人工言語の評価方法

ページ名:人工言語の評価方法

あらゆる言語を対象とすることを志向する人工言語学は、その性質上、特定の絶対的な基準を設けて、その範疇を限定するようなことがあってはならない。「言語に優劣なし」という俯瞰的な立場は言語学の常識でもあるが、人工言語学はそれ以上に俯瞰的でなければならない。

一方で、人工言語は、れっきとした創作物として看做されているか、そうでなくとも、他の創作物に付随する重要な要素の一つとなっていることも多く、芸術創作との関係は深い。絵画や音楽、映画といった芸術作品には一般に評論があるのに対し、人工言語にはあまりそういう向きはなかった。もちろん比較してコミュニティーが小さいということもあったが、だからといって、芸術作品としての人工言語の優劣を判断することができないわけではない。

人工言語を定量的に評価する古典的な基準として、語彙数をそのまま人工言語の評価とするものがあった。これには様々な批判があり、「人工言語製作において既存の語彙をブラッシュアップしていくことも手間のうちであり、単純に語彙数だけで評価されるのは残念」「自動生成で語彙数は簡単に稼げる」などといった意見があった。

先にあるように、人工言語を評価するための絶対的な基準は置くべきでない (し、実際には反対する意見が現れて不可能だろう) 。そのようなことをすれば、その基準が目的化され、言語の本来のすがたは見えなくなってしまうだろう。評価には特定の目的に沿った評価軸が必要となるが、その評価軸はあくまで相対的なものである。そのことを前提とした上で、各評論者による各人工言語への各評価はなされるべきである。

草案

定量的な評価は、人工言語のおおよその品質が一見して把握できるため、人工言語製作のモチベーション向上につながりやすい。かといって語彙数だけでは人工言語の全体が評価できない。そのため、少々込み入った評価軸が必要になる。[]内は重み値。あらかじめ重み値以下で評価するか、0-1で統一的に評価したのち重み値で重み付けする。

  1. 作りこみ [1.0]
    1. 文法、語彙、言語現象の記述の充実度 [0.4]
    2. 考察の充実度 [0.4]
    3. コンテンツの充実度 [0.2]
  2. 運用性 [1.0]
    1. 文法・語法と認知との整合性 [0.3]
    2. 語彙と生活との整合性 [0.3]
    3. 音韻と調音器官と韻律との整合性 [0.4]
  3. 独創性 [1.0]
    1. 言語現象の独創性 [0.5]
    2. 文化の独創性 [0.25]
    3. 環境の独創性 [0.25]

これら評価を合計すると、最大で 3.0 の評価値が得られる。モチベーション向上のためには、3.0という小さい値より、それを10倍100倍した値の方がいいかもしれない。たとえば、この値をさらに任意の指数で10倍し、単位をつける。c (conliguistics) のあとに指数を書く。例えば 269c2 は 2.69*10^2 すなわち評価 2.69 をあらわす。

場合によっては、部分的な評価を与えたい場合があるかもしれない。たとえば、大項目のナンバリング値 -1 を 2 の指数とみなし、作りこみと独創性のみ評価したい場合は、その数値 1 (2^(1-1)) と 4 (2^(3-1)) を加算して、その値を評価値の前に 5:115c2 のように書く。これは作りこみと独創性の評価の合計 1.15 をあらわす。もしくは、若干見づらくなるが、もっと細かくするために、単に1.1,3.1:75c2のようにナンバリング値を列挙してもいいかもしれない。これは言語現象の記述の充実度と言語現象の独創性の評価の合計 0.75 をあらわす。

この評価方法の思想の特筆点は、従来の語彙数やコンテンツの充実度、独創性などの評価軸のほかに、言語と生活との整合性をあげることである。架空世界を舞台とする芸術言語では、独自の生活、文化、環境、および調音器官、認知の仕組みといった要素が考えられ、言語がいかにその運用に沿ったものかという点を評価するのである。

国際補助語などで、架空世界を舞台としておらず、また文化独立を志向していたとしても (たとえばエスペラントやロジバン) 、実際にはそれらを運用する者の生活があるのであり、それは独自の生活にあたる。したがってそれらは、地球人間による国際的な (さまざまな生活をそれぞれ持つもの同士が会話するような) 運用における整合性を評価することになる。またそのような場合、整合性よりもまずは、文化の独創性において評価されるべきであろう (さまざまな生活をそれぞれ持つもの同士が会話するような文化が独創的かどうかという意味において) 。

ちなみに、地球人間の生活との整合性とは、いわゆる一般的な意味での運用性にあたる。自然言語の複雑性や不規則が、その生活とどのように整合しているのかという点が、評価における問題となるであろう。

符牒言語では、符牒、暗号としての機能をどれだけ果たしているかという評価になる。プログラミング言語では、CPUへの命令やプログラマの思考を記述するものとしてどれだけ最適か、効率的か、という評価になる。ネーミング用言語などで、言語現象がほとんど記述されていない場合においても、想定される元々の話者の生活に沿ったものかという点、すなわちかれらが調音できる音韻なのか、かれらの生活において言い分ける必要のありそうな概念は言い分けられているのか、などという評価ができる。このように様々な言語に適用できるため、この評価方法は相対的ではあるが普遍的であるといえる。

※あくまで草案です。場合によってはさらに洗練してください。



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