オカルト哲学 3-2

ページ名:オカルト哲学 3-2

第2章 宗教の中で秘密の事柄について


 そのため汝がこの学を学びたいと望むならば、汝の宗教について沈黙をなし、常に胸の内に秘めておく必要がある。メルクリウス(ヘルメース)が述べるように、これらはかくも聖なるものであって、この神の偉大な知識を公にするのは、不信心の徴であり、よって神聖なるプラトンは聖なる密儀は大衆には漏らしてはならないと命じ、ピュタゴラスも同様であり、ポルピュリオスもその信奉者らを宗教的沈黙に捧げるようにさせ、オルペウスも特別な恐るべき宗教権威の下で、聖なる密儀に参列した秘儀参入者に対して厳格な沈黙の誓いをさせた。彼は聖なる言葉についての詩でこれらの事柄を詠っている。


「汝ら崇拝者は徳とともに留まり、
 私が汝に述べたことについてよく考えよ。
 だが汝、聖なる諸法を大衆に漏らした者よ、
 ここから去り、二度と帰ってくるな!
 だが、汝、その心が崇高なるムーサイ(詩人)よ
 我が言葉を聞き、汝の目でそれらを読み、
 汝の胸の中でそれらを反響させ、
 汝の旅でも、神、万物の創造主、
 死ぬ事の出来ない者のみを考えるようにせよ。 
 それらについて、私は今扱おう――」


 またウェルギリウスのシビルの巫女についての詩でも私は読んでいる。


「女神は来る。ゆえに、ゆえに、汝ら冒涜者全てよ、
 預言者は叫び、彼女の球から断たれよ。」


 また、エレウシスのケレース女神の聖なる密儀においても、認められた者のみが秘儀参入を受け、宣言官は冒涜者と大衆は去る様に宣言し、エズラ記においても、私はヘブライ人のカバラの秘密について読んでいる。その文の中で宣言するには、汝はこれらの書を人々の中の賢者、汝が知るこれらを理解できる者に運び、これらの秘密を保持せよとある。
 そのため、(古代)エジプトの宗教書と、それらの密儀に属するものは、聖別された(パピルス)紙によって造られ、そこでは大衆には容易には知られていない文字で書かれ、彼らはそれらを聖なるものと呼んでいた。マクロビウスやマルケリヌス*1や他の者らが言うには、これらはヒエログリフと呼ばれ、大衆にはほとんど知られておらず、またアプレイウスもこれらについて確証しており、生贄の儀式が終わったら、隠された秘密の知識による書を彼らは未知の文字で書いており、それらは簡潔な言葉で秘密を隠す事ができ、部分的には獣の種の図形で、部分的には結び目に満ちた図形であり、輪のように曲げたり、密集させたり、ブドウの蔓のように絡みつかせたりして、それらでしか読めないようにする事で、大衆の好奇心から知識を守っていたという。
 そのため、我々が沈黙を守り、宗教において秘密の事柄を隠すならば、この学の価値ある学者といえよう。なぜなら、テルトゥリアヌス*2が言うように、沈黙の誓いは宗教のためになるからで、他のことをなす者は非常な危険に晒され、それらについてアプレイウスも聖なる書の秘密についてで述べている。それを語るのが適法ならば、私は汝に告げよう。それを聞くのが適法ならば、汝はそれを知るであろう。だが、無分別な好奇心ならば、両耳と舌は同じ罪に陥るであろう、と。
 また私が悲劇的な詩人テオドラスについて読んだ話によると、ユダヤの聖書の密儀について何らかの事を記したために、目が見えなくなったという。また、テオポンポスも神の法の何らかをギリシア語に翻訳したために、心と霊に障害が起きたが、その後に熱心に神になぜなのかを問うたら、夢の中で解答があり、神の事柄を公にしたために冒涜し汚したからだという。またヌメニオス*3も隠された事柄に大いに好奇心があり、神の諸力を不快にさせたが、それらは彼がエレウシス女神の聖なる密儀を解釈し、公にしたからであった。彼は夢の中でエレウシス女神が売春宿の前で立っているのを見て、なぜだろうと思ったら女神が激怒しながら答え、それは彼によって元の温和な場所から暴力的に連れてこられ、売春をする羽目になったからだと言い、それにより神々の儀礼は冒涜されるべきではないと彼は諭されたのだった。
 そのため、古人らは神と自然の密儀を隠すのに常に大いに配慮し、それらを様々な暗号の中に隠していたが、これらの法をインド人、バラモン僧、エチオピア人、ペルシア人、エジプト人も行っていた。ゆえに、メルクリウス、オルペウス、全ての古代の詩人と哲学者ら、ピュタゴラス、ソクラテス、プラトン、アリストクセノス、アンモニオス*4らはこれらを秘密に保つように努めていた。そのため、ポルピュリオスがプロティノスの教えと規律についての書で引用するに、プロティノス、オリゲネス、その他のアンモニオスの弟子らは、師の言葉を決して漏らさないように誓いを立てていた。だがプロティノスはアンモニオスへの誓いを破り、その密儀について公にしたので、その違反への罰として、彼はシラミの恐るべき病に食い尽くされたと言われている。
 キリスト自身も、地上に住んでいた時に同様の事を述べており、より深遠な弟子のみが神の言葉の神秘を理解できるが、他の者らは例え話によってしか理解できないとし*5、聖なるものを犬には与えず、真珠を豚に投げてはならないと命じている。ゆえに、ある預言者は神への罪とならないように、その御言葉を心に隠すと述べている*6。そのため、少数の賢者のみが知り、口承でのみ伝えるよう命じているこれらの秘密を公に書くのは適切では無い。
 そのため、私が儀式魔術の多くの主要な密儀について沈黙するとしても、読者よ、私を許してくださるであろう。私は知られるべき事柄についてのみ明かし、汝が本書を読む事で、これらの密儀が欠けている事で道に迷う事が無いようにするので充分だと私は考えている。だが条件が整えば、汝はこれらの事柄と交流するであろう。それについてディオニシオはテモテに対して、これらの知識を得た者は、価値無き者らに明かしてはならず、賢者らの間で集い、彼らの間で秘密を保つように誓わせたという。
 さらに私は汝に最初に警告するが、神の諸力すら世俗のものや冒涜者を嫌い、愛が秘密にされるように、あらゆる魔術の試みも、公から逃れさせ、隠すようにして、沈黙することで強められるが、公表する事で破壊され、どのような効果も持たなくなるだろう。これら全てがお喋りで疑い深い精神の者らに漏らされたら、損失を被ろう。そのため、魔術の作業者は、この術の果実を得たら、彼の作業も場所も時間も望みも意志も、師かパートナーか仲間以外には秘密にし、誰にも明かさないなら利益となるだろう。そして仲間らも敬虔で、信仰を持ち、沈黙をなし、自然と教育によって威厳を持つようにせよ。なぜなら仲間ですら、お喋りで疑い深く価値が無いなら、あらゆる魔術作業の効果を防ぐからである。


オカルト哲学 3-3
↑ オカルト哲学 第三の書


*1 330年 - 400年。後期ローマの軍人、歴史家。31巻からなる「歴史」を書く。
*2 クイントゥス セプティミウス フロレンス テルトゥリアヌス。160年 - 220年。キリスト教神学者でラテン語で神学書を書いた最初のラテン教父の一人。
*3 2世紀にシリアにいた新ピュタゴラス学派の哲学者。
*4 アンモニオス サッカス。175年 - 242年。アレクサンドリアの哲学者。新プラトン主義の創始者の一人に数えられ、「神より教わりし人(テオディダクトス)」と呼ばれた。弟子の中には、プロティノスやオリゲネスもいた。
*5 マタイによる福音書 第13章10-14節。
*6 詩篇 第119篇11節。