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『バットマン:ダークナイト・リターンズ』(Batman:The Dark Knight Returns)は、フランク・ミラー原作・作画による、4巻のアメリカン・コミックスである。1986年2月から6月にわたり、DCコミックからミニシリーズとして出版され、後にグラフィックノベルとして一冊にまとめられた。2001年には続編の『バットマン:ダークナイト・ストライクス・アゲイン』が出版されている。
ヒーローの最後を描いたこの作品は現代的な視点、ヒーローの苦悩の描写、ハードボイルドなストーリーにより、それまで陽性の勧善懲悪ものに過ぎなかったアメコミを大人の観賞に耐えうるレベルにまで高め、大ヒットを記録。一般層にまでアピールし、現代アメコミの原点と称されている。本作によってバットマンの、悪に対して容赦の無い冷酷なキャラが確立され、現在のバットマン人気も本作によるところが非常に大きい。
さらに、アラン・ムーアの『ウォッチメン』、アート・スピーゲルマンの『マウス』が出版されたのもちょうどこの頃であったが、当時ミラーは29歳であった。
かのスティーヴン・キングは「これは、かつて出版されたコミックの中でたぶん最も良質な、傑作だろう」と評している。
本作の影響を受けて1989年にティム・バートン監督による『バットマン』、2005年にはクリストファー・ノーラン監督による『バットマン ビギンズ』が製作された。
日本では、1998年に小学館プロダクションより、柳下毅一郎による訳書『バットマン:ダークナイト・リターンズ』が刊行されるも一時絶版であったが、2009年に新訳版が同出版社より『バットマン:ダークナイト・ストライクス・アゲイン』とセットで『DARK KNIGHT バットマン:ダークナイト』として再版された。
バットマンとしての活動を引退してから10年、両親の死のトラウマにいまだに引きずられていたブルース・ウェインは、ゴッサムシティの現状に憤り、老体に鞭打って自警活動を再開する。しかし、社会はもはやこうした自警行為をよしとせず、バットマンは新たなロビン(キャリー)とともに政府を敵に回した戦いに身を投じていく。
徹底した暴力描写と当時の米ソ冷戦を反映した政治色の強いストーリーで、それまでのヒーロー像を批判するとともに新たなヒーロー像を確立している。冷戦を下敷きにしていたり、ヒーロー活動を批判している点ではムーアの『ウォッチメン』にも似ているが、『ウォッチメン』がヒーローの精神も徹底的に批判しているのに対し、本作ではそうしたヒーローの精神自体には深い敬意を払った内容となっている。
さらにバットマンの誕生に「幼少時に遭遇した獣神による啓発」という説明を与えたのも本作からである。
テンプレート:ネタバレ
1. The Dark Knight Returns引退から10年、55歳になっていたかつてのバットマン、ブルース・ウェインは危険なカーレースに出場するなど、有り余る体力を誤魔化す日々を送っていた。ゴードン市警本部長と引退10周年を祝った帰り、ブルースは両親が殺された街灯の下でゴッサムを徘徊するストリートギャング、ミュータント団に襲われる。ブルースの佇まいに恐れを抱いたミュータント団は逃げ出すが、ブルースは己の引退を深く後悔していた。その頃、アーカム・アサイラムではブルースの資金援助による、トゥーフェイスの顔を元に戻す手術が成功していた。医師団はこれでトゥーフェイスは消え去ったと宣言する。しかし、その後行方を眩ましたトゥーフェイスは、かつての部下の所に現れる。帰宅したブルースは悪夢にうなされる。6歳の頃、ウサギを追って穴に落ちたブルースは、そこから洞窟に行き当たり、古代の獣神、巨大な蝙蝠に遭遇したのだった。眠れぬブルースはTVをつけるが、TVに映ったのは両親が殺された日に見に行った「奇傑ゾロ(en:The Mark of Zorro (1920 film))」だった。両親の死が脳裏に浮かび上がったブルースはあわててチャンネルを変えるが、映るのは陰惨な犯罪のニュースばかり。もはや我慢の限界だったブルースの元に再びあの獣神が現れる。こうしてバットマンはゴッサムに帰ってきた。しかし、社会は彼の自警行為を認めず、医師団は彼を異常者呼ばわりし、ミュータント団のボスは彼に宣戦布告をする。そして、アーカムで今や廃人と化していたジョーカーは彼の復活に満面の笑みを浮かべる。そんな時、トゥーフェイスがゴッサムのツインタワーに爆弾を仕掛け、市を脅迫する(しかし爆弾はジョーカーの部下により既に細工が加えられており、その結果にかかわらず爆発するようになっていた)。死闘の末、トゥーフェイスを捉えたバットマンはトゥーフェイスの傷一つ無い顔の内面に傷だらけの彼の姿を見る。そして、獣神に支配された己の姿も。2. The Dark Knight Triumphantバットマンの自警行為に対応し、政府はバットマンの逮捕を目的としてエレン・インデルをゴードン本部長の後釜に据えた。一方で、一般市民はバットマンの復活を歓迎し、かつて彼に救われた13歳のキャリー・ケリーはロビンのコスチュームを自作し、自警活動を開始する。その頃、バットマンはゴッサムを牛耳るミュータント団にバットタンクで攻撃を仕掛けていた。決着はあっさり付くと思われたが、彼はミュータント団のボスの挑発に乗って直接対決に挑み、窮地に立たされる。止めを刺されそうになったバットマンはキャリーによって救われるのだった。バットケイブにたどり着いたバットマンは洞窟の奥で獣神に向き合う。まだ死ぬときではないと。その頃、ホワイトハウスでは大統領が一人の男にバットマンの処遇を任せようとしていた。米ソ冷戦下、国内で厄介ごとを起こさないために。ブルースの最後の願いを聞いたゴードンは、刑務所に入れられていたミュータント団のボスのところにやってくる。彼は別れを告げると鉄格子を開けた。ボスがダクトを抜けて行き着いた場所にはバットマンとミュータント団の手下が待ち構えていた。再び死闘を繰り広げるが、前とは違い、狡猾な手段を用いたバットマンの前にボスは敗れ去った。 こうしてミュータント団はバットマンの手に落ちた。3. Hunt The Dark Knightミュータント団はバラバラになり、その一部は「バットマンの息子」を名乗って過激な自警活動を開始する。新たな本部長インデルは自身の就任式でバットマン捕縛を宣言。大統領の命を受けたクラーク・ケントことスーパーマンはバットマンと接触し、活動を止めようと説得するがバットマンは交戦をも辞さない態度で拒否する。そんな中アメリカはソ連とついに局地的な軍事衝突を起こし、スーパーマンは米軍支援の為戦場に赴く。一方でゴッサムではジョーカーが部下と共に市民を虐殺して脱走し、上院議員や州知事に対しテロを決行。バットマンは新たなロビンとジョーカーを追って遊園地へ向かった。これまでと違い、はっきりとした殺意を示すバットマンに驚くジョーカー。死闘の末にジョーカーを絞殺寸前まで追い詰めるが、あと一歩という所で躊躇う。ジョーカーはそんな宿敵を嘲笑いながら自ら首を折って自殺する。4. The Dark Knight FallsインデルはSWATを引き連れて遊園地に赴き、そこでジョーカーの死体を発見する。インデルはバットマンの射殺を命じるが、ロビンによって救出される。スーパーマンと米軍に敗北したソ連は、特殊な大型核弾頭を米軍に向けて発射。スーパーマンがなんとか砂漠の無人地帯に向かうよう軌道を変えるのに成功するが、爆発の際の電磁パルスにより全米のあらゆる電子機器が停止する。アルフレッドにジョーカーから負わされた傷の治療を受けていたバットマンは、停電から最悪の事態を悟る。核発射のニュース、停電、飛行機の墜落、火災、巻き上げられた塵による太陽光の遮断、それに伴う寒冷化と立て続けに災害に見舞われたゴッサムはパニックに陥る。バットマンは、「バットマンの息子」や刑務所に収容されていたミュータント団の残党を従えて自警団を結成、街の混乱を鎮めるべく奔走する。一方スーパーマンも核爆発のダメージから回復し、戒厳令を敷いた大統領は、バットマンを管理下におくべくスーパーマンをゴッサムに再び派遣する。バットマンはスーパーマンとの対決に両親が殺された路地を選び、様々な兵器を用意してスーパーマンを攻撃する。ほとんどの兵器はスーパーマンに通用せずピンチに陥るが、本当の切り札はグリーン・アローが放ったクリプトナイトの矢であった。形勢逆転したバットマンはスーパーマンを打ち倒し、心停止して倒れる。時を同じくして、ケイブを自爆させたアルフレッドも静かな死を迎えるのだった。その死によって正体が明らかとなったブルース・ウェインの葬儀に様々な人が訪れる。列席者の中にはクラークの姿もあった。埋葬が済み、立ち去ろうとしたクラークはバットマンの墓から密かな心臓の鼓動を聞く。
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