〜黒猫のココロに残るは想いの残響〜

ページ名:EPISODE-of-Qoo

 

[ナカベエリアの沿岸部にあるシラナミ水族館]

 

[たくさんの人で盛り上がっているライブ会場、そのステージの屋根に、彼女の姿があった]

 

[彼女だけの特等席で、盛り上がる会場を眺めている]

 

SIRANAMI MUSIC FES!!!NEXT ARTIST!!it's!!Orcinus Flowers!!!

 

ォォォオオオオオ!!!!!!

 

[LIVEはカバーアーティスト、Orcinus Flowersの出番]

 

[会場中が今日一番の盛り上がりを見せている]

 

[屋根の上にいる彼女は、そのアーティスト名を聞くと、まるで、待っていたかの様な反応を見せた]

 

クー:…………♪……ん…。

 

カラン『♪旅人の季節は常に、過去へと今を奪うけど、あの日重ねた歌声は、今もまだ響いてる………♪♪』

 

[巫女のような白き歌姫が、観客席の真ん中をステージまで突っ切る様に設けられた道を、歌いながら歩いていく]

 

[そのタイミングで黒猫は動き出した]

 

タッ……タッ…スタッ……

 

 

クー:…………出番………。

 

……ザッ……ザッ…

 

[小さな声でそう呟き、彼女は屋根から姿を消した]

 

 

 

 

 

[数日前、彼女はナリモン水族館に姿を現していた]

 

 

[彼女は真っ先にあるカフェの方へと向かう]

 

 

[ウミウシカフェ、ドーリス]

 

[彼女はそのカウンター前で足を止めた]

 

ヒカリ:いらっしゃいませー、久しぶりっすね、クーセンパイ

 

クー:………ん……ミゾレアイス…2つと…シライトアイス……ねぇ

 

ヒカリ:どうしたんすか?

 

クー:…ルーナちゃん…いる…?

 

ヒカリ:あぁ、いるっすよ。またベルーガシンフォニーでサアニャちゃんと遊んでるんじゃないんすかね、へいおまち。

 

クー:ん…ありがと…

 

ヒカリ:あっ、もう行くんすか!?

 

クー:ちょっと……会いたくて……

 

ヒカリ:そうっすか…

 

ミゾレ:それなら、溶けないうちに持って行ってあげてくださいな

 

クー:うん……いつもありがとう……。

 

ヒカリ:それはお互い様っすよ

 

ミゾレ:いえいえ。

 

[彼女は、二人にお礼を告げると、ベルーガシンフォニーへと向かった]

 

 

[ベルーガシンフォニー、シロイルカと、シロイルカのフレンズがいるこの場所に、ルーナと呼ばれているフレンズがいた]

 

クー:…ルーナちゃん

 

ルーナ:ほぇ?あ、クーちゃん。いらっしゃい

 

クー:……ねぇ、サアニャちゃんは…?

 

ルーナ:いるわよ。ってあ、シライトアイスじゃない。

 

クー:うん…2人のために……

 

ルーナ:ふふっ、ありがと。サアニャも呼んで、束の間のティータイムにしましょ?

 

クー:……うん

 

ルーナ:こっちよ、サアニャ〜上に行くわよー?

 

ガチャ…

 

[ルーナがそう水槽に向かって声をかける]

 

[すると、水槽の中にいた一人のフレンズが水面へと上がって行った]

 

 

 

[ベルーガシンフォニー、バックヤード]

 

[その一角に、三人は固まっていた]

 

クー:ん……美味し……

 

サアニャ:……はむ…♪

 

[クーとサアニャの二人はミゾレアイスを少しずつ、少しずつ、食している]

 

[ルーナの手にはシライトアイスが、そしてルーナもまた、少しずつ、食していた]

 

ルーナ:ふふ、二人とも本当にミゾレアイスが好きねぇ。あむっ、うんっ、おいひ♪

 

サアニャ:…クーお姉ちゃん

 

クー:……ん…。

 

サアニャ:ありがと…♪

 

クー:…うん……♪

 

[サアニャはクーに礼を告げた]

 

[好きな物をプレゼントしてもらえたからだろう、その時、ルーナは口を開いた]

 

ルーナ:……やっと慣れてきた、って感じかな?っとそうだ、クーちゃん

 

クー:…なぁに…?

 

ルーナ:どうせまた旅してからシラナミに戻るんでしょ?

 

クー:…うん ルーナ:じゃあこれ、どうせ私しばらくは行けないから、クーにお願いしようかな

 

[ルーナは彼女に重要な書類を渡す]

 

クー:……うん、お姉さんに渡しておくね…。

 

ルーナ:ありがと、お願いね

 

クー:うん……

 

[そんなやりとりが行われているところに、一人のフレンズが姿を現した]

 

ベル:サアニャ、ルーナ、いますか?

 

ルーナ:あら、ベルちゃん

 

クー:ん……

 

サアニャ:お姉ちゃん…?

 

[ベルと呼ばれたフレンズはクーを見て、手間が省けたと言う表情を浮かべる]

 

ベル:…クーもいたのですか、ちょうどいいですね、ルーナとサアニャに対しての用事が無くなりました

 

ルーナ:あらあら

 

クー:…用事…?

 

ベル:はい、シラナミ水族館へ届けて欲しいものがありまして

 

 

クー:……?……これ…?

 

 

[クーは届け物と聞いて、先程ルーナから貰った書類を見せる]

 

ベル:……既にもらっていたんですか、さすがはルーナですね

 

ルーナ:ベルちゃん、褒めたって何も出ないわよ?

 

ベル:まぁ……ん〜〜…少し暇ができました

 

[ベルは腕を伸ばし、リラックスする]

 

サアニャ:……お姉ちゃん

 

ベル:…ん?なぁに?

 

サアニャ:あー…して?

 

ベル:…あーすればいいの?

 

サアニャ:…うん

 

ベル:わかった。あー……。

 

[ベルはサアニャに言われるがまま、目を閉じ、あーんと口を開く]

 

サアニャ:…ん。

 

ベル:んっ。んっ!

 

[サアニャはベルの口にミゾレアイスを掬ったスプーンを少しだけ差し込む]

 

[ベルは口を閉じ、感じた冷たさに驚くが、それよりも嬉しさが上回ったようだ]

 

ベル:…サアニャ

 

サアニャ:……?

 

ベル:ありがと

 

[ベルはサアニャの帽子を取り、サアニャの隣に置き、頭を撫でる]

 

サアニャ:…うん……♪♪

 

[サアニャも嬉しそうに、ベルの肩に頭をくっつける]

 

ルーナ:…ふふ、クーちゃん、面白いでしょ?

 

クー:……とても…うん……仲良し姉妹…♪

 

ベル:姉妹……と言われれば姉妹なんでしょうか、私もサアニャもここで生まれ育ちましたからね…

 

クー:……初めて知った…

 

ルーナ:あれ、シラナミで話さなかった?

 

クー:……たぶん…私…いなかった…

 

ルーナ:…そっか

 

[その時、クーは急に立ち上がる]

 

ベル:あれ、もう行くんですか?

 

 

クー:……ちょっと、思い出の場所に行きたいなって…

 

 

ベル:……本当に気まぐれで動いてるんですね…ちょっと羨ましいかも

 

 

クー:……私は…居場所があるのが…羨ましいかな…

 

 

ベル:…居場所?

 

[ベルは居場所と聞いて少し疑問を抱く、その時、クーの口から驚きの言葉が飛び出してきた]

 

クー:…うん、私…元は捨て猫だから…

 

ベル:!?

 

[ベルは思わず驚きの表情を見せる]

 

ルーナ:あーあ……クーちゃん、思い出して、約束。飼育員さんに怒られちゃうから、その辺で、ね?

 

[ルーナは、クーに対し、約束を思い出すように促した]

 

クー:ぁ……ぅん……ごめんなさぃ……

 

ベル:…いえいえ、事情が聞けただけでも安心しましたよ。それなら、旅を続けているのも納得です

 

クー:……でも、シラナミ水族館の職員だって…みんな…認めてくれてるから…

 

ベル:…ふふ、ちょっとだけ特殊なんですね

 

ルーナ:まぁ、クーちゃんに至ってはそんな感じかな

 

 

サアニャ:………???

 

 

[サアニャは、小難しい話に全くついていけず、不思議がる様な目でクー達を眺めている]

 

ベル:…あっ、ごめんね、サアニャ

 

 

サアニャ:……うぅん

 

 

[サアニャはふるふると首を振る]

 

ベル:そっか、よかった

 

 

クー:………じゃあ……私…行くね……

 

ベル:ええ、気をつけて

 

ルーナ:また会おうね、いつでも待ってるよ

 

サアニャ:クーお姉ちゃん…ばいばい……♪

 

 

クー:……ばいばい…

 

[サアニャが手を振り、クーはそれを返す様に手を振った]

 

[そして、半日も経たぬ内に、クーはナリモン水族館を後にした]

 

 

[数日後]

 

 

[彼女はサンカイエリアの砂漠地帯を歩きナカベエリア方面へと進んでいた]

 

 

 

クー:…………あの日の歌……また聴きたいな…

 

 

 

クー:………母さん…今は……どうしてるのかな……

 

 

 

クー:……………喉……渇いたな……水……

 

 

 

クー:…………帰ろう……。

 

 

[乾いた地をただひたすら、進む]

 

 

[水に焦がれ、オアシスを探しつつ、彼女は歩き続けた]

 

 

[一つ一つ、丘を越え、時折物思いに耽ける]

 

 

[彼女はその度に、天にその手を伸ばす]

 

 

 

クー:……もう一度会えるって……信じてたいな………

 

 

[必ずそう呟き、再び歩き出す]

 

 

クー:…………暗くなって来たなぁ……

 

 

 

 

[砂の海が暮れ行く頃、彼女は訪れる静寂の中、震える声で、ある歌を歌い出す]

 

 

 

 

クー:………風を超えて……遠い岸辺へ…心は……行ける…のだろう……遠くさざめく……永遠の音楽が……僕等…を招くから……

 

 

 

[彼女は涙を流し、小さな声で一言一言を大切に歌う]

 

 

 

[この日、この時を大切に、彼女は砂塵の彼方へと、消えて行った]

 

 

 

 

[数日後、シラナミライブ会場]

 

[この日、彼女はそのステージに姿を現した]

 

[響き渡る儚きメロディーは、多くの来場者が集うこの会場の空気を統一する]

 

クー:……♪砂を超えて……遠い岸辺で…僕等は……出会うだろう……あの日重ねた…歌声をこの胸に……砂塵…の彼方へ………♪

 

[彼女の透き通った美しき歌声が、会場に響き渡る]

 

 

 

[彼女は一つの役目を終え、また一つ、新たな役目を背負う]

 

 

 

[それは彼女にとって、心に残る声の残響を、奏でる物であった]

 

 

 

 

SIRANAMI AQUARIUM EPISODE of Qoo

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