今日の魔女術

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 「魔女の王、魔女の父」ジェラルド ガードナー(1884年 - 1964年)は、現在の魔女宗教ウィッカ教の事実上の創始者である。
 ウィッカ教とは、古代、中世のキリスト教によって根絶させられた古代ヨーロッパの自然と豊穣の女神や男神を崇拝し、このペイガン*1の宗教を復活させようという運動である。現在のネオペイガニズム運動とほぼ同じ意味合いがあるが、自分たちを「魔女」であると強調するのが大きな違いである。
 1921年にマーガレット マレー助教授は「西欧の魔女崇拝」を出版し、この中で中世で魔女*2とされた人々は、実際には古代のこれらの多神教宗教の祭司の生き残りだという奇説を発表した。アカデミズムでは反論の嵐が来て即座に潰されたものの、この書はガードナーも強く影響され、現代ウィッカの理論的背景となった。


 ガードナーはリバプール近郊のブランデルサンズに生まれ、ヨーロッパを転々とし、青年期以降は南アジアや東南アジアでプランテーション経営などに携った。そして1936年まで英領マレーで税関職員として過ごし、そこでは現地の民俗や土着の呪術にも関心を持ち研究していたようである。やがて1939年に英国本土に帰ってくると、ニューフォレストで活動していた老魔女ドロシー クラッターバックから魔女の秘儀参入を受け*3、その後は魔術結社O.T.O.に入って、晩年のアレイスター クロウリーから学びつつ、魔女術ウィッチクラフトの体系を確立。そして古より魔女らが筆写してきたと称する「影の書」(The Book of Shadow)を創作した。また1949年にウィッカのアイデアを伝えようとするが、英国の魔女禁止令の法律*4を慮り、小説という形で出版している。
 1951年には、ガードナーは、マン島にある魔術と魔女術の博物館の駐在魔女となり、そこに集まった人々によってウィッカは形作られていく。やがて英国で魔女禁止令が解除されてから堂々と公表できるようになり、1954年に本書「今日の魔女術(Witchcraft Today)」が出版されるに至った。これは大ブームとなり、英国に(そしてやがては米国に)多くの魔女のカヴン(集団)が形成されるきっかけとなり、現代ウィッカ教はこうして始まったのである。
 本書はいうなれば、魔女宗教のバイブル的存在*5、少なくとも必読の書となっている。歴史的価値が極めて高いので翻訳する事にする。


今日の魔女術 1 序文、第1章 今も生きている魔女術
今日の魔女術 1 後編
今日の魔女術 2 第2章 いつの時代も魔女らはいた
今日の魔女術 3 第3章 魔女の信仰
今日の魔女術 4 第4章 魔女の実践
今日の魔女術 5 第5章 小さな民
今日の魔女術 6 第6章 どのように小さな民が魔女になったかと、テンプル騎士団について
今日の魔女術 6 後編
今日の魔女術 7 第7章 魔女と密儀
今日の魔女術 8 第8章 エジプトの地を出でて
今日の魔女術 9 第9章 アイルランドの魔女術
今日の魔女術 10 第10章 魔女とは何か?
今日の魔女術 10 後編
今日の魔女術 11 第11章 その他の幾つかの事柄について
今日の魔女術 12 第12章 悪魔とは誰なのか?
今日の魔女術 13 第13章 本書の要約
今日の魔女術 13 後編


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*1 異教。キリスト教の立場から、そう呼ばれていた。
*2 Witch。名前とは裏腹に男の魔女も珍しくは無かった。
*3 しかし最近の研究書、Philip Heselton著「Wiccan Roots」によると、ドロシーの日記からは、ごく普通のキリスト教信者の婦人だったようである。おそらくこれもガードナーの創作であろう。
*4 20世紀の半ばにもなって、英国にはまだあったのである。
*5 もっともウィッカ教は(自分たちを弾圧する)キリスト教のアンチテーゼの要素が強く、ドグマ的、権威的、中央集権的なキリスト教に対して、非ドグマの個人の感性を重視し、個々は自由であり、カヴンごとに独立した緩やかな連合となっているので、ドグマを記すバイブルは無いし、あってはならないとされる。