登録日:2020/01/03(木)17:50:28
更新日:2024/05/16 Thu 10:42:05NEW!
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文化人類学は、人文科学の一分野である。主に冠婚葬祭のルーツや類型などといった人の習俗を研究する分野であり、文化相対主義のような倫理面との関わりも深い。
参与観察(フィールドワーク)を行うことが文化人類学者の通過儀礼だと言われる程、実地での調査を重んじているのが特徴。
アニヲタ的に言えば、所謂創作クラスタがファンタジーの創作をする際のヒントになったりする。古くは『指輪物語』で有名なトールキン 、『ゲド戦記』のル・グヴィンらがファンタジーにおける世界観の構築に利用した。『精霊の守り人』の原作者で知られる上橋菜穂子も文化人類学者である。もちろん架空世界モノだけでなく、後二者は異星を舞台にしたジャンルSFを書いていたりもする。
民俗学や民族学と混同されがちであり、実際アニヲタwikiにある民俗学の記事には別にそんなに違いはないと書いてあるので、多分そんなに違いはない。
また、文化人類学の他に社会人類学という呼び方もあるが、多分その呼び方にしたからといって社会学が関係してくることはない。
文化人類学が人間の習俗を研究するのに対して、自然人類学あるいは形質人類学は人間の遺伝子とかを研究する。誰かここについて解説ください。
前知識
他文化を学ぶにあたって、自文化を他人に押し付けてしまうことは倫理的に宜しくないことになっている。文化相対主義である。
具体的に言えば、ヌエル族などは牛の小便で頭を洗う訳であるが、日本人がそれを理解できないからといって排斥してしまってはいけない。
このあたりの発想は主に世界大戦前後における植民地主義や頭ごなしの西洋化等が関わっており、端的に言えばその反省が尾を引いた形になる。
野蛮に見えるだろう、非合理に映るだろう、摂理を有していないように思えるだろう。
既に解明された病。特効薬も知らずに薬草を噴きつけ、病人の周囲で騒ぎ立てる姿を見て抱くものは“親切心”かもしれない。
――しかし、それは本当に正しいことだろうか? そんな反省である。
因みに現在の応用倫理学では、お互いに話している言葉が分かる以上は、相手の文化が全く理解できないものとして扱うべきではないとしている…らしい。多分、理解できるかどうかというのはあまり問題ではないのだろう。
一応、その人々の間に入って観察する場合、人命に関わらない限りはその場所の風習に従うべきだと言われている。
また、その土地にはその土地の事情があるので、それを考慮しない限りは、倫理的に見えることでも余計なお世話だったりするものである。
以前は文明のない社会のことを「野蛮」と言っていたが、現在は「未開」と呼んでいる。文明がある社会の方が必ずしも優れているとは限らないからである。
学習者は相手を見下し、それによって見落としが出てしまうというようなことがないよう注意すべきなのかもしれない。
創作的には
言語の場合と同じように、やはり文化にも類型論は存在する。多分こういうものは実際の状況と照らし合わせて、どこが例外的なのか、なぜそうしたことが起こるのかを研究するのだろうが、まあオリジナルの文化を作るのであれば、特にこだわりがなくそれっぽさを演出したいだけであれば類型に寄せた方がいいのかもしれない。
文化というのは割とどこにでも根付いているものだから(例えば日本人が家で靴を脱ぐ文化とか)、そういうさりげない違いを出しておくだけで割とそれらしくなる…はず。
類感魔術
何らかの絆があればあるほど呪いがかかりやすくなり、呪いにかけられたものは術者がしたことと同じ行動をとる。分かりやすい例を挙げるなら丑の刻参りがそれ。
魔法の元ネタにしてもいいが、『精霊の守り人』(第1巻)のような使い方もある。
交差婚
例えば男がその母方の叔父との間に生まれた娘と結婚するのが続いている場合は父系母方交差イトコ婚。親戚同士で人のやり取りがある場合に関係してくるため、
母方の叔母との間に生まれた娘(平行イトコ)との結婚が認められることは原則としてない。
先進国からは非合理かつ差別的な(「女性を財産に見立てた交換」ともとれるため)行いと見なされてきたが、
レヴィ・ストロースがメカニズムを数学的に解明。該当する共同体の中において社会構成を維持するための役割をこなしていると証明した。
氏族
家族でありながら血縁関係でない人の集まり。中国だと苗字が同じ人同士は家族のような扱いなので、他国に移り住んだ中国人は同じ苗字同士でコミュニティを作るらしい。『闇の守り人』とか色々なファンタジー作品に出てくるので恐らく用語自体は知ってる人が多い。
冗談関係
冗談を言い合える関係。親子間だと忌避的な関係にあって、祖父母などは性的なジョークとかを言い合える関係だったりする場合がある。
通過儀礼
成人式に限らず、何かと何かの境界にいる時に起こる祭事全般。共同体から特別な場所に離され(分離)、なんやかんやあり(過渡)、また元に戻る(統合)というプロセスを経る。因みにこれを元ネタにしたらしいエロ同人があって正直人類の性欲の底知れなさに驚いた。
参考資料
フレイザー『金枝篇』…作者は参与観察をしなかったため「肘掛け椅子の人類学者」と揶揄されたらしい。
レヴィ=ストロース『悲しき熱帯』『野生の思考』
プリチャード『ヌアー族の宗教』
モース『贈与論ーアルカイックな社会における交換の形態と理由』
マリノフスキ『西太平洋の遠洋航海者ーメラネシアのニューギニア諸島における、住民たちの事業と冒険の報告』
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▷ コメント欄
- 面白そうな記事だけど作りかけ? -- 名無しさん (2020-01-03 19:38:40)
- 上橋さんが人類学者だったのは知らなかったなぁ…大雑把だけど自然人類学は遺伝子を、文化人類学はミームを扱うと考えていいかな。近親婚やカリバニズム(古代では通過儀礼の一つ)も文化なのでこれの研究も分野に入ったりする -- 名無しさん (2020-01-04 15:21:24)
- 文化人類学=民族学と思ってたけど違うのか -- 名無しさん (2021-07-30 13:27:29)
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