【参考】ドイツ語の発音方法

このページでは、進撃の巨人の関連曲の歌詞の中に登場するドイツ語を日本人が発音する際の一助となる、ドイツ語の発音と綴りの一般的な規則を紹介する。ただしここに紹介するのはあくまで一般的な規則であり、例外が存在する可能性があることには十分注意されたい。

文字

ドイツ語では、26のアルファベットに加えて以下の4つの文字が使用される。

Ä ä (アー・ウムラウト /aː umlaut/)

Ö ö (オー・ウムラウト /oː umlaut/)

Ü ü (ウー・ウムラウト /uː umlaut/)

ẞ ß (エスツェット /ɛs'tsɛt/)

発音規則

ドイツ語は英語と違い文字と発音の対応性が比較的高く、綴りと発音の対応を覚えさえすれば多くの語彙を組み立て的にある程度正確に発音することができる。以下では、覚える必要のある綴りと発音の対応を紹介する。

母音

五母音（a、i、u、e、o）

五母音は日本語の発音にほとんど近く、ローマ字的に読むことも不可能ではない。しかし厳密には次のようにややずれた位置の発音であり、日本語そのままの発音で歌うよりも正しい位置の発音をした方がカタカナ感が減り、よりドイツ語らしい発音になる。慣れるまでは定期的に確認して矯正するとよい。

• aは日本語の「あ」にほとんど等しい[1]。
• iは日本語の「い」よりやや緊張を緩めた音で、アメリカ英語の"big"の"i"に近い[2]。
  • 伸ばすときは日本語の「いー」と同じでよい[3]。
• uは日本語の「う」よりわずかに口を縦に開いて発音する。ほとんど「う」だが、わずかに「お」を帯びる[4]。
  • 伸ばすときは「うー」よりやや下を奥めて発音する[5]。
• eは日本語の「え」とほとんど等しい[6]。
• oは日本語の「お」にほとんど等しいが、やや口を大きめに開く。アメリカ英語の"all"の"a"に近い[7]。
  • 伸ばすときは日本語の「お」でよい[8]。

ウムラウト（ä、ö、ü）

• äは日本語の「え」とほとんど等しい[9]。
  • 例：Kämpfenケンプフェン（戦う）
• öは口を丸めた状態で「え」を発音すると鳴る、「お」と「え」の中間音（円唇前舌半広母音[œ]）。
  • 例：Schöpferシェプファー（創造者）
• üは口を丸めた状態で「い」を発音すると鳴る、「い」と「う」の中間音。「イュ」などと表記されることもある（円唇前舌狭母音[y]）。
  • 例：Flügelフリューゲル（翼）

二文字で特殊な読みをする母音

• ei、ay、eyは「アイ」と発音する[10]。
  • 例：Freiheitフライハイト（自由）
• ieは「イー」と発音する[11]。
  • 例：Friedenフリーデン（平和）
• auは「アオ」と発音する[12]。
  • 例：grausamグラオザム（残酷な）
• eu、äuは「オイ」と発音する[13]。
  • 例：Feuerroterフォイエロッター（紅蓮の）
• 母音のあとにhが着くとその母音が伸びる。
  • 例：gehenゲーエン（行く）

子音

前項で紹介している母音の発音に子音の発音を組み合わせる事で、ローマ字的な読み方が可能になる。ただしドイツ語の文字が表す子音は英語のそれとは一部異なるので、これを確認する必要がある。

b、d、g

• 普通は英語と同様バ行、ダ行、ガ行の子音[14]となる。
• ただし、後ろに母音が続かない（後ろが他の子音字か文末）では清音化し、パ行、タ行、カ行の子音となる[15]。

s

• sは後ろが母音ならザ行の子音[16]となる。母音でなければ濁らずサ行の子音[17]となる。
• サ行の発音を母音につなげたい場合は、ßまたはss(sを二回重ねる)を用いる。

j

• 英語のyに相当し、ヤ行の子音[18]となる(ドイツ語ではyはほとんど使わない)。

v

• fと同様、ファ行などを構成する子音[19]となる。

w

• vの代わりにヴァ行を構成する子音[20]となる。

x,chs

• いずれも連子音[ks]（ｸｽ）となる。

z

• ツァ行を構成する子音[21]であり、英語のtsに相当する。

r

• 日本語には無い発音で、口蓋垂震え音[ʀ]と呼ばれる。舌の付け根を口蓋垂に近づけて肺からの気流で振るわせて出す。
• うがいをする際の喉の動きに近く、うがいによって感覚を掴める場合がある。感覚を掴んだらその音を前を向いて、水を含まずに発声できるようにする。
• また、文末や子音の前では母音「あ」になる。文末のerは「アー」と発音し、[ʀ]を鳴らす必要はない。
• 歯茎震え音[r]（巻き舌）や有声口蓋垂摩擦音[ʁ]（口蓋垂震え音と同じ場所で摩擦を起こして鳴らす）でも代用可能。

ch

• a,o,u,auの後では、その唇の形のまま舌の付け根と口の上奥の軟らかい部分を狭めて、そこで空気を摩擦させて鳴らす音[22]で、「ハ」「ホ」「フ」から母音を取り去った音にやや近い。
• e,i,eiのあとでは「ヒ」から母音を取り去った音[23]になる。

文末の”ig”

• 文末に来た時のみ、e,i,eiの後のchと同じ発音になる。

sch

• 英語のshに相当し、シャ行を構成する子音[24]となる。

語頭のsp,st

• 語中や語末では英語と同様の機能だが、語頭でのみsの発音がスからシュに変わり、「シュプ」「シュトゥ」と読むようになる。

tsch

• 英語のchに相当し、チャ行の子音[25]になる。。

ti

• 「ティ」ではなく「ツィ」と読む。

pf

• 下唇を上の歯と押し当ててから解放し「ﾌﾟﾌ」と読む[26]。

qu

• 「クウ」ではなく「クヴ」のようにwの発音になる。

脚注

1. ↑ （中舌広母音[ä]）
2. ↑ （前舌半狭母音[ɪ]）
3. ↑ （前舌狭長母音[iː]）
4. ↑ （円唇後舌め広めの狭母音[ʊ]）
5. ↑ （後舌円唇狭母音[
6. ↑ （前舌半広母音[ɛ]。日本語の「え」は非円唇前舌中央母音[e̞]で実際はややドイツ語の方が口が広い。また、語末やアクセントの弱いところでは曖昧化されて中舌中央母音[ə]になるか消滅する場合も少なくない）
7. ↑ （後舌円唇半広母音[ɔ]）
8. ↑ （後舌円唇半狭長母音[oː]。日本語の「お」は円唇後舌中央母音[o̞]で実際はややドイツ語の方が口が狭い）
9. ↑ （後舌円唇半広母音[ɛ]）
10. ↑ （[aɪ̯]）
11. ↑ （[iː]）
12. ↑ （[aʊ̯]）
13. ↑ （[ɔʏ̯]）
14. ↑ 有声両唇破裂音[b]、有声歯茎破裂音[d]、有声軟口蓋破裂音[g]
15. ↑ 無声両唇破裂音[p]、無声歯茎破裂音[t]、無声軟口蓋破裂音[k]
16. ↑ 有声歯茎摩擦音[z]
17. ↑ 無声歯茎摩擦音[s]
18. ↑ 硬口蓋接近音[j]
19. ↑ 無声唇歯摩擦音[f]
20. ↑ 有声唇歯摩擦音[v]
21. ↑ 無声歯茎破擦音[t͡s]
22. ↑ 無声軟口蓋摩擦音[x]
23. ↑ 無声硬口蓋摩擦音[ç]
24. ↑ 無声後部歯茎摩擦音[∫]
25. ↑ 無声後部歯茎破擦音[t͡ʃ]
26. ↑ 無声唇歯破擦音[p͡f]

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