錬金術の秘密について

ページ名:錬金術の秘密について

パラケルススの

諸惑星の性質にて発見された

錬金術の秘密について


序文


 まず最初に我らが救い主イエス キリストの御名を呼ぶとともに、本書を始めるとしよう。この書の中では、劣等な金属をより良い金属へと変容する術、すなわち鉄を銅に、それから銀に、それから金に、などを教えるのみならず、また全ての病気、自説に固執して頑固な医者らが不可能だと思える病を癒すのを助ける術もある。またさらに良いものとして、健康を保持し、死すべき定めの人間を長生きさせ、健全で、年齢において完全な体にする事も含まれる。この「術」は、我らが主なる神、至高の創造主によるもので、あたかも本の中に書かれるように、創造の始めより金属の中に刻まれたもので、我々はそれらから熱心に学べるであろう。そのため、この術をその真の基盤から全てを通じて完全に学びたいと望む者は、それらの師、すなわち神から学ぶ必要がある。神は万物を創造し、あらゆる生き物に自らが配置した特性と自然を唯一知るからである。これら全てを神は確実で完全に教える事ができる。そして神のかつて語られた事、今語る事、やがて語るだろう事から、万物を絶対的に学べるであろう。天と地のいずれにも、万物を創造された方には、秘密も知覚しないものも無く、最も正確に見て知るからである。そのため我々は神をこの最も真なる術の我らが師、作業者、指導者とするであろう。そのため我々は神のみを真似て、神を通じて、その指が金属の中に刻んだ自然の知識を得るのを学ぶ必要がある。それにより、いと高き主なる神は被造物たる我らを祝福し、我らの道を聖別するであろう。それにより、この作業は我らの始まりから望んだ終わりまでもたらす事ができて、その結果は我らの心に大きな喜びと愛を生み出すであろう。


 だが、自らの意見にのみ従う者は、自らを大いに欺くのみならず、彼に従って崇拝している他の全ての者らも欺き、破滅させるであろう。人類は確実に無知のうちに生まれ、自らについては何も知る事も理解する事も無いからである。それらは神からのみ受け取り、自然から理解するのである。それらから何も学ばない者は、自らの発明と意見の巧みさと技芸に従う、アリストテレス、ヒッポクラテース、アヴィケンナ(イブン スィーナー)、ガレノスなどのような、異教徒の師や哲学者のようなものである。彼らは全ての自らの術を、自らの意見にのみ基盤を置いているのである。そして、彼らが自然から何らかのものを学んだとしても、終わりに到達する前に、自らの幻想、夢、発明などによって破壊し、そのため彼らとその信奉者らは、完全なものは何も見いだせないのである。


 ゆえに私は錬金術の特別な書を書くように刺激された。これらは人間が見つけたものではなく、自然そのものからであり、それらの性質と力は神自身がその指で金属に刻んだものである。この刻印において、メルクリウス トリスメギストスは模倣者であり、全ての賢者と、この術に愛と熱心な望みとともに従う者ら全ての父と呼ばれるのも故無しではない。この者は神のみが唯一の造物主であり、この術の全ての創造物の原因にして起源であると示し、教えた。だがメルクリウスは異教徒らが行うように、生き物や見えるものに神の力と美徳を帰する事はしなかった。次に、全ての術は三位一体の神、すなわち御父なる神、御子なる神、すなわち我らが救い主イエス キリスト、聖霊なる神、3つの違ったペルソナを持ちつつも1つの神から学ぶ必要がある。そのため私は本書を3つの部分に分けた。まず第1部では、この「術」に何が含まれているかと、それぞれの金属の特性と自然についてである。第2部では、効果を得るために金属の力を働かせもたらすには、人はどのようにすべきかである。第3部では、太陽や月からどのようなチンキが生み出されるかである。


第1章 純粋な火について


 この最初の場所では、私はこの術が含むものは何か、それらに属するのは何か、その性質は何かについて宣言するよう努め試みるであろう。
 この術が属する第1にして主要なものは火である。これは常に1つのものとして生きて、同じ性質と働きがある。そして、他の何物からも命を受け取る事は出来ない。それゆえ、全ての火が秘密の事柄に隠されているような条件と力がある。そして、生命を与える力については、太陽は神のみにより定められ、世界の万物の秘密のもの、現されたものの両方に健康を与え、火星、土星、金星、木星、水星、月の圏も、太陽から借りたもの以外の何の光も与えられない。これらは自らは死んでいるからである。にも関わらず、これらが点火されたら、先に述べたように、その性質に従ってこれらは働き、作業するのである。だが太陽はその光を神のみから受け取り、神は自らで太陽を支配し、神は自らの中で太陽を燃やし輝かせるのである。この術においても別では無い。かまどでの火は太陽と比較され、太陽が大世界でなすように、かまどと瓶を温める。この世界が太陽無しには何も生み出せないように、この術でも、この純粋な火無しには何も生み出せない。これはこの術の最大の秘密である。火はその中に万物を含んでおり、他にあるわけではない。火は自らにより養われ、欠けたものが無いからである。だが他のものは火を楽しみ、火から命を得るのである。そのため私はこの最初の場所で、火について宣言する必要があった。


第2章 そこから様々な金属が起き上がる複数の火について


 私はまず最初に自ら生きて存在し続ける純粋な火について書いた。次には私は多数の霊あるいは火について語るとしよう。これは様々な生物の存在する原因であり、それらは別から見つける事は出来ず、金属で見る事が出来るように、あらゆる部分が同じであり、別のものは無いのである。太陽は金を生み出し、月は違った金属、すなわち銀を、火星は別のもの、すなわち鉄を、木星は別の種類の金属、すなわちスズを、金星は別のもの、銅を、土星は別の種類のもの、すなわち鉛を生み出し、これらは全てお互いには似ていない。同様の事は人間や他の生き物にもいえて、それらの原因は複数の火にある。ある熱により、その腐敗から悪しき世代を生み出す。海が洗う事で別のものも造り、灰も別のものを、砂も別のものを、火の炎は別のものを、炭が別のものを、などと続く。この生物の多様性は、純粋な火によるものではなく、様々にあるエレメンツの領域からである。そして太陽からではなく、7惑星の軌跡からである。そして、世界で個々が違っているのは、これが理由である。火の熱は毎時間、毎分、変化し続けているように、他のものも様々になり、エレメンツの中で火の変容が起き、それらの体にこの火により植え付けられるからである。太陽が生み出すものよりもエレメンツが多く混ざり合ったものは無く、月はより少し濃く、金星はより粗雑である。そしてこの混ざり合いの多様性に従って、様々な金属が生み出される。これにより、金属はお互いに似ている事は無いようになる。そのため、この金属の多様性は、エレメンツの混ざり合いにより造られると知るべきである。なぜなら、それらの霊もまた様々で類似性が無いと見出せるからである。もし、純粋な火から生み出されたとしたら、それらは似たものとなり、区別が付かなかっただろう。だが、形の多数の多様性は増大し、生き物の間でも同様に行われている。これにより、なぜ金属はかくも多くの様々な形が見つかるのか、それらはお互いに似ていないのかも、容易に理解できるであろう。


第3章 太陽の霊あるいはチンキについて


 次に私は、諸惑星あるいは金属の霊について述べるとしよう。太陽(金)の霊あるいはチンキは、その始まりを純粋で微細で完全な火から取ったものである。これにより他の全ての金属の霊とチンキよりも卓越したものとなっており、それはこの火により常に固められているからである。この火は飛び去る事も、自らで消費する事も無く、この火により燃え尽きる事は無く、より透明で美しく純粋となるのである。また、他の金属の霊あるいはチンキとは違い、どの熱も冷めさも他の事故も、これを痛められない。そしてこの火に触れたものは、全ての事故や病から守られ、損害なくこの火を保つ事が出来よう。この金属はそのものに力と徳がある訳ではなく、そこに含まれた太陽の霊から来ているのである。太陽は水銀であり、この火によって養う事も損傷する事もできず、そこから(通常は)飛び去るが、この火から飛び去らずに太陽の中にあるならば、常に留まりその中で固められると私は知るからである。これは最も確実な判断を我々に与え、その霊あるいはチンキからは、(金属は)このような恒久性を受け取るのである。そのため、もしこの霊がこの水銀の中に存在できるなら、それを受け取ったならば人の体の中にも同様に働くと誰でも判断できる。我が「Magna Chirurgia(大いなる外科手術)」の書の中で充分に述べているように、太陽のチンキは用いた者の病を回復し防ぐのみならず、健康と長寿も与えるのである。同様に、他の全ての金属の力と徳も、神とその真理を欺くような人々や世界の奸智からではなく、真の実験から知るべきである。そして、これらの奸智の上に根拠を建て、その望みを置いている者らは、惨めに欺かれるのである。


第4章 月の霊あるいはチンキについて


 太陽のチンキについて述べたので、次には月(銀)の白いチンキについて語るのが残っている。これもまた完全な霊が造られるが、太陽の霊よりもやや不完全なものである。にも関わらず、これは続く他の全ての金属のチンキを純粋さと微細さの両方で超えており、これは月を扱う全ての者らと田舎者に良く知られている。この月は他の金属のように錆びる事も火で消費する事も無いからである。例えば土星(鉛)は火から飛び散るが、これは行わない。これらの情報から、このチンキは以下の他のものらよりも遥かに優れている。このチンキは月を保ち、事故や形を崩す事無く火の中でも常に保持させるからである。そして、これらから充分に発現させ、これ自身の腐敗しうる金属から水銀を造れるとしたら、これから摘出したものを他の金属へと入れるならば、どのような効果があろうか? 同じように、損傷や事故を防ぐのではなかろうか? 然り、確実に、自らの金属の中にこの水銀を造られるならば、人の体の中にも同様に行えるであろう。それにより、健康を保つだけではなく、長寿を与え、病も癒し、自然の通常の軌跡をも超えさせるのである。より高く、微細で、完全な薬であるほど、より良く完全に癒すからである。そのため、薬草といったような植物のみを用いている者らは無知な医者である。これらは容易に腐敗し、堅固で安定した働きの効果をもたらすべく努めるが、それらは空しいもので、風へと消え去るのである。だが、彼らについて何ゆえに多く語る必要があろうか? 彼らは大学では、より良いものを何も学んだりはしなかったのだ。そのため彼らが始めから学び直すように強いられたとしたら、それは大きな不名誉だと彼らは考え、未来のために他の事をなし、そのため、彼らはなおも自らの古い無知な方法を続ける事になるのである。


第5章 金星の霊について


 私は白い霊、あるいは白く輝くチンキについてこれまで述べた。次に私は赤い霊について語るとしよう。これは上位の粗雑なエレメンタルの混合物から造られるもので、これもまた結び付いていて、以下の他の金属の霊とチンキよりも完全な形質である。なぜならこれは、他よりも長く火に耐えて、以下の他の霊らのように速やかに溶けたりはしないからである。また、風や火の湿気も、火星ほどには有害ではない。そのため、これは火により長く耐えるのである。この力と性質は金星(銅)のもの、すなわちこの金属に染み込んだ霊からである。次に、金星の金属の中で働く効果は、人体の中でも自然が許す限りにおいて同様に生み出される。これは、どの事故も体内に侵入できず、風や水も傷つけないまでに傷を防ぐ。そしてある程度の病全てを追放する。だがこの霊はハンマーに耐えるように金属を砕き、人体にも取り込む際にも、体が受け入れないならば、良い効果を発揮しない。そのため、医者がこの霊を用いたいと望む際には、金属の卓越した知識が大いに必要である。ゆえに何ら損傷の危険も無しに取り込める、より完全な霊を用いる方が遥かに良い。にも関わらず、太陽や月(金や銀)の霊は高価で貴重で、誰もが買って治癒に用いれるとは限らないので、個々の人間は自らの能力、達成したい事柄に応じて取るべきである。また、誰もがこれらの医薬を用意する事が出来る富を持っているとは限らないので、自らが持てるものに応じて取る必要があるだろう。そして誰もがこれらから容易に集められるであろう。金属の薬は、植物や動物のものよりも、治癒の力は遥かに優れているからである。そして、金星の霊も同様である。


第6章 火星の霊について


 次には火星(鉄)の霊について語るとしよう。これは先に述べてきた霊よりも、より粗雑で燃えやすいエレメンツの混合物である。だが火星の霊は他の金属よりも強く耐えられ、火によって容易に溶けたりはしない。だが、これは水と風の両方によって大いに損傷する。そしてこれらにより消耗され、実験により現れるように、風によって燃やされる。そのため、これの霊は先に述べた上位の霊らよりも不完全であるが、堅固さと乾燥は上位と下位の両方で、全ての他の金属を超えている。これは太陽や月のように完全な形質を保ち、ハンマーに耐えられるだけではなく、木星や土星などのように自らの内にあるものからも耐えるからである。そのため金属の中で働くこの性質は、人体の中でも同じ効果がある。すなわち、これは倦怠感を生み出し、特に不快な病のために飲むならば、体のその部分にひどく傷みを与える。にも関わらず、この限界を超えていない怪我のために用いたならば、それらを清めて純化させるであろう。そのため、この霊は神と自然が定めた上位のものらより、力と徳において大いに劣っている訳では無い。


第7章 木星の霊について


 木星(スズ)の霊については、これは白くて薄い形質であるが、火星のようにはハンマーに耐えられず、脆くて砕けやすい性質があると知る必要がある。そのため、これは脆い金属である。この例としては、月(銀)と混ぜ合わせる事で、大いに労働しない限りは、その最初の打ち延ばしがほとんど働かない。同様の効果は土星を除いた全ての金属にもある。これは人体にも同様の効果を生み出し、体の部分が燃えたり蝕まれたりさせ、その真に必要で完全な働きを防ぐようにする。にも関わらずこの霊は、特に神と自然が授けたその限界を超えないならば、癌の潰瘍、瘻孔などを取り除く性質もある。


第8章 土星の霊について


 土星(鉛)の霊は、エレメンツの乾燥して冷たく黒い混合物より造られる。これまでの全ての他の金属のなかでも、これは火に最も弱いもので、一方で太陽と月は耐えられるのが示されているが、土星がこれらに加えられたとしたら、明白にこれらを洗練させる。にも関わらず、それらの性質から、その堅固さは消え去る。同じ働きが人体にもあるが、木星や火星のように大きな痛みと苦しみを伴うであろう。その理由は、この混合物には冷たいものがあり、それにより温和には働けないからである。だがこの霊にはその限界と性質の内にある瘻孔、癌、潰瘍を癒し、外側の病、月の外側の不純を追い払う力と徳がある。だが、これを慎重に用いなかったとしたら、癒すよりも痛める事が多いだろう。そのため正しく用いるには、その性質、何の病を癒すのかを知る必要がある。そして充分に考慮して用いるならば、それにより損傷が起きる事はないだろう。


第9章 水星の粗雑な霊について


 他の上位の霊らに従うのみの水星(水銀)の霊には、特定の形もその形質も無い。そのため、全ての他の金属を受け入れる。蝋に全ての印の形を押されるように、このエレメンタルの霊は他の金属の霊らと対照する。もしこの霊が太陽の霊に入れられるならば、それ自身を生み出すであろう。月ならば、それ自身を生み出し、他の金属でも同じ効果があり、同意し、それ自身の性質を受け取るであろう。これは、男が女にすらなるかのように、その金属に従って、先に述べた他の霊らに適するようになるからである。太陽は水星の体だからであるが、例外は太陽は水星を支え固めている事である。通常の水星は形なき気体である。だが、これは先に述べた全ての霊らに仕えており、その金属の霊やチンキだけではなく、金属そのものも同様に作り出し、先に述べたチンキも、それ自身の働きをするのである。だが適切な方法で行わないならば、この種のチンキを完成させるのは不可能である。例えば、このチンキを活性化させるための火が強すぎたりしたら、これを失わせ、作業できなくなる。また火が弱すぎたならば、同様の結果となろう。そのため、ここでは、この術で何の媒体を行うべきか、その力と性質は何か、またどの順番で行うか、どのようにチンキを色づけ、完全に働かせるようにすべきかを知る必要がある。これにより、この霊は芽生え、現れるであろう。これにて、私はこの第1の論文を簡潔に結論し、終わらせる事にする。


第1の論文の終わり


錬金術の秘密について 2
↑ パラケルスス