国際比叡プロダクション_技術

最強兵器（任務管理システム）[]

艦娘たちの任務発注受注、戦果の報告と報酬、そして情報共有を一手に引き受けるシステムが、日本では『赤煉瓦』と呼ばれています。基本的に提督が執務室で操作するものですが、軍用タブレット等の端末から艦娘が操作することもできます。90年代初頭から合衆国が最優先国家プロジェクトとして推し進めた「艦娘戦術データリンクプロジェクト」は、93年に正式サービスが始まった"Adam Smith"システムに結実します。このシステムは、当初目的である軍の通信プロトコルへの鎮守府の統合を成し遂げるのみならず、任務発注受注管理、情報共有、戦果報告から報酬配分までのすべてをまかないます。AT&Tの系譜を継ぐ技術者たちが、負荷と通信量との戦いの末作り上げたこのシステムは、「インターネット」という新技術を利用することで電話線の繋がっている端末ならどこからでもどこへでも接続でき、深海棲艦との戦いを情報通信面で強力に支える武器となりました。後にいわゆるRevolution in Military Affairsとも呼ばれるようになったこの革命により、深海棲艦の発見情報が出てから始末するまでの時間が大幅に短縮。96年のVer2.02リリースからは統合的なBBS機能により情報共有と情報交換を潤すなど、まさしく戦略を変えた超兵器なのです。

これを真似たのが、日本の「赤煉瓦」システムです。NTTが全社プロジェクトとして位置付けて、アメリカからの技術供与も受けながら、インターネットの普及に後押しされて97年に正式リリースにこぎ着けます。当時は、鎮守府に１台だけ置かれた「パーソナルコンピューター」という端末を使って、提督が操作をする形でした。

その成果はめざましく、95年の鎮守府営利化とこのシステムが両輪となって、艦娘の戦力配分の米国並みの最適化が成し遂げられました。つまり、リアルタイムに遠征や出撃といった任務の情報が更新され、各鎮守府が自分たちの現状、艦娘の忙しさや任地との距離など、そして報酬額、と照らしあわせて独自にやるかやらないかの判断を下す仕組みです。こうすることによって、価格メカニズムという見えざる手によって調整されて、必要な任務に必要なだけの艦娘が、一番やりやすい一番向いている鎮守府からやって来る、という体制ができあがったのです。

加えて、鎮守府の事務作業も著しく簡略化・効率化されました。それまでは、たとえば海上護衛任務を海運企業が発注するとき、その旨を海軍に電話で伝え、今度は海軍が鎮守府に電話をかけて、できそうな艦娘が揃っているか尋ねるという、かなり時間がかかり面倒な手続きを踏んでいました。さらに、任務の報酬を得るには書類と証拠写真をポストから郵送しなければならず、一月以上待たされてようやく銀行に振り込まれるという有様だったのです。しかし赤煉瓦の下では、任務は赤煉瓦を通してワンタッチで発注でき、数時間もしないうちに自動的に入札がなされ、自動的に最適な鎮守府が選ばれます。報酬も、デジタルな証拠画像、映像をボタン一つで送信するだけで、4日くらいで振り込まれます。艦娘や提督の貴重な時間を面倒なオフィスワークに費やされることがなくなったのです。

米日英独仏伊露が同様のシステムを持ち、相互に技術供与しあいながら発展させてきて、今では艦娘たちのソーシャルネットワークも兼ねたなくてはならないインフラとなっています（無くても他のソーシャルメディアで代用できる時代になってしまいましたし、インターネット自体がもし切断されても昔ながらの電話連絡で復旧までどうとでもなりますが）。ちなみに、ヨーロッパには大国以外にも艦娘保有国が数ありますが、北欧諸国はドイツの”Flotte Zivildienst”、南欧諸国はイタリアの”Rubino”、ポルトガル・スペインはフランスの”Bonaparte”にそれぞれ所属しており、これらのインフラの通用範囲が各国の勢力範囲を規定する一要因になっています。すなわち、大型のシステムをたった5000人の艦娘のために独自に開発し運用する能力が中小国にないことが、大国への権力集中を促しているのです。※ちなみにイギリスの”Baron Keynes”利用国はイギリスのみで、悲しいことにカナダは”Adam Smith”利用国なのです。

人類の切り札（携帯タブレット端末）[]

当初は１台120万円、今は１台10万円(インフレと消費税25%によりリアルの倍以上の物価)で調達される、艦娘が海戦に持ち込めるタブレットです。それまで艦娘たちの海上での通信は大型トランシーバーに頼っており、弾着観測支援や情報・画像通信などはビニール袋に包んだノートパソコンに大型通信機を取り付けて行っていました。マルチガジェット化の進行と携帯電話の普及に伴い、艦娘の間から「海上でも使える携帯電話ができたら」という希望が出てきて、シリコンバレーのベンチャー企業”Frontiering”が2005年に開発したのが始まりです。日本でも2006年からまずは試験的に利用がはじまり、海図が見やすい、アプリを入れれば弾着観測射撃計算支援ができる、トランシーバーよりもアンテナの精度が高くて通信にも便利、と利点が大きいことから、富士通、日立、ソニーが相争って製作、ソニー・IBMコンソーシアムが最終的に注文を取り付けました。ちなみに、スマートフォンより先にタブレットになったのは、外洋で自前でPtoPに通信しなければならないため、またバッテリー性能が高く求められるためです。当初はその値段から購入に走った鎮守府は限られ（外洋の鎮守府が重宝した）、また艦隊内では旗艦だけが持つことが主流でした。しかし現在は普及による量産化と部品価格の低下、生産拠点を人件費の安い台湾やベトナム、インドに移したこと、によって価格が大きく低下し、だいたいの鎮守府で全艦娘に支給されるほどになっています。今ではAndroidが入ってスマートフォンと同様のOSで動くようになり、手回し充電器を使えば離島の鎮守府でも容易に通信網や高度な計算処理ができるようになって、大変便利です。

艦娘が使う軍用タブレットは、通常のタブレット端末とはかなり異なる特徴を持っています。まず完全防水。水に落としても動きます。それから頑丈で、砲撃の爆風くらいでなら壊れません。艦娘が小破するほどのダメージを受けると、だいたい故障します（その点、わりと使い捨てです）。洋上で艦娘、艦隊同士が通信できるように上りでの通信能力も高く、数百メートル離れた地点同士でも簡単なメッセージ通信くらいならこなせます。セキュリティも頑健で、2009年に本格採用された第２世代以降はカメラの付属機能として指紋認証がつき、さらにもし指紋認証を突破できたとしても、紛失届や所有者KIAが出されているタブレットを使えば照合され、その旨が通信先のタブレットや「赤煉瓦」にすぐにわかってしまいます。

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