古今の秘密の教え 薔薇十字団の教義と信条

ページ名:古今の秘密の教え 薔薇十字団の教義と信条

薔薇十字団の教義と信条


 薔薇十字友愛団の実際の哲学的信念、政治的大志、人道的活動に関する信用に値する情報は得られずにいる。過去と同様に今日でも、結社の密儀は彼らの本質的な性質の徳により犯されないまま保持されており、薔薇十字団哲学を解釈する試みは、いずれも推測でしかない。


 二つの薔薇十字団の組織があったのを、様々な証拠が示している。内陣、内なる組織では団員らは彼らの正体を決して世界には明かさなかった。そして外陣、外側の組織は、内陣の監督の下にあった。象徴的なクリスティアン ローゼンクロイツの地下墓、黄金石の騎士団は外陣であり、それらの魂は、より高い圏の中にあった可能性が極めて高い。1614年の団の出版から1世紀以上の間、外陣は軌跡が見え隠れし、自らの名前や様々な秘儀参入された者らの名前の下で宣言書を表している。これらの書の目的は、研究者らを混乱させミスリードさせ、結果的に実際の友愛団の計画を隠す事にあったように思える。


 薔薇十字主義が哲学的「ブーム」となった17世紀には、その人気にあやかった偽物らにより、純粋に商業目的のために様々な文書が世に出回った。友愛団自身による巧みに作られたものと、詐欺師らによる偽文書らは、内陣の活動や目的を公共の目に晒す事への二重のヴェールを作り出した。薔薇十字友愛団は、自らの働きを「雲」の中に隠し、その背後に自らを隠すために、誤解へのナイーブな引用をこの明らかな理由から認めていた。


 薔薇十字主義――その秘教教義――の内実を書くのは、その影――その外側に書かれたものの分析を通じてのみ可能となる。これらの「雲」の中でも最も重要なものは、「友愛団の信条」であり、そこでは薔薇十字友愛団の兄弟らが、彼らの存在を正当化し、彼らの結社の目的と活動を説明(?)している。「信条」の原典は14の章に分割されており、ここではそれらを要約する。


ヨハン ヴァレンティン アンドレーエ

稀な版画より


 一部の秘教集団において、ヨハン ヴァレンティン アンドレーエの謙虚な人格は、薔薇十字の高位の使者の仮面であるのを暗示する曖昧な噂がある。アンドレーエという名のドイツの神学者が実在した充分な証拠はあるが、彼の伝記には多くの矛盾があり、批判的研究家らの満足いくものでは無い。上記で示した顔の絵と、フランシス ベーコン卿の絵を比べると、年代の違いにも関わらず極めて似ているのに気づく。もしもベーコン卿がウィリアム シェイクスピアの名前と身元を借りていたとしたら、イングランドでの偽りの葬儀の後に、ヨハン ヴァレンティン アンドレーエの人格もまた取ることが出来よう。胸像の下にある三日月の模様も重要である。それはベーコン卿がニコラス ベーコン卿の次男であるのを示すために、彼の紋章にもあるからである。さらに、右下の端の額にある四文字(O MDC)は、ベーコンの非常に単純な暗号により、その総数が33となる数――ベーコンの名前と同等の数――へと変換できる。これらの興味深い幾つかの点を考慮すると、最初の薔薇十字団文書の著者を包み込む神秘を明らかにするように向かうだろう。


ヨーロッパの学者らへ向けた薔薇十字友愛団の信条


 第一章。我々の友愛団について先に出版した宣言書――「薔薇十字団の名声」の文章を速やかに判断しようとしたり、逆に勝手に疑ったりするなかれ。イェホヴァの神は世界が腐敗へと落ち、意志を明らかにし、先に選ばれた者らに明かした秘密を、不承不承の者らに押し付ける事により、人類の贖いを求めている。この知恵により、正しき者らは救われるが、悪しき者らの苦しみは増すだろう。「名声」で充分に我々の団の真の目的について汝らに明らかにしたと信じているが、我々は異端者で反逆者だという誤解が沸き起こった。本書において、我々は自らの立場を明らかにし、それにより我らの偉大な創造主の意志に従い、ヨーロッパの学識者らが我々に加わるよう動くのを期待する。


 第二章。多くの者は学問は健全で強いと主張するが、我々はそれは偽りで、その自らの継承する弱さから死ぬだろうと公言する。だが自然が、新しい病が出るたびに薬を与えるように、我らが友愛団は世界の学問体系の病弱への薬を提供する。薔薇十字の秘密の哲学は、全ての機能、学問、術の頭であり総量である知識を基盤としている。我らが神が明らかにした体系――それは神学と医学は多いが法学は少ない――により、我らは天と地を分析するが、我々が学ぶことのほとんどは、その内側に至高の秘密を隠している人自身についてである。今日の学識者らが、我らの招きに応えて、我が友愛団に加わったならば、彼らが夢にも思わなかった、自然の隠された働きに関する秘密と驚異を明らかにしよう。


 第三章。この小冊子で議論している秘密は我々による軽く扱われていると信じるなかれ。無知な者らが、我らの驚くべき宣言により圧倒されず、大衆が理解出来ない諸密儀をおちょくったりしないようにするため、我らは友愛団の驚異について完全に説明できない。我々の宣言の予想もしない寛大さにより、多くの者が混乱するのを我々は恐れる。この第6の時代の驚異を理解しない者らは、来るべき大いなる変化に気付かないだろうからだ。光に満ちた世界に住む盲目の者のように、彼らは感覚の知覚のみを認識するのである(ここでは視覚は霊的な認識、知覚は肉体の感覚を表している)。


 第四章。人間精神の発明と生の諸神秘への深い黙想を通じて、天使らや霊らとの対話を通じて、実験と長い観察を通じて、我々は以下の事を堅固に信じる。我らが愛するキリスト者の父C.R.C.は、神の知恵に啓明されたゆえ、たとえ世界の全ての書が消え去っても、諸学の基礎が引っ繰り返されても、薔薇十字友愛団は、世界の思考の構造を神の真理と統合を基礎として再構築できるであろう。我らの知識の深遠さと完全さにより、薔薇十字友愛団の諸密儀を理解しようと望む者は、即座にこの知恵を得る事は出来ず、理解と知識の中で育てねばならない。そのため、我らの友愛団は諸位階に分割されており、それらを通じて、個々は大奥義へ向けて一歩一歩上昇しなくてはならない。さて、神が第6の燭台を点火させ我らを輝かせるのを喜びとするように、この道により真理を求める方が、世俗の無知の迷宮を彷徨うよりも良くはなかろうか?


 さらに、この知識を受け取った者らは、全ての術と技芸の熟達者となり、どのような秘密も彼からは隠せず、過去、現在、未来の全ての良き働きは彼らに到達可能となろう。世界全体は一つの書のようになり、学問と神学との間の矛盾は、調和されよう。人よ、喜べ! 神が我らが友愛団の数を増やすよう宣言し、我らが喜んで働いていた時は来たれり。知恵の扉は今世界に開かれたが、我らが兄弟らが与えた者らのみがその特権を得られよう。我らの知識は、自らの子らにも明かすのは禁じられているからである。霊的真理を受け取る権利は子孫へ継承することは出来ない。それは人自身の魂の内で進歩しなくてはならない。


 第五章。我々は自らの宝を自由に乱雑に――信仰深い者、賢者、君主ら、農民らの区別も無く――与えていると非難されているが、我々は自らの信用を裏切ってはいないと確言する。我々は「名声」を5つの言語で出版したが、正しい者のみが理解できるからである。我々の結社は好奇心の持ち主からは見つけられず、真剣で捧げられた思考家のみが見つけられる。だが、我々は「名声」を5つの言語で広めたので、たとえ学者でなかったとしても、全ての国々の正しい者らは我々を知る機会が与えられただろう。価値無き者らは1000回自らを差し出して、門で叫ぶだろうが、神は薔薇十字友愛団の我らにその声を聞くのを禁じ、神は我々の周囲に雲で包み、神の守護により我らが傷つけられる事は無く、薔薇十字友愛団の我々はもはや死すべき定めの者らの目からは、鷹から力を借りない限りは視る事は出来なくなったと神は宣言した。さらに我々はヨーロッパの諸政府を改革し、ダムカルの哲学者らが用いていた体系に従って形作ると確言する。全ての知を求める者らは、彼らの理解力に応じて与えられよう。偽りの神学の支配は覆され、神は選ばれた哲学者らを通じて自らを知られるようにしよう。


 第六章。簡潔さを必要とするゆえ、我らの父C.R.C.は1378年に生まれ、106歳で死去し、我らに世界全体の哲学的宗教の教義を広める作業を残したと述べるので充分である。我らの友愛団は真理を誠実に求める者ら全てに開かれているが、偽りと不信仰者らは、我らを裏切ったり傷つけたりは出来ないと我らは公的に警告する。神は我ら友愛団を守護しており、傷つけようと望み求める者ら全ては、彼らの悪が自らに返り破滅させるからだ。一方で、我らの友愛団の宝は触れられる事無く、王国を確立する獅子のために用いられよう。


 第七章。我らは神が世界の終りの前に、人類の苦しみを緩和させるために霊的な光の大洪水を作り出すと宣言する。真理の果実を全ての者らが楽しめるように、人類の諸術、諸学、諸宗教、諸政府の中に忍び寄っている偽りと闇――たとえ賢者といえども、現実の道を見つけるのを難しくしている――は永遠に取り除かれ、単独の基準を確立しなくてはならない。我らはこの変化の責任者として認められる事は無い。人々はそれらは時代の進歩の結果と言うだろうからだ。大いなる改革が始まろうとしているが、薔薇十字友愛団の我らは、この神の改革の栄光を、我らによると称する事は無い。なぜなら、我らの友愛団の団員ではなく、誠実で真実で賢き多くの者らが、その知性と意志により、これらが速やかに来るようにするからである。我らは、神の意志を地上に行う正しき人物らが不足する世よりも早く、石を引き上げ、仕えられると証言する。


 第八章。神は選ばれた者らの大会議が起きるのを示す使者と天の徴、すなわち蛇使い座と白鳥座に新たな星々を送っているのを我らは宣言するが、それらは誰も疑いはしまい。これは神が――洞察力のある少数者に――来るべき事の全てのサインと象徴を見える形で明らかにしているのを証明する。神は人に二つの目、二つの鼻の孔、二つの耳、一つの舌を与えている。これらの目、鼻、耳は自然の知恵を心へと受け入れさせ、舌のみはそれを表現する。様々な時代で、啓明された者らは神の意志を見て、嗅いで、味わい、聴いたが、それらを受け取った者が語り、真理が明らかになる時が速やかに来るであろう。だが、この正義の啓示が起きる前に、世界は彼女の毒の杯(神学のワインの偽りの命に満ちている)の毒を取り除き、彼女の心を美徳と理解に開き、真理の日の出を受け入れさせなければならない。


 第九章。我々には神が天と地の自然の面に記したアルファベットから複写した魔術の書がある。この新たな言語により、我々は神の全ての被造物への意志を読み、占星術師らが日食を予測するように、我々は教会の暗黒化とどれだけ長く失われるかを予知する。また我々の言語は没落の前のアダムとエノクのようなものであり、我々はこの聖なる言語により、我々の諸密儀を理解し説明できるものの、我々はラテン語、バベルの混乱により汚された言語ではそれほどには行えない。


 第十章。世界にはなおも我々に対立し妨害する権力者らがいる――彼らのゆえに、我々は隠れたままでなければならない――が、聖なる書らを熱心に学びたい者らは友愛団に加盟するのを我らは強く勧める。我らから遠くては、それらを行う事は出来ないからである。我々は聖書が(神では無く)人の口から出たものと言いたい訳では無いが、その真理と永遠の意味を、読者は探さねばならず、それらは神学者ら、学者ら、数学者らからは僅かしか見つけられていない。なぜなら彼らは自らの宗派の意見により盲目とされているからである。世界の始まりより、人に聖書以上に貴重な書は与えられなかったと我々は証言する。恵みある者は、聖書を持つ者であり、読む者であり、最も恵みある者はそれを理解する者であり、神から最も愛されるのは、それを理解し、従う者である。


 第十一章。我らが「友愛団の名声」で述べた金属の変容と普遍的医薬の説明はほとんど理解されなかった。これらの両者の作業は人により達成可能であるのを我々は悟っているが、多くの偉大な精神の者らが、金属の変容の研究に彼らが自らを留めるならば、真の知識と理解の探求から逸れるのではないかと我らは恐れた。人が病を癒し、貧しさを乗り越え、世俗の威厳の立場に到達する力を与えられたら、数えきれない誘惑に晒され、真の知識と完全な理解を得ない限り、彼は人類の恐るべき悪意となるだろう。卑金属を変容する術に到達した錬金術師は、彼の理解が自らが創り出した富と同じくらいになるまで、あらゆる種類の悪を行うだろう。それゆえ、我々は人はまず最初に知識、美徳、理解を得るようにしなくてはならないと確言する。それ後には全ての他のものも彼に与えられるだろう。我々はキリスト教会が巨大な力を保有し、それを愚かに用いて来た大罪を告発する。そのため、教会はその自らの不法の重みに潰れ、その冠は無に帰するだろうと我々は預言する。


 第十二章。この信条の結論として、聖なる三位一体の光を作り、意味の無い謎で軽信しやすい者らを欺く偽錬金術師ら(我々の時代には多くいる)の価値無き書を汝が持っていたら、放り出すよう我々は熱心に忠告する。それらの中でも特に悪質なのは、大道芸人、ペテンに充分に才能のある者である。そのような者らは、善行を求める者らの間に人類の幸福の敵により混ぜられており、よって真理を見出すのをより難しくしている。我らを信じよ。真理は単純で隠されておらず、一方で偽りは複雑で深く隠され誇らしげで、その虚構の世俗の知識は、一見して神々しい輝きに見え、しばしば神の知恵と誤解される。汝が賢いならば、これらの偽りの教えからは離れて、我らの下に来るだろう。我らは汝から金を取ったりせず、自由に我らの偉大な宝を与える。我らは汝の持ち物を望まず、汝は我らの持ち物を共有するようになろう。我らは例え話を嘲る事は無く、汝に全ての例え話と秘密を理解するように招く。我らは汝に受け取るよう求めずに、我らの王者の館らと宮殿らに招く。我らのためではなく、神の霊、我らの至高の父C.R.C.の意思、現在の大いなる必要により命ぜられているからである。


 第十三章。次に我らの立場について明らかにしたい。我らは真摯にキリストに告白し、教皇庁を否認し、我らの生涯を真の哲学と価値ある生に捧げた者らである。そして日々全ての国々の価値ある者らを我らの友愛団に招き、受け入れている。汝自身の完成のため、全ての技芸の開発のため、世界に仕えるために、我らに加わってはどうだろうか? この一歩を汝が進むならば、地上の全ての場所の宝らは、一度に汝に与えられ、人間の知識を包み、それにより物質的な術や学の虚栄の結果となった闇は、永遠に消し去られよう。


 第十四章。再び我らは、黄金の輝きに魅せられた者ら、今は良くても大いなる富により怠惰と虚栄の生活へと転じるだろう者ら、その叫び声で我らの聖なる沈黙をかき乱す者らに警告する。全ての病を癒し、全ての人に知恵を与える薬を我らは保有しているが、人が自らの美徳、労働、統合の方法ではなく、理解を得るのは神の意志に反している。我らは神の意志を例外として、どのような者らにも自らを現すのを許可されていない。神の意志やその許可無しに我らの霊的な富を分け与えられると信じる者らは、我らを見つけて幸福を得るよりも早く、彼らの探索の生を失うであろう。


 薔薇十字友愛団


自然の働きの象徴の図

フラッドの「作業集成」より


 このド ブライにより彫られた図版は、ロバート フラッド(ロベルトゥス ド フルクティブス)の哲学諸原理の図表の中でも最も有名なものである。ミヒャエル マイヤー、イライアス アシュモール、ロバート フラッドの三人は、薔薇十字団とフリーメイソンリーの傑出した繋がりである。ド クインシーはロバート フラッドを近世フリーメイソンリーの実質的な創始者と見做している(「薔薇十字団とフリーメイソン」を参照)。アーサー エドワード ウェイトはロバート フラッドをパラケルススの一番弟子であり、さらに彼は師を遥かに超えていたとさえ見做している。彼はさらに加えて言う。「薔薇十字文献の中心人物、大いなる作業の法螺吹きら、神智学者ら、詐欺師的な教授らの群衆の上に知的巨人として屹立し、神秘的な団と直接的、間接的に繋がっていた彼こそは、ロベルトゥス ド フルクティブス、17世紀の偉大な英国神秘哲学者、計り知れない学識者、卓越した精神の持ち主、また彼の書から判断して、極めて高潔な人格の持ち主である。」(「薔薇十字団の真の歴史」参照)ロバート フラッドは1574年に生まれ、1637年に亡くなっている。


 上記のド ブライの図は、ほとんど自明である。星々の天宮の円の外側には、至高天の3つの火の輪――至高の創造主の三重の火――があり、そこには天の生き物らが住む。その内側には、惑星らとエレメンツらの諸円がある。風エレメントの下にあるのは、世界(地上)の円である。その中の動物の円の後には、植物の円があり、さらに続いて鉱物の円がある。それから様々な生業が記され、中心には地球があり、その上には猿人が座っていて、二つのコンパスにより圏を測っている。この小さな猿人は動物の創造を表している。火の輪の外側の上には、雲により取り囲まれたイェホヴァの神名がある。この雲の中から鎖を持つ神の手が放たれている。神の圏と猿人により人格化されている低位の世界との間には、女性の姿がある。この人物は低位の世界と繋がっている鎖を単に握っているが、高次の世界と繋がっている鎖は彼女の手首の枷となっている事は特に注記する必要がある。この女性は様々な解釈が可能である。彼女は神性と獣性の間に囚われた人類を表すかもしれない。彼女は神と低位の世界とのリンクとしての自然を表すかもしれない。彼女は人間の魂――上位者と低位者との間の共通点――を表すかもしれない。


 ヨハン ヴァレンティン アンドレーエは、この「信条」の著者と一般的には考えられている。だが、より討論される問題は、アンドレーエは彼の名前をフランシス ベーコン卿によってペンネームとして使うのを許したかどうかである。この主題に関して、「メランコリーの解剖」という題名の卓越した医学論文集の序文に極めて重要な二つの引用がある。この書は1621年に小デモクリトスを著者と称して現れたが、後にはロバート ブルトンの作と知られ、さらに彼は後に、フランシス ベーコン卿の親友だったと疑われている。この序文の引用の一つでは、「メランコリーの解剖」が出版された1621年には、薔薇十字団の創設者はなおも生きていると悪戯っぽく示唆している。この文は――その文の煩雑さから一般の目から隠されていて――薔薇十字団のほとんどの学徒らの注意から逃れられていた。また同書では、途方も無く重要な脚注がある。そこでは、これらの言葉のみがあった。「Job. Valent. Andreas, Lord Verulam」。この一行は、ヨハン ヴァレンティン アンドレーエとヴェルラム卿だったフランシス ベーコン卿との関係を決定的に示している。そして、この句読点により、彼らは同一人物であるのを暗示している。


 薔薇十字団の擁護者らの中でも重要な者は、自らを「神の従者、自然の書記」と記していたジョン ヘイドンで、彼の「明かされた薔薇十字団」という題名の興味深い書の中で、薔薇十字友愛団についての謎めいてるが、価値のある説明を以下の様に記している。


「さて、世には薔薇十字団と名乗る神の友愛団があり、天に住まい、この世界の大元帥の士官らであり、大王のごとき目と耳を持ち、万物を視て聴く。薔薇十字団は天使のように啓明されていて、モーセのように、エレメンツの順番に従い、地は水を、水は風を、風は火を洗練させたと言われる。」彼はさらに、これらの神秘的な友愛団は様々な形の諸力を持ち、望む何であれ現すことが出来たと公言する。同書の序文において、彼は薔薇十字団の達人らの不思議な諸力について列挙する。


「ここで私は薔薇十字団とは何であるか語らねばならぬ。モーセは彼らの父で、彼はΘεοῦ παῖς(神の子)であった。ある者らは彼らはエリヤの教団であると言い、別の者らはエゼキエルの弟子らだと言う。(中略)薔薇十字団の者らはモーセの教説を秘儀伝授されていただけではなく、モーセ、エリヤ、エゼキエルや以後の預言者らのような奇跡の力にも到達していたように思える。彼らは預言者ハバククがユダヤからバビロンへ行ったように、またフィリップが宦官を洗礼してからアゾルスへ行ったように、また団の一人が我が家からデヴォンの我が友のもとへ通常は4日かかるのを瞬時に行った様に、望む場所へテレポテーションできた。彼らは私に占星術と地震の素晴らしい予知の方法を教えた。彼らは街々の疫病を緩和させた。また激しい風や嵐を静かにさせ、荒れた海と川を鎮めさせた。彼らは空中を歩き、魔女らの悪意の様相を苛つかせた。彼らは全ての病を癒した。」


 ジョン ヘイドンの書は、薔薇十字文献群の中でも最も重要な貢献と見做されている。ジョン ヘイドンはおそらくは「天使のように啓明された薔薇十字団員」クリストファー ヘイドン卿と関連していた可能性が高い。彼は故 F. レイ ガードナーが薔薇十字団の知識の源と信じていた。彼の「薔薇十字蔵書目録」で、ジョン ヘイドンについて以下のように述べている。「全体的に彼の書に示されている証拠から、薔薇十字団の低位の位階を上昇するとともに、彼はこの世界から姿を消したように思える。」ジョン ヘイドンは様々な場所を旅しており、アラビア、エジプト、ペルシア、ヨーロッパの多くの場所を訪れていたのは、彼の書、「天使、惑星、金属らを填め込まれた賢者の王冠、あるいは薔薇十字団の栄光」の自伝的序文で記されている。この書はクリスティアン ローゼンクロイツがアラビアから持ち込んだ神秘的なMの書の英訳と彼により宣言されている。


 トーマス ヴォーン(エウゲニウス フィラレテス)はこの団の別の重要人物である。薔薇十字団員が自由に自らを不可視にできた能力についてのジョン ヘイドンの文を補強している。「薔薇十字友愛団の団員はこの白い霧の中に移動できた。彼らは言う。『我らと対話できる者は、この光の中で我らを見る事が出来たが、我らが望まない限り他の者らは決して見る事が出来ないだろう。』」


錬金術の両性具有者

「哲学者集成」より


 Turbae Philosophorum(哲学者集成)は、知られている限りのラテン語での最初の錬金術書の一つである。その正確な起源は不明である。本書は時には「第三のピュタゴラスの集会」として引用される。この題名が示唆するように、この書は賢者らの発言を集めたもので、古代ギリシア哲学者らを錬金術の観点から纏めたものてある。上記で再現した象徴は、1750年にドイツで出版された稀覯版からのもので、両性具有の人物により大いなる作業の達成を表している。自然の活動的、受動的諸原理はしばしば男性と女性により表現され、二つの原理が自然や体の全てにおいて調和された状態は、上記のような複合人物像で完全な均衡を表現されるのが通例であった。


薔薇十字団の表紙

マイヤーの「旅人について」より


 神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の侍医ミヒャエル マイヤー伯は、薔薇十字論争における卓越した人物であった。彼が薔薇十字友愛団の秘儀参入者であり、団の命によりヨーロッパの哲学的に選ばれた者らに秘密を広める役割をしていた事にはほとんど疑いが無い。上記の表紙は、7つの惑星が相応しい人物像で記されている。それぞれの人物像の背後には小さな象徴があり、その惑星が支配する黄道十二宮のサインを表している。題名の真上には、学者マイヤーの肖像がある。この表紙の書は7つの惑星の自然と効果の解析であり、全体的に錬金術の用語に満ちている。ミヒャエル マイヤーは自らの知識を巧みに隠していたので、その書から彼が知っていた秘密を取り出すのは非常に難しい。彼は象徴を多く用いて、その哲学の知識の多くは書の版画の中に隠していた。


 薔薇十字友愛団は威厳と主権ある組織であり、彼ら自身の特定の目的を得るために、錬金術、カバラ、占星術、魔術の諸象徴を恣意的に操作していたが、これらの用語を用いていた諸宗教からは完全に独立していた。この友愛団の3つの主な目的は、以下の様にである。


 1. 全ての君主制を廃止させ、哲学により選ばれた者の支配と取り換える事。現在の民主主義は、専制政治の支配から大衆を解放する薔薇十字団の努力の直接的結果である。18世紀前半で薔薇十字団は彼らの注意を新しいアメリカ植民地へと向け、新世界に大いなる国の核心を形成した。アメリカ独立戦争は彼らの最初の政治的実験を表し、神と自然法を基礎とする国家を形成する結果となった。彼らの秘密結社活動の不朽の記念として、薔薇十字団は合衆国の国璽にその足跡を残した。また薔薇十字団はフランス革命の扇動者でもあるが、この活動は完全には成功せず、そのため革命家らの狂信主義を制御できずに、続いての恐怖政治が起きた。


 2. 学問、哲学、倫理の改革。薔薇十字団は物質的な学問と技芸は神の知恵の影にすぎず、自然の内なる深遠を貫く事によってのみ、人はリアリティと理解を得られると宣言した。彼らは自らをキリスト教徒と呼んでいたが、薔薇十字団は明らかにプラトン主義者であり、さらに古代ヘブライとインド神学の深遠な密儀を学んでいた。薔薇十字団は人類に秘密にして永遠の教義を教授するための最良の方法として、古代の密儀の学院を復活させようとしていた否定できない証拠がある。また薔薇十字団はドグマ的なキリスト教の抹消しようとする勢力に対して、絶対的な秘密性と巧みな言い逃れの方法により自らを保全する事が出来た。彼らは至高の密儀――三つの自己の本性と相互関係――を慎重に守り保存し、団に属さない者には誰にも団やその目的について満足にいく情報を与えなかった。薔薇十字友愛団は、その外部組織を通じて、高名な兄弟C.R.C.が最終的には復活し、人類のための巨大な霊的、物質的な労働を完成させるための環境あるいは組織を徐々に形作っている。


 3. 全ての病の種類のための普遍的医薬、万能薬の発見。薔薇十字団が生命のエリクサーの探求に成功した充分な証拠がある。「英国化学の劇場」で、イライアス アシュモールは薔薇十字団はイングランドでは認められなかったが大陸では歓迎されたと記している。また彼はエリザベス女王は薔薇十字団の兄弟によって二度天然痘を癒され、ノーフォーク伯は薔薇十字団の医者によりライ病を癒されたと述べている。この引用においてジョン ヘイドンは、友愛団の兄弟らは人類の寿命を無限に伸ばす方法を知っているが、神の意志が認めるまでしか伸ばさないと仄めかしている。


「そしてついに、彼らは死んだ兄弟を同様に蘇らせる方法を知り、それにより何年も生き続けられるようにした。この法則については、第四の書で読者は見つけられよう。(中略)この方法の後、薔薇十字友愛団は設立され、最初の4人の創設者らはキリストの誕生の時まで死と復活を繰り返し、それから御子を崇拝するために星に導かれてユダヤのベツレヘムへと赴き、母マリアの手に抱かれている救い主の御子に向かって、宝箱を開いて、黄金、没薬、沈香の贈物をしてから、神の命により彼らの家へと帰っていった。これらの4人は何百年もの間、再び若さを取り戻して、魔術的な言語と書法、巨大な辞書を作り出し、神の栄光を日々称えるためや、その中の偉大な知恵を見つけるためにそれらを用いた。(中略)その頃、兄弟C.R.はまだ子宮の中にいたが、彼らは友愛団に他の者らも集めようと決断した。」


 ここでいう子宮とは中に兄弟らが埋められたガラスの棺かコンテナを指していたようである。またこれは哲学の卵とも呼ばれていた。特定の期間の後に哲学者は、この卵の殻を破って生まれ、特定の期間活動し、それから再びガラスの殻に入って隠居するのを繰り返していた。全ての人間の病を癒すという薔薇十字の医薬とは、文字通りの意味の肉体的変化をもたらす化学物質か、人がそれを持つことで真理を明らかにする霊的な理解を表していたようである。無知とは全ての病の中でも最悪の形態であり、そのため無知を癒すとは全ての医薬の中でも最良のものである。完全な薔薇十字の医薬とは、国々、民族、個人を癒すためにあった。


 古代の世に出ていないある文書で匿名の哲学者は、錬金術、カバラ、占星術、魔術は元は神の学であったが乱用の結果、偽りの教義となり、知恵の探求者をその目的から遠ざけるようになったと宣言する。同著者は霊的達成の道を三つの段階、あるいは学派、著者が山々と呼んでいるものに分割する事で、秘教的な薔薇十字主義の貴重な鍵を与えている。これらの山々の第1にして最も低位のものは、知恵の山、第2のものはカバラの山、第3のものはマギア(魔術)の山である。これらの三つの山は、霊的成長の順番の段階である。それから匿名の著者は記す。


「哲学により、自然の働きの知識を理解することができ、これらの知識により人は物質の感覚の限界を超えたこれらの高い山々を登る事が出来る。カバラにより天使や天の存在らの言語を理解し、それを熟達した者は神の使者らとの対話が出来るようになる。山々の中でも最も高いのはマギアの学派(神の言語である神の魔術)であり、それにより人は神自身により万物の真の性質を教えられる。」


 薔薇十字主義の真の性質が漏れたら、それは驚くべき事となると少なくとも言えるという考えが沸き起こっている。薔薇十字の象徴は多くの意味合いがあるが、薔薇十字団の意味合いはまだ明らかにはされていない。薔薇十字の家が立つ基盤は、なおも雲により隠されており、その中に団員は自らと団の秘密を隠している。ミヒャエル マイヤーは記す。「『名声』と『信条』に含まれる内容は真実である。薔薇十字団は多くの約束をするが僅かしか実際には行っていないというのは、子供じみた批判である。彼らには、他の結社と同様に、多くの者らが呼ばれるが、僅かしか選ばれない。団の達人らは薔薇を間接的な報酬として差し出すが、彼らは入団する者には十字架を負わせるのだ。」(マイヤーの「叫びの後の沈黙」とド クインシーの「薔薇十字団とフリーメイソン」を参照)


 リッチフィールド教会堂の窓には薔薇と十字があるが、ウォルター コンナード アレンスベルグは、ベーコン卿とその母がこの教会墓地に埋められていると信じている。心臓の中で十字架に架けられた薔薇の絵は、1628年版のロバート ブルトンの「メランコリーの解剖」の献辞のページの透かし模様であった。


 薔薇十字団の本質的な象徴は薔薇と十字である。薔薇は女性原理で十字は男性原理であり、両者は普遍的な男根の紋章であった。トーマス インマン、ハーグレイブ ジェニングス、リチャード ペーン ナイトのような卓越した学者らが薔薇と十字は生成のプロセスの典型と真に観察していていたものの、これらの学者らは象徴主義のヴェールを貫く事は出来なかったように思える。彼らは物質世界の創造の神秘は、霊的世界の神の創造の神秘の影にすぎない事に気付かなかった。これらの象徴の男根の意味合いから、薔薇十字団とテンプル騎士団は彼らの秘密の儀式の中で猥褻な行いをしていると不正に告発を受けてきた。錬金術の蒸留器が子宮の象徴化であるのは全く正しいが、第二の誕生の類推の下に隠されている意味合いの方がはるかに重要である。生成が物理的存在の鍵であるように、薔薇十字団ではこれらの象徴を再生のプロセスの例とするのは自然であった。再生が霊的存在の鍵であるように、彼らはゆえに薔薇と十字を自らの象徴と定め、人の低位の一時的性質と高位の永遠の性質の統合をはたす贖罪の典型とした。また薔薇十字は普遍的医薬の形式を表すヒエログリフ的な図でもあった。


エレメンタルの世界

「ヘルメース学の改革と進歩の博物館」より


 外側の円には黄道十二宮の絵が含まれ、第2の円にはそのサインとそれらが支配する人間の体の部分がある。第3の円には年の12の月があり、それらの気候などについての簡潔な注記がある。第4の円には、相応しい象徴が伴ったエレメンツが含まれて、それに続く7つの円には惑星の軌跡、7体の惑星の天使ら、普遍的な人の7つの主な部分、7つの金属がある。それぞれの分割には第4の円のエレメントの名前から相応しいものが伴っている。第12の円の中には、以下の言葉がある。「3つの原理、3つの世界、3つの時代、3つの領域がある。」第13の円には、霊的成長には不可欠であると考えられてきた12の術と学が記されている。第14の円には、自然という言葉がある。第15の円には以下の言葉がある。「信仰ある魂らは、誕生の時からそれぞれに守護のために天使が与えられているのは偉大な名誉である。」(本書の1893年の最初の英訳版を参照)


古今の秘密の教え 薔薇十字とカバラの15の図表
↑ 古今の秘密の教え