ディーの日記 1583年5月28日

ページ名:ディーの日記 1583年5月28日

 以下のディーの日記は、カサウボン編集の「ディー博士と霊らとの真の関係」で最初に記された日記で、少女霊マディミが現れる有名なシーンである。


1583年5月28日


 余(ディー)とエドワード ケリーが、ポーランドのアルベルト ラスキ公について、その民や彼を知る者への深い愛情についてや、この君主の余への恩寵と、我が地方人らの悪意や妬みを抑えた事に神の恵みを余は見た事などについて話していた時、突然に我が小礼拝堂より霊的な存在が現れたように見えた。それは7歳か9歳くらいの可愛らしい少女のような見た目をし、その前髪は軽くカールさせ、後ろ髪は非常に長く伸ばしていて、その着ているガウンは緑や赤のように色が変わっていた。彼女は我が書棚の背後を出たり入ったり、最も大きな本の山に横たわったりして遊んでいるように見えた。彼女が通り過ぎるととともに、本は充分な通路を与えるように見えた。そして余がこの可愛らしい少女について、ケリーの様々な報告とともに対話をする事にした。


ディー「汝はどこから来た乙女か?」
少女「あなたは誰ですか?」
ディー「余は、我が定めと(望むには)その崇拝による神の僕である」
少女「あなたに語ったら、私はぶたれちゃう。……私は良い女の子ですか? あなたの家で遊ばせていてください。私のお母さんが、やがてここにも来て住むと言ってました」
 彼女は、若い少女が行うような生き生きとしたしぐさで上下に移動し、自らで遊んでいて、時には我が研究部屋の隅から様々な対話もしたが、彼女自身の他には何も見る事は無かった。
少女「しないといけないの? じゃあ、そうします(今では、彼女は先に述べた研究部屋の隅にて、返答するように見えた)。私はそのままにしてくれるなら、少し話をします」
ディー「汝は何者かを語れ」
少女「私と少し遊んでくれたら、あなたに私の事を話します」
ディー「イエスの御名において、余に語れ」
少女「イエス様の御名において私は喜んでします。私は、ちっちゃな少女マディミ*1です。私はお母さんの子供らの中で末っ子から一つ上で、家には赤ちゃんがいます」
ディー「どこに汝の家はあるのか?」
マディミ「私はそれを言うのを禁じられているの。ぶたれちゃうもん」
ディー「汝は愛と真理を愛する者らに語る事でぶたれたりはしない。永遠なる真理に万物は服従しなくてはならぬ」
マディミ「……私は服従すると誓います。私の(6人の)お姉ちゃんらは、皆ここに来て住むと言ってます」
ディー「神を愛する者らが、余とともに住む事は望もう」
マディミ「神について語るので、私はあなたを愛します」
ディー「汝の長女の名前はエセーメリだな」
マディミ「私のお姉ちゃんは、そんな短い名前じゃありません」
ディー「おお、慈悲を乞うぞ。彼女はエセメーリと発音しなくてはならなかったわ」
ケリー「彼女は微笑んでいます。別の霊が少女に来るように呼んでいます」
マディミ「私のお姉ちゃんらをまず連れてきます。間違ったことを言ったならば、教えてくださいませ」
ディー「汝が望むように、姉らを連れてくるのだ」
マディミ「私にはお兄ちゃんとお姉ちゃんらがいます。これを見てください」
ケリー「彼女はポケットから小さな本を取り出して、本の中の絵を指さしています」
マディミ「この可愛らしい男の子がそれです」
ディー「彼の名前は何か?」
マディミ「えっと……兄の名前はエドワードです。この絵を見てください、頭に冠をつけていますが、私の母が言うには、彼は(生前は)ヨーク公だったとの事です」
ケリー「彼女は本の絵を見ています。絵の人物は手に宝冠を持ち、頭には王冠をかぶっています」
マディミ「彼がイングランド王だった時は陽気な人だったらしいです」
ディー「彼がイングランド王だった頃からどれくらい経っているのか?」
マディミ「このただのちっちゃな女の子に、そんな質問をするのですか? えっと、彼の父はリチャード プランタジネット*2で、この父はまた……」
ディー「汝は彼をどう呼ぶのか?」
マディミ「リチャードです。確実に彼はケンブリッジ伯リチャードです」
ケリー「彼女は本のページをめくってから言っています」
マディミ「このページには、怖い君主がいます。見るだけで怖くなります」
ディー「なぜ、汝を恐れさせるのか?」
マディミ「彼は厳格な人だったそうです。私は個人的にはしりませんけど。でも、これはクラレンス公で、ケンブリッジ伯リチャードのお父さんです。あと、こっちは奥さんのアンです」
ケリー「彼女はページをめくっています」
マディミ「この人は、全てのモーティマー領の継承者で、エドマンドはお兄さんです。それからこっちが、邪悪なモーティマーです」
ケリー「彼女は様々なページをめくってから、こう言っています」
マディミ「ここにあるのが、ロジャー モーティマーで、私のお母さんは、この人はマーチ伯だったと言っています。そしてこっちが、その奥さんです。この人は多くの領地の継承者だったので、それを貰っています。ここにあるのが、彼女のお父さんの粗野なゲンヴィルです。ここには、ウェブリーという町が書いてあって、こっちにはベンドレイがあります。ここはモーティマーのクライベリーで、こっちはウェンロックで、ここがラドロー、ここはスタントン・レイシーです。ゲンヴィルの奥さんは、これら全てを継承しています。彼はこうも長い髪を伸ばしていますが、それは彼がアイルランドの代官だったからです。それでこうも厳めしい顔つきにしています。私のお姉ちゃんらは、他の2冊の本を持っています。あなた様が夕食後に私はこれらも持ってきますね。どうか誰にも私の事を語らないように祈ります」
 余は従者どもから、夕食の支度が出来たと呼ばれ、いったん中断した。


夕食後


マディミ「ここにあるのが、ヒューのお父さんのウィリアム レイシーです。そしてこっちが、そのお父さんのリチャードで、こっちはそのお父さんのリチャード卿、そしてこっちがリチャード卿の兄弟のウィリアム、そしてこっちがフランスへ行った人たちです」
ディー「キリスト暦の何年かね?」
マディミ「私のお姉ちゃんが全て話すと思います。こっちが、デンマークへ行った親戚の人です。私のお姉ちゃんが、すぐに来て、ポーランドでの結婚について話すと思います。それでこっちが、悪いウィリアムです」
ディー「ではこのアルベルト ラスキ公の系図について教えてくれないかね」
マディミ「ごめんなさい。私は他の国について語れないのです」
ディー「汝は特定の国ではなく、世界全体の普遍的な事を知っているのはわかっている。だが無論、余が知りたいのは、一つの地方、あるいは大都市などだ」
マディミ「はい。あなた様が、私が話した事で良い判断をするようなら、私のお姉ちゃんがもう少しで来て話すと思います。真理は正しいもの全てです。私が言ったモーティマーは、6人いるうちの最初の人です。マーチ伯モーティマーは6人いましたが、エドモンドが最後で、ロジャーが最初です。このモーティマーはエドモンド モーティマーのお爺ちゃんのお爺ちゃんです」
ケリー「誰かが彼女を呼んでいるようです。今では私にも聞こえます」
マディミ「もう行かないと」
 彼女は床にある非常に古い巻物を手に取って、それから彼女の本を置いた。
マディミ「これはお役に立つと思います」
ディー「汝の光と真理とともに行くがよい。イエス キリスト、光と真理、終わりなき真理の泉とともに。アーメン」


↑ エノキアン魔術



*1 この名前は、ヘブライ語で火星を意味するマディム מאדים から来ている。他のヘブライ語の惑星霊らも、後にディーと交流している。
*2 第3代ヨーク公リチャード。ケンブリッジ伯。1411年 - 1460年。そうなると、この息子はエドワード4世(1442年 - 1483年)だろう。