中将棋/大将棋

ページ名:中将棋_大将棋

登録日:2018/05/14 (月) 16:31:00
更新日:2024/02/20 Tue 11:51:21NEW!
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●目次


概要


まずこれを見てくれ。


香車猛豹銅将銀将金将醉象玉将金将銀将銅将猛豹香車
反車  角行  盲虎鳳凰麒麟盲虎  角行  反車
横行竪行飛車龍馬龍王奔王獅子龍王龍馬飛車竪行横行
歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵
      仲人        仲人      
                        
                        
      仲人        仲人      
歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵
横行竪行飛車龍馬龍王獅子奔王龍王龍馬飛車竪行横行
反車  角行  盲虎麒麟鳳凰盲虎  角行  反車
香車猛豹銅将銀将金将王将醉象金将銀将銅将猛豹香車

広い。そして駒の数の種類も多い。


これが中将棋、今日一般に「将棋」と呼ばれる本将棋の元になったゲームにして、今日まともに指される機会のある数少ない古典将棋である。
また、中将棋の元となった大将棋についてもこの項で取り扱う。


歴史


大将棋から盤を小さくし、駒数を整理したものとして開発されたと考えられている。
この手のものと常として明確な発祥は不明だが、江戸期に本将棋が主流となった後も公家や武士の間でそれなりに指されていたようである。
明治維新以降も細々と命脈は続いていたが、第二次世界大戦、およびその後の混乱期を経て一時は完全に廃れるかに思われた。
しかし、そうした事態を憂いた大山康晴十五世名人を始め棋界各人の働きかけや活動により、現在でも中将棋は僅かながら一定のプレイヤーを獲得している。


ちなみに全国大会も行われており、参加者はおおよそ30人前後とのこと。


大阪府三島郡島本町は水無瀬駒発祥の地であり、水無瀬駒はそもそも中将棋に使われていたという経緯からそうした所以で町おこしを行っている。
現地では子供向けの中将棋教室も定期的に開かれており、それなりのプレイヤー数があるようだ。


今からやってみようとしても駒の入手が困難であり(いちおう「ねこまど」で売っているのだが、需要も少ないせいか駒だけで26000円弱である)、また1勝負2~3時間かかるのもネックになる。相手の調達が一番の問題
手軽に体験するならばネット上のサイトかスマホアプリが良いだろう。


基本ルール


多くの点は将棋に準じる。
すなわち玉(王)を「詰める」のを目的とし、例外を除いては駒は他の駒を飛び越えられず、自分の駒の利きに相手の駒がいれば取れる、などである。
大きい違いは「取り捨て」であることであり、つまり持ち駒がない。このため、それに関わるルール(打ち歩詰めや二歩の禁止など)がない。
本将棋では玉に相手の駒が効いている状態を放置すると反則負けになるのだが、中将棋ではその場合は玉を取っての勝ちとなる(もちろん取らなければ勝負続行)。これを「突き落とし」と言う。
(実はある理由から玉が取れないとまずいためこういうルールになっている。その点は後述)
チェスと同様に「駒枯れ」(盤上の駒が極端に少なくなり、お互い相手玉を詰められなくなること)が発生するため、そうした場合は持将棋(引き分け)になる。
千日手の場合、4度目の同じ盤面が現れた手を指した方が手を戻して別の手を指さなければならない。
駒は敵陣(4段目以降)に「入った時」のみ成れる。敵陣侵入時に不成を選んだ場合、一度敵陣から出て再度侵入しなければ成ることができない。この点の例外は「相手の駒を取る動きをした場合(敵陣内でも敵陣から出る動きでも)」または「歩兵が敵陣1段目に行った場合」である。なお、本将棋と違い「敵陣1段目の歩を成らない」ことも合法手である(結局「行きどころのない駒」となってしまうため、全く意味がないが)。


駒の特徴


日本中将棋連盟のサイトで示されている駒の格に従い、その成り駒と共に説明する。
記号は


□:移動、もしくは飛び(間の駒を無視して移動できる)
─(罫線):走り(その方向に遮る駒がない場合ずっと行ける)


1、2:2歩移動
本将棋にはない駒の移動の仕方である。
特性として以下のようなものがある。

  • 1の所に移動できる。
  • 2の所に間の駒を飛び越して移動できる。
  • 1に相手の駒がある場合、取って2に移動することができる。または取って元の位置に戻ることができる(これを「居食い」と言う)。
  • 1、2に相手の駒がある場合、両方を取って移動することができる。
  • 1に他の駒がない場合、「移動して元の位置に戻った」とすることができる(これを「じっと」と言う。事実上、パスに等しい)。

とまあ結構ややこしいが、同時に強力な特性である。それだけに持っている駒は少なく、獅子、角鷹、飛鷲の3つだけである。ついでに言えば獅子はもうちょっと複雑であり、さらに特殊ルールも多い。


一番最下級の駒。その代わり数が多いのと最前線に陣取っているため、これらをどうさばいていくかで序盤から中盤の優劣が決まる。


仲人(ちゅうにん)/醉象(すいぞう)


  
  
  

歩兵より先に飛び出しているいささか奇異な位置にいる駒。「なこうど」ではない。
元は「注人」であったのが、時代の変遷とともに音が同じでより立ち位置を表す「仲人」表記になったようである。
意味合い的には合戦に先立ち旗指物をもって立つ兵士を示しているようだ。(なので動きもほんのちょっと歩兵より上)
とは言えゲームの扱い的には本当に「歩兵よりちょっとまし」レベルであり、状況次第では遠慮なく突き捨てられる駒である。


 

成ると醉象。詳細は以下に譲るとして、真後ろには動けなくなる。が、それ以外の動きの広がりが大きいので成れるなら成っておきたいところ。ただ、仲人が成る機会というのは非常に珍しい。


歩兵(ふへい、ふひょう)/金将(きんしょう)・と金


  
  
   

各陣営12枚ある一番数の多い駒。本将棋では「歩のない将棋は負け将棋」というが、それは手軽に打ち駒として使えるのが有利なのであって、取り捨てな中将棋では簡単に突き捨てられる悲しい存在である。
とは言え歩兵と別のそれなりの駒の交換となれば有利であるため、位置取りは大事であり決して軽視できるものではない。


  

成ると金将。慣例的に「と金」とも言う。
なぜ「と」と言うかは諸説あるが省略。
本将棋の歩兵の裏は「と」と書いてあるが、これに対し中将棋や大将棋などの大型将棋の歩兵の裏は、本将棋の成香のような字体の金の崩し文字が書いてあることが多いらしい。


小駒


一マスしか動けないが歩より格上として扱われる駒。
中将棋は本将棋より盤面が広いことと、持ち駒のシステムがないためどうしても本将棋より扱いが軽くなる。
尤も、上手く使えば攻めにも守りにも働くのは本将棋と同じである。


猛豹(もうひょう)/角行(かくぎょう、かくゆき)


  

横に動けない玉、もしくは後ろに動ける銀。
中将棋を見ると結構動物名が入っている駒が多く、実は大将棋とかになってくるともっとあるのだがこれもその一つ。
単純に強そうな名前である。真後ろに動けて銀より前後に強いイメージなのも高ポイントか。


   
   
    
   
   

成るとなんと大駒の角になる。最初からの角と分けるために小角(ちょろかく)と呼んだりもする。
角自体が駒の種類の多い中将棋ではそこまで強い方ではないということは密に、密に。
ちなみに猛豹の成りによるデメリットとしては、前後への利きを失うため、筋違いの場所にどうしても行けなくなってしまう点に留意する必要がある。


銅将(どうしょう)/横行(おうぎょう)


  
  

本将棋を知った時、「金銀とあって銅はないのか」なんて思ったことはないだろうか?
実は中将棋以前はあったのである。
動きとしては横に動けない金。前には強いのでそこを生かしたい。


     
    
    
     

あの前に出ることばかり考えていた銅将が、なんということでしょう。横に強くなったではありませんか!
……特性が変わりすぎるので成るかどうかは状況次第。大体成った方がいいとは思うが。


銀将(ぎんしょう)/竪行(しゅぎょう)


  
 

本将棋では攻めの主役ともなる駒だが、中将棋ではそんなこともない。いや単純に一段目からだと敵陣が遠すぎるのよ。
斜め後ろにも効くという特性はもちろん有用なのだが。


    
    
  
    
    

成ると金の動きをする成銀、ではなくて竪行という駒になる。
見ての通り縦に強い働きをする駒になるがその一方斜めの動きが全てなくなるため、ある意味本将棋の時以上に成るか成らぬか悩ましい。


金将(ぎんしょう)/飛車(ひしゃ)


  

毎度おなじみの金。本将棋同様玉傍で守りに働いてくれる。


    
    
    
    

中将棋では金も成れ、しかも成ると飛車になる。通称「金飛車」。
とは言え後述するが、飛車の扱いは本将棋より軽いのだが。


盲虎(もうこ)/飛鹿(ひろく)



 

たけだけしい虎ではなく目の見えない虎。阪神タイガースは関係ない。
盲という字からか、前にだけは動けないという変わった性質を持つ。


    
  
 鹿 
  
    

成ると飛鹿。虎から鹿とかこれいかに。
横の動きはそのままに前後に走れるようになるため、単純に強力。
……まあ単純に盲虎が成ること自体が大変ではあるのだが。


醉象(すいぞう)/太子(たいし)



 

仲人の成り駒であった醉象だが、単独でも存在する。
醉象自体は「酔って暴れる象」から凶悪な心をさす仏教用語なのだが、この駒も酔っているのか真後ろには行けない。
だが、それらはさておきこの駒の真価は成り駒となった時に発揮される。



成ると太子。「太子玉」とも言う。意味合い的には天皇の嗣子か。
玉と同じなのは動きだけでなく、もう一枚の玉として扱われる。
要するに玉と太子、両方取られなければ負けない、ということである。
その為、多少の無理を押しても成る価値のある駒となっている。成った直後に取られては本末転倒もいいところだが。


玉将(ぎょくしょう)・王将(おうしょう)



玉将、もしくは王将。総大将であり、取られたら基本的に負けの駒。中将棋の場合、前述の太子の存在が例外となるが。
「最初は王だったのだが、間違って点が付けられた駒ができて玉将も使われるようになった」という俗説がまことしやかに語られることもあるが、古い駒には玉しかないこと、財宝が駒に含まれるマークルックの影響が見られること、玉金銀、とするといずれも財宝のことであり並びがいいこと、などから玉の方が本式であり、後々位置づけのこともあって字体の似通った王を使うようになった、というのが実際のようである。
周囲に隙がないが走り駒が多く持ち駒の存在しない中将棋ではそこまであてになるものでもない。守りは注意深く。
当然ながら成りは存在しない。


麒麟(きりん)/獅子(しし)


    
   
  
   
    

首の長い動物……ではなく幻獣の一種。キリンビールのラベルが一番わかりやすいか。
「縦横移動のみでちょうど2マス先」にのみ移動できる、といういささか不思議な移動先を持っている。(鳳凰ほどではないが)
1マス目に駒がいる場合は飛び越えて移動できる。
上下左右全て死角なのだが、桂馬とかと違ってそれなりに足が速く、後退もできるため逃げやすい。



成り駒は最強の片割れ、獅子。
こいつの真価は後程。
ただ、鳳凰とならんで安易に使い捨てせず、是非成ることを目指したい駒である。


鳳凰(ほうおう)/奔王(ほんおう)


   
    
  
    
   

ご存知伝説の鳥。なのだが、移動範囲が「なんだこれ」と言いたくなることになっている。
縦横に1マス、斜めに2マス(飛び越え可能)で要するに麒麟と対になっているのが、どっちがどっちかわからなくなることも……。
利きをうっかりしやすい駒の代表例かもしれない。


  
  
  
  

成り駒は最強の片割れ、奔王。
チェスのクイーンと同じ動きとなるこちらの強さは説明不要であろう。
麒麟とならんで是非成ることを目指したい駒である。
ただ鳳凰の成りについては、斜め四方への飛び越しができなくなるデメリットだけには留意したい。そのため局面によっては不成もあり。


走り駒


いわゆる「遮るものがない限りどこまでも行ける」駒。
本将棋より盤が広い中将棋ではよりその価値が高くなっている。
その分種類も多いため、使いこなしていきたい。


香車(きょうしゃ)/白駒(はくく)


    
    
    
     
     

本将棋でもおなじみ、退くことを知らない特攻野郎。
端の要となるのは本将棋同様なのだが、(これまでで想像がつくように)成った後が違う。


  
  
    
    
    

成ると白駒。「白馬」という意味。
馬(龍馬)とはちょっと違うが、それでも前に強い自在の機動力を手に入れられる。
成った場合は一旦引いて中央に睨みを利かせるのが正解か。


反車(へんしゃ)/鯨鯢(けいげい)


    
    
    
    
    

「反」ってくる香「車」なので「反車」。ある意味分かりやすい。
初期配置が香車の上なので、香車と連携して端を睨むことになる。


    
    
    
  
  

成ると鯨鯢。「鯨」も「鯢」もくじらという意味で、読みとしてはどちらも「げい」なのだが、「げいげい」だと音が重たいので「けいげい」と言われるようになったとか。
ちょうど白駒をひっくり返したような移動範囲のため、敵陣からいきなり自陣前の中央に睨みを利かせられるのは強みか。
ちょっと位置取りに頭を使う必要のある駒である。
「白駒は下へ鯨鯢は上へ」ということか。


竪行(しゅぎょう)/飛牛(ひぎゅう)


    
    
  
    
    

銀の成り駒である竪行だが、単独の駒としても存在する。
反車の移動に加えて横に1マスだけとは言え動けるため、適宜睨みを利かせるラインを変えられるのは強み。
ちなみに「竪」は縦という意味があるので、これは「縦に行く駒」という意味である。そのまんまだな。


  
  
    
  
  

成ると飛牛。空飛ぶ牛……?
真横の移動こそなくなるものの、それを補って余りある6方走りは高い制圧力を誇る。


横行(おうぎょう)/奔猪(ほんちょ)


     
    
    
     

銅の成り駒である横行だが、単独の駒としても存在する。
横に走れることは守りに強みを示すが、前後1マス移動ということで成ることからは程遠い。
基本的に守りの駒か。


   
   
   
   

成ると奔猪。成る前、成る後共に竪行と対をなしているが、横行は成れること自体が希少かも。
角+横走りは成れれば十分強力なのだが。


飛車(ひしゃ)/龍王(りゅうおう)


    
    
    
    

本将棋ではトップクラスの大駒、飛車も中将棋では二枚あるそこそこ強力な駒までランクダウン。
とは言えその利きに衰えがあるわけでもないので、別に弱いわけではない。


    
  
  
    

成れば本将棋では最強の片割れとして知られる龍王。死角を埋める斜め移動で隙がない。
中盤から終盤にかけて残っていれば強力ではある。


角行(かくゆき・かくぎょう)/龍馬(りゅうま)


   
   
    
   
   

飛車と双璧をなす角。ちなみに名前の意味は「斜めに動く」だったりする。
だから本来は「かくゆき」が正しいのだがいつの間にか「かくぎょう」が正式な読み方になってしまった、というどうでもいいトリビア。
飛車以上に「持ち駒にできない」ことの制約が大きく(成らずに違い筋に利かせる方法がないため)、本将棋に比べるとどうしても活躍の機会が限られる。


   
  
  
  
   

成ればやはり本将棋では最強の片割れとして知られる龍馬。普通は「馬」と呼ぶ。
死角を補う縦横移動は同時に違い筋へ利きをもたらす方法でもあるため、ある意味龍以上に成る成らないが重要になる。
ただ中将棋の場合は……(後述)


龍王(りゅうおう)/飛鷲(ひじゅう)


    
  
  
    

実は龍も馬も初期駒としてある。
それも二枚ずつだ! 飛車角涙目。まあずっと「飛車角の価値は本将棋ほどじゃない」と言ってる一因である。
しかもここまで見てきてお気づきと思うが、どっちも成りがある。


  
  
  
  

で、龍王の成り駒が飛鷲である。「龍から鷲ってランクダウンしてない」? 知ら管。
後ろ斜めに走れるようになっただけでなく、斜め前方に「二歩」動けるようになっているのが特徴。
これはそちらの方向の「1に移動できる」「1の駒を取って元の位置に戻れる」「12の両方の駒を取れる」「1を飛ばして2に移動できる」ことを意味する。(また、どちらかの1に他の駒がない場合「じっと」と言って動かないことも可能。)
最強クラスの駒、獅子の能力を一部とはいえ身に着けているのは相当に強力である。是非とも成りたい駒の一つ。


龍馬(りゅうま)/角鷹(かくよう)


   
  
  
  
   

前述のように馬も二枚ある。効果的に活用していきたい。


  
  
  
  

成れば角鷹。前以外の7方向走りはそれだけで圧巻の一言。では前が隙なのかというとそちらには獅子の能力を持つ。
隙のない強力な駒である。自分の馬は是非成らせ、敵のそれは阻止したいところ。


大走り・獅子


走り駒よりさらに上位の駒として、大走りと獅子があげられる。
まあ大走りと言っても「奔王」だけなんだけど。
ただわざわざ別格扱いされるだけあり、どちらも超強力。さらにどちらも成ることはできず、獅子に至っては特殊ルール山盛りである。


奔王(ほんおう)


  
  
  
  

説明不要の八方走り。チェスのクイーンと同等と言えばその強力さは容易に想像がつくだろう。
盤面の面倒を減らすために早々に相手との共倒れを目指すか、維持しつつじっくりと指すか。


獅子(しし)



中将棋で最も特徴的な駒かつ、最も重要な駒。
ぱっと見では意味不明な移動範囲だが、概ね「玉二回分の移動を一手で指せる」と思って間違いない。(例外として、1の地点を飛び越えて2の地点に着地することも可能)
その為、飛鷲や角鷹と違いさらに柔軟に周囲の駒を食い荒らし、好きな位置に移動することができる。
その強力さゆえに、獅子を取ることに関しては幾つかのルールが設けられている。


1・獅子の足/かげ足
獅子同士が2マス離れており、かつ手番でない方の獅子に利き駒がある、すなわち「獅子を動かして相手の獅子を取った場合、即座に取り返される可能性がある」場合、獅子で獅子を取ることはできない。
これを「獅子に足がついている」と言う。かげ足は手番側の獅子が邪魔で直接獅子に利いているわけではないが、手番側が獅子で相手の獅子を取ればやはり取り返せる状態を指す言い回しで、ルール的には獅子の足と同等に扱う。


2・先獅子
獅子以外の駒で獅子を取った場合、取られた側は直後の手で相手の獅子を取り返すことができない。
1,2のルールはともに「安易な獅子の相打ち」を防ぐことが目的である。


3・獅子の付け食い
1の状況において、相手側の歩兵、仲人以外の駒がこちらの獅子と相手の獅子にある場合、1のルールを無視してその間にある駒と一緒に獅子を取ってよい。これを「付け食い」という。
この場合、相手は即座に他の駒で獅子を取り返してよい。


実際にやってみると分かるが獅子の周囲には迂闊に近寄れず、さらにこれらの特殊ルールにより退場しにくくなっている。
序盤から中盤にかけてどれだけ獅子を暴れさせられるかは戦況を分けるだろう。
特に序盤から中盤にかけては、一方的に獅子を取られようものなら負け同然の状況になってしまうので大事に使おう。
終盤になってくると奔王や飛鷲・角鷹あたりの機動力が勝るのだが。


大将棋


さて、その中将棋の元となった大将棋だが、盤はこんな感じ。


香車桂馬石将鐵将銅将銀将金将玉将金将銀将銅将鐵将石将桂馬香車
反車  猫刄  猛豹  盲虎醉象盲虎  猛豹  猫刄  反車
  猛牛  嗔猪  悪狼鳳凰獅子麒麟悪狼  嗔猪  猛牛  
飛車飛龍横行竪行角行龍馬龍王奔王龍王龍馬角行竪行横行飛龍飛車
歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵
        仲人          仲人        
                              
                              
                              
        仲人          仲人        
歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵
飛車飛龍横行竪行角行龍馬龍王奔王龍王龍馬角行竪行横行飛龍飛車
  猛牛  嗔猪  悪狼麒麟獅子鳳凰悪狼  嗔猪  猛牛  
反車  猫刄  猛豹  盲虎醉象盲虎  猛豹  猫刄  反車
香車桂馬石将鐵将銅将銀将金将王将金将銀将銅将鐵将石将桂馬香車

盤面が15×15に広がり、またそれに伴ってほぼ左右対称になっている(鳳凰と麒麟のみ先手後手で互い違い)。
大将棋は残る文献から鎌倉期(13世紀)ごろが最盛期であったと考えられている。13世紀末に編纂された普通唱導集にある大将棋指しへの追悼文などからそれが読み取れる。
それ以降は徐々に中将棋、そして本将棋にとって代わられたのだろう。
16世紀頃の人物である水無瀬兼成(水無瀬家13代目当主にして、「水無瀬駒」の大家)の残した「象戯図」には大将棋を含めた今日では古典将棋と呼ばれるものの駒の初期配置及び動かし方の記録があるのだが、この中には成りが醉象→太子、麒麟→獅子、鳳凰→奔王の三つしか記載されておらず、それ以外は成りがなかったか、あるいは、獅子・奔王・龍王・龍馬など、金に成ってしまうとデメリットしかない駒は成りを持たず、その他の全ての駒は(本将棋のような)金に成ったのではないかと推測されている。
こうした記録から、中将棋は大将棋から小駒の数を減らし、それによって減った駒数でエキサイティングな展開にするために成り駒を強力にしたのではないか……と考えられている。
盤が広く駒数が多く、一局に時間がかかることもあり南北朝の頃には廃れたのではないか、というのがもっぱらの見方である。
伊藤家の残した「象戯図式」にも大将棋はあるが、そちらでは成り駒の多くは中将棋と統一されている。


大将棋にあって中将棋にない駒


8種類あるが、比較的弱い駒ばかりである。成りは全て金であるため、動き方の図は省略する。


鐵将(てつしょう)


  
   

「将棋のルールを変えよう」という話になるとよく安直に出てくるのが「金銀があるんだから銅とか鉄とかの駒も増やすべき」という意見なのだが、先述の通り中将棋には銅将があるし、大将棋までさかのぼると鐵(鉄)将もある。
ただし性能はお察し。最下段、1マス移動で前方にしか利きがないのは色々辛い。成る機会は少ないだろうが、成って金になって(3マスパワーアップ)初めて後退ができるようになる。


石将(せきしょう)


 
  
   

そして鉄の下の石。
うんまああれだ、合い駒にはなるよ、たぶん。
こちらも成る機会は少ないだろうが、成って金になることができれば4マスパワーアップとなり、そこで初めて後退ができるようになる。


桂馬(けいま)


   
     
    
     
     

中将棋になく、本将棋にある唯一の駒がこの桂馬。実は大将棋の段階では存在していたりする。
持ち駒にして好きなところに打てない分本将棋よりは効力が落ちるが、跳ねていけるのは十分強い。金に成るかどうかは本将棋と同様に考えることになる。


悪狼(あくろう)


   

「悪」は昔は力強いことを意味する言葉だったので(例として平安末期の武将、源義平は「悪源太」と呼ばれた)、ここでは「強い狼」ということだろう。
三段目中央という比較的睨みやすい位置に置かれているため、追加駒の中では立場はいい方。後ろに全く下がれないことには注意したい。成ることによるデメリットが一切ない駒であることは間違いないが、金に成ったときの利きの増加はまっすぐ後退できるようになるのみの1マスでしかない。


嗔猪(しんちょ)


  
  

嗔とは仏教の用語で三毒の一つ、怒りや恨みを示す。
怒り狂った猪、という感じだろうが。のわりに冷静に下がれるが。
劣化金のようにも見えるが、一応四方向に動けるので使い方次第ではあるか。成れば2マスパワーアップ。


猫刄(みょうじん)


 
  
 

要するに猫又。
前に動けない銀という感じだが、斜め移動は思ったより足が速いので意外と優秀。
成ると斜め後ろに動けなくなるデメリットは本将棋の銀と同様だが、こちらは表側の状態では前に動けず、筋違いの場所に行けないので、本将棋の銀よりは成るべきケースが増えるかもしれない。


猛牛(もうぎゅう)


    
    
    
    

とりあえずバファローズは関係ない。
ちなみに大将棋の場合、猛牛を「牛」、飛牛を「丑」で現す。
移動範囲は縦横2マス。これは間の駒は飛び越えられないことに注意。また、ここに相手の駒が2枚あっても獅子と違い両方は取れず、取れるのは手前だけである。
成ることにより移動範囲が8マスから6マスに減ってしまう2種類の駒のうちの1つ。成るメリットとしては斜め前に動けるようになる点が挙げられるが、本将棋の銀以上に不成が多くなるだろう。特に敵陣1段目での猛牛成りは戦略的に見て基本的にNGだ。


飛龍(ひりゅう)


   
   
    
   
   

大将棋の場合飛龍を「龍」、龍王を「竜」とする。
龍とつく駒は三つあるが、その中では唯一走り駒ではない。
斜め2マス移動だがルール的には猛牛と同様。ただ思わぬところをすり抜けて移動できるため、意外と前には出やすい。
成ることにより移動範囲が8マスから6マスに減ってしまうもう1種類の駒。こちらも成るメリットとしては、成る前にはどうしても行けなかった筋違いの場所に行けるようになるという点もあるものの、本将棋の銀以上に不成が多くなるだろう。
成りによるデメリットの大きい猛牛・飛龍という2種類の駒に関しては、基本的に猛牛は猛牛らしく、飛龍は飛龍らしく、「猛牛・飛龍は不成に使え」ということだろう。局面によってはあえて成ってしまうことによって、駒得したり敵玉を詰ませたりすることができるような状況も考えられるのだが。



大将棋以上の将棋

大将棋よりも更に大きな将棋も色々とある。
但し、こうした大きな将棋は「象戯図」等の古文書にて盤面・ルール等のみが伝わっているものが多く、実際にどれだけ指されたかは良くわかっていない。
後世にほぼ残っていない所を見ると、あまりにデカいせいで仮に指しても大味が過ぎるのかもしれない。どれも持ち駒ルールが無いし…。
なお現代は、これらをコンピューターで指せる様にしようという物好きな試みも色々と行われている模様。興味があるなら検索してみよう。


  • 天竺大将棋(16×16)

駒は一人当たり36種78枚、計156枚を使用。
大将棋にあった弱い駒はリストラされ、新たに追加された駒は強力なものが多い。
また駒毎に格が決められており(玉将・太子が最高格)、一部の駒は格の低い駒を幾つでも飛び越えて特定の方向に動かす事で、飛び越えた駒を味方も含めて全て取る事が出来る。



  • 大大将棋(17×17)
  • 摩訶大大将棋(19×19もしくは16×19)
  • 泰将棋(25×25)

大将棋をもとに、天竺大将棋とは別系統で発展したと思われる将棋。
大大将棋には醉象・太子が無い*1等、駒の内訳も色々と違う。


大大将棋の駒は一人当たり64種96枚、計156枚。
摩訶大大将棋の駒は一人当たり50種96枚、計156枚。盤面は多少広がったが、駒の全数は大大将棋と一緒。また大大将棋での追加駒はあまり採用されていない。
泰将棋の駒は一人当たり93種177枚、計354枚。大大将棋と摩訶大大将棋の駒も多く採用されている。


大きな特徴として自陣・敵陣という概念が無い
なら駒の成りはどうなるかというと「敵の駒を取った時に強制的に成駒になる」様になっている。
ちなみに成れない駒も大大将棋には多い。摩訶大大将棋や泰将棋では改善している模様。


泰将棋は、長らく最大の将棋とされてきたが…(後述)。



  • 大局将棋(36×36)

最大の盤面を用いる将棋で、駒は一人当たり209種(成りを含めたら302種)、計402枚。


長らく存在が知られていなかったが、1990年頃に関西将棋会館内にあった将棋博物館の整理中に見つかった古文書にて発覚。
なお実際に遊ばれた証拠は伝わっておらず、盤面と駒の動かし方しか分かっていない。
なので当時の時点でも権威付け(もしくはネタ…?)で作ったのではないかと言う意見も出ている。


2003年から2004年にかけて2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)の囲碁・将棋板(現:将棋・チェス板)で行われていた記録が残っている。
またフジテレビ系列等で放送されていた『トリビアの泉 ~素晴らしきムダ知識~』でこの大局将棋が取り上げられ、
実際にプロ棋士の伊藤博文六段(当時、現・七段)と安用寺孝功四段(当時、現・七段)が対局する企画が放送された。
対局時間は脅威の32時間41分(途中休憩込みで実質3日間)で先手の安用寺四段が勝利。
感想は安用寺四段は「もう二度とやりたくない」、伊藤六段は「負けて悔しさはない」との事。




余談

実は創作物で中将棋を目にするケースはほとんどない。
リアルに目を向ければ中将棋は本将棋に比べてマイナーであり、一方で古典将棋を指すキャラ、となると逆にインパクト重視でより駒数の多い大将棋にいくからである。こちらとかこちらとかこちらとか。
しかし、「現実的に指しやすい唯一の古典将棋」なのは事実。興味を持った方は是非触れてみて欲しい。





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  • こち亀で初めて知った。 -- 名無しさん (2018-05-14 17:51:42)
  • 大局将棋つーのもあるよね。 -- 名無しさん (2018-05-14 20:12:38)
  • 作成お疲れ様です! 大将棋、摩訶大大将棋、泰将棋、大局将棋の項目も楽しみにしているので頑張って下さいね!^^(ゲス顔) -- 名無しさん (2018-05-14 22:15:54)
  • ネタフリにマジレスするのもあれなんですが、大将棋ぐらいまでは価値があるかなーと思うんですが(幻想入りしてるし、能力として使うやつもいるし)、現実問題として中将棋以外の古典将棋ってまず指す機会がないんでねえ(一局に時間がかかりすぎるというのが根本的な問題)。説明というより単なる駒の動きとルールの羅列になって、それWikipediaでいいじゃん、という…… -- 作成者 (2018-05-14 23:10:08)
  • そうですか、すいません・・・。 てかこれはまだ遊べるレベルだとして、大将棋以上はどのくらい遊ばれてたんだろうか? -- 名無しさん (2018-05-15 06:24:53)
  • とりあえず大将棋の記述を追加。大将棋については一応鎌倉期の文献に記載があるんでその頃までは指されていたようですね。ただそれ以降、そしてそれ以上の古典将棋は「象戯図」などに将棋類の記録として残るばかりなので、どの程度指されていたのかは正直不明です。 -- 名無しさん (2018-05-17 11:51:56)
  • こち亀の印象が強い -- 名無しさん (2021-03-25 17:58:30)
  • 将棋チェスの源流とも言われるチャトランガはかなり駒が少ないのよね……思いつくままにどんどん増やしていったのが大将棋で、そこから駒を絞り込みその分を成駒で補ったのが中将棋、さらに絞り込み(ついでに成りも大駒以外統一してルール自体は簡略化し)代わりに持ち駒のルールを採用して展開を複雑にしたのが本将棋、みたいなブラッシュアップをたどったのかな。 -- 名無しさん (2022-08-30 21:39:09)

#comment

*1 摩訶大大将棋や泰将棋では復帰している

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