オカルト哲学 3-59

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第59章 供犠、寄進と、それらの種類と方法について*1


 供犠は寄進であり、両者とも捧げる事により聖なるものであり、聖別され、捧げた者にも不遜さがあったり、その他の罪の障害があったりしない限りは、聖なる者とする。そのため、これらの供犠や寄進は多くの希望を生み出し、我々を神の家族とし、我らの手にぶら下がる多くの悪を払い、これらについてヘブライの博士らが、我々が自らの(生贄の)動物を殺して、供犠によって自らの富を減らす事により、我々にぶら下がる悪影響を取り除くと特に確言し述べている。
 なぜなら、この低位の世界で死すべき定めの祭司が、供犠によってその(動物の)肉体と魂を分離させ、理性無き動物の魂を神に捧げるからである。ゆえに、大天使ミカエル、高次の世界の祭司は、人々の魂を供犠にし*2、それにより肉体から魂を分離させ、魂から肉体を分離するのではない。怒り、昇天、恍惚、眠りなどで偶然に起きない限りにおいてではあるが、それらは魂の休息のようなもので、ヘブライ人はこれを肉体の死と呼んでいた。
 だが供犠や寄進は、まず最初に、そして主に、いと高き神に対して捧げなければならない。だがこれらが二次的な神的な諸力に向けられた時は、より行われねばならないが、私はこれらについて祈りや誓約の章で述べている。
 また、供犠には多くの種類がある。一つは、燃やす供犠で、生贄は火で燃やされる。別の種類は血を流す供犠である。またさらに、命を与える供犠と呼ばれるものもあり、命を得るために行われる。別の種類は、平和を得るための平和の供犠である。別の種類は、何らかの不幸から逃れるためや、何らかの良きものを授かるための、称える供犠である。他は、神の崇拝と感謝のための良き知らせの供犠である。だが一部の供犠は神を称えるためや、良き意思から行われるのではなく、この種のものについてヘブライ人らは、嫉妬の供犠と呼び、隠された不貞を見つけるためにのみ行われるのである。
 古の異教徒らは償いの供犠を行っており、それらによって、諸都市から飢饉、疫病、その他恐ろしい惨事を取り除いていたのである。これらの儀式はまず都市の中で最も邪悪な者を探し出し、彼の手にチーズと種無しパンと乾燥したイチジクを持たせて、特定の場所へと連れていく。その後に、彼を杖で7回叩いて、同じ杖を用いて彼を燃やして灰にし、海へと投げ捨てる。これらについて、リュコプローン*3とヒッポナクス*4が記している。フィロストラトスもティアナのアポロニウスの伝記で、エペソスで疫病を払う際に、これらの事を記している。
 さらに、多くの種類の供犠や寄進があり、それらはアゴナニア*5、ダプサ*6、ファレアティオネス、ヘカトンベ*7、ホスティア、ヒュアキンティア*8、アルミルストラ*9、ヤヌアリア*10、ルカリア、ルペルカーリア*11、マニキア*12、ノウェンディナリア*13、ニュクティルカ、パラティアリア、パスティッラリア、ポピュラリア、プロテルヴィア、スケネオペギア、ソリタウリニア、スタータ、ルビガリア*14、フォンタナリア*15、オルミア、パレンタリア*16、インフェリアエ*17、コンスアリア*18、ランペテリア、アムブルビア*19、アンバルウァリア*20、ウィナリア*21、テュイア*22、ホロカウストマタ*23、オルギア*24、ラティアリア*25、ディアネタウリカ*26、バッカナリア*27、トリエテリカ、リベラリア*28、コキィティア、ケレアリア*29、テスモフォリア*30、アドニア*31、ラウレンタリア*32、オパリア*33、パニリア*34、クィリナリア*35、ウェルトムナリア*36、ギナエキア、パナテナイア*37、クィンクゥアトリア*38、ディアパリア*39、ディアシア*40、ホルマ、ホルメア、ネメア*41、ミィトリアカ*42、パロギィギアなどがあった。
 また、これらの供犠は神々によって様々であった。山羊とロバはバッコス神に捧げられ、雌豚はケレース女神に、馬は太陽神に、雄ジカと犬はディアーナ女神に、ロバはプリアーポス神に、ガチョウはイシス女神に、鶏は夜の神に、雌山羊はミルネウァ女神に、雄牛はヘーラクレースに、子供はサトゥルヌス神に*43、豚はマイア女神に、雄鶏はアスクレーピオス神にという風にである。さらに、ヘーラクレース グニディウスへは詩の朗読やレースの供犠もしていた。
 また様々な祭司らの教団もあり、(ヘブライの)大祭司、フラミネス*44、アルキフラミネス*45、フラデス、サリイ*46、ハイエロファント、さらに諸宗教や迷信での供犠、儀礼、祝祭、聖別、献納、誓約、献身、贖罪、誓言、犠牲の行いなどによって様々な名前があり、それらに対して誘惑された異教徒らは、偽りの神々と悪魔への供犠をしていたのである。
 だが人を浄化し神と統一させる真の供犠には2つの種類がある。1つは、大祭司キリストが罪の贖いのために捧げたもので、その十字架の血によって万物は清められた。もう1つは、人が自らを清め、汚れないようにし、神への生ける供犠とするものである。それは大祭司キリストが自らで手本を示し、この聖体は我が肉と血で、私を記念して行いなさいと教えたようにである*47。つまり、我々は自らを共に捧げる事により、死すべき定めの肉体を抑圧し、霊を速めるからである。
 これらについてポルピュリオスは供犠のために自らの生を聖なるものにすべきであると述べた。誰も神の良き祭司とはなれないが、自らを犠牲に捧げ、神の像として魂を高め、自らの精神と理解を神の神殿とした者は、そこで神の光を受け取るだろうからだ。だがヘラクレイトスが述べるには、永遠の犠牲は魂を確実に癒し、最も高き医師(神)により教えられたものである。プロクロスが述べるように、悪霊は犠牲により自らを贖わない限りは憑りつき続けるからだ。そのため、供犠は神と天の諸力を宥め、神と世界の像である人が贖われるために求められる。
 だが我らの主イエス キリスト、真の大祭司は、全ての生贄は人の食事の主要な物質として、パンとワインのみにし、それ以上の動物や他の供犠は不要だと定めている。また血を流す事もそうで、イエス自身の血によって我々は完全に清められているからである。
 また古のエジプト人の間では、666種類の供犠があった*48。彼らは神的な動物を知性魂や神的な精神と関連づけていたので、それぞれの恒星や惑星に神々の栄誉を捧げていたからである。彼らは星々に謙遜して祈るならば、我々の祈りを聞き届けて、天の賜物を授けるが、それらは何らかの自然な契約によるものではなく、神々自身の自由意志からであると述べている。
 そしてこれらについてイアンブリコスは、天の諸惑星と世界の神々は、自然と低位のもののように、自らに特定の神的で超越的な諸力を有していると述べている。これらについて、オルペウスは扉を開け閉めする鍵と呼び、これらによって我々は宿命の影響に縛られるが、またこれらによって宿命から緩められると。そのため、土星や火星からの不幸が来ている者は、木星や金星に向かって飛ばすのではなく、土星や火星そのものにするように魔術師らは命じている。ゆえに、アプレイウスが述べるには、ウェヌス女神と美を競ったために迫害されたプシュケーは、ケレースやユーノーではなく、ウェヌス自身からの慈悲を賜るように懇願する羽目になったのである。
 次に、古人らはそれぞれの星に、その星が属するものの供犠をしていた。太陽には、太陽的なもの、月桂樹、雄鶏、白鳥、雄牛といったようなその動物を、金星には鳩、亀といった彼女の動物や、クマツヅラといったような彼女の植物を捧げていた。それらについて、ウェルギリウスはこう詠っている。


「――水が振りまかれ、
 花輪は柔らかくなり、
 祭壇の周囲に置かれ、
 太い枝とフランキンセンスが燃やされる。
 それは強く純粋で――」


 さらに魔術師らが述べるには、星々に属する自然や人工物の調合をする時には、この星への宗教的な供犠をした後に、それらが受け取った星の影響からの自然な性質をそれほど多くは受け取らず、宗教的な寄進によって、神的に確実でより強く受け取っているのである。神へ正しい方法によって捧げられた寄進は、生贄として神によって聖別されるからである。
 さらに、天やエーテル(空)の神々には白い生贄が捧げられ、地や冥府の神々には黒い生贄が捧げられていた。さらに地の神々には祭壇に、冥府の神々には溝に置かれていた。また、風や水の神々には空飛ぶ生き物が捧げられていたが、それらは白や黒のものであった。最後に、地上や冥府を除いた全ての神々とダイモンには、空飛ぶ生き物が捧げられていたが、地や冥府の神々には四足獣のみが捧げられていた。これらはこの種のものを喜ぶからである。また、天やエーテルの神々には、正当に食べられ、神のみが受けられ、他は許されなかった最良の部分のみが捧げられていた。
 次にこれら全てについて、アポローン神は以下の詩で表現している。


「上(天)の神々には3種類の供犠をなせ。
 神々のために白い生き物を殺せ。
 だが、下の神々には黒い生き物にせよ。
 天の神々には野外の祭壇に置いて、
 冥府の神々には、黒い血で汚し、
 泥で満たした穴が求められる。 
 喜びのためではなく生贄のためには
 それらは埋められる。だが風の神々は
 蜂蜜や最も清澄なワインを喜ぶ。
 さらに祭壇には火が灯され
 白い飛ぶ生き物の供犠が求められる。
 だが地の神々は地上の生き物が、
 フランキンセンスと共に、
 さらに崇敬とともに
 種無しパンも与えられると喜ぶ。
 だが海を支配する神々には、
 汝は生贄を海岸に横たわらせ、
 波が動物全体を洗うようにさせよ。 
 だが天の神々に対しては、
 最良の部分を与え、火によって燃やせ。
 残ったものは汝が望むならば食べて、
 風に香りの気体を運ばせ、
 甘い匂いを滴らせよ――」


 これらについて、ポルピュリオスは諸返答の書において述べており、多くの者らが同意している。彼らは供犠は神々と人々の間の自然な仲介物であると述べているからである。またアリストテレスも神への犠牲は人の中に自然とあるものだと確証的に述べている。そのため、仲介物は両者の性質に適したもので、神的なものを類似的に示すものにし、神々は類似するものが与えられたり確実に喜ぶと彼らは述べている。だが、これらはあまりにオカルトで、ほとんどの人間は理解していないが、これらによって神や神々は、特に我々の贖いのために求められ、それらによって天の徳は喜び、我々の与えられるべき罪への懲罰の実行を遅らせるのである。
 そしてこれらをオルペウスはエレメンツや天の門を開く鍵と呼び、これらにより人は超越天へと上昇し、天の知性体やエレメンツのダイモンらは彼の下へと降りてくるであろう。
 次に完全にして真に宗教的な人々は、これらを必要としないが、トリスメギストスが言うように、不和へと落ちた者らのみが天とその生き物らの従者となり、天に属する者となる。そのため、彼らは天の恩寵を得るために供犠を行う。だがやがては、彼らは(魂を)高く飛べるようになり、神々から放免され、今の状態よりもより崇高な存在となるのである。


オカルト哲学 3-60
↑ オカルト哲学 第三の書


*1 この章全体も、明らかに現代では実践すべきでない内容である。動物保護。
*2 大天使ミカエルは、最後の審判で人々の魂を巨大な秤で量るとされていた。
*3 紀元前320年 - 紀元前280年のギリシアの悲劇詩人、文法家、喜劇の批評家。
*4 紀元前541年 - 紀元前487年、アナトリア半島に住んでいた詩人。その毒舌で古代の著者らには有名だったという。
*5 古代ローマでの1月9日、3月17日、5月21日、12月11日に雄羊の生贄を神々に捧げた祝祭。
*6 これもローマでの祝祭。
*7 古代ギリシアで、ヘーラー、アテーナー、アポローンに100頭の雄牛を捧げていた祝祭で、後にはローマ人も行った。
*8 スパルタでの祝祭で、毎年夏のヒュアキントス月にアポローン神殿で行っていた。カルネイアに次いで有名だった。
*9 古代ローマで10月19日のマールスへの祝祭。武具の浄化を意味する。
*10 古代ローマで1月1日のヤーヌス神への祝祭。
*11 古代ローマで2月15日に結婚の女神ユーノーや、豊穣の神マイアへ山羊や犬の供犠をした祝祭。現代のバレンタインデーとも関連している。
*12 古代ギリシアで小鹿を少女にような服装をさせて月の女神マニキアに捧げていた。
*13 古代ローマで疫病などを避けるために元老院によって行われていた供犠。
*14 古代ローマで4月25日に、穀物から白カビが生えるのを避けるために犬と羊を捧げた祝祭。
*15 古代ローマで10月13日に、ヤーヌスの息子フォントスへの祝祭。
*16 古代ローマで死者のための国が行っていた祝祭。2月13日-21日まで続き、この間は全ての神殿は閉ざされていた。
*17 インフェリは冥府の神々であり、また死者と関連する言葉でもあった。
*18 古代ローマで、8月21日と12月15日に農耕の神コンススを祝う祭り。
*19 古代ローマで災害時に市民が市の周囲を行進して厄払いをする儀式。
*20 古代ローマで、5月29日に穀物を守るためのケレース女神への供犠による祝祭。
*21 古代ローマでユーピテルにワインの守護を願って4月21日と8月19日に行われた祝祭。
*22 古代ギリシアでディオニューソスに捧げられた祝祭。
*23 ギリシア語でホロコーストを意味し、火で生贄を完全に燃やすこと。
*24 ディオニューソスへの饗宴で、熱狂状態に入った信女バッカエらは雄牛を手で引き裂いていた。
*25 ラティウム地方で毎年、ユーピテル ラティアリスに捧げられていた祝祭。
*26 ギリシアのタウルス市でアルテミス タウリカに捧げられていた祝祭。
*27 ディオニューソスの饗宴の別名。
*28 ローマ人からディオニューソスと同一視されたイタリアのリベル パテル神に3月17日に捧げられた祝祭。
*29 古代ローマで4月12-19日に行われていたケレース女神への祝祭。
*30 古代ギリシアでデーメーテール女神に差酒られていた女のみによる祝祭。
*31 ビブロス、アレクサンドリア、アテナイでアドーニスに毎年捧げられていた祝祭。
*32 古代ローマで12月23日にアッカ ラレンティアという女性を称えるための祝祭。
*33 古代ローマで12月の終わりに行われていた祝祭。
*34 古代ローマで4月21日にパレース女神に捧げられた祝祭。
*35 古代ローマで2月18日に、始祖ロムヌスをクイノヌス神として祀った祝祭。
*36 古代ローマで4月23日に、エトルリアのウェルトゥムヌス神への祝祭。
*37 古代アテナイで8月半ばにパラス アテーナー女神に捧げられた最大の祝祭。
*38 古代ローマで3月19-23日にミルネウァ女神への祝祭。
*39 アテナイのアクロポリスでのゼウス神への雄牛の供犠。
*40 五大ギリシアで2月に行われていたゼウスへの祝祭。
*41 ヘーラクレースがネメアの獅子を倒した事を祝した祭り。
*42 マトラリアの場合、古代ローマで6月11日にマーテル マトゥタ女神へ捧げられた祝祭。
*43 古代ではサトゥルヌス神への人間供犠の伝統があった。
*44 古代ローマでの15人の神官。
*45 フラミネスの中でも3人の大神官。
*46 マールス神の12人の踊る神官。
*47 ルカによる福音書 第22章19節。
*48 ヨハネの黙示録の獣の数666と合わせているようである。