高等魔術の教理と祭儀 2-7

ページ名:高等魔術の教理と祭儀 2-7

第七章 七つのタリズマン


 私が述べてきたように、魔術で用いる儀式、衣、香、印や図形は、意志を教育するために想像力を制御するのに不可欠である。魔術の作業の成功は、全ての儀礼の忠実な遂行に掛かっており、これらは妄想でも恣意的なものでも無いのである。これらは古より伝えられてきており、類推の認識の本質的な法則により常に得られ、内なる概念と形に照応している。何年にも渡って、ほとんどの真正のグリモアと魔術儀礼を研究し比較してきたゆえ、私は普遍的で太古の魔術の儀礼を、多くの労苦の末に再建することが出来た。この主題に関する唯一の真剣な本は、体系化された文字の写本で、私はこれをトリテミウスの暗号記法の助けを借りつつ解読した。他に重要なものは、ヒエログリフと象徴の中に全て含まれており、それらの真の像は不可解な文の迷信的なフィクションの下に隠されていた。例えば、「教皇レオ3世の手引書」は、その真の図形とともに印刷された事は今まで無く、私は古の写本の後にこれ自身を用いるために再構築した*1。「ソロモン王の鍵」の名の下に知られる儀式は多数存在する。それらの多くは印刷され、残りはなおも写本のままであり、慎重に写されている。極めて美しく華麗に書かれた例の文書は、国立図書館に保管されており、ペンタクルと印章により豊かに飾られていて、それらの多くはティコ ブラーヘとドゥシャントゥの魔術カレンダーで再掲載されている。最後に、金儲けのための誤魔化しと、不誠実な出版社により印刷された「鍵」とグリモアがある。かくも悪名高く非難されてきた、かつては「小アルベルトゥス」の名で呼ばれていた書は、これらのカテゴリーに主に属する。一部のタリズマンの図形と形式は、パラケルススのものから剽窃されており、それらのみが真剣な部分である。
 現実化と儀礼の全ての分野において、パラケルススは堂々とした魔術の権威である。誰も彼を超える事が出来ず、その理由から彼は自らのオカルト哲学の書の中で、儀式の性質については隠し、わずかに全能の意志である磁気動者の存在について教えていた。また彼はこの印章学全体を、小宇宙と大宇宙の星の二つの印によって要約していた。達人にとってはそれで充分であり、大衆には秘儀伝授しないのは重要である。そのためパラケルススは儀式を教えたりはしなかったが彼は実践はしており、彼の実践は奇跡の連続であった。
 私は三つ組と四つ組の魔術の重要性について既に述べている。これらの組み合わせは、偉大な宗教的、カバラ的な数を作り出し、聖なる七つ組の普遍的な総合と構成を表している。古代人の信仰では、この世界は七つの副次的な原因――トリテミウスがセクンダエイと呼んだ――により支配されており、モーセが神々エロヒムの複数形の名前の下で表わした普遍的な諸力である。これらの諸力は類似的でお互いには対立し、それらの対立により均衡を作り出し、諸圏の動きを支配する。ヘブライ人らは、これらを七大天使と名付け、ミカエル、ガブリエル、ラファエル、アナエル、サマエル、ザドキエル、オリフィエルの名を与えた。キリスト教グノーシス派では、最後の四体はウリエル、バラキエル、セアルティエル、イェフディエルと名付けていた。他の国々では、これらの霊らが七つの大惑星を支配するとし、彼らの主な神々の名を与えている。誰もがこれらの相対的な影響を信じており、占星術では古代の天をこれらにより分割し、一週間の七日を順にこれらが支配するとした。これが魔術の週の様々な儀礼と、七大惑星の宗教儀礼の理由である。この意味では惑星はただ印であると我々は既に観察しており、これらには普遍的な信仰が割り当てている影響力があるが、それらは天上の諸惑星のものというよりも、より真実には人の心の星々によるものである。古代の魔術では常に恒星と見做してきた太陽は、大衆にとっては惑星にしかならない。ゆえに、これは我々が理由も知らずに日曜日と名付けた、古代人の間での太陽の日であった一週間の一日に留まる。
 七つの魔術の惑星は、色のスペクトラムの七色と、音のオクターブの七音階と照応し、またこれらは七つの美徳も表し、対照的にはキリスト教倫理の七つの悪徳でもあった。キリスト教の七つの秘跡は、同等にこの偉大な普遍的七つ組と照応する。水エレメントを聖別する洗礼は月と関係しており、苦行の告解は火星の天使サマエルが司り、真の信仰者に舌の賜物として理解と対話の霊を賜る堅信礼は水星の天使ラファエルが司り、神の受肉の秘跡の取り換えである聖体拝領は木星の領域であり、結婚は金星の浄化する精霊、天使アナエルにより聖別され、病者の最期の塗油は土星の大鎌の下に倒れようとする前の保護であり、光の司祭職の叙階は太陽の性質により著しい。これらの類似のほとんど全ては学識あるデュプイにより観察されており、その結論として彼は全ての宗教は偽りであり、聖なる永遠の単独の教義を認識する代わりに、これらは継続的な宗教の形をした普遍的な象徴主義を再創造し続けているからである。彼は自然の調和から人に与えられる永遠の啓示を理解するのに失敗し、語られる像と永遠の真理の鎖の中に、過ちのカタログのみを見ていたのである。
 魔術の作業も七つの数がある。(1)太陽が司る光と豊かさの作業。(2)月の招聘の下にある占術と密儀の作業。(3)水星の保護の下での技術、学、雄弁の作業。(4)火星に捧げられる怒りと懲罰の作業。(5)金星に好まれる愛の作業。(6)木星の影響下にある野心と策謀の作業。(7)土星の保護の下での呪いと死の作業。神学的象徴主義においては、太陽は真理の御言葉を、月は宗教そのものを、水星は神秘の解釈と学を、火星は正義を、金星は慈悲と愛を、木星は起き上がる栄光の救い主を、土星は父なる神、モーセのイェホヴァを表す。人間の体では、太陽は心臓を、月は脳を、木星は右手を、土星は左手を、火星は左足を、金星は右足を、水星は性器を表すが、水星は両性具有の姿として時には表されるからである。人間の顔では、太陽は額を、木星は右目を、土星は左目を、月は鼻の付け根の両目の間を、火星と金星は両鼻の孔を支配し、水星はその影響力を口と顎全体に行使する。古代人の間では、これらの記述が人相学のオカルト学を構成し、後にはラヴァーター*2により不完全ながら再発見された。
 光の作業をしようとする魔術師は、日曜日の深夜から朝8時までと、午後3時から夜の10時までの間に作業しなくてはならない。彼は紫のローブを着て、黄金のティアラと腕輪も身に着ける必要がある。聖なる火を点けた三脚の周囲には月桂樹、ヘリオトロープ、サンフラワーの花輪で取り囲まねばならぬ。香はシナモン、強香料、サフロン、紫檀にする。指輪は貴橄欖石かルビーのついた黄金で、カーペットは獅子の皮のものにする必要がある。ハイタカの扇も用意せよ。月曜日の儀式ではローブは銀で縁取りされた白で、その襟には真珠、水晶、セレナイトの三色があるものにする。ティアラは黄色いシルクで覆われ、それにはアグリッパのオカルト哲学にあるようにガブリエルのヘブライ文字を銀色で刺繍する。香は白檀、樟脳、琥珀、アロエ、キュウリの種を磨り潰したものにする。花輪はヨモギ、銀盞草、黄色のキンポウゲにする。黒いタペストリー、衣服、物は避けるようにし、銀以外の金属を身に着けてはならない。火曜日、復讐のための作業の日には、衣の色は炎、貪欲、血の色ので、ベルトと腕輪は鋼鉄製にする。ティアラは金で包まれるようにする。杖は使うべきでは無く、魔術の短剣と剣のみにする。花輪はアブサンとヘンルーダに、指輪はアメジストのついた鋼鉄のものにする。水曜日、超越学に向いた日には、衣は緑か様々な色が混ざったものにし、中空のガラス玉には水銀が入れられた真珠のネックレスを身に着ける。香は安息香、ニクズク、蘇合香にし、花はスイセン、百合、水星草、紫華鬘、マヨラナにする。宝石は瑪瑙でなければならない。木曜日、大いなる宗教や政治の作業の日には、衣は緋色にし、額には真鍮の板を身に着け、そこには木星の霊の印章と三つの言葉、GIARAR、BETHOR、SAMGABIELを刻む。香は香料、竜涎香、香膏、楽園の穀、ニクズク、サフロンにする。指輪はエメラルドかサファイアでなければならない。花輪と花冠はオーク、ポプラ、イチジク、ザクロの葉にする。金曜日、愛の作業の日には、衣は空色にし、緑かバラ色を吊り下げ、装飾品は磨いた銅、王冠はスミレ色にし、花輪は薔薇、キンバイカ、オリーブにする。指輪はトルコ石で、ティアラと留め金にはラピスラズリと緑柱石が良い。扇は白鳥の羽根にする。そして作業者は胸に銅の板を身に着け、そこにはアナエルの印章とAVEEVA VADELILITHの文字を刻む。土曜日、死の作業の日には、衣は黒かブラウンにし、オレンジか黒いシルクで印章が刺繍される。首回りには、鉛の薄板を身に着け、そこには土星の印章と、ALMALEC、APHIEL、ZARAHIELの文字を刻む。香はダイアグリディウム、スカモニア、ミョウバン、硫黄、阿魏であるべきだ。指輪はオニキスのものにする。花輪はトネリコ、イトスギ、クリスマスローズにする。オニキスの指輪の表面には、土星の時間にヤヌス神の二つの頭を聖別された錐により刻む。
 かようなるは古代の魔術師の秘密の宗教儀礼の荘厳さである。中世の魔術師も、似たような方法により、七つの精霊に照応する日々のタリズマンの聖別を続けていた。私はペンタクルを一つの特別な概念における魔術教義全体の総合的な印章として定義した。それにより、完全な思考と意志の全面的な表現となる。ペンタクルは霊の署名である。この印の儀式的聖別は作業者の意図とより強く結びつけさせ、自らとペンタクルの間に真の磁気的な鎖を確立させる。ペンタクルは処女羊皮紙、紙、金属の上に描かれよう。タリズマンとは何かというと、金属の板にペンタクルや印を彫って、特別な意図を込めた聖別をされたものの事である。古代の魔術をよく学んでいたガッファエルは、タリズマンの真の力を科学的に立証し、これらの性質は愛する者らを保持し、我々を危険から守り、幸福を増大させると説得させる力があると確信させられる。タリズマンは七つのカバラ的な金属から造られ、適切な日と時間にそこに必要で定められた印を彫る。七大惑星の姿と、パラケルススによるそれらの魔方陣は、「小アルベルトゥス」の中に示されている。これらは大衆の魔術の中でも、ごく少数の真剣なものの一つである。パラケルススは木星の神の姿を、司祭の姿と取り換えているが、その良く定義された神秘的な意図は明らかにするのは望まなかった。だが、七つの霊らの寓話的、神話的な姿は、タリズマンを成功裏に用いるには古典的で親しみ過ぎるようになっていた。我々はより深遠な印に立ち返る必要がある。タリズマンの片面には常にペンタグラムを彫り、そこには太陽のための円、月のための三日月模様、火星のための剣、金星のためのGの字、木星のための王冠、土星のための大鎌も刻む必要がある。逆側の面には、ソロモン王の印、すなわち二つの三角形から構成される六芒星を彫り、その中央には太陽のタリズマンのためには人の姿を、月のためには杯を、水星のためには犬の頭を、木星のためには鷲を、火星のためには獅子の頭を、金星のためには鳩を、土星のためには雄牛か山羊を彫る。惑星に関連する七大天使の名も、ヘブライ文字、アラビア文字、あるいはトリテミウスのアルファベットのような魔術文字で加える必要がある。ソロモン王の二つの三角形はエゼキエルの輪のダブルクロスを代わりに使う事も出来よう。それらは古代のペンタクルでも多く使われており、教理篇でも述べたように、フォヒの三文字列の鍵である。
 宝石をアミュレットやタリズマンとして用いることもできるが、自然の全てのものは、それが金属だろうとも宝石だろうとも、惑星の霊と対応した色のシルクの袋に慎重に入れておき、関連した日の香によってまぶし、不純な者らに見られる事も触れられることも避けなくてはならない。すなわち、太陽のペンタクルやタリズマンは、醜い者や奇形、あるいは淫らな女に見られたり触れられたりしてはならず、月のものは堕落した者や月経中の女に見たられたり触れたりしたら汚され、水星のものは給料をもらっている僧侶に見られたり触れられたりしたらそれらの性質を失い、火星のものは臆病者からは隠すべきであり、金星のものは堕落した者や宗教的な独身の誓いをした者らから離すべきで、木星のものは不信心者から離し、土星のものは処女と子供らから離すべきである。別に彼らの視線や触れるのが不浄だからではなく、タリズマンは彼らに不幸をもたらし、よってその全ての性質を失うからである*3
 名誉の十字架や、その他の飾りはタリズマンに個人的な価値と美点を増大させ、これらは厳粛な授与により聖別され、公共の意見はこれらに莫大な力を授けられる。概念の印と印の概念の影響力について、これまで充分な注意が払われてこなかった。現代の革命期の、例えばナポレオンの名誉の星が聖ルイの十字架と取り換えられた事により、その象徴的な力を完全に取り戻している事を過小評価すべきでない。これはローマ帝国軍の紋章ラバルムにあるペンタグラムであり、光の象徴の再構築であり、メイソンリーのヒラム アビフの復活である。ナポレオンは自らの星を信じていたと言われるが、彼はそれが何を意味するかを説明していたとしたら、彼の天才は証明されていただろう。ゆえに彼は自らの印としてペンタグラムを用いたのは正しかった。なぜなら、これは知的な主導権のもとに人間の尊厳を獲得する象徴だからである。フランス革命軍の力ある兵士らは僅かしか知らなかったが、彼はほとんど全てを予知していた。そのため彼は現代の最も偉大な直観者であり、実践魔術師だったと言えよう。世界はなおも彼の奇跡に満ちており、田舎の者らは彼が死んだとはなおも信じていないのだ。
 聖なる免償された物、聖人や高潔な者に触れられた物、パレスチナ産の小数珠、復活祭のロウソクの蝋と聖油の残りで作った神の子羊の像アグヌス デイ、スカプラリオやメダイ、これら全てはタリズマンである。今日、これらのメダイの一つは人気があり、宗教性の欠けている者すら、その子供の首にぶら下げさせているのだ。さらに、その図形はカバラ的に完全なものであり、真に驚異的な二重のペンタクルなのである。このメダイの片方の面には、偉大な秘儀伝授者、ゾーハルの天母、エジプトのイシス女神、プラトン主義者のウェヌス・ウーラニアー、キリスト教の聖母マリアが、世界を王冠としてかぶり、片足を魔術の蛇の頭に踏みつける姿で描かれる。彼女は両手を頭を頂点とした三角形を作るように伸ばす。彼女の両手は開いて広げられ、結果として二重の三角形を作る。手から放たれる全ての光条は地上へと向けられ、明らかにそれは働きによる知性の放出を表している。メダイのもう片方の面には、密儀の高祭司の二重のタウ字、二重の円座に乗ったリンガム、あるいは三重の男根、カバラ的、メイソン的なMにより組み合わされ挿入され、それらはヤキンとボアズの二柱の間の正方形を表す。その下には二つの愛し傷つく心臓が描かれ、その周囲には十二のペンタグラムが取り囲む。身に着けている者には誰もこのような事は言わないだろうが、これは絶対的に魔術的なものであり、二重の感覚と、その結果として二重の性質を持つ*4。これらの権威ある者の恍惚状態で、このタリズマンが刻まれたものを明らかにし、既にアストラル光の中でこれが完全に存在しているのを見ている。これもまた、概念と印との間の密接な繋がりを示し、普遍的魔術の象徴主義に新たな証拠を与えている。
 タリズマンやペンタクルの製造と聖別に重要性と荘厳さを与えるほど、これらはより多くの性質を獲得するが、それらの諸原理の証拠から理解するようになるだろう。そのような聖別は、私が先に述べた適切な日に詳細を述べた道具によって行う。四大の召喚により闇の霊らを呼んだ後に、タリズマンはこれらの四大の祓われたエレメンツにより聖別される。それからペンタクルを手に取り、魔術の水をいくつか撒き、以下の言葉を唱える。

「エロヒムの御名と、生ける水の霊により、汝は我が光の印となり、意志の聖体とならん」

 それからペンタクルを香の煙でまぶして、以下を唱える。

「火の蛇らを滅ぼした真鍮の蛇により、汝は我が光の印となり、意志の聖体とならん」

 ペンタクルあるいはタリズマンに七回息を吹きかけてから唱える。

「天空と声の霊により、汝は我が光の印となり、意志の聖体とならん」

 最後に、浄化された土くれか、塩をペンタクルの上に三角形のように置いて唱える。

「地の塩により、永遠の命の徳により、汝は我が光の印となり、意志の聖体とならん」

 それから、以下の七大霊の召喚を繰り返し唱える。またそれぞれで、神聖な火に向かって七種類の線香の一本を投げ込む。

「ミカエルの御名において、イェホヴァは汝に命令し、ゆえに汝は追い払われん、ハバヨト!
 ガブリエルの御名において、アドナイは汝に命令し、よって汝は追い払われん、ベリアル!
 ラファエルの御名において、エロヒムの前から去れ、サハビエル!
 サマエル ツァバオトと、エロヒム ギボールの御名において、ゆえに汝は捕らえられん、アドラメレク!
 ザハリエルとサキエル・メレクにより、エロヴァーに従え、サムガビエル!
 シャダイの神と人の御名により、我が右手に持つペンタクルの印により、天使アナエルの御名により、ヨハヴァであるアダムとエバの力により、聖なるエロヒムにより、精霊カシエル、サハリティエル、アプビエル、ザラビエルの御名により、オリフィエルの命により、我らから去れ、モロク! 我らは自らの子らを汝に食わせたりはしない」


 最も重要な魔術の道具は、杖、剣、ランプ、杯、祭壇、三脚の香炉である。超越的、神の魔術の作業においては、ランプ、杖、杯が使われ、黒魔術の作業では杖は剣に、ランプはカルダン地方産のロウソクと取り換えられる。私はこの違いを黒魔術の章で詳しく説明するつもりである。今は道具の説明と聖別についてに向けよう。魔術の杖は単純な占術の杖や降霊術の二股の杖、パラケルススの三又の槍と混同してはならない。真にして絶対的な魔術の杖はアーモンドかハゼルの完全にまっすぐな枝で、樹が実を結ぶ前、日の出の直前に枝切りナイフか黄金の鎌で一撃のもとに伐らないといけない。杖は折ったり割れたりせずに、真ん中に穴を貫通させ、そこには磁気化させた鉄の長い針を入れる。片方の尖端には、三角形の形にしたプリズムを繋げて、もう片方の端には黒色樹脂で似たような形を繋げる。杖の真ん中には、銅と亜鉛による二つの輪を置かねばならない。その後に、樹脂には金箔を、プリズムと中央の輪には銀箔をかぶせる。それから、杖はシルクの布で包むが、両先端は含まない。銅の輪には、以下の文字を彫る*5。それから亜鉛の輪にはהמלד שלמהと彫る。杖の聖別は新月の日より始めて七日間かけて行い、大奥義に到達した秘儀参入者により行わねばならず、彼自身が聖別された別の杖を持つ必要もある。この魔術の秘密は世々に伝えられており、この超越学の始まりより絶えた事が無い。この杖と他の魔術道具は、だが特に杖は、慎重に聖別しなくてはならず、魔術師はこれらを大衆に見られたり触れられたりさせてはならない。さもなければ、これらは全ての魔術の性質を失うだろう。伝統において、この杖は魔術学の奥義の一つであって、それを明かす事は決して許されない。魔術の杖は作業者の腕の長さよりも長くてはならず、魔術師は周囲に人がいない時でなければ使ってはならず、それであったとしても必要でない限り触れてもいけない。多くの古代の賢者らは前腕の長さで造り、彼らの長いマントの中に隠し、公には単純な占術の杖や作業の種類に応じた象牙や黒檀の王錫のみを見せていた。リシュリュー枢機卿は常に力を渇望し、この伝達の杖を生涯かけて探していたが、見つける事が出来なかった。彼のカバラ学者のガファレルは、剣とタリズマンのみを与えられた。これは枢機卿の弱点を知っていたイエズス会士グランディエへの憎しみの秘密の動機であるかもしれぬ。ルーバルデモンでの不幸な司祭の最期の拷問の前に秘密にして長期にわたる対話が数時間行われた。司祭は死へ赴く前に以下の友情ある言葉を述べている。「あなたは優秀な人です、閣下。自らを滅ぼさないように」――含蓄のある言葉ではなかろうか。
 魔術の杖は魔術師には素晴らしいものであり、明白で正確な形で示す事すらしてはいけず、誰も保有を自慢してはならず、その聖別は絶対的な思慮と確信が無い限りは行ってはならない。


魔術の諸道具 ランプ、杖、剣、短剣


 剣は杖ほどは深遠なものではなく、以下の方法により造られる。純粋な鋼鉄により造り、十字架状の銅の柄は、「レオ3世の手引書」にあるように三つの柄頭を持つか、上記の図にあるように二つの三日月による柄頭にする。柄頭の中央には黄金の板で覆い、その片方には大宇宙の印六芒星が、もう片方には小宇宙の印五芒星が彫られなくてはならない。アグリッパの書にあるようにミカエルのヘブライ文字を柄頭に彫り、刀身の片方には、באילימ יהוה מי כמכהの文字を刻み、もう片方にはコンスタンティヌス大帝の軍団紋章の組み合わせ文字と、更にVince in hoc, Deo duce, comite ferro(神を導きとし(剣の)鉄を仲間とし征服せよ)の文字を刻む。これらの図の信頼性と正確さのために、「エンキリディオン」(魔術の手引書)の最古の版を参照せよ*6。剣の聖別は日曜日の太陽の時間にミカエルの招聘の下で行わねばならない。剣の刀身は月桂樹とイトスギを燃やした火にくべて、聖なる火の灰によってまぶし、モグラか蛇の血によって浸され、それから以下の言葉を唱える。

「汝はミカエルの剣として我に仕えよ。エロヒム サバオトの徳により、闇の霊らと地を這うものどもは汝から逃れよう!」

 それから剣は太陽の香の煙にまぶし、クマツヅラの枝とともにシルクの布で包んで、枝のほうは七日目に燃やす。
 魔術のランプは四つの金属――金、銀、真鍮、鉄の組み合わせによって造らねばならない。台座の部分は鉄、鏡は真鍮、油壺は銀、頂点の三角形は金である。さらに、三つの相互に絡まった金属の三つの管による二つの枝も与える。それぞれの腕には油の三つの導管があるようにする。また九つのロウソクの芯もあり、三つは頂点に、また二つの枝のそれぞれにも三つあるようにする。ヘルメスの印は台座に彫られねばならず、その上にクーンラートの書にある二つの頭を持つ両性具有の姿も描く*7。低位の部分には尾を飲み込む蛇が取り囲む。ソロモン王の印は油壺に刻まねばならぬ。また二つの球もランプに取り付け、一つは透かし絵で飾り、七体の精霊を表す。もう片方は、より大きくして重複させ、その中には四つの部分にて様々な色を混ぜた水を含ませるようにする。このランプ全体は、木の柱の上に置き、その自らの軸で回転できるようにし、光条が必要ならば動かせるようにして、召喚の瞬間に祭壇の煙に向けられるようにする。このランプは想像力の直観的な働きには大いに助けとなり、磁気的な人物がその活動性を変えるのに直接的な道具であり、それらは鏡により増幅され、大いに突然に作業者の部屋に見える魂らが満たされるようにする。香の酩酊と招聘の高みは、この幻影をリアルな夢へと変えるだろう。かつて知っていた人々が現れたり、亡霊が語り始めたり、柱の灯りの末端や香の煙の中に、超自然的で予想もしないものが従うであろう。



高等魔術の教理と祭儀 2-8
↑ 高等魔術の教理と祭儀


*1 ウェイト注。この疑似「手引書」は、著者に擬されている教皇が実際に書いたのではないのは言うまでも無い。これは12世紀の作で、レオ3世は792年に教皇となっている。私はこれについて拙著「儀式魔術の書」(1911年)で完全に扱っている。
*2 ヨハン カスパー ラヴァーター。1741年 - 1801年。スイスの改革派牧師で、近代人相学の祖。
*3 ウェイト注。この説明には何の権威も無いのは言うまでも無い。タリズマン魔術の前提は、このように明らかには自らを駄目にしないだろうからだ。
*4 ウェイト注。このオカルト解説は、メダイに彫られたデザインには属さないと付け加えても疑い無かろう。だが、文章に与えられた内容とメダイとを識別するのは不可能であり、疑問はなおも残る。この仄めかしは、おそらくはラ サレットの聖母出現幻視の記念のメダイのものであろう。
*5 記すべき文字は原書には書かれていなかった。
*6 ウェイト注。だがこの手引書の写本については拙著「儀式魔術の書」(1911年。39ページ)を参照。この文書は偽造されたものであると確認できる。「最古の版」に関しては、出版された文書も銅版刷もそう多くは無い。レヴィの言うのが写本の事だとしたら、彼はその点をより明確に述べられたであろう。
*7 ウェイト注。この部分の説明は、レヴィのこの魔術道具が彼自身の頭で作り出したものである証拠として価値がある。クーナラートの両性具有者は16世紀後半のドイツのヘルメス主義者の個人的なものであり、それを超えては何の権威も無く、「マギの秘密の宗教儀礼の古の荘厳」には尚更である。この両性具有者は既に述べたクーンラートの「賢者の劇場」の書の中で大宇宙マクロコスムを表すデザインであり、これをランプの鉄の台座に彫ろうとする作業者は哀れみを受けるに値しよう。