こんにちは、石尾勝博です。
20世紀建築の象徴といえるサヴォア邸。近代建築の巨匠、コルビュジエが1931年に設計したこの住宅は、シンプルでありながら革新的なデザインと理念によって、建築界に多大な影響を与えました。
本記事では、サヴォア邸の歴史、特徴、そしてその建築的意義について詳しくご紹介します。
サヴォア邸の歴史と背景
サヴォア邸は、フランスの実業家ピエール・サヴォアとその妻ユジェニーの依頼によって設計されました。彼らは週末を過ごすための別荘を探しており、ル・コルビュジエの革新的な設計に惹かれてプロジェクトがスタートしました。
建設は1928年に始まり、1931年に完成しました。当時、コルビュジエは「近代建築の五原則」を提唱しており、サヴォア邸はその理念を完璧に体現した作品となりました。しかし、完成後に建築的な問題や維持費の高さが原因で使用が限定され、第二次世界大戦中は放置されるなどの苦難を経験しました。その後、1985年に修復され、現在では博物館として一般公開されています。
ル・コルビュジエと「近代建築の五原則」
サヴォア邸は、ル・コルビュジエが提唱した「近代建築の五原則」を具現化した住宅です。この五原則は、建築を機能的かつ美しいものにするための基本理念であり、近代建築の礎となりました。
1. ピロティ(柱による持ち上げ)
サヴォア邸はピロティによって地面から浮き上がった構造を持っています。これにより、地面を開放的に使うことが可能となり、建物が軽やかに見える効果を生み出しています。
2. 自由な平面
構造体を柱に限定することで、内部空間の間取りが自由にデザインされています。これにより、壁に縛られない柔軟なレイアウトが実現しました。
3. 自由な立面
構造壁を取り除いたことで、ファサード(正面外観)のデザインが自由に行われました。サヴォア邸では白い直線的な外観が強調され、シンプルながらも印象的なフォルムを持っています。
4. 水平連続窓
建物全体にわたる水平連続窓は、室内に十分な自然光を取り入れ、周囲の景色を一枚の絵のように楽しむことを可能にしました。
5. 屋上庭園
屋根部分に庭園を設置し、建物の占有面積を補う形で緑地を提供しています。また、屋上庭園は自然との調和を図り、住空間の延長として機能します。
サヴォア邸のデザインと特徴
サヴォア邸の外観は、直線と曲線の融合が特徴です。白いキューブのようなフォルムに、滑らかなスロープや円形のモチーフが加えられ、シンプルながらも洗練された印象を与えます。
サヴォア邸では、スロープを使った動線が建物全体をつなぎます。1階から2階、そして屋上庭園へと続くスロープは、建物内外の一体感を生み出し、住む人が自由に空間を移動できるよう設計されています。
内部空間は、住む人々が快適に生活できるよう計算されています。例えば、家具の配置や動線が最適化されており、住むための「機械」としての家というコルビュジエの理念が具現化されています。
サヴォア邸の影響と意義
サヴォア邸は、近代建築の理論を実際の建築として形にした初期の例であり、その影響は計り知れません。後世の建築家たちに、機能性と美しさを両立させる設計の可能性を示しました。
サヴォア邸は、長い間放置されていた時期を経て、フランス政府によって修復されました。2016年には、ル・コルビュジエの他の作品と共にユネスコの世界遺産に登録され、その建築的価値が国際的に認められています。
終わりに
「サヴォア邸」は、単なる住宅の枠を超え、近代建築の可能性を広げた革命的な作品です。そのシンプルでありながらも緻密なデザインは、現代の建築家やデザイナーに多大なインスピレーションを与え続けています。
フランス・ポワシーを訪れる機会があれば、ぜひサヴォア邸を訪れてみてください。この建物を通じて、ル・コルビュジエが追求した「住むための機械」という理念や、建築と人間の関係性について新たな発見があることでしょう。