哲学者のチンキに関する書

ページ名:哲学者のチンキに関する書

哲学者のチンキに関する書


ノアの大洪水以降に生まれた詭弁家らに対して、

我らが主、神の子イエス キリストの時代に書かれた


ホーヘンハイムのフィリップス テオフラストゥス ボンバストゥス

君主の哲学者、スパジリクスの大公、大天文学者、

卓越した医師、物理の奥義の三重に偉大な者が著す


序文


 汝、詭弁家が、かような中身の無く偽りの言葉により、いずこでも私を苦しめるゆえ、ヘルヴェティア*1の辺境で私が生まれてから、私は何も知らず理解できずにいた。そして正当に認められた医者となった今でも、なおも私はある場所から別の場所へと放浪を余儀なくされている。そのため私はこの論文によって、無知で未経験な者らを明らかにしようと提案するのである。太古の時代に何の良き術が存在したのか。我が術の何が汝に役に立ち、汝のものが私に役に立つのか。個々は何を考えるべきか。この恵みの時代に、我が後世の者らがどのように私を真似るかといった事をである。太古の時代のヘルメース、アルケラーオス、その他の者らを見よ。そしてスパジリクスの術師らと哲学者らの誰が存在したかを見よ。彼らは自らの敵らや、誰が汝のパトロンであるかを証言しよう。詭弁家よ、彼らは今や中身の無い形と偶像にすぎぬ。汝らの権威ある教父や聖人と誤って考えられている者らからはこれは確証されないだろうが、古代のエメラルドタブレットは汝やその同輩らが教えられるであろう事よりも多く、哲学、錬金術、魔術の術と試みを示すのだ。上記の事実から、これらがいかに偉大な宝であるかを汝がまだ理解できないなら、なぜどの王や大公らも古代エジプト人を超える事が出来ないかを私に語ってもらいたい。それから、なぜディオクレティアヌス帝が(彼がその手に入れられる限りにおいて)全てのスパジリクスの書を燃やすように命じたかも。これらの書の内容が知られていない限り、彼らはなおも耐えられない軛に縛られたままであったろう――軛だ、詭弁家よ。いずれは汝とその同輩らの首にも結ばれるであろう。


 中年の頃になってから、この全ての術の中の君主は、ついに私、テオフラストゥス パラケルスス、哲学と医学の君主へと授けられた。この理由から、全ての精巧な幻と、偽りの作業、僭越な言葉、すなわちアリストテレス、ガレノス、アヴィケンナ、メスバの言葉、さらに彼らの信奉者らの教義を絶滅させ拭い去るよう、私は神に選ばれたのである。自然の光から導かれた我が理論は、決して通り過ぎたり変わったりはせず、この1500年期の58年後には、それらが繁栄し始めるであろう。同時に理論に続く実践も、驚異的で素晴らしい徴が与えられ、職人らと一般人らも、パラケルススの術は詭弁家らのくだらない物と比べて、何と堅固で不動であるかを完全に理解するであろう。もっとも、それまでは詭弁家の学は教皇や帝国貴族らによって、その愚かさが支持され堅固にされるであろうが。そのため、私は汝、乞食でゴロツキの詭弁家に告発され、私は沈黙を保つが、ドナウ川とライン川(にある帝国議会)はこの告発に応えるであろう。汝が私に対して偽ってこしらえた中傷は、多くの宮廷や大公ら、多くの帝国都市、騎士団、貴族らをしばしば不快にさせてきたのだ。私はバイエルンのヴァイデンという名の町の、ユリウス広間に属する宿屋にある宝を隠している。この宝は汝、ローマ教皇レオも、汝、ドイツ皇帝カールも、全ての汝の資産でも買う事の出来ないものだ。この星の徴は、汝らの名前の奥義でも用いられているが、これは神のスパジリクスの術師ら以外には知られていない。ゆえに、汝、虫けらで汚らしい詭弁家よ、汝は奥義の君主であるこの私をただの馬鹿、間抜け、放蕩な山師と思っているゆえ、今や中年になったので、私は本論文にて、名高い哲学者のチンキの事柄、性質、準備についての名誉ある講義をする事にした。それにより真理を愛する者ら全てに用いられ称えられ、この真の術を嘲る者らは貧困へと落ちぶれよう。この奥義によって、老年の者らは明白に啓明され、その全ての損失を神からの恵みと真理の霊の報酬により補われよう。それにより世界は、これまで聞いた事の無い知性と知恵の萌芽が始まろう。一方で悪徳は善を抑えられず、悪徳の者らの持ち物も、多くあるかもしれないが、徳ある者らを損失させる事は無くなるだろう。


第一章 哲学者のチンキに関する書


 私、フィリップス テオフラストゥス パラケルスス ボンバストゥスは、神の恵みにより、哲学者のチンキを造るための多くの方法を見つけ出し、それらは全て同じ結果へと行きつくと述べる。エジプト人のヘルメース トリスメギストスは彼自身の方法によりこの作業を行い、ギリシア人のオーロスも同じプロセスを行っていた。アラビア人のハリは、彼の方法を堅固に保った。だがドイツ人のアルベルトゥス マグヌスは、ある長々しいプロセスに従っていた。彼らそれぞれは自らの方法により進んでいたが、にもかからわず、彼らは一つの同じ結果に到達していた。長きにわたり、哲学者らによりかくも多く望まれ、またこの涙の谷に、この命はかくも名誉ある保持をされてきたのである。今こそ、私、テオフラストゥス パラケルスス ボンバストゥス、奥義の君主、この目的のために神により授けられた天才による、この至高の哲学的作業を、あらゆる探究者は、それがイタリア人、ポーランド人、フランス人、ドイツ人、その他どこであろうとも、真似し、私に従うように強制されよう。我がもとに来るのだ。汝ら全ての哲学者、天文学者、スパジリクスの術師、その他高遠な名を持つ者よ、私は汝に示し開かん。錬金術師と博士らよ、汝らは私により最も完成された労働とともに、この物質の再生の作業により高められよう。私は汝に全ての神秘と作業の基礎が中に横たわるチンキ、奥義、精髄を教えるであろう。これらについて、他には誰もが火によって試みる事によってのみ信じる事になろう。このスパジリクスの術や医薬の術の試みの技法について、誰にせよ矛盾する事を述べていたとしたら、汝はその者を信じる理由は無い。なぜなら、経験的に火を通じて、真実は虚偽から分離されるからだ。無論、自然の光はこの方法により造られ、この光の中を進む者のみに、この方法による証明や試みが現れよう。この光とともに私は実演の最良の方法で教えるが、私の以前の全ての者らが、自らの思い付きと鋭い推察により労苦と共に試みたものは、結果として自らを失い、彼らの愚かさによる危険を受けたのである。この事について私の観点からは、多くの素朴な者らは高尚であったが、一方で、この術への推察と意見を持っていた多くの貴族らは道化師となった。なぜなら、彼らが火に手を伸ばす前に、その頭の中では黄金の山を運んでいたからである。そのため、まず最初に、蒸解、蒸留、昇華、反射、摘出、溶解、凝固、発酵、定着を学ばなくてはならない。またガラス瓶、ウリ状の瓶、循環瓶、ヘルメースの瓶、陶製の器、液容器、高炉、反射炉、似たような種類の道具、また大理石、木炭、摘まむ箸といった、この作業に必要なあらやる道具も、経験により熟達する必要もある。それにより汝はついには錬金術と医薬の術の利益を得られるだろう。


 だが、空想と意見に拠って、それらのフィクションの書に執着していたなら、汝はこれらの事柄を何も得られない宿命となろう。


第二章 哲学者のチンキの主題と事柄の定義について


 チンキ作成のプロセスについて述べる前に、この主題について説明するのは必要である。現在までこの事は真理を愛する者らにより、特別なオカルトの方法により常に隠されてきたからである。このチンキの事柄(汝が私をスパジリクスの術の意味合いで理解したなら)は特定の物で、それをウゥルカーヌスの術(錬金術)により三つのエッセンスを一つのエッセンスに押し込むか、それは残ったままになろう。これを古代人らが用いた適切な名前を与えると、これは多くの者らに赤い獅子と呼ばれているが、少数のみがその真の意味を知る。これは自然の助けと術師自身の技量により、白い鷲へと変容できる。これらは一つ二つは作られるが、たとえ黄金の輝きもスパジリクスの術師にとって、これら二つよりも輝く事は無い。ところで、汝がカバラ学者と古き天文学者らの用いたものを理解しないならば、汝はスパジリクスの術のために神により生まれておらず、ウゥルカーヌスの作業のために自然に選ばれず、錬金術について汝の口を開くべく造られていない。それゆえ、このチンキの事柄は非常に大いなる珠玉、最も貴重な宝であり、いと高き神の発現と、人が地上に存在出来る理由の次に高貴なものである。これは錬金術と医薬の百合であり、哲学者らがかくも渇望し探し求めたが、その完全な知識と準備の欠如により、彼らはその完成へと進むことが出来なかった。これらの研究と試みは、チンキの初期の段階のみを我々に与えているが、その我が同輩らが真似すべき真の基盤は私のみが知っており、それにより誰にせよ我が良き意図を彼らの影で混ぜる事は出来ない。私は長き研究による権利により、スパジリクスの術師らの過ちを正し、真理から偽りや過ちを分離する。私は長い研究によって、非難と多様な事柄を変えるのを正当化できる理由を見つけたからである。勿論、古代人らの試みに私自身のよりも良い物を見つけたならば、私は全ての良き錬金術師らが用いて利益となるために、かくも大労働を始めようとはせず、私は喜んで忍んだだろう。私はチンキについて充分に宣言したので、これ以上は長々と述べる必要はほとんどあるまい。私はその準備についてこれから語り、その後には古代での試みについて示すだろう。さらに、私自身の研究も加えるのを望みたい。それによりついに、古代ギリシアの時代はキリスト教父の時代と密接に繋がるであろう。汝、詭弁家よ、その間は、汝は指導者であるのを許してやろう。


第三章 哲学者のチンキの古代人のプロセスと、パラケルススによるより簡潔な方法について


 古代のスパジリクスの術師は、百合を哲学的な一ヶ月の間、腐敗させ、その後に湿ったスピリットへと蒸留し、最終的に乾いたスピリットへと高められるまで続けた。それから再び、滓に湿ったスピリットを染み込ませ、蒸留によってそれらをよく抜き出し、最終的には乾いたスピリットが全て高められるようにする。それから抜き出された湿気と混ぜ合わせ、ペリカン瓶を用いた方法により、乾いたスピリットと混ぜ合わせる。これを三、四回繰り返すと、百合の乾いた残存物全体が底に溜まるようになる。この古代の試みは凝固までは教えていないものの、古代人らはこの方法により、しばしば彼らの望みの完全な現実化を得ていた。だが、もし彼らが私が「ヘルメースの啓示書」で示したように、天文学と錬金術を組み合わせた方法を学んでいたなら、この赤い獅子の宝により短く到達していたであろう。(キリストが信仰深い者らの慰めについて述べたように)日々は自らの特有の配慮があり、私以前のスパジリクスの術者の作業は偉大なものである。だが、私の下に聖霊が注がれた助けとともに編み出した我が理論と実践により、この時代の忍耐と共に作業を絶え間なく続ける者らは啓明され明らかとなるであろう。私は自然の性質、そのエッセンスと状態を試し続け、その結合と分解を知るからである。この二つは哲学者への最高にして最も偉大な贈り物であり、この時代までどの詭弁家らも決して理解しなかったものである。そのため、古代でチンキ製造の最初の試みでは、スパジリクスの術師は一つの単純なものから二つのものを造っていた。だが中世になると、この発明はひとたび忘れ去られ、後継者らが勤勉に調査した結果、この単純ものの二つの名前と出会い、彼らはこのチンキに属するものを一つの言葉、すなわち百合と名付けた。やがては自然の模倣者らは、この形質を大地へ植えた種のように適切な時間だけ腐敗させた。なぜなら、この腐敗の前には何物をも生まれず、どの奥義も現れないからである。その後、彼らはこの形質から湿ったスピリットを引き出し、やがては火の暴力により、乾燥したものも同様に昇華される。これは、田舎者らが適切な期間が経てば、それぞれが成熟して、高潔になったり堕落したりするようなものである。最後に、春の後に夏が来るように、これらは自らの果実と乾燥したスピリットを組み込み、収穫の時が来て実りのために自らを横たわらせ、このチンキの哲学者の石をもたらすのである。


第四章 パラケルススにより短縮化された哲学者のチンキのプロセスについて


 古代のスパジリクスの術師らは、もし我が学派で彼らの作業を学び実践していたならば、このような長期にわたる労働と退屈な繰り返しを必要としなかっただろう。彼らははるかに少ない費用と労働によって、望みを同様に得られたであろう。だが今の時代には、テオフラストゥス パラケルススが奥義の君主として馳せ参じたゆえ、私の前の全てのスパジリクスの術師らにはオカルトだった事柄も、見つけられる機会がある。ゆえに私が主張するのは、獅子からは薔薇色の血のみを、鷲からはグルテンのみを取る。汝はこれらを混ぜたら、古いプロセスのように凝固させよ。それによって汝は無数の者が求めて、ごく少数のみが見つけた哲学者のチンキを得るだろう。汝、詭弁家が望もうが望むまいが、この哲学者の石は自然そのものの中にあり、自然を超えた神の驚異的なものであり、この涙の谷である世界で、最も貴重な宝である。別の物を前よりも遥かに価値ある物へと変容させるこの石を、汝が外側から見たら、ごく詰まらない物に見えるかもしれない。だが汝はこれを認め、これはスパジリクスの術師によって造られた奇跡であると告白しなくてはならない。術師は準備の術により、極めて醜く見える物質を腐敗させるが、これによって彼は他の最も高貴で貴重なエッセンスを刺激させられるのだ。もし汝がアリストテレスの光の下や、我々の時代の者や、セラピオの規則から同様のやり方を学んだとしたら、ここに来てその知識を実験的に明るみに出してもらいたい。今は、名誉の恋人にして博士となったとして我が学派の権利を保つのだ。だが汝が何も知らず、何も行えないならば、なぜ汝は私を非合理なヘルヴェティアの牛として軽蔑し、彷徨うゴロツキとして罵るのか? この術は第二の自然でそれ自身の世界があるのは、経験が証言し、汝や汝の偶像に対して示しているのだ。そのため、時には錬金術師は特定の単純なものを調合し、その後に必要に応じて腐敗させ、そこから別の物を準備する。これによりよく多くの物を造り出せ、それらは自然そのものが造る物よりも効果が高い。ガスタイヌム地方では金星(銅)は土星(鉛)から造り出せ、(オーストリアの)ケルンテン地方では金星から月(銀)が造り出され、ハンガリーでは太陽(金)は月から造られると完全に良く知られているようにである。このマギには良く知られていた、他の自然物へと変容させる知識は秘密裏に伝えられており、それらはオウィディウスが「変身物語」で世に知らせたものよりも、さきに驚異的なものなのである。汝が私を正当に理解したなら、汝の獅子を東に、鷲を南に探し求めよ。これらにより、我々の作業は始まるからである。汝はハンガリーとイストリア地方で産出される物よりも良い道具は見つけられないであろう。だが汝が統一から二つ組により均等な三つ組へと導きたいと望むならば、汝は南へと旅をしなくてはならない。それによりキプロス島では、汝は望む全ての物を得られるだろう。だが、我々が今持っている物よりも多く膨らます事が無いようにすべきである。世界には変容を示す奥義がなおも多くあるが、それらはごく少数の者しか知らない。これらは主なる神が誰にでも明かすべく造ったものであるが、この術の噂ではまだ知られていないのだ。全能者はこれらや他の術を隠す方法を賢者らに教えており、術者イライアスすらも知る事は能わなかった。この時代にはこれほどオカルトで明かされなかったものは無かったのだ。また汝は自らの目で見るだろう(もっとも、それを公表する必要は無い。誰かに馬鹿にされるだろうからだ)が、硫黄の火は宝石には偉大なチンキであり、勿論それは自然が行えるよりも高い温度に温められる。だがこの金属と宝石を徐々に変化させる方法は、ここでは説明を省かせてもらいたい。私はこれらについては、我が「秘中の秘」や「錬金術師の苛立ち」*2の書や他でも豊富に述べているからだ。哲学者のチンキについて、我が先祖らのプロセスから私が始めたように、私は次にその完全な結論をするであろう。


第五章 パラケルススによる、古代人のプロセスの結論について


 最後に、古代のスパジリクスの術師らは百合をペリカン瓶の中へと入れて乾かし、火を定期的に増大させ続ける事で固体化させ、それらが黒化するまで続けた。全ての色に変化させる事により、これは血のように赤くなり、それはサラマンダーの状態と呼ばれた。正しくも古代人はこのような作業を進めて、この宝珠を求める者は同様に行うならば正しくも得られるであろう。汝が錬金術師の学派で火の段階を観察し、汝の瓶を変える方法を学ばない限り、これらを明白に理解できるように語るのは難しい。それらがなされていたら、汝の百合が哲学の卵の中で温められたらすぐに、カラスよりも黒い物として驚異的に現れるのを見るであろう。その次には、白鳥よりも白くなり、そして最後には黄色へと通過してから、どんな血よりも赤くなる。求めよ、求めよ、と最初のスパジリクスの術師*3は述べた。そして汝は見出すであろう。叩け、さすれば汝の前に開かれん。二心のある鳥の口に食物を入れるのは不信心で不作法であろう。鳥には飛ばせるままにせよ。これは私の前に居た者らすらそうしてきたのである。だが真の術に従うのだ。これは汝を完全な知識へと導くからである。誰であれ、私が先に述べてきた事よりも、明白で完全に説明する事は不可能である。汝の内なるファリサイ派に彼らの不安定で当てにならない基盤から何を造るかを教えさせよ。それらは、目的や意図には到達しまい。汝がこの錬金術を可能な限り正確に教えられたら、この術の助けにより汝が物の自然で創り出せなかったり難しい事は無くなるであろう。無論、自然自身はその高次の完成へと進む光へともたらす事は出来ず、我々の二元性からの統一、統合によってのみ見る事が出来るのだ。だが人はスパジリクスの準備によって、それを自然により定められた場所へと導かねばならない。哲学者のチンキの準備について古代人のプロセスと私の訂正については、私がこれまで述べてきた事で充分であろう。


 さらに、我々の手にはこのエジプト人の宝があるので、それを使用へと変える方法を述べるのが残っている。そして、これにはスパジリクスの哲学者の石により二つの方法が与えられている。前者の方法は肉体の再生であり、後者の方法は金属の変容に用いられる。ゆえに、私、テオフラストゥス パラケルススは、それぞれを違った方法で試みてきたので、この作業の徴に無論従い、試みと証拠によりこれらは私にはより良く完全に現れたので、これらについてを次に述べたいと思う。


第六章 万能薬による金属の変容について


 哲学者のチンキが変容のために用いられるならば、その1ポンドほどを1000ポンドの溶けた太陽(金)に投入する必要がある。それから、やがては卑金属を変容させるための医薬が準備されるであろう。この作業は自然の光の驚異的なもので、哲学者の石とも、スパジリクスの作業とも呼ばれ、前に存在した金属は消え去り、別の物が生み出される。この事実はアリストテレスがその誤謬を基盤とした薄っぺらな哲学とともに描いている。真実にハンガリーの田舎者らが鉄を適切な季節にジッフェルブルンメンと呼ばれる泉へと投げ込むと、泉の水は錆を食らい、それからこの鉄を炉の火で液化させると、すぐにこれは純粋な金星(銅)となり、鉄には二度と戻らなくなる。同様に、クッテンベルクと呼ばれる山で白鉄鉱から灰汁を得てから、その中に鉄を入れるなら高い精度の金星となり、自然が造ったものよりも柔軟となる。これらの事柄や似たような他の事柄、すなわちある金属の見た目を別の物へと変えるのは、詭弁家らよりも平民の方がよく知っている。そしてこれらの事柄は、愚か者らが馬鹿にしたり、一部は贋作者の単に羨望の産物であるが、ほとんど隠されたままにある。だが私自身がイストリア地方で、24精度(al.38)以上の金星をよく買っており、その金星で他の種類と同様に用いたアンチモンや四重のものによって、太陽の色はこれ以上高く昇る事は無い出来となる。


 この奥義を過去の術師らは激しく望み、最大限の勤勉で探し求めていたが、非常に少数のみが完全な準備の方法によって、この目的に達する事ができた。木星を月に、金星を太陽に変えたりするような、卑金属をより高位の金属へと変容するには、多くの困難と障害があるからである。おそらく人祖の原罪のせいで、神は自然のマグナニアを多くの人々から隠したのだろう。そのため時には、術師らによってこのチンキが準備され、彼らは作業が効果を持つように投入することが出来なかったら、彼らの軽率さと悪しき保護によって、この金属は家禽に食われ、それらの羽根は落ち、そして私自身が見たが、再び生えてくる。この変容の方法により、術師らの軽率さから悪用されつつも、医薬と錬金術となる。彼らが望みのためにこのチンキを用いる事が出来ない時は、これを人々の再生へと変換するが、それについては次の章でより詳しく説明するつもりである。


第七章 人々の再生について


 古代エジプトの最初の原始的な哲学者らの一部は、このチンキの方法によって150年生きていた。また多くの者らの生は数世紀まで伸ばされていたと様々な歴史書で明らかに示されている。もっとも、それらの歴史書の全てがほとんど信用に値しないが。このチンキの力は、肉体の生を生来の自然に可能な限界を超えて伸ばし、全ての病から安全に生きるよう堅固にこの状態を保持するという驚くべきものである。そして勿論、肉体は老年となるが、にも拘らず、外見はなおも若いままのように見えるのである。


 それゆえ、哲学者のチンキは普遍的医薬であり、全ての病を癒し、それが何の名前で呼ばれようとも、不可視の火のようなものである。服薬量は非常に少量であるが、その効果は最も強力なものである。この方法により、私はらい病、性病、水腫、癲癇、疝痛、疥癬、似たような病を治癒してきた。また、狼瘡、癌、皮膚の癌性潰瘍、瘻、内科疾患全体も、人が信じられるよりも多く確実に癒したのだ。この事実について、ドイツ、フランス、イタリア、ポーランド、ボヘミアなどで多くの証拠を示せるだろう。


 さて詭弁家よ、私、テオフラストゥス パラケルススを見るのだ。汝のアポローン、マカーオーン、ヒッポクラテースが私にどう対抗できるかね? これは哲学者らのカトリック(普遍)主義であり、それによりこれらの哲学者ら全てが病に抵抗する事で長寿を得て、その目的を完全にして最も効率的に得られるのだ。そのため彼らの判断によって、彼らはこれを哲学者のチンキと名付けたのだ。なぜなら医薬全体の中で、このような肉体の浄化、全ての病が肉体から急速に失われ変容するもの以上に偉大なものはあろうか? ひとたび種を造ったら、全ての他のものも完全なものとなるのだ。何も病を取り去らない詭弁家らの誤った基盤の浄化が何の役に立とう? ゆえに、これは真の医師の最も素晴らしい基盤であり、自然の再生であり、若返りの薬である。この後に、新たなエッセンス自身が対立するもの全てを追い出そう。この再生の効果のために、哲学者のチンキの力と徳は奇跡的に発見され、今日まで真のスパジリクスの術師らにより秘密裏に用いられ、隠されたままだったのである。


これにて、哲学者のチンキに関する書を終える



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*1 スイス西部の古代ローマ時代の呼び名。
*2 ここにもある「天の哲学の書」の事かと思われる。
*3 イエスの事かと思われる。