古今の秘密の教え ベーコン シェイクスピア 薔薇十字団

ページ名:古今の秘密の教え ベーコン シェイクスピア 薔薇十字団

ベーコン、シェイクスピア、薔薇十字団


 今回のベーコン、シェイクスピア、薔薇十字団創始者の同一人物説についての考察は、過去の歴史の死者の骨を掘り起こす無意味な目的のためではなく、この批判的分析が古代密儀の神託が沈黙してから世界から失われた知識の再発見の助けとなる望みのためである。W.F.C.ウィングストンは、エイヴォンの詩人(シェイクスピア)を「亡霊の隊長シェイクスピア、薔薇十字団の仮面」と呼んだ。これはベーコン・シェイクスピア論争での最も重要な声明の一つであった。


 ウィリアム シェイクスピアは何らかの外部の助けが無ければ、かの不朽の名作群を作り出せなかったのは明らかである。彼は必要な文学知識を保有していなかった。彼が住んでいたストラトフォードには彼に帰する書で表されるような高レベルの文献知識を与えられる大学はどこにも無かったからである。彼の両親は文盲であり、彼は若い頃には完全に勉学を見下す態度を示していた。シェイクスピアの自筆の例は6つしか知られていない。その全ては署名であり、その中の3つは彼の遺書によるものである。その殴り書きの不確実な筆跡は、シェイクスピアが筆を使うのに慣れていないのを示している。また、彼は既に用意されていたものを複写したか、彼の手は書いている時に他人によって導かれていたのは明らかである。シェイクスピアの劇やソネットの自筆の脚本は見つけられておらず、大フォリオ本の序文の馬鹿げて不可能な記述以外には、これらへの言い伝えすら無いのである。


 良く本が集められた書庫は、万世の文学に親しんでいるのを示す作品を生み出した著作家にとって不可欠な要素であろう。だが、シェイクスピアが書庫を保有していた記録はどこにも無いし、彼は自らの書についての何の記述もしていない。シェイクスピアの娘ジュディスが27歳の時にも文盲だった事への意見として、イグナティウス ドンネリーは、ウィリアム シェイクスピアが彼の名で演劇を書いていたとしたら、自らの娘が結婚適齢期になっても、豊かにし地域で有名にした父の作品の一行も読めないままにしていたとは不可解だと告げている。


 また以下の疑問も起き上がる。「ウィリアム シェイクスピアが当時のフランス語、イタリア語、スペイン語、デンマーク語に堪能で、古典ラテン語とギリシア語はまるで知らないのはどうしてか?」 ごく稀にラテン語がシェイクスピア劇では使われるものの、シェイクスピアを親密に知っていたベン ジョンソンはストラトフォードの劇作家は「僅かのラテン語と、さらに少ないギリシア語しか知らなかった」と宣言している! さらに、ウィリアム シェイクスピアは、彼が書いたものや、彼が会員だった集団の他の者らが書いた劇を指導した記録が一つも無いのも奇妙ではなかろうか? 確かに彼はグローブ座やブラックフライアーズの僅かな権益を保有していたが、彼の悲劇の達成の頂点はハムレットの幽霊であるように思える!


 金銭への自認する貪欲さにも関わらず、シェイクスピアは生涯で彼の名の演劇からの報酬を制御しようとしたり保全しようとした何の努力もしていないように見える。その多くは最初は匿名で出版されている。確認する限り、彼の遺産相続人らの誰も彼の死後に第一フォリオの出版に何のかかわりも持っていないし、それらから金銭的な利益も得ていない。それらの著者として、シェイクスピアの文書や未出版の脚本は確実に彼の最も価値ある遺産であったろうが、彼の遺書――特に次男への特別な処分を書いている場所で――最良のベッドと「銀の輝くお椀」について書きつつも、彼が持つ文献への何の記述も詳細も無いのである。


 フォリオや四つ折り判には、通常は「William Shakespeare」の著名があるが、ストラトフォードの劇作家の全ての知られている自筆は「William Shakspere」と読める。この綴りの違いは、今まで一般的に見過ごされてきた何らかの重要性を含んでいるのだろうか? さらに、最初のシェイクスピアのフォリオの出版社が、自らが主張するようにその著者を深く尊敬しているならば、なぜ彼らは、自らが犯したイカサマへの皮肉な仄めかしをするかのように、題名のページで彼の明白な戯画を置いているのだろうか?


 シェイクスピアの私生活でもある種の説明できない不条理さがある。彼が文学者としての頂点にいたとされている時期にも、おそらくはビール製造業のために彼は麦芽を買うように従事させられていた! また、不滅のシェイクスピア――「ヴェニスの商人」の著者である――の肖像画は金貸しとして描かれている! また、シェイクスピアが集めていた僅かな金銭の相手は、仲間の町人ら――その一人はフィリップ ロジャース――で、彼は2シリングあるいは48セントほどの支払われていないローンについて訴えている! 簡潔に言うと、シェイクスピアの生涯において、彼に帰する文学的な優越性を正当化する何物も知られていないのである。


 シェイクスピア劇の全体に渡り表現されている哲学的な考えは、その著者が特定の教義、特に薔薇十字団のものに親しんでいるのを示している。事実、シェイクスピア劇の深遠さは、著者が彼の時代の啓明者イルミナティの一人であるのを示す。ベーコン・シェイクスピア論争の答えを求める者らの多くはインテリであった。そして彼らの学識にも関わらず、この時代の哲学的到達物の中で超越主義が重要な役割を演じていた事を見過ごしていた。超物理の諸神秘は、物質主義者には説明出来ず、彼らの訓練ではこれらの分岐と複雑性の広がりを推定させられない。プラトン主義者、カバリスト、ピュタゴラス学派の者以外の誰が「テンペスト」、「マクベス」、「シンベリンの悲劇」を書けただろうか? パラケルススの伝承を良く理解している者以外に「真夏の夜の夢」を思いつけるだろうか?


章頭の花飾りで、Aの文字の光と影を示す

シェイクスピアの「リチャード2世」 1597年の四つ折り本より


 この章頭の花飾りは、ベーコン主義あるいは薔薇十字主義の著名と長い間見做されてきた。薔薇十字団の使者が出版してきた様々な書に、この光と影のAの文字があった。上記の図を、以下のページにある「紋章集成」と比較したならば、二つのAの文字の暗号的な使用がよりはっきりと示されるだろう。


ブルトンの「メランコリーの解剖」の表紙

ブルトンの「メランコリーの解剖」より


 ベーコンの専門家らは、このブルトンの「メランコリーの解剖」は実際にはベーコンが多忙な時期に集めていた奇妙で稀な知識のスクラップブックであると公言する。この表紙には、暗号の文書が含まれていると長い間見做されてきた。この暗号の鍵は右下の端にある狂人の絵が指し示している。エリザベス ウェルズ ギャラップ夫人によると、狂人が指している天球は、フランシス ベーコン卿の暗号の象徴だという。4,5,6,7番の周辺の人物像の上の雲の中にある惑星の象徴は、惑星の星位を表し、それらにより記されている狂気が生み出される。手で頭を押さえつつ座っている人物は、ベーコン研究家らは、フランシス ベーコン卿を表すと述べている。


 近代科学の父、近代法の改作者、近代聖書の編集者、近代民主主義の後援者、近代フリーメイソンリーの創設者の一人であるフランシス ベーコン卿は、多くの意図と目的を持つ人物だった。彼は薔薇十字団員で、ある者らはその代表だったと仄めかしている。薔薇十字団文書で記される高名な父C.R.C.が実際には彼で無かったとしても、確実に彼は薔薇十字団の高い位階にあり、彼のこの秘密結社との繋がりの活動は、象徴主義、哲学、文学の研究者には極めて重要である。


 フランシス ベーコン卿は、ウィリアム シェイクスピアに一般には帰する劇やソネットの実際の著者だったとする多くの書が書かれている。これらの文書を偏見無く見るならば、ベーコン論の真実性を心が開いた者には確信させざるを得ないだろう。事実、フランシス ベーコン卿こそが真の「エイヴォンの詩人」と同一人物であると証明しようと何年も努めてきたこれらの研究家らは、それらを証明した後には最も重要なアングルを強調してきた。すなわち、薔薇十字団の秘儀参入者であるフランシス ベーコン卿は、シェイクスピアの演劇の中に薔薇十字友愛団の秘密の教えと、彼が創設者であったフリーメイソンリーの真の儀礼を書いていたというものである。だが感傷的な世俗の者らは、伝統的な英雄を失うのを好まず、この説を反論しようとする。だが、この謎かけのもつれを解く事により、人類の実践的な価値のある情報が見つけられ、世界の最良の精神の者らはこれらと共同で作業するだろう。ベーコン・シェイクスピア同一説は、ほとんどの提唱者らが気付いているように、科学、宗教、倫理の最も深遠な様相が含まれており、この神秘を解いた者は、その中に古代の失われた知恵の鍵を見つけるだろう。


 ベーコンの知的達成を認めた事により、ジェームズ1世王は、現在で欽定訳聖書として知られる翻訳聖書の、おそらくは精査と編集と編纂のために彼に参加を命じた。この翻訳文書は彼の手にほとんど1年留まったが、そこで何が行われたかについては何の情報も無い。この作業について、ウィリアム T. スメドレーは「この聖書の権威ある版の全体の体系はフランシス ベーコン卿によるものだと、やがては証明されるだろう」と記している(「フランシス ベーコンの謎」を参照)。欽定訳聖書の最初の版では、謎めいたベーコンの章頭の花飾りが含まれている。ベーコンは暗号により、この権威ある聖書の中に、文の中ではあえては明かさなかったもの――神秘主義、メイソン的なキリスト教の、秘密の薔薇十字の鍵を隠しているのだろうか?


 フランシス ベーコン卿は、ウィリアム シェイクスピアの劇とソネットを書くのに不可欠な、一般的と哲学的な教養を疑いなく保有していた。彼は作曲家、法律家、多言語に熟達していた者と一般的に認められていたからである。彼の礼拝堂勤務の牧師のウィリアム ラウレー博士とベン ジョンソンの両方とも彼の哲学的、詩的な達成について証言している。ラウレー博士はベーコンについて、以下の様な素晴らしい賛辞を捧げている。「私はこの時代に神から与えられた知識を持つ人がいるとしたら、それは彼だと考えてきました。彼は多くの書の読者でありましたが、彼は書からではなく、彼自身の中から導かれた知識を持っていたからです」(「復活」の序文を参照)


 フランシス ベーコン卿は、有能な法廷弁護士だけではなく、洗練された廷臣でもあり、議院法規と宮廷エチケットにも慣れ親しんでおり、それらの知識はシェイクスピア劇でも多く示されているが、それらはストラトフォードの田舎町に住む者にはほとんど得られないものだった。さらにヴェルラム卿ベーコンは劇の背景となった多くの国にも実際に訪れており、そのため、そこにある地域の雰囲気を劇で再現できる立場にあった。一方で、ウィリアム シェイクスピアが、イングランドの外へと一度も旅した記録は何も無い。


 フランシス ベーコン卿の膨大な書庫には、シェイクスピア劇に含まれる多くの引用と逸話を与えるのに不可欠な多くの書が含まれていた。事実、劇作の多くは以前に書かれた書のプロットから取られているが、それらは当時は英訳されてなかった。その学識の深さから、ヴェルラム卿は原書を読む事が出来ただろう。だが、ウィリアム シェイクスピアが行えた可能性はほとんど無い。


 ベーコンが、シェイクスピア劇と関連している多くの暗号による証拠が存在する。フランシス ベーコン卿の暗号数は33である。「ヘンリー4世」の最初の部分で、1ページに「フランシス」の言葉が33回現れている。だがそれを行うには、「そのうちフランシス? いや、フランシス、だが明日はフランシス、あるいは木曜日のフランシス、または勿論、汝が望む時のフランシス、だがフランシス。」というような明らかに奇怪な文が必要とされる。


 シェイクスピアのフォリオと四つ折り本を通じて、折句による署名が幾つもある。折句の最もシンプルな形態は、名前――この場合は、ベーコンの――が行の最初の数文字に隠すものである。「テンペスト」第1幕第2劇で、ベーコンの折句の優れた例がある。


「"Begun to tell me what I am, but stopt
And left me to a bootelesse Inquisition,
Concluding, stay: not yet.」


 まず1行目と2行目の最初の文字に、3行目の最初の3文字を合わせたら、BAConの言葉が作られる。似たような折句は、ベーコンの書いたものとされるものにも、よく現れている。


 シェイクスピア劇の中に見える政治的な趣意は、フランシス ベーコン卿の観点として認められているものと調和している。一方で、彼の敵らは劇の中ではよく戯画化されている。同様に、劇の中の宗教的、哲学的、教育論的な底流は、彼の個人的意見を全て反映している。ベーコンの書いたものとシェイクスピア劇との間に文体や用語の一致があるだけではなく、アリストテレスの間違った引用のように、歴史的、哲学的な間違いも共通している。


「将来において彼の天才性の全ては明かされるのに気づいたヴェルラム卿は、彼の遺書で救い主への献身により彼の魂は天の神に残され、彼の肉体は世に知られずに埋めるように指示し、彼の名と記憶は、何年たっても人々の対話で、外国で、後の世代で、『彼自身の同郷人らの間で』語り継がれよう」。この最後の部分は彼の遺書からはベーコンは取り除いた。彼は多くを語りすぎたと恐れたからである。


ベーコンの著名

「紋章集成」より


 この絵が含まれた興味深い書は、1618年パリで出版された。ベーコン研究家らの注意は前面にあるhog(豚)に即座に向けられる。ベーコンはよくこの動物を彼自身の名前を演じるのに用いていた。特に彼の名前ベーコンbaconは、ブナの木beechの言葉から来たもので、この木の実は豚を太らせるのに使われていたからである。背後にある2本の柱は、メイソン的な興味深いものがある。絵の中央近くにある2つのAの文字――1つは明るく、1つは影となっている――は、それだけでベーコンの影響のほとんど決定的な証拠となっている。だが、最も確定的な証拠は、17がラテン語でのベーコンの名前(F.Baco)での数値であり、この17文字が3つの言葉の中で絵の中にも現れている事である。


フランシス ベーコン、ヴェルラム卿、セントオールバンズ子爵

ベーコンの「学習の進歩」より


 ベーコン卿は1561年に生まれ、歴史記録としての彼の死は1626年である。だが、彼の葬儀は偽りのものであり、イングランドを出てから、彼は別の名前でドイツで長い間住み、そこである秘密結社に誠実に仕え、彼が生涯を捧げたその教義を広めるために努めた可能性を示す記録もある。ベーコン卿がエリザベス女王とランカスター伯との間の正嫡である事実は、公平な研究家らの心の中にはほとんど疑いが無いようである。


 フランシス ベーコン卿の生涯の間に、この策略は少数の者の間で知られていたのは明らかである。シェイクスピア劇の真の作者への仄めかしは、17世紀の多くの本の中で見つけられる。ロバート コウドリーの「比喩の宝物庫か倉庫」の1609年版の33ページ(ベーコンの暗号数)で、以下の重要な暗喩が現れている。「劇で高貴な人物の役として、貧しい者に高価な衣服を貸し与えて、劇が終わった後もそれを持ち続けられるよう懇願するとしたら、人々は笑うだろう。」


 様々な同時代人の書の33ページに豚(hog)の言葉や暗号文があるのは、ベーコンの暗号の鍵が、彼自身の名前、それを演じる言葉、その数値にあるのを示している。顕著な例はクィックリー婦人の「ウィンザーの陽気な妻たち」の有名な文、「Hang-hogはベーコンのためのブリキだと私はあなたに保証しますとも」である。またペンブルック伯爵夫人の「アルカディア」と、エドマンド スペンサーの「妖精の女王」の表紙や、アルキアトゥスやウィザーの書にも彼の象徴が現れている。さらに、シェイクスピア劇の「恋の骨折り損」の第5幕の中にある「honorificabilitudinitatibus」という言葉は、その数値(287)が示すように薔薇十字団の著名である。


 またフランシス ベーコン卿の「新アトランティス」の初版の表紙には、洞窟の闇の中から出てきた女性を連れてきて、時の翁が表わされている。その周囲にはラテン語で「時と共に秘密の真理は明かされよう」と記されている。標語と印刷の状態から、これらの書は特に17世紀の最初の50年の間に、ある計画に則ってデザインされ、編集され、時には分断されていたようである。


 またシェイクスピア劇のフォリオや他の書の中の間違ったページ数の表記は、ベーコンの暗号の鍵である証拠もある。なぜなら、再版――しばしば新しい活版と違った印刷機を用いた――でも、同様の間違いが含まれたからである。例えば、シェイクスピアの第1、2のフォリオは、完全に違った活版と違った印刷機を9年の間隔で使われているが、両版の「喜劇集」の153ページは151ページと、249と250ページは250と251ページとそれぞれ記されている。また1640年版のベーコンの「学習の進歩と熟達」の353と354ページは、それぞれ351と352と書かれており、1641年版のド バトラスの「神の週」の346から350ページは完全に欠けており、450ページは442と付けられている。最後が50,51,52,53,54であるページがよく含まれているのには注記されよう。


 ヴェルラム卿の二文字からなる暗号術は、1590年から1650年、さらに一部は他の時代の書の中で多く現れている。亡くなった「著者 W.シェイクスピア氏」の記憶に捧げたL. ディッグスの韻文を調べていくと、大文字、小文字ともに2つの活版が使われているのに気づく。この違いは、T、N、Aの大文字の間で甚だしい(第1フォリオ参照)。この暗号は、後の版では取り除かれている。


 文の中の隠された内容の存在は、不必要な言葉を含ませる事によってしばしば示されていた。ド バトラスの「神の週」の1641年版の16番目の数が書かれていないページはその一つの例であり、文章そのものは意味が無いガラクタに等しく、明らかに暗号の目的で入れられており、さらにここにもベーコンの著名であるhog、豚の印がある。シェークスピア劇の1623年の第1フォリオの翌年に、グスタヴス セレヌスによりリューネブルクで印刷された暗号理論についての興味深い書がある。この書に大シェイクスピアのフォリオの暗号の鍵が含まれている可能性は極めて高いと見なされている。


 特定の象徴的な章頭と章尾の模様もまた、暗号の実在の証拠とされる。初期の印刷書ではそのような飾りはよくあったものの、特定の象徴紋章はベーコンの薔薇十字暗号の典型であった。光と影のAの文字はその興味深い例である。ベーコンの光と影のAの文字やhogの象徴が多く使われている事を思えば、ベーコンによる「自然の解釈」での以下の言葉は極めて重要である。「Aの文字を大地に植え付ける事が出来るなら、汝は彼女はそれにより悲劇全体を一文字で書ける事を想像できるだろうか?」


 薔薇十字団や17世紀の他の秘密結社では、暗号の伝達のための媒体として透かし模様がよく使われていた。そしてベーコンの暗号が含まれていると思われる書には、通常は薔薇十字団やメイソンリーの透かし模様のある紙に印刷されており、多くの場合は一つの書に薔薇十字、瓶、ブドウの房といったような幾つかの象徴が含まれていた。


 私の手には今、ある文書があるが、それは「シンベリンの悲劇」の始まりの部分にある暗号の優れた鍵となるかもしれない。これは知られる限り出版された事が無く、シェイクスピア劇の1623年のフォリオにのみ当てはめられる。この暗号は句読点、特に感嘆符や棒線、スラッシュを含めた文字変換によるものである。この暗号は1900年にヘンリー ウィリアム ビアーズによって発見され、徹底的に検証された後に公共に知られるにようになった。


暗号の章頭飾り

ローリーの「世界の歴史」より


 ベーコン哲学に影響された多くの文書――あるいはベーコンや薔薇十字団の暗号を意図した書――では、各章の始まりと終わりで、特定の規定されたデザインが用いられていた。それにより秘儀参入者には隠された情報が明らかにされていたのである。上記の章頭飾りはベーコンの影響の証拠として長い間受け入れられており、さらにこれは一部の稀な書にのみ見つけられ、それら全てはベーコンの暗号を含んでいる。これらの暗号メッセージはベーコン自身や彼の優れた暗号術の知識によって仕えた秘密結社に属する同時代人や後の著者らによって様々な書の中に置かれていった。この章頭飾りの派生は、シェイクスピアの「大フォリオ」(1623年)、ベーコンの「ノヴム オルガヌム」(1620年)、欽定訳聖書(1611年)、スペンサーの「妖精の女王」(1611年)、ウォルター ローリー卿の「世界の歴史」(1614年)である(「アメリカン ベーコニアーナ」参照)。


シェイクスピアのドルーシャウトの肖像画

1623年の「シェイクスピアの大フォリオ」より


 シェイクスピアの権威ある肖像画というものは存在しない。ドルーシャウト、シャンドス、ヤンセン、ハント、アシュボーン、ソエスト、ダンフォードらの肖像画の不一致性は、画家らがシェイクスピアの実際の特徴を描けなかったのを結果として示している。ドルーシャウトの肖像画を詳細に調べると、幾つかの特有性を明らかにする。ベーコン研究家らはこの顔は戯画にすぎず、フランシス ベーコンのデスマスクである可能性が高いと確信している。ドルーシャウトの肖像画をフランシス ベーコンの彫刻と比較するならば、二つの顔の構造の同一性を示し、違いは影の線によるものと、特定の線が耳から顎に引かれていない事である。この線は、顔そのものがマスクであり、耳の所で終わっているのを暗示してはいないか? またこの頭は体とは繋がっておらず、襟の上に置かれているのにも注意せよ。これら全ての中で最も奇妙なのは外装であり、半分が裏返しにされている。画家がジャケットを描く時に、左の腕は正しく描いているが、右腕は肩の背中が前面にある。フランク ウッドワードは、この表紙には157文字があると注記している。これは薔薇十字団の第一の重要な著名である。この年の1623年に、「LONDON」の文字から2つの文字「ON」を足したら、簡単な数の暗号術によりフランシス ベーコンの暗号の著名となる。単純にアルファベットの26文字を数へと変換し、1はAとして、6はFとし、2はBとし、3はCとすると、AFBCとなる。これにLONDONからONを足したら、結果はAFBCON、これを並べ替えると、F.BACONとなる。


 メイソンリー結社が中世の秘密結社の直径の子孫である事は疑いなく、またフリーメイソンリーには古代や中世の象徴主義と神秘主義に満ちている事も否定できない。フランシス ベーコン卿はメイソンリーの起源の真の秘密について知っており、彼はこの知識を暗号文の中に隠したのにも理由はある。ベーコンはただの人というよりも、不可視の学院と、彼が発表したメッセージとメッセンジャーとの区別を付けられない世界との間の焦点であった。この秘密結社は古代の失われた知恵を再発見し、この知識が再び失われるのを恐れ、二つの方法によってそれを保持する事にした。(1)秘儀参入者が象徴の形態により、その知恵が明かされる組織(フリーメイソンリー)により方法と(2)当時の文献の中に奥義を暗号と謎により巧みに埋め込む方法によってである。


 様々な証拠が、賢者にして高名な「兄弟ら」の組織の実在を指し示している。彼らは未来の世代のために古代の秘密の書らや、彼ら自身が書いたものを保持する責任を引き受けていた。この友愛団の未来の団員らは、これらの書を識別するのみならず、その中にある重要な文章、言葉、諸章、部門を即座に注記するために、彼らはヒエログリフのデザインの象徴的なアルファベットを作り出した。特定の鍵と順序により、洞察力のある少数の者らは、それにより人が啓明された生へと「引き上げられる」知恵を見つけられた。


 ベーコン密儀の絶大な重要性は、日々明らかになりつつある。フランシス ベーコン卿は古代の秘密教義を保ち続けてきた大いなる精神の鎖のリンクなのである。この秘密教義は彼の暗号文の中に隠されている。この神の知恵の探求は、彼の暗号文を解読する努力の、唯一の正統な動機である。


 メイソンリーの研究は、16から17世紀に出版された特定の書に注意を払っていたならば、より多くの価値を見つけ出していただろう。この時期にある秘密結社の会員らが近代フリーメイソンリーを設立したが、彼ら自身は外陣の活動を制御し方向付けていた内なる集団に残り続けていたのである。「フリーメイソンリーの未知の歴史と失われた儀礼」は中世の象徴主義と暗号文の中から再発見されるだろう。フリーメイソンリーは神秘的で隠された父の輝く栄光ある息子である。その血統を追跡する事は出来ないが、それはこの組織の起源は超自然的、神秘的なヴェールに覆われているからである。1623年の大フォリオは、メイソンの伝説と象徴の真実の宝箱であり、これらを考慮するならば、大いなる作業の達成の時はその手にあろう。


 キリスト教徒らは古代の多神教の物理的な組織は破壊したが、多神教徒らが持っていた超自然的な力の知識は破壊出来なかった。そのため、古代ギリシアとエジプトの密儀は秘密裏にキリスト教会の初期の数世紀の間に伝えられており、後にはキリスト教象徴主義の衣を着る事で、信仰の要素として受け入れられた。フランシス ベーコン卿は多神教の高祭司らが元は保有していた超自然的の奥義の不朽化と伝播のために選ばれた者の一人であり、その目的のために、薔薇十字友愛団を設立したか、あるいは既にこの団は実在していたならば受け入れられ、その主要な代表者の一人となったのである。


 秘儀参入をしていない者には不可解な理由から、ベーコンの謎を解こうとするのを防ぐ絶え間ない努力が続いてきた。研究家らの努力を防ごうとする何の力があるにせよ、それはベーコンの死後に即座に従った頃と同様に現在においても絶え間なく続いており、この謎を解こうとする者らは、その恨みの重みをなおも感じている。


 誤解している世界は、自然の秘密の働きを理解した者らを常に迫害しており、神の知恵の管理人らの処刑を想像できるあらゆる方法により探し求めている。フランシス ベーコン卿の政治的威信は最後には損なわれ、ウォルター ローリー卿は恥ずべき運命に陥ったが、彼らの超越的知識は危険なものと見做されたからである。


 シェイクスピアの自筆を偽造し、偽りの肖像画とデスマスクを騙されやすい一般社会にこっそりと与え、もっともらしい伝記を捏造し、様々な書や文書を骨抜きにし、暗号文を含む銘板を破壊したり読みにくいように描き、これら全てによりベーコン・シェイクスピア・薔薇十字団の謎を解くのを難しくしている。アイルランドの偽造者らは専門家らを何年も騙し続けた。


 現在得られる情報によると、薔薇十字友愛団の最高委員会は、「哲学的な死」として知られる偽装死をした者らにより構成されている。秘儀参入者が団のために働く時が来たら、彼はどこか神秘的な状況の下で、都合よく「死ぬ」。実際には、彼は名前と住処を変えて、岩の詰まったものや、このために前に用意された別の死体の入った棺桶が、彼の墓に埋められる。フランシス ベーコン卿の場合にもこれが起きたと信じられており、密儀の全ての従者らと同様に、彼は全ての個人的な名声を捨て去り、他者が彼が書いたり啓発した文書の著者と見做されるのを許した。


 フランシス ベーコン卿の暗号文書は、超越主義と象徴哲学の諸密儀の中でも、最も難解な謎の要素の一つを構成している。この「ノヴム オルガヌム」を書き、ヘラクレスの柱*1を超えた未知の知的な大海を小さな船で航海し、彼の新文明への理想が「新アトランティス」のユートピアの夢にて巧みに表現された、この神秘的な人物の超越的天才性を物わかりの悪い世間が理解するのには何年もかかるであろう。フランシス ベーコン卿は第二のプロメーテウスであろうか? 彼の人類への深い愛と彼らの無知への憐れみが、彼から天の神の火をもたらし、それを書のページの内容の中に隠す原因となったのだろうか?


 いずれにせよ、ベーコンの謎の鍵は、古典的な神話学の中に見つけられるだろう。神の七条の秘密を理解した者は、彼の大いなる労働を達成させるためにベーコンにより用いられた技法も理解するだろう。太陽系のそれぞれの惑星の属性と順序に従って、彼は別名を用いた。ベーコンの謎の鍵で最も知られていない事――だが最も重要な事――の一つは、ブレーズ ド ヴィジュネル著のパリで出版された第3版あるいは1637年版の「二人の古代ギリシア詭弁家ピロストラテスとカリストラトスの彫像の絵の像あるいは図表集」である。この書の表紙の著者の名前を適切に解読するならば、この書はベーコンか彼の秘密結社の指導の下で書かれており、重要なメイソンや薔薇十字団の象徴に満ちている。486ページ目には、獰猛なヘーラクレースと記された絵があり、そこには巨大な人物が槍を震わせ、彼の前の大地には興味深い諸象徴がばら撒かれている。アルフレッド フロインドは彼の興味深い書の中で、この「ピロストラテス」の書の中にあるベーコンの象徴主義を解説している。彼が哲学的なヘーラクレースとして表すベーコンは、時が来れば、真の「槍を振るわせる者、Spear-Shaker」(Shakespeare)として確証されるであろう。


ウォルター ローリー卿の「世界の歴史」の有名な初版の表紙

ローリーの「世界の歴史」より


 ウォルター ローリー卿が保有していた神秘的な知識とは何であり、そのいずれが英国政府には有害だと宣言されたのだろうか? 有罪を証明されていないのに、なぜ彼は処刑されたのだろうか? 彼は16、17世紀のヨーロッパ政治、宗教をほとんど転覆する所だった、恐れられ憎まれた秘密結社のメンバーだったのだろうか? ウォルター ローリー卿はベーコン・シェイクスピア・薔薇十字団・メイソンリーの謎の重要な要素だったのだろうか? この大いなる論争の鍵を求める者らは、彼をほとんど完全に見過ごしていたように思える。彼の同時代人らは、彼の素晴らしい知性を賛美する事で一致しており、彼は長い間、英国人の最も輝かしい一人と見做されてきた。


 ウォルター ローリー卿――軍人、廷臣、政治家、著作家、詩人、哲学者、探検家――はエリザベス朝宮廷の才気溢れる人物だった。だが、――女王の死後に王位を継承した――ジェームズ1世は力の及び限りであらゆる汚名を彼に着せた。武器の話を聞くだけで震え、誰かが横切ったら子供のように泣き叫んだ臆病なジェームズは、狂気に近い嫉妬を、この輝かしい廷臣に抱いていた。ローリーの政敵らは、この王の弱さを利用して、終わりなき迫害を続け、最後にローリーが吊るし首となり、彼の首が切られて内臓が出た死体が彼らの足元に転がるまで、迫害を止めようとはしなかった。


 上記で再現した表紙のページは、ローリーの政敵らから、彼に対する強力な武器として使われていた。彼らはジェームズ1世に、中央の地球儀を持つ人物の顔は王自身の戯画であると使嗾し、激怒した王は出版された全ての書を破壊するように命じた。だが、少数の書は王の怒りから生き残り、結果としてこの絵は極めて稀なものである。この銅版画はメイソンリーと薔薇十字団の象徴に満ちており、柱にある人物らは、暗号を含んでいる可能性が極めて高い。だがそれより重要なのは、この絵が向いていたページの章頭の花飾りは、シェイクスピアの1623年のフォリオのものと、さらにベーコンの「ノヴム オルガヌム」のものと同一物である事である。


古今の秘密の教え 象徴哲学の要素としての暗号術
↑ 古今の秘密の教え


*1 ジブラルタル海峡のこと。