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杉元佐一(すぎもと さいち)は日露戦争に参加した退役軍人。その鬼神のような戦いぶりから不死身の杉元の異名をとった。戦死した親友剣持寅次の妻、剣持梅子の眼病の治療費を稼ぐため、単身北海道へ渡って砂金採集を試みたが、刺青の囚人の話を聞いてアイヌの金塊探しを開始した。アイヌの少女アシㇼパや囚人のひとり白石由竹らと組み、同じく金塊を狙う鶴見篤四郎の第七師団と対立する。
目の色は明るめの茶色で、髪は少し茶色がかった黒髪である。顔には横に1本、縦に2本の大きな傷跡がついており、戦争の早い時期についたとされる[2]。過去には菊田杢太郎からは「品がある」、金子花枝子からは「顔が良かった」と評されるなど、傷がつく前は美形として扱われていた様子である。たくましい体躯の持ち主で、顔の傷と同様に全身に戦争で受けたおびただしい数の傷跡がある。
服装は軍帽とマフラーが特徴で、特に軍帽は温泉に入る時も脱がない。軍帽はもともとは日清戦争で病死した菊田杢太郎の弟・菊田藤次郎の物であり、東京での一件を経て杢太郎から譲り受けた。マフラーは小樽に来たときに入手したものである。[3]上はマンダリン・カラーの白いシャツの上に緑色の着物を着ており、袖はたすきで、裾は尻端折りでたくし上げている。さらにその上に紺色のトレンチコートを着込んでいる。下は軍服に長靴を履いており、長靴は半殺しにした将校から剥ぎ取ったものである。[4]
網走監獄襲撃時に二階堂浩平の仕込み散弾銃により左足を損傷、さらに尾形百之助からの狙撃により頭部を損傷し、脳の一部が欠けた。家永カノの治療により一命を取り留め、以降は樺太から北海道に帰還するまで頭部には額当てを、左足には短下肢装具を装着するようになる。
“ | 負けねえぞ… 殺してみろッ 俺は不死身だ!![5] | ” |
どのような苦境にも立ち向かう勇気と、人を労り思いやれる暖かな心を持つ。その優しさゆえに自己犠牲的な側面があり、杉元の父からも「優しいせいでいつも損な役割を引き受ける」と評されている。父自身もおせっかいな性分だったと語っているため、杉元の性格は父親譲りのものであることが窺える[5]。
責任感が強く、寅次のために梅子の目の治療代を稼ぐため、またアシㇼパを守るために自ら死地へ赴く。戦争においても殺した人へのせめてもの償いとして顔を忘れないようにしている。しかし寅次の死を始めとした戦時中の凄惨な経験は、本人の責任感の強さも相まって終戦後もトラウマとなりたびたび杉元の心を蝕むことになる。岩息舞治との戦闘でも、寅次やウイルクを守れなかったことや梅子やアシㇼパへの責任から「役立たず」と自らを責め続けていることが判明する[6]。
対して、こと戦闘に至っては自分を殺そうとする者を容赦なく返り討ちにし、自身の目的を達成するためならば殺人も厭わない残忍性も持ち合わせている。その残忍性は戦場で遺憾なく発揮され、周囲からは「鬼神のような戦いぶりだった」と評価されている[7]。
ただし、その残忍性は本人のもとからの性質だったわけではなく、戦争を生き抜くための防衛機制により生み出されたものである。「悪人は人の心が欠けているから痛みも感じないはずだ」「ロシア人は日本人とは違って苦しまずに死ぬはずだ」と自分に言い聞かせ、本来の自分を壊して別の人間になることで心の均衡を保っていた。こういった人間は故郷へ帰り、家族と過ごすことで再び元の自分を取り戻す可能性もあるが、天涯孤独の身である杉元には元の自分に戻る機会を与えられず、結果として「戦場の自分」が残ったまま現在に至る状況となっている。(杉元曰く、「心がずっと戦場にいる」とのことである)[8]
日常では「戦場の自分」はなりを潜めているものの、その片鱗は雰囲気や臭いとして染み出ているらしく、辺見和雄や都丹庵士に「人殺しのニオイがする」と言われている[9][10]。また、目を患っている剣持梅子も戦争前の杉元と異なる臭いに本人だと判別できなかった[11]。そんな凶暴性と優しさを兼ね備えた杉元を都丹は若い頃の土方歳三にそっくりだと評価している[12]。
網走監獄襲撃時に脳を損傷した後遺症で、頭部に衝撃を受けすぎると周囲の声が聞こえなくなるほど暴走してしまうようになっていたが、岩息との一件以降は暴走することはなくなった。
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杉元一行 | |
構成人物 | アシㇼパ • 杉元佐一 • 白石由竹 |
脱退済み | チカパシ • 大沢房太郎 • 谷垣源次郎 • インカㇻマッ • キロランケ • レタㇻ • リュウ • ヴァシリ |
関連人物 | 月島基 • 尾形百之助 • 鯉登音之進 • 牛山辰馬 |
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