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青文海賊版ドラえもん全巻
青文海賊版ドラえもん(原文:青文機器貓小叮噹)とは、台湾の青文出版社が正規ライセンスを持っていない時代に『機器貓小叮噹』(訳例:ロボットネコドラえもん)と銘打って刊行したドラえもんの漫画単行本。とはいえ当時の台湾においては発行期間、発行部数および影響力が最大を誇る単行本シリーズだった。
単行本第1巻は1976年11月発売(初期の何巻かの1版はかなり改変されている)。ほぼ半月に一度発売され、236巻まで発行された(1993年2月1日発売)。第237巻から『開心漫畫』(訳例:ハッピーコミック)へと正式に改名されている。
「小叮噹」(訳例:ドラちゃん)という言葉は当時香港で使用されていた「叮噹」(訳註:ding dang。鈴の音を表す、英語からの音訳語)を参考に青文創始者・黃樹滋(訳註:当時の社長。創始者であり初代社長)が創作したもの。黃樹滋は単行本前期の発行者でもあるが、黃樹滋は第157巻(1988年9月28日発売)ののち他界したため、次巻より発行人は黃寄萍(訳註:黃樹滋の息子。1988年1月に黃樹滋が死去したのち役職を引き継いだ)に変更されている。
前期の主要翻訳者は譚繼山(第1、2巻は陳宗顯のため除く)。葉大雄(=野比のび太)、小叮噹(=ドラえもん)、宜靜(=しずか)、技安(=ジャイアン)、阿福(=スネ夫)、王聰明(=出木杉)、小叮鈴(=ドラミ)などの訳名を使用した。
初期は原作者を藤子不二雄と表記していたが、後期が第103巻より開始し、作画者を許立昇、譚繼山は編者となった。
第123巻以後は作画者を黃彬彬(第108巻の奥付にて一度作画者を黃彬彬としていたが、表紙では許立昇)としているが、実際のところ黃彬彬(訳註:黃樹滋の娘)は名義にすぎず、作画に携わった劉明昆、許培育、孫家裕、楊永明といった台湾の若い漫画家を包括したものだった。
第140巻および第142巻(新編第43巻)にて黃彬彬を編集・作画者(原文:編繪者)へと改称したり、第141、143~147巻にてまたもや原作藤子不二雄、訳者譚繼山へと改変したりしているが、第148巻ののちは完全に編集・作画者黃彬彬となっている。第226巻から台湾漫画の掲載が始まると黃彬彬の名前が出現することはなく、各作者の名前を直接表記するようになった。
価格は20→25→30→35→40元へと上昇(訳註:台湾元。およそ三倍の数値が日本円)。そのほか上下分冊版もあり10→12→15→18元(第70巻以降は上下分冊版が出ていない)となっている。
中期は35元をしばらく維持していた(ただし徐々に薄くなってゆく)が、ついに第222巻(1992年5月4日)にて35元から40元へと値上げを実行。(ちなみに第221、222巻にてドラ、ジャイアン、スネ夫が出演し値上げを説明する短編漫画を掲載している)。
およそ第1~18巻が20元、第19~36巻が25元、第37~48巻が30元、第49~221巻が35元、第222巻以降が40元。
第1巻および第2巻はすべて藤子・F・不二雄の別作品『21エモン』からで、2人の主役をドラとのび太へと描き換えており、この2冊の初版の内容はのちの再版時に調整されている。第3巻になってようやくドラえもんの内容がスタート(第3巻がてんコミの第1巻に相当)。第19巻は『キテレツ大百科』の2人の主役をドラとのび太へと描き換え。第24巻は『のび太の恐竜』。第30巻以降、台湾人による模倣および改変作品が少し収録されるようになる。
第63巻および第64巻は国立編訳館の漫画審査を回避するため「ドラえもん課外読物抜き刷り本(原文:小叮噹課外讀物抽印本)」へと改称。第63巻は第1、2巻の合本、第64巻は第3、4巻の合本という体裁になっている(訳註:第63巻および第64巻はカモフラージュのため表紙にも背表紙にも「機器貓小叮噹 63」といった表記がなく、代わりに「小叮噹課外讀物抽印本 ①②」といった表記になっている)。
第60~90数巻ごろになると、模倣作品も半数ほどまで増加。第103巻にていわゆる「新編」に突入、元の巻数のほか新たに新編の巻数が併記されるようになる(新編第6集=第103巻。ただし新編第7巻=第105巻で、これ以降は順番どおり)。大部分が模倣作品で占められ、まれに原作がチラッと載るといった状況に。その後、第141巻にて初めて新編の巻数表記が取り消される。第142巻は新編第43巻と表記され、その後は新編の字も取り消された。
第201巻収録「身がわり紙人形」と「こわ~い! 「百鬼線香」と「説明絵巻」」、第201巻重複収録「観光旅行窓」、第214巻収録「ないしょ話…」より後は原作短編が収録されることはなく、残るは『のび太と雲の王国』が第218巻まで連載されることのみ(連載版は最後の三分の一がアシスタントによるイラストストーリーであるが)。
そして第228巻になり、またもや国産作品を大量投入するとともに目次での書名を「開心漫畫(訳例:ハッピーコミック)」に。第231巻以降は「機器貓小叮噹」という書名にもかかわらず、中身はすべてドラえもんのドの字もない台湾作家の作品となっていたが、第237巻にて書名を正式に開心漫畫へと改名。第237巻および第238巻では依然として側面に“機器貓小叮噹就是開心漫畫(訳例:ドラえもんすなわちハッピーコミック)”と表示していたが、第239巻になってようやく開心漫畫へと全面改名し、装丁も大幅にリニューアルされたのだった。
1992年には実質的なドラえもん終了記念として「ドラえもん記念特別巻(原文:機器貓小叮噹紀念特刊)」を発売。ほかにも青文は「ドラえもんセレクション(原文:機器貓小叮噹的精選集)」を発売し、そこでは原作のみを収録した。また後期には一冊10元の薄本もあり、かつてはお菓子のポイント交換景品だった。
最初期はてんコミ版を後追いしていたが、青文は半月に1巻出すため、第18巻(てんコミ第16巻に相当)のあとが追い付かず、カラーコミックス版に切り替えたことも。その後はほぼすべて日本の学年誌の連載分を使っているが、単行本に収録される前の原作エピソードを無断翻訳したものである。
雑誌の内容を直接使用しているため、従来の単行本に未収録のエピソードをふんだんに収録。これにより原作まんがの総収録エピソード数が1100数点に達し、これは藤子・F・不二雄大全集が刊行されるまではどの正式な単行本よりも多かった。
また、藤子・F・不二雄は多数の長編および短編を単行本化するににあたり加筆修正を行うことがあるが、青文はこういった海賊版方式のため、かえって貴重な雑誌でしか読むことのできないオリジナルの漫画を多数とどめている。
このほか初期と後期にまたがって重複収録された短編が存在する。重複収録とはいえ同一短編の別バージョン、たとえば初期に連載版を収録、後期に単行本版を収録という幸運な事例もある。
原作のほか、青文版ドラではドラえもん関係だが藤子原作でない漫画を使うこともあり、たとえば
原作とおよそ同量、台湾人の創作あるいは改変製作した模倣作品が大量に存在する。この類いの作品は一般的に表紙で「原作藤子不二雄」と掲げることはできず、原作とは区別されている。ただしこの区分は確定ではない。
製作手法まとめ:
第228巻になっても表紙のタイトルは「小叮噹」のままだったが、実際の中身にすでにドラえもん模倣作品でなく、台湾漫画家のオリジナル作品がメインとなっており、第231巻以降になるとこれらの作品のみとなる。劉明昆、楊永明、孫家裕、許培育、艾瑞克吉他、嘎嘎、張友誠といった漫画家を擁していた。
第236巻のあとも「開心漫畫(訳例:ハッピーコミック)」へと改名。その後も同様に「巨彈小子(訳例:ビッグボーイ)」へとチェンジ、これらの台湾作品を継続的に掲載し、当時の台湾本土の漫画家にとって重要なフィールドとなった。
「開心漫畫」は1994年1月15日に「巨彈小子」、2003年7月1日に「元氣少年」となり、2009年5月5日に停刊。33年の歴史を終えた。
青文の黃詠雪(訳註:黃寄萍の娘。現・青文出版社GM)インタビューで提供されたデータによると、最もよく売れた時期で、1巻あたり約4万冊売れたという。販路は広く、セブンイレブンなどのチェーン店ですら購入可能だった。
台湾の海賊版時代は、ただ原作を剽窃するだけでなく、ほかの出版社が青文自作の模倣作品を剽窃することもあった。
目下、青文旧版は市場では絶版だが、人気巻は古書店あるいはネットオークションで見つかりやすい。台湾のドラえもんマニアの間で幻のコレクションにもなっている。
1989年から1990年代初期にかけて青文はほかにもドラえもんセレクション(原文:精選集機器貓小叮噹)を刊行。全60巻だが、実際には42巻までしか出ることはなかった。定価40元。中身は完全に藤子・F・不二雄オリジナル作品となっており、模倣したリライト作品は含まれていない。
分量が膨大なため、巻数基準で三分割した(並びに元ネタの出典も明記した):
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