ディーの日記 1582年3月10日

ページ名:ディーの日記 1582年3月10日

1582年3月10日午前11時15分 土曜日


 エドワード タルボット(ケリー)氏なる者が我が家に来て、霊実践で何かを視るのを望んでおり、それらが行われた。真に余は俗な魔術を自ら行わないようにし、学習も実践もしないが、神の祝福された天使との交際と情報により、我が哲学研究の助けを長い間望んでいたと告白しなくてはならない。そのため、余は彼を我が枠に入れた水晶玉へと案内した。



 これは友人が余に与えたものである。(しばらくして)ある良き天使の返答が得られると余は確かに教えられた。また余はこの見霊者により、良き天使アンコール*1が水晶玉の中で余自身が見えるように現れるのを望んだ。そのため、余はタルボット氏に呼ぶように望んだ。だが、アナコールやアニロスといった他の良き天使らは止めておいた。余はまだそれらに準備が出来ていなかったからだ。彼は準備を行い、我が机(彼の前に水晶玉は置かれている)の前で跪いて、祈りと懇願を始めた。その間、余も我が小礼拝堂で祈りをし、神とその良き天使らに、この行動が受け入れられるように願った。そして、15分ほど(あるいは、もっと少なかったかもしれぬ)すると、彼は水晶玉の中に一体の天使を視た。だが、彼はそれ以外の2体も望んでいた。この天使は3体(すなわち、アンコール、アナコール、アニロス)のうちの1体であると彼は考えた。余は水晶玉のもとへと近づいて、神への感謝と良き天使への歓迎の挨拶をしてから、天使の名前を尋ねた。すると、天使は自らの名はウリエル(URIEL)であると平明に(タルボット氏が聞こえるように*2)告げた。


ディー「(余、ジョン ディーの発言)汝はこの(観察が行われている)水晶玉で返答可能な天使らの一体か?」
ウリエル「そうである」
ディー「汝の他にもいるのか?」
ウリエル「ミカエルとラファエルがそうだ。だが、ミカエルは我らの作業の中で主要な者である」
ディー「我が書、ソイガの書*3を知っているか?」
ウリエル「その書は楽園エデンにて神の良き天使によりアダムに明かされたものだ」
ディー「ソイガの中にある、これらの図表をどのように余が読むかの教授を与えてくれないか?」
ウリエル「我は出来る。だが、ミカエルのみが、その書の解釈を許されている」
ディー「余がこの書を読んだら、2年半しか生きられないと聞いているが本当か?」
ウリエル「汝は100年半は生きられるであろう*4
ディー「その祝福された天使ミカエルの降臨を得るには何を余は行えばよいのか?」
ウリエル「誠実に謙遜を持って、我らが現れるように求め招聘せよ。また、アンコール、アナコール、アニロスはこの水晶玉の中に呼ぶべきではない」
ディー「余の強く長き望みは、ソイガの書のこれらの図表を読めるようになる事である」
ウリエル「それらのほとんどは、ミカエルが管轄である。ミカエルは汝の道を照らす天使だ。そして、これらの事柄は、力づくではなく、徳と真理により明かされるであろう」
ディー「ミカエルを喜ばせるためには、(召喚する)特別な日や時間はあるのか?」
ウリエル「あらゆる時間は我が時間である」


 この後、水晶玉には奇妙な印、印章が浮かび上がった。



ディー「これは何のためか、どう使うのか?」
ウリエル「*5あらゆる場所、時間で体を守護するために、この印章を金に彫るのだ。そして胸に身につけよ」


 このようにして、神への感謝とともに対話は終わった。余はこの働きに大いに喜び、覚えている事全てを書いた。


 神のみに誉れと栄光を帰せよ。アーメン。


同土曜日の午後5時


 エドワード タルボットがウリエルを召喚した後、余は水晶玉のもとへと来て、神への感謝の短い言葉を述べてから、ソイガの書についての教授を求めた。


ウリエル「平和あれ。汝はそれにはミカエルを用いるべきである」
ディー「余はミカエルを招聘するための方法も命令も知りませぬ」
ウリエル「ミカエルはダヴィデ王の詩篇や祈りによって確実に招聘されよう。この詩篇は、神の御座と主権へと通じる方法以外の何物でも無い。この力により汝は自らの性質を集め、その性質を聖天使に適うように変容されよう。我が言うのは、一般には7つの詩篇と呼ばれる詩篇である*6。汝は手と心により喜ばしく味わうのだ。これにより汝はミカエルを刺激し、汝が長く求めていたものを得るよう(神の恵みを通じて)駆り立てよう。また汝ら二人の間で祈りも続けよ。神への祈りを常にだ。また、汝が神の天使らの知識を共に持つのは、神の意志である。汝は以前にもミカエルを観る事も出来ただろうが、サウルの不完全さから叶わなかった。良き慰めとともにあれ」


 水晶玉に椅子が見えた。そして余はこれが何を意味するのかと驚いた。


ウリエル「これは完成の座である。ここから汝は長く望んでいた物事を見るべきである」


 それから、水晶玉に正方形のテーブルが見えた。そして余はこれは何の知らせであるかと尋ねた。


ウリエル「人にはまだ知られていない神秘である。全ての清浄な生き物らを見るために、これら2つは水晶玉のそばにあるべきである。
 汝は、この2キュビトの正方形のテーブルを用いるべきである。この上には、汝の持つ書にある、既に完成させたシギッルム デイ(神の印)*7を置くべきである。神に祝福あれ、その全ての神秘と、その働きの聖性に。この座は大きな崇敬と献身無しには見るなかれ。この印は完全な蝋で造るべきである。つまり、清澄で浄化された蝋という意味である。我らは色に関しては何も気にしない。この座は直径が9インチ(約23センチ)で、周囲が27インチ(約69センチ)以上のものにすべきだ。その厚みは1.25インチにし、十字架の印がその背中の面にあるようにし、このように造るのだ。



 このテーブルは甘い匂いの木により、2キュビトの高さに造れ。また4本の足もあり、その足元には先に述べた印を置くようにせよ」


 先に述べられた円の印の上に立つ4足のテーブルが水晶玉に示された。ほとんどの円には文字が含まれていて、一部は祝祭で用いられるような清澄なもので、同じように丸い。そしてこれらの印は、主な印のものよりも、ずっと小さかった*8。テーブルの下には、2ヤード(約183センチ)の正方形の赤いシルクの布が敷かれ、そして印には同様に4ヤードの正方形の赤いシルクが覆うようにされた。テーブルそのものよりも大きく、その4隅の装飾から吊り下げられていた。
 この深紅のシルクの上に、枠組みのつけられた水晶玉が置かれる。さらにその下には、主な印があり、このシルクはこれらの間にあると言えよう。
 テーブルにはその4面があるように示され、そこには様々な印章*9や名前が刻まれていて、ここでは4つの様々な行の図で示されていた。



ウリエル「この正方形テーブルの側面にある印章や言葉は、教会で用いられる完全な油で描かれるべきである」
ディー「それは何の油か?」
ウリエル「この油は、汝に開かれよう。この油とは完全な祈りの事である。他の油では我らは聖別されない。なぜなら、我らは聖なるものであり、汝は自らの聖性により聖別されるからだ。
 ところで、ランドルムグッファと呼ばれる、汝を用いて、人々の間で汝の破滅を望み、汝のものを傷つけようと望む霊がいる。硫黄*10により、この霊を追い払え。この霊は汝の家の周囲を彷徨い、汝の娘*11の破滅を求めている。この存在により、昨夜や長い昔に汝の肩は不調であったのだ。もし汝が明日に追い払わなければ、この霊は汝の妻と娘を傷つけようとするだろう。この霊はいまここにいる。この霊を汝の家族と家から退去するように命ぜよ。こやつは罪あるサウルの死を求めに行くであろう*12
ディー「余自身はそれらをなしておらず、その術は知らない。サウルは余が禁じていたマヘリオンという名の霊とその印章(による召喚)を秘密裏に行っており、余はそれを知ると、硫黄により燃やしたからだ。そして、これらを知ったサウルは速やかに逃げ出したのだ。この事については、ロバート ヒルトン、ジョージ*13や、我が家の他の者らが証言しよう」
ウリエル「呪われし者は、呪われし者となろう」
ディー「余は御身に、天使ラファエルが悪霊アスモデウスに対して(トビアのために)行ったように、この霊をはるか遠くへと追い払うように懇願する」
ウリエル「だが、トビアは彼のなすべき部分をなしていた。神の力を崇拝し、この術をなせ。硫黄がその方法である」
ディー「いつ余はそれを行えばよいのか?」
ウリエル「明日の祈りの時である」


 栄光は父と子と聖霊に。始めのように今もいつも世々に。アーメン。


ディーの日記 1582年3月11日
↑ エノキアン魔術


*1 これはソロモンの鍵の衣を清める時の祈りに出てくる天使の一人である(後のアナコールやアニロスも)。この時代、グリモア魔術師らの間では少々有名だったようである。
*2 ケリー(タルボット)は霊の反応を全てディーに伝えていたので、その気になれば(少なくとも無意識的にも)状況を完全に創作してディーを手玉に取る事も出来ただろう。そのように結論する研究者らもいるが、この交霊記録の内容には高度な専門知識が必要な事柄(例えばエノキアン語とその文法など)もあり、錬金術とわずかなグリモア魔術以外には特に学の無かったケリーに全て創作が可能だったかには疑問がある。
*3 アシュモール注。Soygaはagyosの逆の綴りである。 訳注。アギオスはギリシア語で聖なるを意味する。これらは現在2冊が知られ、1冊はBodleian 908文書、もう1冊は大英図書館のSloane 8文書である。
*4 ディーは81歳で亡くなっている。
*5 余白にこう記されている。「これは1583年5月5日に現れたような、真のウリエルでは無い」
*6 これは詩篇の第6、32、38、51、102、130、143篇(ヴルガータ版では、6、31、37、50、101、129、142篇)のこと。
*7 余白には「我が無知により誤っていた。以下を参照」とある。
*8 大英博物館には2つの小さな印が保管されており、12.5センチの直径と2センチの厚さにある。聖なるテーブルそのものは、約91センチの正方形に、約80センチの高さにある。
*9 ディーの追記。第5の書の付録で示したような、闇の天使がここで割り込んでいるのに気を付けよ。
*10 硫黄はトビトの書でラファエルがアスモデウスを追い払った例のように、一般に悪魔払いエクソシズムで用いられていた。
*11 ディーの娘、カテリーナはこの時は生後9ヶ月にあった。
*12 ディーの注記。サウルは危険を感じて速やかに逃げ出したからである。
*13 この2人ともディーの従者。