アブラメリンの書

ページ名:アブラメリンの書

賢者アブラメリンの聖なる魔術の書

 現代西洋魔術において、聖守護天使(HGAと略されることが多い)と出会い、対話するのは魔術師としての成長において重要なプロセスと考えられている。この聖守護天使というのは、現代の魔術では高位の自己、ハイアーセルフと考えられている(ルネッサンス時代では、もちろん違う。普通に守護天使のことだ)。
 魔術師はまず最初のころに、この修行を行い、自らの聖守護天使と接触しないといけない。その為の方法が書かれているのが、今回紹介するグリモア、賢者アブラメリンの聖なる魔術の書だ(その他に、クロウリーが開発したサメクの書による方法もある)。
 このグリモアは二つの英訳本がある。百年前のマサースのフランス版とドイツ新訳版だ。マサースが訳する基にしたフランス版は残念ながら完全なものではなく、後に完全版といえるドイツ原書の新訳がGeorg Dehnにより英訳されている。

 アブラメリンの書は三冊の書に分かれている。
 Book 1では、十四世紀のドイツ南西のヴォルムスのユダヤ人アブラハムが末の息子ラメクへ語る形で物語は語られる。父シモンの死の直前にカバラの伝授を受けた彼は、それが完全なものでないと知る。さらなるカバラの知恵と主の神秘を求めて彼は放浪する。コンスタンティノープル(イスタンブール)からパレスチナ、アラビアの砂漠と真理を求めて放浪し、最終的にエジプトのナイル川沿いの小さな町アラキで近くに住む賢者アブラメリンの噂を聞き、弟子入りする。彼は師の指示に従い寄付をし、少しの菜食、聖書の詩篇を唱え、贖罪をした後、師からカバラと魔術の奥義を授かる。その後、彼はドイツに帰り、これらの書を書いたという話。

 Book 2は魔術の準備の為の行が記されている。
 六ヶ月(ドイツ新訳版では十八ヶ月)の隠遁生活で祈り、聖書を読み、自らを浄化した後に、自らの聖守護天使と出会う儀式を行う。それによって天使の権威を身に着けることで、その下で働く悪魔達と契約をそれぞれ結び、特定の魔方陣を用いてそれらを使役し、物理的な奇跡を行えるようになるという。
 フランス版では、天使を視るために六歳から八歳の少年の霊媒を用意する必要がある(これはフランスのグリモア伝統では一般的なやり方である)が、ドイツ版では不要であり、ここがフランスとドイツのグリモア伝統の大きな違いである。

 Book 3は、様々な願望に応じた悪魔を召喚し使役するための魔方陣が紹介されている。他の多くのグリモアと違い、マジックサークルやシジルなどが不要とされているのが珍しい。だが、使用には聖守護天使との契約が不可欠とされている。普通の人間がこの魔方陣を書いても何の意味も無い。
 ただマサースの基にしたフランス版は不完全なものであり、魔方陣の多くが欠けた形になっている。ここは完全な形で紹介されているドイツ新訳版の方が良いだろう。

 ドイツ新訳版ではさらに、フランス版では完全に欠けている四冊目もあり(Book1とBook2の間、なのでドイツ版では聖守護天使の儀式はBook3、魔方陣はBook 4にある)、民間カバラからの様々なまじない、呪文が紹介されている。

 さて、この本の著者、明らかにペンネームであるユダヤ人アブラハムの正体は誰だろうか? 長い間、彼はフィクション上の人物と考えられてきた。グリモア伝統では無名の真の著者が有名人や架空の人物に仮託して書かれる事が多いのだ(もっとも有名なのは、ソロモン王が著者という「設定」の大鍵、小鍵ですな)。だがドイツ新訳の編者ゲオルグは、彼は実在する人物で十四世紀当時の有名なカバリスト、ラビ ヤコブ ベン モーゼス ハ=レヴィ モエリン。一般にはマハリルとして知られている人物と推察している。

 今回はメインといえるBook 2の訳を書く事にした。Book 3の応用編は、訳する必要も無いほど簡単なので必要あるまい。さらにこれはドイツ版の方がいい。
 以下より中世の神聖魔術の世界を楽しんでもらいたい。 For K & C of the HGA。聖守護天使の知遇と対話のために。


アブラメリン第二の書 プロローグ
アブラメリン第二の書 第一章 魔術の種類
アブラメリン第二の書 第二章 始める前に何を考慮すべきか
アブラメリン第二の書 第三章 汝が必要とする年齢と性質について
アブラメリン第二の書 第四章 ほとんどの所謂魔術書はインチキである
アブラメリン第二の書 第五章 神聖魔術のための特別な日は無い
アブラメリン第二の書 第六章 惑星時間とほとんどの占星術師がどのように間違えたか
アブラメリン第二の書 第七章 この術を学ぶときに、最初の六ヶ月は何をすべきか
アブラメリン第二の書 第八章 二番目の半年で何をなすべきか
アブラメリン第二の書 第九章 三番目にして最後の半年をどう振る舞うか
アブラメリン第二の書 第十章 作業を妨害しない個人が学び実践できる術について
アブラメリン第二の書 第十一章 霊を呼ぶ場所をどう選ぶか。付属品をどう準備するか
アブラメリン第二の書 第十二章 どのように魔術師自身、祈りの部屋、道具を聖別するか
アブラメリン第二の書 第十三章 どのように善霊を呼ぶべきか
アブラメリン第二の書 第十四章 どのように未贖罪の霊達が呼ばれ、乗り越えるか
アブラメリン第二の書 第十五章 何を霊達に求めるべきか
アブラメリン第二の書 第十六章 どのように霊達を去らせるか
アブラメリン第二の書 第十七章 質問にどう答えるか、要求にどう対処するか
アブラメリン第二の書 第十八章 霊に関して他にすべきこと
アブラメリン第二の書 第十九章 汝が呼べる霊達の名前とどのように呼ぶか
アブラメリン第二の書 第二十章 どのようにして作業を実行するか & 第三の書へ向けて
アブラメリン第二の書 終わりに

トップページ