データベース:コンスタンティノープル

Constantinople

紀元前658年、第一丘陵に築かれた当初のビザンティウムは、ドーリア系ギリシャ人 が住む、壁に囲まれた小さな都市にすぎなかった。築いたのはビザスという戦士で、父親は海神ポセイドン、母親はニンフのケロエッサだったと言われている。敬虔な男だったビザスがこの場所を選んだのは、ここに街を築けば繁栄まちがいなしとの神託をデルフォイのアポロン神殿で授かったからだった

当初からビザンティウムは友邦から隔絶されていた。いわば蛮族の大海に浮かぶヘレニズム文明の孤島だったわけだが、それ以上に商人と酔っぱらいであふれかえった賑やかな港町として有名だった。劇作家のメナンドロス も今では失われてしまった戯曲、「笛吹き娘 」の中で次のように述べている。「ビザンティウムは訪れた商人をことごとく酔わせたり。宴は夜を徹してつづき、振る舞われるブドウ酒もまた強し。二日酔いの避けられようはずもなきことかな」

その後、ギリシャ文明が衰退し始めると、ビザンティウムには多様な人々が住むようになり、支配者もスパルタ、マケドニア、アテナイ 、ローマ と二転三転した。そして西暦324年、ローマ皇帝コンスタンティヌス による遷都が行われる（神の啓示を受けたのだと彼は主張した）。遷都完了後に彼がしたのは、構想どおりに街を再建し、ローマ皇帝 にふさわしい壮麗さを付け加えることだった

330年に工事が完了すると、街の名前をノヴァ・ローマ・コンスタンティオポリティナ、すなわち「コンスタンティンの街、新ローマ」に改めた。生粋の住民たちは、その後も何世代にもわたってこの街をビザンティウムと呼び続けたが、街の支配者たちは自分たちを「東ローマ帝国に暮らすローマ人」だと考えていたため、徐々に新ローマやコンスタンティノポリス といった通り名が優勢になっていった。ちなみにビザンツ帝国というのは、もっと後世に生まれた呼び名で、よく使われるようになったのはオスマン 帝国がこの街を征服した後のことだ

西ローマ帝国は、蛮族の攻撃と経済的苦境に屈して滅亡したが、コンスタンティノープルは800年以上にわたって帝国の首都として命脈を保ち続けた。中世はヨーロッパ にとって文字どおりの暗黒時代だったが、コンスタンティープルの輝きは他とは比べ物にならないくらい眩しいものだった。だが、そんなコンスタンティノープルにも苦難の時はあった。インノケンティウス3世の呼びかけによって4回目の、そして最後の十字軍運動 が始まった直後の1204年、あろうことか同じキリスト教国であるラテン帝国によってコンスタンティノープルは占領されたのだ。この占領は短期的なものに終わったが、このとき街に入ってきたのがヴェネツィア とジェノヴァ の商人たちで、前者は金角湾 の南に、後者は北に住み着いた

1261年、ビザンツ帝国の継承者であるギリシャ人、ミカエル・パレオロゴスがコンスタンティノープルに入城し、決定的勝利をおさめた。だが、せっかく奪い返したものの、街は衰退の一途を辿っており、帝国の領土や影響力もかつての数分の一にまで減少していた。この後200年をかけて、かつて栄華をきわめた都市はゆっくりと衰亡していくことになる。裕福な住民が芸術家を後援するという仕組みができあがっていたおかげで、文化の中心地としてはその後も高い名声を保ち続けたが、人口は急速に減っていった

1397年、ビザンツ帝国の首都としての命脈が尽きようとしていることは、もはや誰の目にもあきらかだった。南北と東から成長著しいオスマン帝国が迫り、熟した果実のように街を飲み込もうとしていたからだ。当時のビザンツ皇帝たちは、西ヨーロッパの王侯に助けを求めたが、彼らには彼らの戦いがあったし、カトリック教国としてギリシャ正教を信奉するビザンツ帝国に抱いている心情も複雑だったため、得られたのはおざなりの援助とあてにならない盟約だけだった。そして1453年、100年近くにわたってビザンツが恐れ続けてきた事態が現実のものとなる。オスマン帝国のスルタンにして後に“征服帝”と称せられたメフメト2世 が大軍を率いてコンスタンティノープルに迫り、街を包囲したからだ

その後、街はオスマン帝国の支配するところとなった。彼らが最初にしたのは、街にかつての栄光を取り戻させることだった。スルタンが宗教について寛容な姿勢をとったおかげで、街には様々な人々が集うようになり、征服から100年で街の人口は4万人から40万人へ激増した。イスタンブールと呼ばれることが多くなったこの街の繁栄ぶりは、こうして以前をも上回るまでになった

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