幻視の短期コース 第二章

ページ名:幻視の短期コース 第二章

 

第二章 魔術の空間の創造
 

 全ての魔術の作業の基礎は想像力である。想像力を司る精神の部分は意識と無意識が出会う場所であり、魔術の宇宙である。視覚的象徴は魔術の世界でコミュニケーションする主要な方法である。想像力をより豊かにすればするほど、魔術作業はより効果的になるだろう。
 

 想像力の開発で私の知る最良の実践は、「避難所の創造」または「魔術の空間の創造」と呼ばれる。私はこの技法をベトナム戦争のベテラン兵から始めて習った。彼はアメリカ軍特殊部隊では、プライバシーの感覚、人格の統合、個人的な空間を、特殊な環境下――つまりベトコン捕虜収容所――にて維持する方法として教えていると言っていた。このような場所では、これらは敵によって決定的に否定されるだろう。私が数年後にインナーライトフェローシップと会った時、彼らは自己実現と霊性開発のために基本的に同じ技法を教えていた。
 

 この技法を実践する際に、特別な物理的な場所は必要としない。これらは完全に「ポータブル」であり、何処であろうとも、しばらく座ってリラックスしてから実践できる。私はこの技法を多くの「非魔術的」な環境、例えば、混雑した役所、忙しい商業ホテル、ラスベガスのCOMDEX展示会のさ中で効果的に使ってきた。
 

 基本の概念は非常にシンプルである。あなたは自分が中にいて楽しめるような想像の世界を作り出す。それから自分がこの世界を歩き回っていると想像する。人々が白昼夢で行う事と根本的にはそれほど違いは無い。だが、この概念では意識的に働かせる。なので、同じようにこの世界に入ったら、同様に世界は現れ、継続して詳細を加えていく。実践と慣れとともに、この想像の世界は「リアル」な場所に感じるようになるだろう。現実と同じ意味でのリアルさではないが、永続して分離した存在に感じるようになる。
 

 説明のために、私はもう使っていない過去の私自身の魔術の空間を記そう。あらゆるステップで、想像が「あなた」にとって正しいと感じるのが重要である。ここはあなたの個人的な空間であり、そこにある物はあなたから来て、意味が無いといけない。あなたの空間はおそらく私のとある程度似ているかもしれない。それはそれで正しい。違っている場合の方が多いだろうが、それもまた完全に相応しい。
 

 ここで記すステップは連続的に行われねばならない。だが、次のステップへ進む前に、完全である必要は無い。始めた時より、一回のセッションの中で幾つかのステップを同時に行う事もできる。だが、セッションではどのような構成で作業していようとも、なるべく初期のステップに注意は払われるべきである。各ステップに慣れるほど、満足するレベルに到達するのに時間はかからなくなり、自然に次のステップに集中できるようになるだろう。
 

 境界を設立する
 

 あなたの魔術の空間がよく構築されるまで、あなたは各セッションでこれが難攻不落だとアファメーションを宣言する事で始めなければならない。あなたの空間は自分以外には不可視で、どのような力や人物でもあなたの明白で意識的な許可無しには到達できないと想像する。あなたの空間の境界を、これらの概念を反射するよう想像する。私は、自らの魔術の空間を「ポケットの宇宙」として想像する。外側からは小さすぎて見失うが、内側からは私が望むだけ充分に大きい。私が知る他の人々は、世界がダイヤモンドのような殻で覆われていると想像している。あるいはSFのフォースフィールドで、近づく力をすべて「曲げて」通り過ぎさせる。
 

 あなたの空間に境界を確立したら、自らがその中にいると想像する。中に入るとともに、自己の日常のプレッシャーや要求はすべて背後へ置いていき、ついて来る事が出来ないと感じる。あなたが自らの空間に入る瞬間に、これらは完全に切断されると想像する。これらは入ろうとせず、あなたの空間や、その中のあなたを見つける事すらも出来ない。あなたは完全に安全で、日常世界のあらゆるしがらみから完全に自由だと感じる。
 

 安全だと感じるのは非常に重要である。リラクゼーションの実践と同様に、あなたが作り出す感覚は、自らの無意識の部分「サブマインド」らに何を信じてどう行動するかを語る。表層意識と潜在意識が連動している限り、感じるものはリアルなものとなる。無意識に対して充分に語るなら、意識的には作り出せないようなものも、それを作ろうと共同で働き始める。あなたが魔術の空間でプレッシャーから自由で安全だと感じるならば、短い期間であなたは実際に自由で安全となるだろう。
 

 景色を作る
 

 安全な空間が確立したら、時間を費やして、あなたの世界の一般的なレイアウトを考える。景色の主要な特徴を決める。どんな建物や他の構造体を望むか。あなたの世界で何度も訪れたい場所のメンタルな地図を作る。主要な特徴を決めたら、それらは後に変えてはいけない。
 

 あなたの世界を作るうえで幾つかの基本原則がある。

・あなたの世界は、絶対的にプライベートのままにする。誰に対してもそれらを話してはならず、どこにも書き記さない。この世界はあなたの秘密の避難所と仕事場であり、誰もそれを知らない事により、多くの防御がなされる。この技術に熟達した後なら、公共用の別の魔術空間も作れるだろう。

・想像力を意識的に用いる事で、あなたの世界を維持できるよりも遥かに大きく作る。望む限りの詳細なエリアを作るが、それらは大きな領域で取り囲む。この領域の風景は大まかにのみ決めておき、特別にあるものは未知である。これにより、拡張する余地が出来るし、この論文の後に説明する「私を驚かせて」の実践にも用いられる。

・あなたが心地よく安全に感じるような世界を作る。それにより、前までのステップの印象を強化する。また、楽しむことのできる場所に作る。

・あなたの世界に多くの動物が生息するようにもできる。だが、「決して」どんな環境であろうとも、あなたの世界に生きている人を住まわせるよう想像力を使ってはいけない。時には、あなたの世界のすべての物は、何らかの形であなた自身の心の反映であることもある。想像の人々があなたの精神の無意識により表現の乗り物として「取られる」事がある。現実の人々のイメージを使っていたとしたら、このイメージの言動は、その現実の人物との関係に持ち越される事がある。それは病んだ効果を与えよう。
 

 あなたの「地図」の一つの場所を選ぶことで、世界を作り始める。その場所に自らが立っていると想像する。心の中の様々な風景の関係を定めて、あなたを取り囲むそれらを適切な角度と距離から見る。あなたが実際に現実世界で似たような場所に立っていたとしたら見えるくらいの精度で詳細を埋めていく。
 

 例えば、私の魔術の空間の一つには、前植民地時代の北米大陸のような厚い森に覆われた丘と山峡の風景がある。中央エリアには、やや実用本位の城が切り立った絶壁の上にあり、草地に流れる大きな川を見下ろしている。近くの森には、あちこちに開拓された平地の上に様々な離れ家や特定の目的の土地がある。
 

 私は自らが草地の上に立っていると想像する事で、この世界を作り始めた。北を見ると、緑の草原、小さなカラフルな野花、たまに近くに牛の糞が見える。獣道が蛇行しており、さらに直線の人間が作った道が絶壁から川へと延びている。絶壁は薄片状の花崗岩で作られているように見え、城はそのふちにある。絶壁には浸食が幾つかある。私のこの場所からは城の壁一面と別の壁の部分のみが見える。壁の上にある塔はわずかに輪郭のみが見える。壁全ては漆喰を使わない灰色石で作られている。城の下には、トンネルや門があり、絶壁と草地を切り離している。
 

 東に向くと、私は絶壁が南へ向かってゆっくりと高さを減らしていくのが見える。私の現在の場所の南にある草地へと降りていく。私は絶壁をカーブして草地へと入る埃道の終端を見る。未知の背後の森がさらに高くなっているので、その奥は高くなると思える。私は「地図」から、この奥は一、二マイルの草地があるのを知っている。
 

 南へと向くと、川がこの方向へと続いているのを見る。川は丘を分けている。陽光が川全体を照らしている。もやがその先を見るのを防いでいる。
 

 西に向くと、川がかなり浅くなっている。小さなさざ波が表面を覆っている。その奥の森は端となっており、ほとんどがスイカズラのやぶが広がる。川へと動物が歩いたために、やぶは抑えられている。森への道は木々の影の中にすぐに消えている。
 

 この情景の詳細をすべて意識的に埋める必要は無い。事実、想像力に自ら満たさせる方が良い。一般的なアウトラインを与えて、この情景で何を見るべきか任せる。例えば、草地でそれぞれの草や野花を想像しようとせずに、無意識にさせるようにする。私がその結果に満足したら、無意識に向かって承認の感覚を送る。好きでないならば、再び行うように命じて、変化をさせるために、しばらく他の場所へ行く。
 

 特定の場所からの視点が上手く安定したならば、その近くの場所へ移動する。20から30ヤード(18から27メートル)ほど外側へ離れる。この新しい場所から何が見えてくるか想像する。前に隠されていた何が見えてくるだろうか? 前には見えていた何が隠されるだろうか?(注意。魔術の空間の視野は物理世界とは違う。だが、違いは微妙なものである。自然な物を見るような正確さで物が見える事は無いだろう)
 

 あなたが場所を実際の「空間」と感じるようになるまで、新しい場所へ移動し、それぞれで視野の情景を想像する。この例の空間では、私はしばらく草地の様々な場所へ行き、絶壁に近づいて城が少しずつ見えなくなるとともに、草地は見えるようになる。色のついた砂利が川岸に見え、川の浅瀬を作っているなど。それから、私は城へと向かい、城の各面から外側を見ていき、広い情景を眺めて、森の様々な知っている場所を埋めていった。それから城から草地がどれだけ広がっているかを決めた、など。あなた自身の空間でもこれらを行うのだ。
 

 幾つかの場所からの視野を確立したら、それらの間をスムーズに移動し、それとともに周囲の風景が現実世界で移動するときのように継続して変化していくよう努める。
 

 最初はあなたの世界の視野は情景から離れがちだろう。あなたの想像力は窓や映画のスクリーン、博物館の絵画を通じて見えるようにしてしまう。これが起きたらすぐに、自らの視線を情景の中からに戻して周囲を見渡す事で固定化させる。
 

 また、最初の頃には、あなたの世界は絵画のように凍った風景になりがちだ。良く情景を確立させた後には、情景の中である動きを作るよう努める。草や木の枝がそよぎ、風の音を聴け。水の流れを見て、その音を聴け。情景に生き物達を追加して、自然に相応しい形で動かしてみよ。
 

 またあなたがこの実践の間中リラックスしているのも重要である。この実践はリラックスして白昼夢を見ているように行われねばならず、固定した集中と覚醒を必要としない。各セッションを始める前にリラクゼーションの実践を行え。また、セッション中に緊張を感じたら再び行う。あなたのマインドに作業をなるべく行わせ、意識的な決断を必要としないようにする。
 

 あなたは少なくとも数週間はこの実践に費やさねばならない。望むならばさらに長くする。時間を取り、リラックスし、あなたの世界のすべての重要な場所の詳細を埋めるように働かせる。建物の中も、外側と同じように時間を費やす。初期のステージで全体的に働いたら、それだけ後の幻視スクライイングは効果的になるだろう。
 

 魔術の空間に体を確立する
 

 魔術の空間を作成する基本プロセスの最後のステップは、あなた自身の体をこの空間内に作る事だ。この実践までは、あなたは視野のみであった。世界を見てはいるが、それ以上に干渉する事は無かった。今、あなたはこの世界の中に自らの体を作り、どのように動かすかも学ぶ必要がある。それには、あなたは体の表面の感覚と手足の動きの意識的気づきを開発する必要がある。そしてそれらを「アストラル」体へと複写する。インナーライトフェローシップの学徒らを見る限り、この作業は最も難しいもののようだ。さらにこの成功には大きな幅がある。
 

 魔術の空間に入る前に、立ち上がりリラックスする。衣服や装身具を身に着けていないのが理想である。目を閉じて、意識を自らの肌に向ける。たとえ何も触れていなくても、あなたは肌の活動の感覚や肌のそのための準備を感じるだろう。肉体の形は、肌の感覚で描かれるよう注意する。
 

 次には、肉体のあらゆる部分を動かせるような連続した姿勢を計画する。あなたが太極拳やヨーガを知っているなら、それらが相応しい。目は閉じたままにして、動きを始めて、肉体の違った場所でどのように感じるかに注意する。また、動くごとに四肢の場所を力感覚はどう語るかにも気を付ける。

 最後に、目を開けて同じ行動をする。この時には体が変化するごとに、何を見るかに注意を払う。特に、手と腕には注意する。あなたが動くときに得た感触を、意識的に想像の体で関連づけてみる。
 

 これら三つのステップのそれぞれは、あなたの体のイメージの大きな様相である。あなたの体の境界の感覚、その内側の感覚、目に見るあなたの周囲と関連。通常の状態下では、これらの感覚は無意識にあり、あなたが意識的にする事はない。あなたの内側の魔術の空間に第二の体を作るためには、それらを意識的に気づく必要がある。望むならば、あなたの空間の実践から、魔術の体を作る準備が整うまで、この実践を離して行うことも出来る。
 

 準備が整ったら、座り、リラクゼーションの実践を行い、あなたの魔術の空間に入る。そこで、あなたが体がこの空間にあるかのように感じるよう努める。肉体と正確に同じように感じるようにするが、肉体からは完全に分離させる。想像力の中で三つのステップを行い、肉体の時に感じた感覚を複写するよう努める。これらを繰り返し続けているうちに、離れた存在として徐々にあなたの「アストラル体」の感覚が魔術の空間の中に作られていく。
 

 魔術の空間の各セッションでこの実践を終わらせたら、しばらくの間、あなたの世界を移動して、触ってみて、現実の物のように動かしてみる。レンガや石は重く荒く感じる。金属は冷たく感じ、その形に応じた肌触りもある。樹は温かく木目を感じるなど。
 

 あなたが日々実践している儀式があれば(そしてまだ魔術の空間でまだ実践を始めてなければ)、魔術の空間に儀式の作業に専念した空間を作り、この実践の部分として行い始める。儀式作業の規則的で繰り返される動きはあなたの体のイメージを強化するのに役立ち、儀式を行うことで、この世界がただの避難所から、あなたの魔術作業にとって何か有益な場所へと変わる。特に私は黄金の夜明け団の五芒星と六芒星の儀式を実践するのを勧める。これらは後に幻視で得たヴィジョンが正しいかテストする方法として重要となるからだ。
 

 幾つかの起こり得る問題について
 

 この作業の部分で人々が出会う最も一般的な問題は、彼らの体の形を固定して維持させる事である。たとえ長い間実践しても、彼らの頭と腕はよく定義されるものの、残りの想像の体の部分は曖昧になりがちだ。これは肉体内の神経の総体的な密度を反映している。我々の感覚と運動神経の80パーセントは頭と手にあり、残りの内の半分は胸の上部、肩、腕にある。我々の体の残りの部分の感覚の大体は曖昧で、直接的な感覚の結合として視覚に多く依存している。アストラル体を作る時には、マインドは体の各部分に神経密度に応じたサイズを与えがちだ。
 

 実際のところ、これはそれほど問題でない。魔術の空間ではあなたは足を必要としない。筋肉で押すのではなく、意志の力で動き回っているからだ。だがあなたは魔術儀式の仕草で腕と手を、言葉を喋るために顎と唇を確実に必要とする。実践の後にあなたが体全体のイメージを維持できなかったのを見つけても、気にする必要は無い。ただ残っている体の部分のみでやっていき、残りの部分はローブや他の緩い衣で隠されていると想像する。
 

 人々が持つ第二の問題は、魔術の体を動かそうとする時に、肉体のほうも痙攣したり動いたりする事だ。すると彼らは無意識に肉体を緊張させてしまい、「固定」させて魔術の体に従わないように努める。これは生きている間に身に付いた癖であり、筋肉を意志で動かすのと、移動の感覚を関連づける問題である。この意志と移動の感覚の関連を断たねばならない。次の実践は助けとなろう。
 

 あなたの魔術の空間で立ち、両腕を胸の前まで水平に上げると想像する。手のひらは下に向ける。今度は、あなたは手のひらを上向きへと変えると想像する。だが、これらを「完全にあなたの目によって」変える。つまり、これらが転回するのを見て、その場所が変化する感覚も感じる。だが、筋肉を動かすマインドの部分には一切関わらせない。あなたは腕を意志することなく動くのを「見なくては」ならない。(事実、あなたは自らの意志を筋肉ではなく視覚センターへ導く。だが意志して行うのでは無いかのように装う)
 

 これを行った最初の数回は、肉体の両腕はほとんど確実に緊張するだろう。これらに気づいたら、実践を止めて、体が再び緊張を解くまでリラクゼーションの実践をする。それから魔術の手を動かすのに戻る。
 

 肉体の手に緊張を与えずにアストラルの手を回転させるのに成功したら、あなたは個々の指を動かす。指を一本ずつ手のひらに向けて曲げて、再び伸ばす。肉体が緊張するのを感じたら、リラクゼーションの実践をする。個々の指を肉体の緊張無しに動かせるようになったら、連続した動きを試してみる。拳を固めてみる。物を掴む。空手チョップをする。(スタートレックの)ヴァルカンの挨拶など。
 

 手のひらは魔術の体と肉体を分離させるのに最も難しい部分だ。我々の神経系の主な部分がこれらの動きを制御しているからだ。あなたが魔術の手と肉体の手の関連を断ったら、残りの体は非常に簡単だろう。必要ならば同様の実践を行う。

 

幻視の短期コース 第三章
幻視の短期コース