登録日:2015/07/30 (木) 01:40:39
更新日:2024/01/16 Tue 10:59:16NEW!
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洋画 戦争映画 映画 第二次世界大戦 遠すぎた橋 マーケット・ガーデン作戦
『遠すぎた橋』(原題:A Bridge Too Far)とは、コーネリアス・ライアンの著作『遙かなる橋』を原作として1977年に製作されたイギリス・アメリカ合衆国合作による戦争映画である。
製作国:イギリス
アメリカ合衆国
製作:エルモ・ウィリアムズ
監督:リチャード・アッテンボロー
脚本:ウィリアム・ゴールドマン
音楽:ジョン・アディソン
配給:ユナイテッド・アーティスツ
富士
公開:1977年6月15日(米)
1977年7月2日(日)
上映時間:175分
あらすじ
史上最大の作戦と呼ばれたノルマンディー上陸作戦から3ヶ月が経過した1944年9月。
南方から進軍するパットン将軍のアメリカ第3軍と北方から進軍するモントゴメリー元帥のイギリス第21軍の二手に分かれた連合国軍は快進撃を続け、ドイツ軍を追い立てていたが、今や補給線は600kmまで伸び切り、しかもパットンとモントゴメリーのどちらに補給を優先するかで揉め、連合国軍の連携に綻びが生じ始めていた。
パットンに対抗心を燃やしたモントゴメリーは、空挺師団を敵中深く降下させる「マーケット作戦」と、ベルギー・オランダ間の5つの橋を確保し、それを橋頭堡に機甲師団を突入させる「ガーデン作戦」の二つから成る「マーケット・ガーデン作戦」を連合国軍最高司令官アイゼンハワー将軍に提案する。
これが成功すればドイツ本国への足掛かりを得ることになり、クリスマスまでにベルリンを陥落せしめる思惑なのだ。
懸案事項の多い作戦であったがアイゼンハワーは政治的な配慮からこれを承認せざるを得ず、強引で稚拙な面が省みられることもないままにマーケット・ガーデン作戦は決行された。
ドイツ軍の抵抗に手を焼きながらも順調に3つの橋を確保した連合国軍であったが、作戦の見通しの甘さが彼らを地獄に突き落とそうとしていることに気が付く者はいなかった…
概要
“連合国軍最大の汚点”とまで言われた悪名高い『マーケット・ガーデン作戦』を題材とした戦争映画。
ノルマンディーをも超える規模の戦闘を米・英・独の三ヶ国の視点で描いた。
オランダ政府及びオランダの各市町村の協力によって実際に戦場となったアーネムやナイメーヘンでの撮影が行われ、揃えられたキャストも当時を代表する各国スーパースター達である。
ただ、広大な範囲で展開された作戦の流れを丁寧に描写している分、ある程度の軍事知識やオランダの地理が頭に入っていないと画面の描写がどこの出来事かを理解するのが難しくなっている。
そして負け戦の映画化である為か、アメリカではウケなかった。
当時のアメリカはベトナム戦争での敗戦からまだ2年しか経っておらず、反戦ムードの真っ只中にあったのも一因だとか。
また、豪華すぎる俳優陣や広大すぎるスケールも想定した製作費を大きく超過してしまったという。
兎も角、本作の完成度及び評判は非常に高いもので、戦争映画としては空前の規模であったことは間違いないだろう。
見所
本作の撮影にはNATOや軍事博物館、果ては個人コレクターまでが協力し、ハリボテに混ざって大戦当時の兵器や現役の軍用機が登場している。
道路沿いにズラッと並ぶM4シャーマン戦車や歩兵を満載したM3ハーフトラックとユニバーサルキャリア、オランダ軍から借りたレオパルドⅠを改造したドイツ風戦車や大空を飛ぶフィンランド軍から借りた無数のC-47輸送機はその代表格である。
劇中の最も大きな見所は、やはり圧巻の物量が生み出すスケールの大きさであろう。
米英軍に扮したオランダ陸軍空挺部隊によるマジ物の空挺降下シーンは見る者を圧倒すること間違いなし。これはDVD等で実際にご覧になっていただきたい。
主要登場人物/キャスト
【イギリス軍】
◆フレデリック・ブラウニング中将
演:ダーク・ボガード / 吹き替え:土屋嘉男(日本テレビ版)、佐々木梅治(DVD版)
第1空挺軍副司令官にしてマーケット作戦司令官。
モントゴメリーの意向を受けてマーケット・ガーデン作戦を強行する。
その結果が「連合国軍最大の汚点」だったのだが、彼自身は他人事のように語っていた。
◆ブライアン・ホロックス中将
演:エドワード・フォックス / 吹き替え:羽佐間道夫(日本テレビ版)、牛山茂(DVD版)
ガーデン作戦司令官であり、第2軍第30軍団長。
◆ロイ・アーカート少将
演:ショーン・コネリー / 吹き替え:瑳川哲朗(日本テレビ版)、長克巳(DVD版)
作戦に懐疑的な第1空挺師団長。
アーネムから15km地点に降下するも、車両を損失した挙句通信機は不調、オマケに補給物資の投下地点はドイツ陣地内と散々な目に遭う。
最終的に8,000もの部下を失い、帰還後ブラウニング中将に直接作戦を問いただした。
◆J・O・E・バンドルール中佐
演:マイケル・ケイン / 吹き替え:小林勝彦(日本テレビ版)、目黒光祐(DVD版)
近衛機甲師団第5近衛戦車旅団アイルランド近衛連隊第2大隊長。
◆ギル・バンドルール少佐
演:マイケル・バーン
近衛機甲師団第5近衛戦車旅団アイルランド近衛連隊所属。
◆ジョン・フロスト中佐
演:アンソニー・ホプキンス / 吹き替え:石田太郎(日本テレビ版)、宝亀克寿(DVD版)
第1空挺師団第1空挺旅団第2大隊長。
先遣隊としてアーネム橋の北側を易々と占拠するが、無線機の不調と味方の進軍が遅れた為に孤立する。
しかも「老兵と敗残兵しかいない」とされていたアーネムには機甲師団までがいて…
◆ハリー・カーライル少佐
演:クリストファー・グッド
第1空挺師団第1空挺旅団第2大隊中隊長。
フロスト中佐の右腕として共にアーネムで奮戦した。
何故かいつも笠を持ち歩いている。
◆空軍気象観測戦隊隊長
演:デンホルム・エリオット / 吹き替え:村越伊知郎(日本テレビ版)
◆空軍将校
演:ジェレミー・ケンプ
◆スタニスラウ・ソサボフスキー准将
演:ジーン・ハックマン / 吹き替え:上田敏也(日本テレビ版)、三木敏彦(DVD版)
ポーランド第1空挺旅団長。
作戦には当初から懐疑的であったが、彼の懸念通りになってしまう。
【アメリカ軍】
◆マクスウェル・D・テイラー少将
演:ポール・マクスウェル
第101空挺師団長。
◆ジェームズ・M・ギャビン准将
演:ライアン・オニール / 吹き替え:柴田侊彦(日本テレビ版)、滝知史(DVD版)
第82空挺師団長。
◆ジュリアン・クック少佐
演:ロバート・レッドフォード / 吹き替え:広川太一郎(日本テレビ版)、川島得愛(DVD版)
第82空挺師団504空挺連隊第3大隊長。
ボートでの渡河作戦を命じられたが、輸送部隊の遅れから真昼間に渡河を強行する羽目に。
また、ようやく橋を占領したのに「命令だから」と全く進軍しようとしないイギリス軍に声を荒げていた。
◆ボビー・スタウト大佐*1
演:エリオット・グールド / 吹き替え:木村幌(日本テレビ版)、内田直哉(DVD版)
葉巻がよく似合う第101空挺師団506空挺連隊長。
目の前で目標のソーン橋を爆破されるが、イギリス工兵隊によって浮き橋が架けられ、突破に成功した。
◆グラース大尉
演:ニコラス・キャンベル
第101空挺師団所属の若者。
実戦経験がなく、部下のドーハン軍曹に「自分は死なないと保障しろ」と迫る等、経験の無さ故にナーバスになっていた。
だが、無慈悲にも彼の頭に銃弾が…
◆エディ・ドーハン軍曹(101空挺師団所属)
演:ジェームズ・カーン / 吹き替え:青野武(日本テレビ版)、佐々木睦(DVD版)
グラース大尉の部下。経験豊富な古強者。
大尉が撃たれて敵中に孤立するが、どうにか夜戦病院までたどり着く。
死んでいるようにしか見えない大尉の診察を行うよう軍医を脅迫する。
◆軍医大佐
演:アーサー・ヒル / 吹き替え:内田稔(日本テレビ版)
野戦病院の軍医。
助かる見込みのないグラース大尉の診察を行うようドーハン軍曹に脅迫される。
治療後に憲兵へ軍曹の「拘束」を命じる。
【ドイツ軍】
◆ゲルト・フォン・ルントシュテット元帥
演:ヴォルフガング・プライス / 吹き替え:神田隆(日本テレビ版)、原語(DVD版)
西部方面軍総司令官。
崩壊した戦線を立て直すために着任。現場の将兵にカリスマ的な人気がある。
アーネム近辺に降下したイギリス軍を迎撃する。
◆ヴィルヘルム・ヴィットリッヒ親衛隊中将
演:マクシミリアン・シェル / 吹き替え:家弓家正(日本テレビ版)、原語(DVD版)
第2SS装甲師団長。
◆カール・ルートヴィヒ親衛隊少将*2
演:ハーディ・クリューガー / 吹き替え:内海賢二(日本テレビ版)、原語(DVD版)
SS装甲師団長。
橋の死守を命じられ、ナイメーヘンでアメリカ軍を迎え撃った。部下が撃墜したグライダーから作戦書類を回収し早期に連合軍の目論見を察知。橋の爆破の手配をするが、進言を悉くモーデルに却下され続ける報われない人。
有能だが、勝つためには手段を選ばないタイプ。
◆ギュンター・ブルーメントリット少将(西部方面軍参謀長)
演:ハンス・フォン・ボルソディ / 吹き替え:原語(DVD版)
◆ヴァルター・モーデル元帥
演:ヴァルター・コーウト / 吹き替え:原語(DVD版)
B軍集団司令官。
何もない筈の場所に連合国軍が降下したのを自分を捕えにきたと勘違いし、さっさと司令部を引き払ってしまった。
作中の出番はこれだけだが、史実ではビットリッヒの司令部に移動して部隊の指揮を執っている。
ルートヴィヒによるナイメーヘン橋の爆破の進言を「敵の狙いは橋ではない」「反攻の時に必要」と現状をまるで理解していないとしか思えない理由から却下するが、結果としてこれが連合軍に対する挑発となって大損害を与えることになる。
◆グラブナー大尉
演:フレッド・ウィリアムズ / 吹き替え:原語(DVD版)
第9SSパンター偵察大隊指揮官。
フロスト中佐との戦闘で戦死するも、イギリス軍による橋の占領を阻止した。
【その他】
◆スパンダー医師
演:ローレンス・オリヴィエ / 吹き替え:河村弘二(日本テレビ版)、永田博丈(DVD版)
オランダ人医師。
包囲され、壊滅寸前の連合国軍が撤退する時間を稼ぐ為に無謀な休戦交渉に赴く。
◆ケイト・テル・ホルスト夫人
演:リヴ・ウルマン / 吹き替え:武藤礼子(日本テレビ版)
オランダ人。
邸宅を野戦病院として仕方なく開放するが、その結果戦闘に巻き込まれ、子供達共々路頭に迷うことに…
◆オランダ人レジスタンスのリーダー
演:サイエム・ブルーム
レジスタンスのリーダー。
アーネムにドイツ軍の戦車がいることを連合国軍に知らせたが、黙殺される。
その後、アーネムでの戦闘に巻き込まれて息子を失ってしまうことに…
◆レジスタンスのリーダーの妻
演:マーリーズ・フォン・アルクメイヤー
◆レジスタンスリーダーの息子
演:エリック・バント・ウット
父に協力していたが、アーネムの戦闘に巻き込まれて命を落とす。
◆アーネム橋袂の屋敷の老婦人
演:マリー・スミザイセン / 吹き替え:堀越節子(日本テレビ版)
アーネム橋のすぐ近くの家に住む老夫人。
家がフロスト中佐の部隊の拠点にされた為に戦闘に巻き込まれてしまう。
耐えきれずに家を出た瞬間、ドイツ兵に撃たれて死亡した。
◆メガネをかけた精神病患者
演:リチャード・アッテンボロー*3
空爆で破壊された精神病院から逃げた患者の一人。
演じるのは本作の監督を務めたリチャード・アッテンボロー氏。
◆ナレーション
演:リヴ・ウルマン / 吹き替え:伊藤惣一(日本テレビ版)
元帥と会ったよ。満足しておられた。
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その通り。「追記・修正は90%成功した」と言われてね。
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……私は最初から“遠すぎた項目”だと思ってたよ。
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▷ コメント欄
- 素晴らしい作品でも負け戦系はあんまり売れないのか・・・ -- 名無しさん (2015-07-30 09:17:17)
- まあアメリカだし -- 名無しさん (2015-07-31 22:08:40)
- テーマ曲はすごく好き。 -- 名無しさん (2015-07-31 22:36:55)
- 死亡したレジスタンスの記述だけど、巻き込まれて死亡したのはリーダーじゃなくて息子じゃなかった? -- 名無しさん (2015-07-31 23:41:27)
- CGでごまかす今の戦争映画にできない本物の作品のひとつ -- 名無しさん (2019-11-17 09:25:36)
- 地上波で放映された際には地図とテロップで簡易的な説明を入れたらしいけど、それを円盤でもやってほしかったな -- 名無しさん (2023-10-01 07:28:36)
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*2 ハインツ・ハルメルをモデルとした架空の人物。ハルメルは当時存命で、本人の許可が下りなかったらしい
*3 ノンクレジット
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