古今の秘密の教え カバラ宇宙論の基礎

ページ名:古今の秘密の教え カバラ宇宙論の基礎

カバラ宇宙論の基礎


 カバリストらは、至高の神は直接的には理解不可能な原理であり、全てのその認識可能な属性を一つずつ除去していくプロセスを通じてのみ見つけられると考えた。それにより残されたもの――全ての知る得るものを除去した時――はアイン ソフ、存在の無限状態である。それは定義不能ではあるが、この絶対者は全ての空間に浸透している。理解不能なまでに抽象化されたアイン ソフは、万物の無条件の状態である。物質、エッセンス、知性体はアイン ソフの計り知れなさから発現したが、絶対者自身は物質もエッセンスも知性も無い状態である。アイン ソフは、豊かな土壌に例えられよう。そこから様々な植物が育ち、それぞれは違った色、形、香りを持つが、その根は同じ闇の壌土の中にある――だがそれにより、異なる様々な形は養われる。この「植物」は諸宇宙、神々、人であり、全てはアイン ソフにより養われ、それらの源全ては、一つの定義不能な本質にある。それらの全ての霊、魂、肉体はこの本質から形作られ破壊され、植物が死後に土壌へと帰るのに似て、アイン ソフ、唯一の不死者――これらが生まれた場所へと帰る。


 アイン ソフはカバリストらからは、全ての古き者らの中の最も古き者として表されている。それは常に性が無いと考えられてきた。その象徴は閉ざされた目である。アイン ソフを定義するのは、それを汚す事だと真に言えるが、ラビらはアイン ソフが自らより被造物を放出した方法についての幾つかの理論を仮定し、また絶対的非存在の諸力の少なくともその一部を記述する象徴を割り当てていた。彼らはアイン ソフの性質を永遠を表す円で象徴した。仮説の円は理解不能な生の次元無き領域を取り囲み、生の円形の境界は抽象的で計測不能な無限である。


 この概念に従い、神は中心であるだけではなく、領域でもあった。ある一点への集中は、限界への最初の一歩である。アイン ソフの形質の中に形成される中心は有限であり、自らの原因へと消滅するよう運命づけられているからである。一方で、アイン ソフ自体は無限であるが、それは万物の究極の状態だからである。アイン ソフに与えられた円の形は、空間は大いなる水晶に似た球により仮説的に取り囲まれているのを象徴する。その外側には何も無く、虚無すら無いのである。この球――アイン ソフの象徴――の中で、創造と破壊が起きている。無限の宇宙的誕生、成長、腐敗の中で使われるあらゆるエレメントと原理は、この認識不能の球の透明な形質の中にある。これは宇宙卵であり、「我々と共にある」大いなる日まで壊れる事は無く、その日は必要性の周期の最期であり、その時には万物は究極の原因へと帰還する。


 創造のプロセスではアイン ソフの離散状態は円周から円の中心へと退き、一点を確立する。そこは、最初に発現したもの――全てに浸透する円の原初の限界である。神のエッセンスが円形の境界から中心へと退いた時、それは背後に深淵、あるいはカバリストが名付けた大いなる欠乏を残した。これによりアイン ソフは、それまでは単独の存在だったのが二重の状態を確立する。第一の状態は、中心点である――永遠の原初の客観化された輝き、主観化された生である。この輝きの周囲には、中心点、宇宙的根源へと生が引き寄せられた事による欠乏によって、闇が作られる原因となった。この結果、普遍的なアイン ソフは、もはや空間全体に輝く事は無く、確立された第一点からの空間にのみ輝くようになった。アイザック マイヤーはこのプロセスを以下の様に記している。「最初にアイン ソフは全てに満たされていたが、自らへの絶対的な集中を行い、その結果、深淵、深み、空間を、アヴェエル カドモンあるいは原初の風、アゾットを作り出した。だがカバラではこれらは完全な空虚、空白や、完全な虚無の空間とは見做さずに、水晶のような混沌の海あるいは水として考えられた。そこではある程度の劣った光があり、それにより全ての被造物(の諸世界と階層)が創られた。」(「カバラ」参照)


 カバラの秘密の教えでは、人の体は虹色のような泡の卵で包まれており、それはオーラの卵と呼ばれている。この人の原因体の球である。これと人の肉体とは、アイン ソフの球とその創造された諸世界と同じ関係にある。実際、このオーラの卵は人と呼ばれる存在のアイン ソフの球である。そのため、現実には人の至高の意識はこのオーラの中にあり、全ての方向へと拡張し、低位の諸体を完全に取り囲んでいる。宇宙卵の意識が、中心点へと退き、神――至高の者――と呼ばれるようになったように、人のオーラの卵の意識が集中し、それによりエゴと呼ばれる意識の点を確立する原因となった。自然の諸世界が宇宙卵に潜在していた諸力から形成されたように、自然の領域からの具現化で人が用いる全てのものは、彼のオーラの卵の中に潜在的にあった諸力から引き出された。人はこの卵から決して離れる事は無い。それは死後すらも留まる。彼の誕生、死、再誕生の全ては、この中で起き、これは「我々と共にある」、人類が――宇宙と同様に――必要性の輪から解放される最後の日まで壊れる事は無い。


カバラ体系の諸世界


四界のカバラの体系

(最外周からX1,X2,X3,A1-A10,B1-B10,C1-C10,D1-D10)


 上記の図では、X3とA1の間の濃い黒線は、原初の点の境界を作り、その中の同心円は、この点から流出し生まれた諸世界を表している。この点がX1、X2、X3の外側の円の中にあり、個々の存在の最初の確立を表すように、低位の諸世界も、この点の中にある40の同心円で象徴され、そこから進んできた低位の創造で、それでいてなおも第一の王冠――それは神と呼ばれよう――の性質の中にある。この中に神的な諸力、星座の世界の天の諸存在、さらに人が生き動き存在している。A1の内側にある全ての円が、原初の点に取り囲まれていると考えるのは非常に重要である。さらに原初の点自身も、X1の大いなる輪、アイン ソフのオーラの卵に取り囲まれている。


 それぞれの輪は、内側に自らと、自らの内側にある全ての輪の自然を含んでおり、さらに自らの外側にある全ての輪の自然も含んでいる。よって、A1――原初の点――は自らが取り囲む39の輪を制御し含んでおり、それら全ては自らの威厳によって様々な段階の、その自然を共にしている。結果として、A1からD10までの全ての領域は原初の点を含んでおり、それぞれの輪は点と、アイン ソフの抽象的性質の中心に確立された後の点から流出したものの分割を象徴している。この輪の諸力は、図の中心に行くごとに減少していく。なぜなら力はどれだけ多くの存在を制御しているかで測られ、それぞれの輪は内側の諸輪を制御し、外側の諸輪から制御されるからである。よってA1は自らの内側にある39の諸輪を制御するが、B1は自らの内側にある29の諸輪のみを制御する。そのためA1はB1よりも強力である。霊的な堅牢度、永続性は図の外側に多くあり、物質的な濃度あるいは非永続性は図の中心により強くあるため、輪が力を失うごとに、それらはより物質的、堅牢性を増していき、中心点、D10は、地球の実際の化学エレメンツを象徴する。輪が中心へ向かうごとに、振動率も低下していく。よって、A2の振動はA1よりも低いがA3よりも高い、という風に中心へと向かっていく。A1は創造の至高でありD10は最低の圏である。A1は創造の支配者として、A、B、C、Dで記した諸円を制御するが、それは外側のアイン ソフの3つの輪――X1、X2、X3――よりも低く、そのため、そこから全ての形質が個別化された畏れ多き創造主の御座の前で跪く。


 この円形図では、中央の諸輪はアイン ソフから流出する40の振動率(カバリストからは、諸圏と呼ばれる)を図的に表している。円X1は、空間の最も外側の境界である。それはアイン ソフの領域を取り囲む。アイン ソフの性質自体は、3つの部分に分割され、それらはX1からX2、X2からX3、X3からA1の空間でそれぞれ表わされる。よって、


X1からX2 אין アイン、純粋霊の無
X2からX3 אין סוף アイン ソフ 無限界と無境界
X3からA1 אין סוף אור アイン ソフ アウル、限界無き光


 始まりにおいては、至高の形質アインは、単独で円全体に浸透していたと心に留めておく必要がある。内側の諸輪はまだ実体化していない。神の本質が自らに集中される事により、X2とX3の輪が理解できるようになる。アイン ソフはアインの限界であり、アイン ソフ アウル(の光)は、なおも大いなる限界だからである。よって至高者の性質は三重あると考えられ、それらから、アイン ソフの動きが中心に進むにつれ、創造の三重の諸力と要素が残った深淵の中に反映された。自らの中心へ向けての絶え間ないアイン ソフの動きは、円の中の中心点の確立となった。この点は普遍的なエッセンスの至高の個体化した存在として、神と呼ばれる。これについてゾーハルは記す。


「隠された中の隠された者が自らを現すのを望んだ時、まずは一つの点を作った。無限者は完全に未知であり、この輝ける点の前には、その幻視を暴力的に指す事の出来る光の放出は無い。」


 この点の名前は「我は在る」で、ヘブライ人はエーヘイエーと呼んだ。カバリストはこの点に多くの名前を与えている。この主題について、クリスティアン D.ギンスバーグはこう記している。その本質において、この点は第一の王冠と呼ばれるが、それは至高の位置にあるからである。これは古き御方と呼ばれるが、それは最初の流出だからである。これは原初の、あるいは滑らかな点と呼ばれる。また、白い頭、長い顔――マクロプロソプス――、測りがたき高みと呼ばれるが、これは全ての他の流出を含み支配するからである。


 この白く輝く点が現れた時、それは王冠を意味するケテルと呼ばれる。そこから、9つの大いなる球が現れ、それらは自らで樹の形を形成した。これらの9つと第1の王冠を合わせて、セフィロトの第1の系を構成する。これらの10は、アイン ソフ自身の性質の中の10の抽象的な諸点の最初の限界であった。アイン ソフの力はこれらの球に下る事は無く、むしろ太陽の光が地上や諸惑星に反射されるように、これらに反射していった。これらは10の球は輝くサファイアと呼ばれる。多くのラビは、このサファイアがセフィラ(セフィロトの単数形)の言葉の原型となったと信じている。アイン ソフが中心点、ケテルへと退いた事により空いた広大な領域は、今では諸世界あるいは諸圏と呼ばれる四つの同心円状の諸球で満たされた。そして10のセフィロトの光はそれぞれ順に反射していった。この結果、4つのそれぞれに10のセフィロトの球の反映を持つ象徴的な樹が確立された。合計40のアイン ソフからの創造の諸圏は4つの大いなる世界の連なりへと分割された。


ヘブライの三つ組


 カバリストらは、שシンの文字を最初の3つのセフィロトの三つ組を表すのに用いてきた。中央の、左右のより上にある円は第1のセフィラ――ケテル、白頭、王冠を表す。他の2つの円はホクマー、父と、ビナー、母を表している。この神の父と母との結合により、諸世界と生き物らは生み出された。שの文字の炎のような3つの諸点はカバラの創造の三つ組を隠すのに長い間使われてきた。


A1からA10はアツィルト界、神名の境界無き世界
B1からB10はブリアー界、創造の大天使の世界
C1からC10はイェツィラー界、形成の階層的世界
D1からD10はアシアー界、物質のエレメンタルの世界


 これらの諸世界のそれぞれには、10の諸力あるいは諸圏がある。親の球とそこから流出された9つの他の球である。それぞれの球は前のものから放出されていった。アツィルト界(A1からA10)、全ての創造された諸世界で至高にして最も神的な世界に、未顕現のアイン ソフは神的な海にその最初の点――Xの三つの諸圏を確立した。この点――A1――には、その中に全ての創造を含んでいるが、この最初の神的で汚れなき状態の点、あるいは最初の発現した神を、カバリストは人格性があるとは見做さず、むしろ神の確立あるいは基盤として考えていた。これは最初の王冠と呼ばれ、そこからA2からA10までのアツィルト界の他の諸円が放たれた。3つの低位の諸世界では、これらの諸円は知性体、計画者、エレメンツであるが、第1の神的世界では、これらは神名の輪と呼ばれている。


 最初の10の大いなる光の円(あるいは球)はアイン ソフより現れ、それらはカバリストにより10の神名が以下の様に割り当てられた。

 アイン ソフから、A1、最初の王冠は現れ、神の第1の力の名前は、我は在りを意味するエーヘイエーである。

 A1からA2、最初の知恵は現れ、神の第2の力の名前は存在の本質を意味するエホヴァである。

 A2からA3、最初の理解は現れ、神の第3の力の名前は神々の神を意味するエホヴァ エロヒムである。

 A3からA4、最初の慈悲は現れ、神の第4の力の名前は創造主である神を意味するエルである。

 A4からA5、最初の峻厳は現れ、神の第5の力の名前は強き神を意味するエロヒム ギボルである。

 A5からA6、最初の美は現れ、神の第6の力の名前は力ある神を意味するエロアー ヴァダートである。

 A6からA7、最初の勝利は現れ、神の第7の力の名前は万軍の神を意味するイェホヴァ ツァバオトである。

 A7からA8、最初の栄光は現れ、神の第8の力の名前は万軍の主なる神を意味するエロヒム ツァバオトである。

 A8からA9、最初の基盤は現れ、神の第9の力の名前は全能者を意味するシャダイである。

 A9からA10、最初の王国は現れ、神の第10の力の名前は神を意味する*1アドナイ メレクである。

 A10からB1、第2の王冠が現れ、ブリアー界が確立した。


 A1からA10までの流出は、全ての創造の基盤と呼ばれる。カバリストらはこれらを生命の樹の10の源と名付けていた。これらは大いなる人間の姿、アダム カドモン――火の霧(赤い塵)より作られた人、原型的普遍的な人の形へと配置された。アツィルト界では、神の諸力は最も純粋に発現する。これらの10の純粋で完全な放出は低位の諸界へと降りて形作る事は無く、低位の諸圏の形質への反射なのである。最初の世界、アツィルト界から、第2のブリアー界へと反射された。反射物は常にオリジナルの輝きをどこか失うように、ブリアー界の10の放出はこれらの無限の力の一部を失っている。反射は常に反射される元と似てはいるが、より小さくおぼろげである。


 第2の世界、B1からB10の諸圏はアツィルト界と同じ名前だが、この10の光の円の輝きはより劣り、より実体的となり、ここでは10の大いなる霊ら――宇宙の秩序と知性を確立する助けとなった神的な生き物らと関連づけられている。先に述べたように、B1はA10から産まれ、その中に自らより上位の全ての諸圏を含んでいる。B1からB2よりB10の9つの球が現れ、これらによりブリアー界は形成された。だがこれらの10の副分割は、実際にはアツィルト界の10の諸力のブリアー界の形質による反射である。B1はこの世界の支配者である。これにはこの世界の他の全ての輪と、Cの第3、Dの第4の世界の輪も含んでいるからである。ブリアー界では、光の10の圏は、ブリアーの大天使らと呼ばれている。これらの序列と力は以下の通りである。


 A10からB1、第2の王冠が現れ、これは御前の天使メタトロンと呼ばれる。


 B1からB2、第2の知恵が現れ、カバラの密儀をアダムに明らかにした神の使者、ラジエルと呼ばれる。

 B2からB3、第2の理解が現れ、神の黙想、ザフキエルと呼ばれる。

 B3からB4、第2の慈悲が現れ、神の正義、ツァドキエルと呼ばれる。

 B4からB5、第2の峻厳が現れ、神の峻厳、サマエルと呼ばれる。

 B5からB6、第2の美が現れ、神の如き者、ミカエルと呼ばれる。

 B6からB7、第2の勝利が現れ、神の恩寵、ハニエルと呼ばれる。

 B7からB8、第2の栄光が現れ、神の医者、ラファエルと呼ばれる。

 B8からB9、第2の基盤が現れ、神の人、ガブリエルと呼ばれる。

 B9からB10、第2の王国が現れ、メシア、サンダルフォンと呼ばれる。

 B10からC1、第3の王冠が現れ、イェツィラー界が確立した。


 ブリアー界の10の大天使らは、10の偉大な霊的存在と考えられ、その役割は、アツィルト界に存在し、創造の世界全体を取り囲み浸透する神の御名の10の諸力を発現させる事である。低位の諸世界に発現した全てのものは、まず最初に上位の諸圏の触れられない諸輪に存在する。そのため創造とは実際には、触れられないものを様々な振動率へと拡張する事により、触れられるものへと変換するプロセスである。ブリアー界の10の球の力、それ自体も反射によるものだが、これも下位の第3の世界イェツィラー界で反射される。それらはなおも表現に限界があるものの、見える星座の集まりの背後にある霊的で不可視の黄道十二宮となった。この第3の世界で、オリジナルのアツィルト界の10の球は、大きく制限され、輝きを鈍くしたが、なおも人が住む世界の形質の状態と比べるならば、無限の力がある。この第3の世界、C1からC10で、諸球は天の生き物の位階となり、イェツィラーの聖歌隊と呼ばれる。ここでもまた、それら全てはC1の輪の中に含まれ、この力はイェツィラー界とその下のDの世界全体も支配する。この諸球の階級と、それらを構成するものの名前は以下である。


 B10からC1、第3の王冠が現れ、ケルビムの階級、聖なる動物達、ハイオト ハ=クァデシュとなった。

 C1からC2、第3の知恵が現れ、ケルビムの階級、輪達、オファニムとなった。

 C2からC3、第3の理解が現れ、座天使スローンズの階級、力ある者達、アラリムとなった。

 C3からC4、第3の慈悲が現れ、主天使ドミニオンズの階級、輝ける者達、カシュマリムとなった。

 C4からC5、第3の峻厳が現れ、能天使パワーズの階級、燃える蛇達、セラフィムとなった。

 C5からC6、第3の美が現れ、力天使ヴァーチュースの階級、王達、マラキムとなった。

 C6からC7、第3の勝利が現れ、権天使プリンシパリティーズの階級、神々、エロヒムとなった。

 C7からC8、第3の栄光が現れ、大天使アーク エンジェルズの階級、神の子達、ベン エロヒムとなった。

 C8からC9、第3の基盤が現れ、天使エンジェルズの階級、子らの座、ケルビムとなった。

 C9からC10、第3の王国が現れ、人の階級、義人の魂達、イシムとなった。

 C10からD1、第4の王冠が現れ、アシアー界が確立した。


 イェツィラー界から10の諸圏の光は四世界の中でも最低位のアシアー界に反射した。オリジナルのアツィルト界の10の球は物理的な形を取り、結果として星々となった。アシアー界、物質のエレメンタル世界は、アダムの没落の時に人類が降りて来た場所である。エデンの園とは上位の3つの世界であり、アダムの罪により人類は物質の圏へと入り、皮の衣(肉体)を纏うのを強いられた。上位A、B、C全ての世界の霊的な諸力は、低位世界Dのエレメントに衝突した時に歪み、過ちとなり、結果として高位の諸世界のそれぞれの善霊らと対応する悪魔らの階層を作り出した。全ての古代密儀では物質は諸悪の根源とされ、霊は全ての善の根源とされた。なぜなら物質は内なる知覚を防ぎ限界を作り、それらの閉塞から人は自らの神の潜在性を認識できなくなるからである。物質は人をその生得の権利を主張するのを防ぐため、これは敵対者、悪の力と呼ばれる。第4のDの世界は、太陽系の世界であり、それは地球を含んだ太陽系のみならず、宇宙全体の全ての恒星系を構成する。


神の活動の図


 カバリストによれば、至高の創造主の命は全ての被造物、全ての空間、全ての時間に浸透しているが、図形を描画するために、至高者、全てを含む命は、円3により限界され、これは「神の存在の境界線」と名付けられよう。神の命は円3で取り巻く領域に満たされており、点1に集中し、非個人的な命の個人化となり、「最初の王冠」と名付けられる。創造の諸力は点1から溢れて、中間の空間、円2で客観的宇宙として発現する。


 最後の世界のD1からD10の諸球に割り当てるものについては様々な意見がある。第4の世界の支配者はD1で、ある者らからは火の天と、別の者らからは第一動者と呼ばれている。この燃える火から、イェツィラー界の不可視の霊的な黄道と対応する、物質の星々の黄道、D2に流出する。このD2の黄道から、連結された順番の様々な惑星の諸圏へと流れる。アシアー界の10の圏は以下の通りである。


 C10からD1、第4の王冠が現れ、ラシト ハ=ガラガルム、第一動者、物理宇宙の始まりである火の霧となった。

 D1からD2、第4の知恵が現れ、マスロト、黄道、恒星の星々となった。

 D2からD3、第4の理解が現れ、シャバタイ、土星の圏となった。

 D3からD4、第4の慈悲が現れ、ツェデグ、木星の圏となった。

 D4からD5、第4の峻厳が現れ、マディム、火星の圏となった。

 D5からD6、第4の美が現れ、シェメシュ、太陽の圏となった。

 D6からD7、第4の勝利が現れ、ノガ、金星の圏となった。

 D7からD8、第4の栄光が現れ、コカブ、水星の圏となった。

 D8からD9、第4の基盤が現れ、レヴァナー、月の圏となった。

 D9からD10、第4の王国が現れ、ホロム ヨソドト、四大エレメンツの圏となった。


 キルヒャーは第一動者の前に別の圏(彼はそれを最高天と呼んだ)を差し込み、その下を一つずつずらした。結果、エレメンツの圏は取り除かれ、D10を月の圏にした。


 アシアー界には、悪魔と誘惑者らが見つけられる。これらはアツィルト界の大いなる諸球の反射だが、アシアー界の形質での像の歪みにより悪しき生き物となり、カバリストらからはクリポト、殻と呼ばれる。これらの悪魔らは、イェツィラー界を構成する善霊の10の階級と対応する10の階級がある。また、ブリアー界の10の大天使らと対応する10の大悪魔らもある。黒魔術師らは彼らの邪悪な目的のために、この逆転した霊らを用いる。だが、やがては悪魔はそれと自らを繋げた者を破壊する。アシアー界での悪魔と大悪魔の10の序列は以下の通りである。


 D1は悪しき王冠であり、その階層は神への不実、タウミエル、二つの頭を持つ者で、大悪魔はサタンとモロクである。

 D1からD2、悪しき知恵が現れ、その階層は妨害者、チャイギキエルであり、大悪魔はアダム ベリアルである。

 D2からD3、悪しき理解が現れ、その階層は神の隠蔽、サタリアルであり、大悪魔はルキフゲである。

 D3からD4、悪しき慈悲が現れ、その階層は騒乱、ガムキコトであり、大悪魔はアスタロトである。

 D4からD5、悪しき峻厳が現れ、その階層は扇動と燃やす者、ゴラブであり、大悪魔はアスモデウスである。

 D5からD6、悪しき美が現れ、その階層は論争者、トガリニであり、大悪魔はベルフェゴルである。

 D6からD7、悪しき勝利が現れ、その階層は分配するカラス、ハラブ セラプであり、大悪魔はバアル カナンである。

 D7からD8、悪しき栄光が現れ、その階層は反目させる者、サマエルであり、大悪魔はアドラメレクである。

 D8からD9、悪しき基盤が現れ、その階層は猥褻者、ガマリウルであり、大悪魔はリリトである。

 D9からD10、悪しき王国が現れ、その階層は不純者、ナヘモトであり、大悪魔はナヘマである。


 カバリストらは諸世界、知性体、階層は預言者エゼキエルの幻視に従って確立されたと公言する。エゼキエルの幻視に出てくる人はアツィルト界を、その御座はブリアー界を、その天空はイェツィラー界を、その生き物らはアシアー界を象徴する。これらの諸圏は預言者の諸輪の中の諸輪である。次にカバリストらはこの四界のそれぞれに人間の姿を確立した。アツィルト界の人の頭はA1で足元はA10である。ブリアー界の人の頭はB1で足元はB10である。イェツィラー界の人の頭はC1で足元はC10である。アシアー界の人の頭はD1で足元はD10である。これらの四人は、世界人と呼ばれる。これらは両性具有者で人類の原型と考えられてきた。


 人間の体は、宇宙のものと同様に、10の光の球あるいは圏の物質の表現と見做されてきた。そのため人はミクロコスム――小宇宙と呼ばれ、彼がその部分である大宇宙の像として造られた。またカバリストらはその頭がA1でその足元がD10の神秘的な普遍的な人も考え出した。これはネブカドネザル王の夢に出てきた巨人の秘密の意味合いである可能性が高い。この巨人の頭はアツィルト界にあり、その腕と手はブリアー界にあり、その性器はイェツィラー界にあり、その足と足首はアシアー界にある。これはゾーハルの大いなる人であり、それについてエリファス レヴィはこのように書いている。


「ゾーハルの始めにて、その記法の深遠さとその諸像の深遠な単純性を観るのもまた、驚異が劣るものではない。以下の様に言われる。『均衡の学はオカルト学の鍵である。バランスの崩れた諸力は虚無へと消える。かくして古き世界の諸王ら、巨人らの君主らは去った。彼らは根が無い樹のように倒れ、もはや彼らの場所はどこにも見出せない。バランスの崩れた諸力の闘争を通じて、破壊された地上は虚無であり形無かったが、やがては神の霊が自らのために天の場所を作り、海の質量を減らした。自然の全ての熱望は、形態の統一、生ける総合(諸力が均衡するならば)へ向けて方向付けられた。光による王冠をかぶる神の顔は、巨大な海から起き上がり、水にはその反射がある。神の二つの目は発現し、光輝を放ち、二つの光線を飛ばして、その反射と交差する。神の眉と二つの目は天の三角形を形成し、その反射は海の第二の三角形を形成した。それにより6の数が明らかとなり、かくは普遍的創造なのである。』この文書は原書版はわかりにくいだろうが、解釈学によりここでは翻訳している。この著者は神として描写した人間の形は、その意味合いのための像であり、神は人間の考えやあらゆる像による表現を超えていると明白にしている。パスカルは神は円であり、その中心が全ての場所にあり、その円周はどこにも無いと言った。だが円周無き円を想像できる者はいようか? ゾーハルはこの逆説の像のアンチテーゼを受け入れて、このパスカルの円の件では、むしろ円周は全ての場所にあり、その中心はどこにも無いと言えよう。だが万物の普遍的均衡を比較するのは天秤であり円では無い。天秤は均衡が全てにあり、また天秤の中心点は保持されると確言する。よって我々はゾーハルはパスカルよりも説得力があり、より深遠であるのを見つける。(中略)ゾーハルは光の創世記である。セフェル イェツィラーは真理の梯子である。その中では32の発言――数と文字――の絶対的な象徴が明らかにされる。それぞれの文字は数を、考え、形態を作り出し、それにより数学はその正確な比率と完全な照応の性質のもとに、形態、考え、さらに数とすら適用できる。このセフェル イェツィラーの学により、人間の心は真理と理性に根差すようになり、数の進歩の方法により、知的に可能な全ての進歩を説明する。よってゾーハルは絶対的真理を表わし、一方ではセフェル イェツィラーはその到達、その洞察、その応用の方法を与える。」(「魔術の歴史」参照)


 人自身をD10の点に置く事で、彼の真の構成は明らかにされる。彼は四世界の上に存在し、そのうちの一つのみが見える。そして、彼の物質世界での部分は、類推により、高次の諸界の階層と知性体の反映であるのは明らかとされる。ここでもまた、解釈の法則は証明されている。人の中には全ての宇宙があるが(D10の中に43の諸圏は浸透している)、人はそれらの存在に無知である。彼は自らより上位で偉大なものを支配する事が出来ないからである。にも関わらず、彼の機能と活動が示すように、全てのこれらの高次の諸圏は彼を支配している。それらが行わないならば、彼は物質の不活性な塊であろう。死は低位の体から離れた高次の諸輪の生命のインパルスが逸れた結果にすぎなくなる。


 自らの物質の反射の上にある物質を超えた諸輪の制御は命と呼ばれ、人の霊は現実にはこの知性体の偉大な集団が与えた名であり、エゴと呼ばれる点を通じての形質へと集中し、自らの中心に確立される。X1は人間のオーラの卵の境界の外側であり、図全体は人の構成の断面図、あるいは宇宙と対応させるならば宇宙的構成の断面図となる。カバラ学派の秘密の修養では、人はアイン ソフへと最終的に帰還するまで、諸輪(人の意識に明らかにされる)を登る方法を教えられる。この達成のプロセスは、光の50の門と呼ばれる。イエズス会カバリストのキルヒャーは、モーセは49番目の門まで通ったが、キリストのみが第50の門を通ったと公言する。


 ヘブライ語からウィリアム ウィン ウエストコットにより翻訳されたセフェル イェツィラーの第3版には、第2のセフィラ*2、ビナーから流出する知性体の50の門の付録がある。この情報源は、キルヒャーは「エジプトのオイディプス」である。諸門は6つの序列に分割されており、その最初の4つは、それぞれ10の再分割があり、第5は9つ、第6は1つのみがある。


 諸門の第1の序列は、エレメントと名付けられており、その分割は以下の様にである。(1)混沌。形式無き質料、第一形質。(2)形無き虚無、命無きもの。(3)深淵。(4)エレメンツの源。(5)地(胚芽は無い)。(6)水。(7)風。(8)火。(9)特質の差異。(10)混合と組み合わせ。


 諸門の第2の序列は、進歩の10組と名付けられており、その分割は以下の様にである。(11)様々な鉱物。(12)植物原理の現れ。(13)湿気の中での萌芽。(14)草と樹。(15)植物の生の果実化。(16)動物の生の低位の形態の源。(17)虫と爬虫類の現れ。(18)魚、水の中での脊椎生物。(19)鳥、空での脊椎生物。(20)四足獣、地上の脊椎動物。


 諸門の第3の序列は、人類の10組と名付けられており、その分割は以下の様にである。(21)人の現れ。(22)人間の肉体。(23)人は魂を授かる。(24)アダムとエバの神秘。(25)小宇宙としての完全な人間。(26)外面で働く5つの人間の顔の表情の贈物。(27)魂の5つの諸力の贈物。(28)アダム カドモン、天上の人。(29)天使の存在。(30)神の像としての人。


 諸門の第4の序列は、諸圏の世界と名付けられており、その分割は以下の様にである。(31)月天。(32)水星天。(33)金星天。(34)太陽天。(35)火星天。(36)木星天。(37)土星天。(38)星座の星々。(39)第一動者。(40)最高天。


 諸門の第5の序列は、天使の世界と名付けられており、その分割は以下の様にである。(41)イシム――火の子ら。(42)オファニム――ケルビム。(43)アラリム――スローンズ。(44)ハシュマリム――ドミニオンズ。(45)セラフィム――ヴァーチュース。(46)マラキム――パワーズ。(47)エロヒム――プリンシパリティーズ、(48)ベン エロヒム――エンジェルズ。(49)ケルビム――アークエンジェルズ。(この天使の順番には議論がある。上記での配置は、この書の他の部分とは違っている。ラビらは天使の名の適切な順番としては、本質的に不同意であろう。)


 第6の序列は、アーキタイプと名付けられており、1つの門、(50)神、アイン ソフ、死すべき定めの誰も見ない者のみがある。この第50の門は創造の世界から、創造の原理へと導き、ここを通った者は「全て」の無制限、未分化の状態へと帰還する。この50の諸門は、進化のプロセスを明らかにし、理解の至高の段階を得たいと望む者は、順番にこれらの全ての命の序列を通過しなくてはならないと、ラビらにより宣言されている。これらの序列のそれぞれの門を魂が低位から高位へと通過するごとに、魂はより反応する組織体となり、自己拡張の新しい道を見出すだろう。


古今の秘密の教え セフィロトの樹
↑ 古今の秘密の教え


*1 文字通りには主なる王を意味する。
*2 実際には第3のセフィラ。第2はホクマーである。