混沌魔術

ページ名:混沌魔術


 混沌魔術、Chaos Magic(ケイオス マジック)とは、1970年代にピーター キャロル、レイ シャーウィンなどの英国の若手魔術師らにより、「真実は無く、全ては許されている*1」の合言葉とともに、魔術界を震撼させた革命的なムーブメントである。今ではいささか古くなってきているが、魔術からあらゆるドグマ、宗教性、迷信を取り除き、純粋な技術体系に徹しようとするその現実主義は、現代でも学ぶ価値がある哲学となっている。
 その体系は、潜在意識の活用が主なもので、例えば潜在意識によって願望を叶えるように「プログラミング」するシジル(印)の作成や活性化の技法がある(以下のMMMの書を参照)。これは元は英国の画家にして魔術師オースティン オスマン スパー(1886年 - 1956年)が「自分用に」開発したものだが、混沌魔術によってポピュラーとなった。
 また、魔術師が自作する従者の精神体、サーヴァタール*2もあり、単純なシジルでは行えないような自主判断が必要な事柄に用いる。
 自らの心を、変性意識状態、魔術的トランス状態に持っていく事はノーシス*3と呼ばれ、それによりシジルを活性化させたり、儀式の成功をするとされ、この派では重要視されている。
 既存の宗教、神話体系を用いる事はせずに、魔術師が自己の潜在意識に響くイマジネーションを働かせるのを良しとするので、クトゥルフ神話やミスタースポック、アニメのキャラなどフィクションのものすらも、「召喚」されたりする。まさに混沌である。
 ここでは、混沌魔術のネット上の拠点である*4Chaos Matrixのサイトの記事から、興味深いものを訳していく事にする。


MMMの書

 本書、Liber MMMは、ピーター キャロルが、1970-80年代に自ら結成した魔術結社「タナトエロス啓明結社(The Illuminates of Thanateros、略してIOT)」の第4位階の学習用マニュアルとして書いたもので、結社に属さない我々にとっても、混沌魔術師が何を実践していたかを垣間見れる興味深い内容になっている。このムーブメントにとって、歴史的に重要な書なので訳しておく事にした。
 本書では、まずラージャ ヨーガに似た精神訓練の技法が説明されており、それらの基礎を終えたら、魔術儀式について、シジルの作り方と使い方、夢の作業が説明される。
 また後に本書と別の文書が合本され、Liber Null & Psychonautとして出版されてもいる。


KKKの書

 キャロルのこの記事(Liber KKK)では、魔術師の開発カリキュラムとして、妖術、シャーマニズム、儀式魔術、アストラル魔術、高等魔術の5段階で、それぞれ5つの過程、召喚、占術、まじない、招聘、啓明を行う、合計25の過程を示している。


魔術の諸モデル

 当エッセイ「Models of Magic」の著者、フラーテル U∴D∴(フラーテルはラテン語の兄弟を意味し、U.D.は魔術モットーのUbique Daemon Ubique Deus(神も悪魔もどこにでもいる)。本名はラルフ テットマイアー)は、現代ドイツを代表する魔術師であり、IOTにも初期から参加し、後にキャロルらとは別れた以後も、積極的に魔術、オカルトの著作業を続けている。
 このエッセイでは、魔術の世界観、作動原理を5つのモデルに分けて、それぞれを詳しく解説している。


オースティン オスマン スパーとそのシジルの理論

 このエッセイ「Austin Osman Spare and His Theory of Sigils」は、U.D.によるシジル魔術についての解説。


ドイツからの手紙

 このU.D.のエッセイ「Letter from Germany No. 1,No. 2」は、混沌魔術とは直接関係ないが、20世紀ドイツの魔術界の歴史についての興味深い(ほとんど唯一の)記事となっている。


シジル サーヴァタール ゴッドフォーム Part 1
シジル サーヴァタール ゴッドフォーム Part 1 後編
シジル サーヴァタール ゴッドフォーム Part 2
シジル サーヴァタール ゴッドフォーム Part 2 後編

 このマリクのエッセイ「Sigils.Servitors. and Godforms」では、混沌魔術のこれらの技法について、詳細に歴史的背景から説明している。残念ながらPart 3のゴッドフォームは見つけられず。


プロフェッショナル魔術師のためのシジル魔術

 シジル魔術の応用編(Smuggling Sigils Across)。プロはこのように使う。効果が出るまで数日から数ヶ月かかるのにも注目。


サイコノーツ フィールドマニュアル
サイコノーツ フィールドマニュアル 2
サイコノーツ フィールドマニュアル 3
サイコノーツ フィールドマニュアル 4

 blueflukeによる、コミックによる混沌魔術の入門書。くだけた口調で読み易いが、内容はかなり高度な部分まで扱っているので、甘く見てはいけない。



トップページ


*1 中世イスラームの暗殺教団アサッシンの首領、山の長老ハサン サッバーフが言ったとされる言葉。しかしソクラテスの「真実が無いのなら、なぜそれが真実だとわかるのかね?」を引用するまでも無く、論理学的には少々問題がある。
*2 Servitor。英語で従者サーヴァントの古風な言い方。この魔術師による人工霊の創造は古い伝統があり、バードンはこれをエレメンタリーと呼び、黄金の夜明け団や近代神智学では思念形ソートフォームと呼んでいた。中世のゴーレムの一部も、このカテゴリーに入れてもいいかもしれない。
*3 Gnosisだが英語発音なのでGは発音しない。
*4 だった、と言うべきか。今は活動していない。