ディーの日記 1583年6月14日

ページ名:ディーの日記 1583年6月14日

1583年6月14日 金曜日 午後4時半


 黄金の幕、カーテンが現れ、水晶玉全体を覆っていた。以前には他の全ての幕、カーテンは部分や作業のための道具に対してのみ用いられていた。これはエドワード ケリーが水晶玉を見るとすぐに現われていた。
 余は長くて何度にも及ぶ感謝の祈りをなして、恵み、慈悲、知恵を求めた。また先に書いた疑問への光、解決の特別な教授もである。
 やがて、赤いペチコートを着たメイドのような姿の女が現れた。彼女の上半身には赤いシルクがあり、その黄色い髪はスコットランドの女のように丸く束ねていた。彼女は水晶玉に属する緑色の絹の横に立っていた。そして彼女は「我が友らに神の祝福の幸運があらんことを」と述べた。


ディー「神により我らが自由にならん事を。アーメン」
ケリー「私はこの女を今まで見た事がありません」
メイド「あなた様は私を過去にも見ていますが、我が見た目は違っていました」
ケリー「彼女はとても早く、長い道を歩いています」
ディー「急いでこのような早い旅をするのはなぜか?」
メイド「私は家に帰らなくてはならないからです。家からこの7夜離れていましたから」
ディー「場所の距離は汝の家への旅への時間を短くしたりはしまい」
メイド「イエス様、今、ディー様はそのメイドといた時のように私に怒るでしょう*1。家にいようとも、家から離れていようとも、どの行動も影響されないでしょう?」
ディー「では、神は汝を家へと急がせるのを許そう。そして汝の家も、余ら全ても、いと高き神が喜ばれる家へと向かうであろう」
メイド「あなた様は、私に賢く話し過ぎています」
ディー「神は余に賢く語るようにさせ、神は余の心から全ての虚栄を取り去った」
メイド「では、あなた様は私を長い道を進む虚しい家政婦と考えるでしょうね。でも私には、世俗の知恵は全て虚しいものに感じます。私は多くの者らよりも良い状態にあり、家から離れているものの、家へと向かおうとしているからです。一部の者らは家が無かったり、家へと帰ろうとしないからです」


ケリー「今、別の背の高い老人が来ました。全身に黒い服を着ていて、頭には帽子をかぶり、長い白髭が伸びています。彼はメイドにこのように述べました」
老人「メイドよ、どこへと向かうのか?」
メイド「貴方様も、ここにいる者らと同じような者でしょうね。彼らもまた私が何処へと向かうのかを知りたがっていましたから」
老人「我は汝を前にも知っていたのではなかったか?」
メイド「あなた様が私を以前にも知っていたとしたら、今でも私を容易に知っていたでしょう」
老人「どこに汝は居たのか?」
メイド「貴方様の真面目さが、その古い見た目のように良いものならば、私は語るでしょう」
老人「これらの言葉はとても大きなものだ。汝は我と知り合おうとしないのは何ゆえか?(我は汝に損害を与えた事は無かった) 我は汝と知り合いたいと長い間思っていたのだ」
メイド「偽りの真面目さから、私は決して知り合いとはならないでしょう。あなた様の年齢、名声、髪の毛、素顔も、私が知り合いたいと願わなかったでしょう。あなた様は、真の知恵を喜ばなかったからです」
老人「ならば、汝は娼婦のように自らの道を進め」
メイド「悪しざまな言葉が娼婦を表すならば、あなた様は自らを述べているのです」


ケリー「今、彼女は前へと進んでいき、老人は視界から消え去りました。次には、溝の側面に座っている若い男が現れました。彼に対して彼女は言いました」
メイド「貴方様はなぜそこで泣いているのですか?」
若者「僕はあなたの非礼に対して泣いているのです」
メイド「貴方様は私の心を動かしません。否、(真に)貴方様は私を憐れみへと動かしません」
ケリー「彼女は彼の涙を舐めると言いました」
メイド「他の誰の涙も塩っぽいのに、あなたのにはありません」
若者「僕のために何かをしてくれませんか?」
メイド「ああ、この涙を直すのは、強火で腐った麻を乾かすのと変わらないわ」
若者「君が僕の目の前で首吊り刑にされたならば、もう泣く事は無いだろうね」
メイド「全ては一般に自らについて教えるものです」


ケリー「若者は地団駄を踏んで怒りつつ、去っていきました。そして次には、多くの子供のもとへと彼女は来ました。ここにはテーブルの上に多くの食べ物があり、子供らはそこに手を伸ばせるほど高くはありません。子供らはメイドの服を引っ張って、食べ物を指さしました。彼女はテーブルの周りを歩くと、そこには覆われていない1つの皿があり、そこには露のようなものがありました。彼女は指を露に付けて、子供らがそれを舐めるようにさせると、彼らは倒れて死にました」
メイド「私ではなく正義を非難しなさい。子供らが前にこの食物を味わっていたならば、彼らは生き続けたでしょうから」


ケリー「次に彼女はとても弱っている痩せた顔立ちの男と出会いました。彼は自らの杖でよろめいていて、こう述べました」
弱った男「神のために私を助けてください」
メイド「私は出来るだけの事をします」
ケリー「彼女が男に近づいて立ちあがらせようとするものの、男は倒れました。そして再び起き上がらせるものの、再び彼は倒れました。ですが彼女はなおも彼が望む事をしようとしました」
メイド「善意は形作るものの、物質は充分では無かった。これは自らのせいです」
弱った男「おお、真に私を助けてください」
メイド「貴方様を助けるには遅すぎました。私はこの道を前にも何度も通ったのに、貴方様は我が手の助けを求めた事はありませんでした。助けを求めない者は、求めるまでは、助け手の利益は無であると言われる通りです」


ケリー「弱った男は去っていきました。そして彼女は彼から離れていき、次には彼女は丘を登ろうとする男と出会いました。この男は衣服を全て野バラとブライアーで切り裂かれています。また、丘の頂上には多くの醜い小人の人形がいて、彼に向かって石を投げています。そして登ろうとする彼を丘の麓へと何度も突き落としています。彼の手や足首の肌は擦り剝けて、生身となっていて、彼は激しい苦痛とともに手足で丘を登っています。次に、丘の麓で食事をしている者らがいて、彼に対しても食物を提供しましたが、彼はそれを無視して丘を登っています。これらの者の一人が、ここで休むが良いと述べました」
登る者「疲労無き者には苦しみは無い」
ケリー「彼女は立って彼を見ています」
登る者「私を助けてくれませんか?」
メイド「あそこへ昇るのは、貴方様には不可能です」
登る者「私だけではそうでしょう。そう考えたりもしません。それは不可能です」
メイド「私ができるように最善を尽くします」
ケリー「彼女は石や岩の間を通って彼を導いています」
メイド「ここでは、貴方様が登り切る前に倒されてしまうでしょう」
登る者「好きなようにしてください。私は気にしません」
ケリー「次に彼女は彼を泉、沼地、湿原のある場所へと導きました」
メイド「確実に貴方様は慎重に進むべきです。そうでないと、溺れてしまいましょう」
登る者「私はあなたの助けを祈ります。私は出来る限り先に進みましょう」
ケリー「彼は前へと進み、ほとんど喉の辺りまで沈みました」
メイド「その先は、さらに深くなっています。再び前へと進むのが良いでしょう」
登る者「我が足の下で地面が掴みづらくなっています。ですが、私はまだ絶望しません」
ケリー「次に、彼はこれらの深い場所から出て、生け垣の底のような場所へと来ました。ここには、とても鋭い硬い棘が上向きに伸びていています。次に、2、3人の見た目の良い者らが来て言いました。おお、彼をここへで留まらせて飲ませよう。我らは明日に彼を別の道へと導くとしよう」
メイド「さようなら」
登る者「私を独りにしないでください。あなたが導いてください」
メイド「私は行かないといけないのです。私は貴方様のために、ここに留まれません」
登る者「私は飢えも渇きもなく、疲れてもいません。なぜここに留まらないといけないのです?」
ケリー「彼は先へと進もうとしますが、棘が彼を刺して、痛みに彼は歯を食いしばりました。
 次に、彼らは美しい場所へと来て、彼女が彼らの1人に向かって述べました」
メイド「食事と飲み物と衣服を用意し、彼の傷を治療してください。貴方がたはこの場所の幸運に属しているからです。いと高きところから低きところまで、私が憐れむ方はここにはありませんが、それが現実でしょう」
登る者「私はここにあるものを用いる方法を知りません」
メイド「真の相続者は常に分別があります。貴方様にこれらは属し、準備されています。そのため、悪用する事なくそれら自身として用いなさい」
ケリー「次に、彼と彼女は城へと到着しました。そして2人が入ってから扉が閉ざされ、しばらくしてから彼女は1人で出てきました」


メイド「貴方かたの理解のために、こう書かれています。それゆえ汝の目は開かれ、盲目になるなかれ。また開かれたものを忘れるなかれ」
ディー「幸福への道は急斜面で、多くの困難と危険に取り囲まれているが、継続して忍耐とともに進めば幸福の城へと到着すると理解した。余らはこれらを全能の神に適えてくれるように懇願する」
メイド「私は、あなた方が夕食を取るまで、行かないといけません。その後に、私は我が心についてより語るでしょう。私が家へと帰るまで、まだ6、7週間の旅がありますから」
ディー「我らの祝福が今も永久に神にあらん事を。アーメン*2


ディーの日記 1583年6月14日 後編
↑ ディーの日記


*1 ディー注。余のメイド、メアリーは木曜日の夜に、その不適切な発言により余を怒らせた。
*2 ディー注。次の8月1日まで、この日を含めて42か49日ほど残っているのに注意せよ。