/ɺ͍ > [c͡ɬ]
  • s /s̺/ [θ]
  • c /ɕ/ [s̻]
  • y /j/ [ë] ―― /j/ˑ /j/ː > [ë]
  • n /n/ [ɲ ŋ] ―― /n/k > [ŋ] ; k/n/ > [ɲ]
  • r /ɺ͍/ [ɾ l] ―― /ɺ͍/ɐ s̺/ɺ͍/ > [ɾ] ; /ɺ͍/ɘ > [ɺ]
  • q /k/ [kˡ] ―― /k/i > [kˡ]
  • h /h/ [ɬ f ɸ] ―― /h/ɺ͍ > [ɬ] ; ɨ/h/ /h/i > [f] ; /h/ɘ > [ɸ]
その他
  • v [ʩ ʔ]

調音点-調音方法マップ

子音














破擦x /t͡s/v [ʩ]v [ʔⁿ]
破裂p /pʰ/t /t/q /k/
m /m/n /n//n/ [ɲ]/n/ [ŋ]
摩擦/h/ [ɸ]/h/ [f]/s̺/ [θ]s /s̺/

/ɕ/ [s̻]

c /ɕ/h /h/
はじき/ɺ͍/ [ɾ]
接近w /β̞/y /j/
側面破擦/t/ [c͡ɬ]
側面破裂/k/ [kˡ]
側面接近/ɺ͍/ [l]
側面摩擦/h/ [ɬ]
側面はじきr /ɺ͍/

母音




i /i/y /ɨ/
|/ɨ/ [ʲʊ̈]

/ɘ/ [ʊ̈]

半狭

/ë/ [e]e /ë/

/j/ [ë]

u /ɘ/

|

o /ə̠/
半広/ɐ/ [ɜ]

|

a /ɐ/

音調

クレリカの単語には、それぞれのノート(後述)ごとに決まった音の高さや長さ、強さがある。この三つをまとめて音調と呼ぶ。()内のものはふつう表記しない。

  • 高低: ˩ ˨ ˧ ˦ ˥ の五段階。
  • 長短: (˘) ˑ ː の三段階。
  • 強弱: (ˌ) ˈ の二段階。

クレリカの民は調音点を使わずに音調のみで会話することもある。

ノート

ノートは、一つの単語を分節して複雑な音調を乗せるための単位で、音節のようなもの。ただし音節とは微妙に区切り方が異なる。

音声表記例

  • qreriqa [k˨.ˈɺ͍e˧.ɺ͍i˧.ˈkɜ˥] ―― クレリカ
  • horyi qryryi [hə̠˩.ˈɺʲʊ˦.ˈi˥.ˈk˦.ˈɺ͍ʲʊ˦.ˈɺ͍ʲʊ˦.ˈi˥] ―― 服を着せてあげる
  • etrectrei neyrei [ˈë˨.ˈc͡ɬɺ͍eˑ˦.ˈɕˡc͡ɬɺ͍eː˧.i˦.në˦.ˈɨ˥.ɺ͍e˦.ˈi˥] ―― 発情を検知しました

外部リンク

  • qreriqa --- クレリカの解説ページ。
  • Qreriqa v0.13 - qreriqa --- Google Sitesのクレリカ旧解説ページ。


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