ディーの日記 1583年6月14日 後編

ページ名:ディーの日記 1583年6月14日 後編

同日 夕食後


 夕食後、余らはこの場所へ来てしばし留まったが、何も見たり聴いたりはしなかった。だが余らのいずれも知覚できずにいたが、先のメイドがいる気配を感じた。


ディー「余らは汝の名前を喜んで知りたいと望む」
メイド「我が名はガルアー(Galuah)です。あなた方の言語では、私はフィーニス(Finis)と呼ばれています」
ケリー「彼女がこれを喋るとともに、突然に現われました」
ディー「それ(Finis)はラテン語か」
ガルアー「そうです」
ディー「汝は光の娘や、娘の娘と呼ばれる者らの1人か?」
ガルアー「違います」
ディー「余らの問題とはいささか無関係でありつつ、汝の判断を聞くのが余らには重要な事を尋ねても、汝は不快に思わないだろう。トリテミウスは良き天使は女の姿で現れたりはしないと述べている。この偉大な学者のこの言葉は、彼の小著『皇帝マクシミリアンの8つの質問』にこう書かれている。第6の質問。聖なる天使らは、様々ではなく常に男の姿で現れている。良き霊の姿を見る時には、常に女や獣ではなく、男の姿であると聖書に記されているからだ、と」
ガルアー「私が理解したと貴方様は考えてください」
ディー「まことに。神は余がそうすると知るであろう」
ガルアー「まず最初に、神の霊らは低位の者らには理解不能であるのは明らかです。高次の階級の天使らも神とは比較にならず、低位の者らもまた高次の天使らとは比較にならないからです。そのため、天使の階級に応じた事柄も理解不能です。
 真に天使ら自身は、男でも女でもありません。そのため天使らは想像力のどのような比率でもなく、彼らが得意とする思慮と相応しい意志により姿を取るのです。我ら全ては神の意志の御使いの霊であり、誰のためにあるのでしょう? それは、自然の中にある万物のためであり、神の栄光と人の使用のためなのです。そのため、我々は自らのためではなく、計り知れない姿によって仕え、それにより我々の行動に限界があるのです。もしもトリテミウスが、女は神の霊を持たず、男と同じ形質で形作られたものの、男とはある程度違った比率にあると述べられ、トリテミウスが女の魂を形質の形に従って男の上位性から分離できるならば、彼の意見は正しいものでしょう。ですが、男と女の中には、永遠なる比率、調合、聖別があり、そのため聖別された調合にある神の永遠なる御使いも、両方の性の体を取れます。私が言うのは姿の意味です。貴方がたの両方ともHomo*1と読むので、両者とも同じと見出し、内なる形質で同じ威厳を持ち、全て同じなのです。ですがトリテミウスは、全ての女が汚染される汚れについて(勿論、彼には汚れが無いとして)、自然哲学者の理性により語っています。ですが、超自然の熟達者、働き手である彼よりも、人は自然をより味わっています。彼はまことに自らの自然の発明について結論しているのです。私自身についてトリテミウスに答えると、私はフィーニス、私は人の卓越性の最後である知恵の光線です。
 また、娘や、娘の娘と呼ばれる者らは全て私の中に含まれ、真の知恵を達成しています。もしトリテミウスが気付くならば、真の知恵は常に女の衣を身にまとっているのを彼は知ったでしょう。乙女の純粋さよりも称えられるものは無いからです。
 神はその裁きにおいて、トリテミウスをどのように報いるかを知るでしょう。
 貴方がたが、最初の基盤と、我が名前の計測に関して、これらの議論が充分でないと考えるならば、私はより詳しく説明しましょう」
ディー「これらの議論は余を大いに満足させた。だが、これらの事柄へのあら捜しをしようとする他の者の口を防ぐために、汝の判断を聞く必要がある。無論、余自らの(書を)書く問題は、今従わなくてはならず、その理解のために大きな議論や教授が必要だと余は信じている。だが今のところ最も重要なのは、余らの書く行動についてである」
ガルアー「この書は、次の火曜日から始めなさい。私自身が貴方がたの指導者となるでしょう。そして私の名前のように、私が終わりまで導くでしょう。全ての他の用いるものは、あなた方を導く神の霊の判断と比率に従うでしょう。
 私自身は貴方がたを導く指となります」
ディー「(何も書かれていない)」
ガルアー「神の指は多くの山々へと伸びています。その霊は多くの場所の弱き者らを慰めます。その光が留まる場所には、乏しさを感じる事はありません。私が何者であるかを理解するならば、答えには充分だからです」
ディー「この書を書き始めるにあたって、汝の教授を求めるべきか?」
ガルアー「そうしなさい。世界の山々が平地となるとしても、神の霊は決して揺らぎません」
ケリー「彼女は夕食後からずっと岩の上に座っています」
ガルアー「山々を通るのに私は疲れていたからです」
ディー「ポーランドの君主アルベルト ラスキについて、余らは人々を統治する者として神に選ばれたと保証され、余らも愛と誉れを持っているが、彼について汝は何が言う事はあるか?」
ガルアー「明日、それらについて私に尋ねなさい」
ケリー「彼女は笑みを浮かべ、灯りをともしました」
ガルアー「私が笑ったのは、明日述べるからです。真に、私は笑ったように見えます」
ディー「イザベル リスナーに関して、彼女についてどうなったか? 彼女を長く苦しめてきた悪霊についてであるが?」
ガルアー「信じる事が何よりも大切です。
 我々が話したことで、その合意を与えています。
 我々に語る者は、そのような質問を尋ねるべきではありません。
 語る時、それは測られるからです。
 先に述べられた通り、世界の丘や山は崩れても、神の霊は決して揺るがないからです」
ディー「万物の目的であり、目的の目的である(全ての誉れ、称賛、感謝を与えられるべき)神よ、余らを祝福し、その恵みを授け、その憐れみを余らに豊富に注ぎたまえ」
ガルアー「私の名を、一般的ではなく、特別に理解しなさい。
 過ちを避けるべく私は述べました。
 この目的を保ちなさい」
ディー「我らの神は信仰深い者らを救いの終わりまで保つであろう。常に忍耐と共に信仰する我らに、祝福された全能の三位一体よ、その御名の誉れと栄光のために、我らにそれらを許し、固めたまえ。アーメン」
ケリー「彼女は輝きとともに去っていきました」


ディーの日記 1583年6月15日
↑ ディーの日記


*1 人間。もっともここでは男の意味と思える。