オカルト哲学 3-10

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第10章 ヘブライ人が数を、他の者らが異教の神々の属性を当てはめている神の流出について。また10のセフィロトと、それらを司る10の最も聖なる神名と、その解釈について


 神自身は三位一体ではあるが、神には多くの神力があるのを私は疑わない。それらは光線のように神自身から放たれ、古代の異教の哲学者らは神々と、ヘブライの師らは数と呼んだが、私はそれらの属性について語っていこう。
 知恵については、オルペウスはパラスと呼び、理解についてはメルクリウスと、形成の受胎をサートゥルヌス、生成力をネプトゥーヌスと、物事の秘密の性質をユーノーと、愛をウェヌスと、純粋な生を太陽あるいはアポローンと呼んだ。世界全体の形質については彼はパーンと呼び、魂は下にあるものを生じさせ、上にあるものを熟考し、自らの中にそれらを保つので、彼は3つの名前、すなわちマールス、ネプトゥーヌス、オーケアノスで称えていた。この種のことについて彼は別の箇所でも詠っている。


「プルートーとユーピテルとポイボスは一つ。
 なぜ我らは二度語らねばならぬ? 神は単独なり。」


 同様の事を、ウァレリウス ソラヌス*1も詠う。


「全能のユーピテル、神、諸王の王、
 神々の父、単独者であると同時に全ての者よ。」


 ゆえに、異教徒でも最も賢明な神学者らは、様々な名前や諸力、さらに様々な性を持つ唯一の神を崇拝していた。これらについてプリニウスは、倫理が弱い者らはそれ以上(の神の知識)を消化できず、彼の弱さに心を留めるので、あらゆる者は彼が特に望む神の部分を崇拝するであろうと述べている。そのため信仰を必要とする者らはユーピテルを招聘し、神の摂理を望む者らはアポローンを、知恵はミネルウァをという風に、他の事柄も望むならば、他の諸力を彼らは招聘した。多くの様々な恵みの分配を求められたので、多くの種類の神々が生じたが、にもかかわらず神は単独であり、そこから万物は生じたのである。
 そのため、アプレイウスは「世界について」の書において、ファウスティヌスに対して、神は単独で一つの力しかないが、様々な名で呼ばれていると述べ、それは多くの種のため、その多様性から、神は多くの形になれるからであるとした。そしてマルクス テレンティウス ウァロは「神の崇拝について」の書において、全ての魂らは世界魂へと還元されるように、全ての神々はユーピテル、同じ神へと還元され、様々な名の下で崇拝されていると述べている。
 そのため、より秘密の類推の方法によって、これらを知的に洞察するのは、道理にかなった作法で完全なものであると考えるのは適切である。オルペウスの賛歌や古きマギらの書を真に理解した者は、それらがカバラの諸秘密や正統な伝統とは異なっていないのを見出すであろう。それらについてオルペウスはクレテスあるいは清浄な神々と呼び、(偽)ディオニュシウスは能天使パワーズと名付け、カバラ学者らは神の畏れを意味する数ファハドと呼んだ。同様に、カバラのエン ソフ(無限)を、オルペウスは夜と呼び、オルペウスがテューポーンとしたのは、カバラでのザマエル*2と同じである。
 だが、最も神的な事柄に博識だったヘブライ人の賢者らは、神の10の主要な御名を受け取っており、それらは特別な神の力があったり、神の部分であったりしており、これらの10の数を彼らはセフィロトと呼び、アーキタイプの衣、道具、手本であって、創造された万物に影響があり、高次のものから最底辺まで及び、それでいて特定の序列があるのである。その最初の部分から、天使の9階級と福者の魂らに、さらに天の諸惑星の圏や人々にも影響していく。これらのセフィロトにより、万物は力と徳を受け取るのである。
 これらの第1のものはエヘイエ、神の本質の御名と呼ばれる。その数はケテルといい、それは王冠あるいは宝冠と訳され、神の最もシンプルな本質を表す。また、目に見えないものとも呼ばれ、父なる神に帰しており、熾天使セラフィムの階級、あるいはヘブライ人が呼ぶハイオト ハ=カデシュ、聖なる生き物らに影響する。また第一動者でもあり、万物に存在の賜物を授け、周辺と中心の両方を通じて世界全体に満たした。この特有の知性体はメタトロン、顔の大公と呼ばれ、その任務は他者を神の面前へともたらす事で、彼によって主はモーセに語ったのである。
 第2の御名はヨド(ヤー)、あるいはヨドとテトラグラマトンが加わった御名(ヤー YHVH)であり、その数はホクマー、知恵であり、御子に帰するもので、智天使ケルビムの階級や、ヘブライ人がオファニム、すなわち諸輪と呼ぶものに影響し、さらにこれらにより天の星々に神は自らの中にあるイデアを星座として織りなし、混沌の生き物らから切り離した。この特有の知性体はラジエルであり、アダムの支配者だった者である*3
 第3の御名はテトラグラマトン エロヒムと呼ばれる。その数はプリナ(ビナー)と名付けられ、神の摂理と理解を意味し、罪からの解放、静寂、ヨベルの祝祭、告解の改宗、大いなるトランペット、世界の贖い、来るべき世界の命を表している。また、これは聖霊に帰しており、座天使スローンズの階級や、ヘブライ人が呼ぶアラリム、力ある大天使らに影響し、またここから土星の圏を通じて、まだ定まらないものが形作られる。この特有の知性体はザフキエル、ノアの支配者であり、他の知性体はヨフィエル、セムの支配者である。
 そしてこれらの至高の数は神の3つのペルソナの座であり、これらの命により万物は創られたが、その実行は他の7つのセフィロトによるもので、そのためこれらの数は枠組みと呼ばれる。
 第4の御名はエルと呼ばれ、その数はヘセド、仁慈や善意を意味し、恵み、慈悲、哀れみ、荘厳、王錫、右手を表し、その影響は主天使ドミニオンズの階級や、ヘブライ人が呼ぶハシュマリムに及び、また木星の圏を通じて、肉体の像を形作り、万物に仁慈を授け、裁きを和らげる。この特有の知性体はザドキエル、アブラハムの支配者である*4
 第5の御名はエロヒム ギボルで、力ある神、邪悪な者の罪を罰する神を意味する。その数はゲブラーと呼ばれ、力、厳粛さ、不屈さ、安全、裁き、戦争や虐殺による懲罰を表すと言われる。そして、これは神の裁き、腰ひも、剣、神の左手に帰している。また、これはパカドとも呼ばれ、それは畏怖を表す*5。その影響は能天使パワーズの階級や、ヘブライ人が呼ぶセラフィムに及び、さらにそこから火星の圏を通じて不屈さ、戦争、苦悩に属するものへと伝わり、エレメンツを引き寄せる。そしてその特有の知性体はカマエル、士師サムソンの支配者である。
 第6の御名はエロハー(エロアー)、あるいは4文字の御名にヴェ=ダアトが加わったものである。その数はティフェレトであり、魅力、美、栄光、喜び、また(創世記の)生命の樹を意味し、その影響は力天使ヴァーチュースの階級や、ヘブライ人が呼ぶマラキム、天使らに及び、太陽の圏に入り、輝きと命を与え、そこから金属を創り出す。この特有の知性体はラファエル、イサクと若きトビアの支配者と、ペリエル、ヤコブの支配者である。
 第7の御名はテトラグラマトン ツァバオト、あるいはアドナイ ツァバオト、万軍の神である。その数はネツァフ、凱旋と勝利を意味し、右の柱がこれに帰して*6、復讐する神の永遠性と裁きを表す。その影響は権天使プリンシパリティーズの階級や、ヘブライ人が呼ぶエロヒム、神々に及び、金星の圏へと入り、正義への熱意と愛を与え、植物を造り出す。この知性体は、ハニエルと天使ケルヴィエル、ダビデ王の支配者である。
 第8の御名もまたエロヒム ツァバオトと呼ばれ、万軍の神と解釈されるが、戦争や裁きによるものではなく、哀れみと同意によるものである。この名前には両方の意味合いがあり、その軍勢を先導するからである。この数はホドと呼ばれ、称賛、告白、名誉、高名さを意味する。(生命の樹の)左側の柱がこれに帰しており、その影響は大天使アークエンジェルズの階級や、ヘブライ人が呼ぶベン エロヒム、神の息子らに及び、水星の圏へと入り、雄弁さを与え、生き物を生み出す。その知性体はミカエル、ソロモン王の支配者である。
 第9の御名はシャダイと呼ばれ、全能者、全てに満足する者を意味し、またエル ハイ、生ける神とも呼ばれる。その数はイェソド、基盤であり、良き理解、契約、贖い、休息を表す。その影響は天使エンジェルズの階級や、ヘブライ人が呼ぶケルビムを通じて、月の圏へと入り、万物の増減に影響し、個々の人間を保護する精霊らを扱う。その知性体はガブリエル、ヨセフ、ヨシュア、預言者ダニエルの保護者である。
 第10の御名はアドナイ メレク、主にして王であり、その数はマルクト、王国や帝国であり、教会、神の神殿、門を表し、その影響は魂の階級、すなわち福者の魂らや、ヘブライ人が呼ぶイシム、貴族、君主、大公らに及ぶ。これらは10の階層の中でも最低であり、その影響は人の子らに及び、物事への知識や驚異的な理解、さらに勤勉さや預言を与える。さらに、これらの中にはメシアの魂もあり、あるいは別の者らが言うには、第一の創造物や世界魂と呼ばれる知性体メタトロンがあり、それはモーセの支配者であった*7


オカルト哲学 3-11
↑ オカルト哲学 第三の書


*1 紀元前130年前後 - 紀元前82年。ラテン詩人、文法家。ローマの奥義の名を漏らす宗教の禁忌を犯した罪により、独裁者スッラに処刑された。
*2 サマエル。堕天使とされ、また創世記の蛇と同一視される。
*3 古くからあるカバラの伝説では、天使ラジエルがアダムにカバラを伝授したのが、この学の始まりだったという。
*4 アブラハムに対しては、様々な天使が割り当てられているので、アグリッパが参考にしたのはその一例である。
*5 また、このセフィラはディン、正義とも呼ばれる。
*6 カバラの生命の樹では3本の柱、右の慈悲の柱、左の峻厳の柱、中央の温和の柱があり、ネツァフは右の柱にある。
*7 興味深いことに、メタトロンはマルクトとケテルの両方を司っている。カバラの有名な格言「ケテルはマルクトに、マルクトはケテルに」から来ているかもしれない。あるいは、カバラの言い伝えにある、メタトロンは2人おり、1人は世界創造の前からある神に等しい者で、もう1人は預言者エノクが生きながらに天へ挙げられた結果生まれて、人の行いを記録するというかなり低い仕事にあるとされた。